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嬉しい連絡
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<side浅香修一>
――鳴宮教授に相談されたらどうですか?
我が桜守学園の中等部、高等部の公民担当の上条先生の定年退職を来年度に控え、新たな公民の先生の獲得に頭を悩ませていた私に、息子の敬介がそんな言葉をかけてくれた。
我が校の教員採用はいつも頭を悩ませる。
それは我が校の信頼に関わる事項だからだ。
本人の能力はもちろん、性格から家族構成、取り巻く環境と必要ならば性癖の有無まで徹底的に調査をかけ、我が校に採用してもいい人間かどうかを総合的に判断してから決定する。
なんせ、我が校に通う生徒は各家庭で大切に育てられた箱入りの子女のみ。
その生徒たちが学内で安心して過ごせるように徹底しなくてはいけない。
我が桜守学園が幼稚園から大学までの一貫校でありながら、中等部、高等部に関しては男女も分けているのはそのためだ。
我が校の理念をしっかりと理解した者でなければ、我が校の教員は務まらない。
だから自然と我が学園の卒業生を教員として採用することも多いのだが、公民の教員に関してはなかなか見つけられずにいた。
我が学園では教員は全て専門職として採用するため、古文、漢文、現代文といったそれぞれ専門の教員を採用する国語科と同じく、社会科でも地理、歴史、倫理、公民のスペシャリストを採用し、科目の兼任はさせないことにしている。
現公民教員の上条先生は敬介も教えを受けた先生で、敬介は彼から経済学の面白さを知り、大学は経済学部に進んだ。
本当に素晴らしい教員だ。彼が去ってしまうことは我が学園にとっても大きな損失だが、彼がいなくなる前に少しでも彼から授業の進め方を学んでほしい。そのために優秀な人材を探していたのだ。
敬介の大学時代の恩師である鳴宮くんは、我が桜守学園のOB。
確かに彼なら優秀かつ、我が学園に合う人材を紹介してくれるだろう。
そう思って早速鳴宮教授にアポを取り、大学に向かった。
「どうぞ、中にお入りください」
出迎えてくれた鳴宮くんは相変わらず若々しい。
早速、本題に入り誰かいい人を紹介してほしいと相談を持ちかけた。
「それならいい子がいますよ。うちの一番の有望株の子なんですけど、彼なら自信を持って推薦できますよ」
「鳴宮くんがそこまで太鼓判を押してくれる学生なら安心だな。その学生に一度会えるかな?」
「ええ、ちょうど今日は大学で論文を……」
鳴宮くんがそう話をしたとき、研究室の扉をノックして入ってくる学生がいた。
彼は私の姿を見て慌てて頭を下げ出て行こうとしたが、私は咄嗟にその彼を引き留めた。
なぜか引き留めずにはいられなかった。
すると同じタイミングで鳴宮くんも彼を引き留める。
もしかしたら、彼が今話していた学生なのか?
鳴宮くんに呼び止められて、こちらにやってくる彼を見つめる。
ああ、彼なら我が学園の教員として力を発揮してくれるだろう。
あの目を見ればわかる。伊達に理事長としてやってきたわけじゃない。
「浅香さん。この子が話をしていた斎川一実くんです。私の研究室の中でも飛び抜けて優秀な学生ですよ」
そう説明されて、やっぱり彼か……とホッとする。
彼は鳴宮くんから私のことを説明されて驚いていたが、感触としては悪くない反応だった。
彼は公民の教員免許も持っているようだ。
それなら全く問題ない。
ただ、彼自身は教員に向いていないといっているがそうは思えない。
「ぜひ君にきてほしい。うちの生徒たちに社会の、公民の楽しさを教えてほしいんだ」
「でも……」
「頼む。私は理事長として何人もの教員を見てきた。君ほど教員という職業が合う人はいないと直感している。どうかすぐに断らず考えてほしい」
突然の私の申し出に困惑している様子だったが、なんとか食い下がった。
彼を逃してはいけない、そんな感情でいっぱいだった。
少し考えさせてください……ようやくその言葉をもらって、私は研究室を出た。
一応彼のことは調査を入れたが、我が校の教員として申し分ない結果が出た。
なんとか鳴宮くんが説得してくれたらいいが……
これからどうなるかは神のみぞ知るということか。
それからすぐに嬉しい連絡がやってきた。
彼が教員になることを決断してくれたのだ。
そうして、彼は桜守学園にやってきた。
最初は緊張で固まっていたが、上条先生と同じ高校出身だとわかりそこでだいぶ緊張がほぐれたようだ。
数日一緒に授業をまわり、一週間が経つころには彼は上条先生のよきパートナーのような存在になっていた。
「理事長。斎川くんは素晴らしいですよ。彼は教員になって正解です。いい人を連れてきてくれてこれで私も安心して退職できます」
上条先生がそこまで褒める彼の実力に驚きつつ、私はイギリスにいる知成に報告の電話をかけた。
――鳴宮教授に相談されたらどうですか?
我が桜守学園の中等部、高等部の公民担当の上条先生の定年退職を来年度に控え、新たな公民の先生の獲得に頭を悩ませていた私に、息子の敬介がそんな言葉をかけてくれた。
我が校の教員採用はいつも頭を悩ませる。
それは我が校の信頼に関わる事項だからだ。
本人の能力はもちろん、性格から家族構成、取り巻く環境と必要ならば性癖の有無まで徹底的に調査をかけ、我が校に採用してもいい人間かどうかを総合的に判断してから決定する。
なんせ、我が校に通う生徒は各家庭で大切に育てられた箱入りの子女のみ。
その生徒たちが学内で安心して過ごせるように徹底しなくてはいけない。
我が桜守学園が幼稚園から大学までの一貫校でありながら、中等部、高等部に関しては男女も分けているのはそのためだ。
我が校の理念をしっかりと理解した者でなければ、我が校の教員は務まらない。
だから自然と我が学園の卒業生を教員として採用することも多いのだが、公民の教員に関してはなかなか見つけられずにいた。
我が学園では教員は全て専門職として採用するため、古文、漢文、現代文といったそれぞれ専門の教員を採用する国語科と同じく、社会科でも地理、歴史、倫理、公民のスペシャリストを採用し、科目の兼任はさせないことにしている。
現公民教員の上条先生は敬介も教えを受けた先生で、敬介は彼から経済学の面白さを知り、大学は経済学部に進んだ。
本当に素晴らしい教員だ。彼が去ってしまうことは我が学園にとっても大きな損失だが、彼がいなくなる前に少しでも彼から授業の進め方を学んでほしい。そのために優秀な人材を探していたのだ。
敬介の大学時代の恩師である鳴宮くんは、我が桜守学園のOB。
確かに彼なら優秀かつ、我が学園に合う人材を紹介してくれるだろう。
そう思って早速鳴宮教授にアポを取り、大学に向かった。
「どうぞ、中にお入りください」
出迎えてくれた鳴宮くんは相変わらず若々しい。
早速、本題に入り誰かいい人を紹介してほしいと相談を持ちかけた。
「それならいい子がいますよ。うちの一番の有望株の子なんですけど、彼なら自信を持って推薦できますよ」
「鳴宮くんがそこまで太鼓判を押してくれる学生なら安心だな。その学生に一度会えるかな?」
「ええ、ちょうど今日は大学で論文を……」
鳴宮くんがそう話をしたとき、研究室の扉をノックして入ってくる学生がいた。
彼は私の姿を見て慌てて頭を下げ出て行こうとしたが、私は咄嗟にその彼を引き留めた。
なぜか引き留めずにはいられなかった。
すると同じタイミングで鳴宮くんも彼を引き留める。
もしかしたら、彼が今話していた学生なのか?
鳴宮くんに呼び止められて、こちらにやってくる彼を見つめる。
ああ、彼なら我が学園の教員として力を発揮してくれるだろう。
あの目を見ればわかる。伊達に理事長としてやってきたわけじゃない。
「浅香さん。この子が話をしていた斎川一実くんです。私の研究室の中でも飛び抜けて優秀な学生ですよ」
そう説明されて、やっぱり彼か……とホッとする。
彼は鳴宮くんから私のことを説明されて驚いていたが、感触としては悪くない反応だった。
彼は公民の教員免許も持っているようだ。
それなら全く問題ない。
ただ、彼自身は教員に向いていないといっているがそうは思えない。
「ぜひ君にきてほしい。うちの生徒たちに社会の、公民の楽しさを教えてほしいんだ」
「でも……」
「頼む。私は理事長として何人もの教員を見てきた。君ほど教員という職業が合う人はいないと直感している。どうかすぐに断らず考えてほしい」
突然の私の申し出に困惑している様子だったが、なんとか食い下がった。
彼を逃してはいけない、そんな感情でいっぱいだった。
少し考えさせてください……ようやくその言葉をもらって、私は研究室を出た。
一応彼のことは調査を入れたが、我が校の教員として申し分ない結果が出た。
なんとか鳴宮くんが説得してくれたらいいが……
これからどうなるかは神のみぞ知るということか。
それからすぐに嬉しい連絡がやってきた。
彼が教員になることを決断してくれたのだ。
そうして、彼は桜守学園にやってきた。
最初は緊張で固まっていたが、上条先生と同じ高校出身だとわかりそこでだいぶ緊張がほぐれたようだ。
数日一緒に授業をまわり、一週間が経つころには彼は上条先生のよきパートナーのような存在になっていた。
「理事長。斎川くんは素晴らしいですよ。彼は教員になって正解です。いい人を連れてきてくれてこれで私も安心して退職できます」
上条先生がそこまで褒める彼の実力に驚きつつ、私はイギリスにいる知成に報告の電話をかけた。
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