ブラコン学園長が恋したのは真面目で可愛い新任教師でした

波木真帆

文字の大きさ
2 / 5

嬉しい連絡

しおりを挟む
<side浅香修一>

――鳴宮教授に相談されたらどうですか?

我が桜守学園の中等部、高等部の公民担当の上条かみじょう先生の定年退職を来年度に控え、新たな公民の先生の獲得に頭を悩ませていた私に、息子の敬介がそんな言葉をかけてくれた。

我が校の教員採用はいつも頭を悩ませる。
それは我が校の信頼に関わる事項だからだ。

本人の能力はもちろん、性格から家族構成、取り巻く環境と必要ならば性癖の有無まで徹底的に調査をかけ、我が校に採用してもいい人間かどうかを総合的に判断してから決定する。
なんせ、我が校に通う生徒は各家庭で大切に育てられた箱入りの子女のみ。
その生徒たちが学内で安心して過ごせるように徹底しなくてはいけない。

我が桜守学園が幼稚園から大学までの一貫校でありながら、中等部、高等部に関しては男女も分けているのはそのためだ。
我が校の理念をしっかりと理解した者でなければ、我が校の教員は務まらない。
だから自然と我が学園の卒業生を教員として採用することも多いのだが、公民の教員に関してはなかなか見つけられずにいた。

我が学園では教員は全て専門職として採用するため、古文、漢文、現代文といったそれぞれ専門の教員を採用する国語科と同じく、社会科でも地理、歴史、倫理、公民のスペシャリストを採用し、科目の兼任はさせないことにしている。
現公民教員の上条先生は敬介も教えを受けた先生で、敬介は彼から経済学の面白さを知り、大学は経済学部に進んだ。
本当に素晴らしい教員だ。彼が去ってしまうことは我が学園にとっても大きな損失だが、彼がいなくなる前に少しでも彼から授業の進め方を学んでほしい。そのために優秀な人材を探していたのだ。

敬介の大学時代の恩師である鳴宮くんは、我が桜守学園のOB。
確かに彼なら優秀かつ、我が学園に合う人材を紹介してくれるだろう。

そう思って早速鳴宮教授にアポを取り、大学に向かった。

「どうぞ、中にお入りください」

出迎えてくれた鳴宮くんは相変わらず若々しい。
早速、本題に入り誰かいい人を紹介してほしいと相談を持ちかけた。

「それならいい子がいますよ。うちの一番の有望株の子なんですけど、彼なら自信を持って推薦できますよ」

「鳴宮くんがそこまで太鼓判を押してくれる学生なら安心だな。その学生に一度会えるかな?」

「ええ、ちょうど今日は大学で論文を……」

鳴宮くんがそう話をしたとき、研究室の扉をノックして入ってくる学生がいた。

彼は私の姿を見て慌てて頭を下げ出て行こうとしたが、私は咄嗟にその彼を引き留めた。
なぜか引き留めずにはいられなかった。
すると同じタイミングで鳴宮くんも彼を引き留める。

もしかしたら、彼が今話していた学生なのか?

鳴宮くんに呼び止められて、こちらにやってくる彼を見つめる。
ああ、彼なら我が学園の教員として力を発揮してくれるだろう。
あの目を見ればわかる。伊達に理事長としてやってきたわけじゃない。

「浅香さん。この子が話をしていた斎川さいかわ一実かずみくんです。私の研究室の中でも飛び抜けて優秀な学生ですよ」

そう説明されて、やっぱり彼か……とホッとする。

彼は鳴宮くんから私のことを説明されて驚いていたが、感触としては悪くない反応だった。

彼は公民の教員免許も持っているようだ。
それなら全く問題ない。
ただ、彼自身は教員に向いていないといっているがそうは思えない。

「ぜひ君にきてほしい。うちの生徒たちに社会の、公民の楽しさを教えてほしいんだ」

「でも……」

「頼む。私は理事長として何人もの教員を見てきた。君ほど教員という職業が合う人はいないと直感している。どうかすぐに断らず考えてほしい」

突然の私の申し出に困惑している様子だったが、なんとか食い下がった。
彼を逃してはいけない、そんな感情でいっぱいだった。

少し考えさせてください……ようやくその言葉をもらって、私は研究室を出た。
一応彼のことは調査を入れたが、我が校の教員として申し分ない結果が出た。
なんとか鳴宮くんが説得してくれたらいいが……

これからどうなるかは神のみぞ知るということか。

それからすぐに嬉しい連絡がやってきた。
彼が教員になることを決断してくれたのだ。

そうして、彼は桜守学園にやってきた。

最初は緊張で固まっていたが、上条先生と同じ高校出身だとわかりそこでだいぶ緊張がほぐれたようだ。

数日一緒に授業をまわり、一週間が経つころには彼は上条先生のよきパートナーのような存在になっていた。

「理事長。斎川くんは素晴らしいですよ。彼は教員になって正解です。いい人を連れてきてくれてこれで私も安心して退職できます」

上条先生がそこまで褒める彼の実力に驚きつつ、私はイギリスにいる知成に報告の電話をかけた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

契約結婚だけど大好きです!

泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。 そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。 片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。 しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。 イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。 ...... 「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」  彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。 「すみません。僕はこれから用事があるので」  本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。  この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。 ※小説家になろうにも掲載しております ※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

処理中です...