イケメンスパダリ弁護士に助け出されて運命が変わりました

波木真帆

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初めて見た時から……※

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んんっ?
なんだろう?
すっごくあったかくて気持ちいい。
それにすっごくいい匂いがする……。

なんの匂いだっけ?

いい匂いなのにそれがなんの匂いなのか思い出せなくて、俺は鼻を擦り付けてスンスンと匂いを嗅いだ。

「ふふっ」

なんだろう?
誰かが笑ってる?
楽しそうな声が聞こえる。

その声につられるように目を開けると目の前には真っ白な壁。

「あれ?」

こんなところに壁とかあったっけ?
どうもまだ頭が回っていないみたいだ。
そういえばいつ寝たんだっけかな。

何もかもがわからなくなってきて、目の前の大きな壁にペタペタと手を這わせると、

「目が覚めた?」

と頭上から声が聞こえた。

「えっ?――っつ、いったぁーっ」

驚いて顔を上げた瞬間、ガンガンと金槌で殴られたような痛みが襲ってきた。
痛くてこめかみを抑えていると、

「理央、大丈夫か?」

その声にびっくりしてもう一度ゆっくり顔をあげると心配そうな表情をした先生が俺を見つめていた。

「あ、あの……俺、なんで……?」

「説明は後。まずはこれを飲んで」

そう言って先生が手渡してくれたのは小さな錠剤と水。

「これ……なんの薬ですか?」

「頭が痛いだろう? それを和らげてくれるんだ」

そう言って先生は俺を抱きかかえて座らせてくれた。
しかも心配そうにギュッと抱きしめたままで。

先生と話をしている間もズキズキしているこの痛みが治まるってこと?
俺はそれを口に含み、水を流し込んだ。
錠剤は苦手だけど、小さくてよかった。

薬を飲んでいる時だけだと思ったのに、先生は飲み終わった後もずっと俺を抱きかかえたままだ。

「あの……」

「悪かった。私がちゃんと説明していなかったから理央を危ない目に合わせてしまった」

「――っ!」

先生の口から理央と呼び捨てにされて、思わずドキッとしてしまった。

って、危ない目ってどういう意味?
先生が助けてくれたんだし、危ない目になんてあった覚えがないけど。
意味がわからなくて先生の顔を見つめていると、

「理央、冷蔵庫から桃の絵が描かれた瓶を取り出して飲んだだろう?」

と尋ねてきた。
あー、そう言えば、美味しそうなジュース見つけて飲んだんだっけ。

「はい。確か……甘くて美味しかった気が、しますけど……」

「あれは、お酒だったんだ。先日海外に住む友人から送られてきたからいつか飲むだろうと冷やしていたのを忘れてたんだ。私の確認不足だ。申し訳ない」

頭を下げる先生を見ながら、俺は驚いていた。
こんなに偉い先生が謝るだなんて信じられなかったから。

施設長はもちろん、日華園の先生たちだって俺たちに謝ってくれたことなんて一度もなかった。
たとえどんな理不尽な叱られ方をした時も、先生たちが間違っていたとしてもそれが正しいと受け入れるしかなかったのに。

「理央? どこか気分が悪いか? トイレに行くか?」

「あ――ちがっ、だ、大丈夫です。ただ、びっくりしただけで……」

「ああ、そうだろうな。まさか弁護士の家で酒を呑まされるとは思ってなかっただろう? 本当に悪かった」

「いえ、そう、じゃなくて……先生が俺、なんかに謝るのがびっくりして……」

「えっ?」

「俺、大人の言うことは常に正しいってずっと教えられてきたので……」

そういうと、先生は突然俺をギュッと抱きしめた。

「えっ? せん、せい……? どうしたんですか?」

抱きしめられて夢の中で嗅いでいたあのいい匂いに包まれてドキドキしてしまう。
もしかしてずっと抱きしめてくれていたんだろうか?

「理央、そんな教えをもう守る必要はないよ。先生だろうがなんだろうが悪いことをしてしまった時は謝るのが当然だ。理央も本当はそう思うだろう?」

優しくそう言われて俺は頷いた。
だって、俺だってずっとそう思ってたんだから……。

「理央、私は理央をあの施設に帰すつもりはないし、帰らせたくない。理央さえ良かったら、ここで一緒に暮らさないか?」

「えっ? 先生のところで? そ、そんな……迷惑じゃ?」

「ふふっ。『先生』なんてよそよそしい言葉遣いなんかより、さっきみたいに『りょーや』と呼んでくれた方が嬉しいよ」

「りょ、りょーや? そんな、俺……。そんな呼び方してない――」
「『りょーや。かっこいー。だいすきー』」

先生が持っていたスマホから突然俺の声が聞こえてきた。

「えっ? なに……これ? 俺の声? えっ? なんで?」

「ふふっ。さっきお酒呑んで酔っ払ってた時、理央がそう呼んでくれたんだよ」

「――うそっ!!」

「録音なんかして悪い。仕事柄なんでも録音して証拠に取っておく癖がついてしまって……。
でも、これは理央を恥ずかしがらせようとか困らせようとか思って録音したんじゃないんだ」

「じゃあ、どうして……」

「ふふっ。それは可愛いからに決まってるだろう? 理央からあんな可愛い告白してもらって残しておかないなんて勿体無い」

「そんな……恥ずかしいです……」

「あれは理央の本心だと思ったんだけどな。もしかして、理央は私のことが嫌いなのか?」

「ちが――っ、嫌いだなんてっ! そんなっ!」

寂しげな表情でそう言われて俺は慌ててそれを否定した。
だって、あの時助け出してくれた時から先生のことが頭から離れなかったんだ。
嫌いだなんてあるわけない。

篁さんには肩を抱かれるだけでも全身がゾワゾワして気持ちが悪かったのに、先生にはこうやって抱きしめられても全然嫌だと思わない。
それどころかいい匂いでものすごく落ち着くし。

もしかしたらこれが好きってことなのかな……。
俺は心の中でそう思ってたから、ああやって口から出ちゃったのかな?
実際に俺が自分でそう言ってるわけだし……。

「ふふっ。冗談だよ。理央が私を好きなことはちゃんとわかってるから」

「えっ? どうして……? 俺もまだ、自分でわかってないのに……」

「だって、『大好きな人にはキスをする』そう言ってただろう?」

「なんで、それを……?」

「だから、理央が言ってたんだよ。そう言いながら、私にキスしてくれたんだ」

「――っ!!!」

俺は一気に自分の顔が火照るのがわかった。
酔っ払って、先生のこと呼び捨てにして告白しちゃったばかりか、そんなことまでしちゃってただなんてっ!!

「あれは酔っ払った戯言じゃないよな? そうじゃなきゃ困る」

「先生……俺……」

「私は本気だよ。理央のことが好きなんだ。理央の気持ちを聞かせてくれないか?
酔っ払った状態じゃなく、今の理央の言葉が聞きたい」

優しい笑顔はそのままなのに、目はすっごく真剣だ。
そんな目をされたら、俺も恥ずかしがってる場合じゃないよね。

「あの、俺……先生が、好きです……。多分、初めて見た時から……」

きっと耳まで赤くなってる気がする。
でもそう必死に伝えた瞬間、ギュッと強く抱きしめられた。

「理央っ!! ああ、思いが通じるってこんなに嬉しいことなんだな。私も理央が好きだよ」

「先生……」

「理央、キスしたい。いい?」

「そ、そんなこと……面と向かって言われたら、恥ずかしい……」

「そうか、ならそのまましよう」

「えっ……――んんっ!」

気づいた時には先生の顔が目の前にあって、そのまま俺の唇に重なった。
何度も何度も唇を柔らかく噛まれて身体がゾクゾクして、口を少し開いた瞬間何かが口の中に入ってきた。
それが先生の舌だと気づいてびっくりしたけれど、俺の舌に吸い付いてきたり絡みついてきたりしてなんかすごく気持ち良くなってきた。
なんだか口の中が溶け合って行くようなそんな感覚になって俺は先生に与えられるがままにキスを続けた。
唇が離れる時にはなんとなく寂しいような気分になっているのが不思議だった。
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