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俺しか知らない姿、なのかも……。
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少し加筆修正しています。
* * *
「全部話せてスッキリしたよ」
「わかります。人に話してみるだけで気持ちが楽になりますよね」
「身内の恥だから、誰にも言えないかなって思っていたけど、平松くんがいてくれて良かったよ」
「八尋さん……」
俺なんかでも、少しは八尋さんの役に立ててるってことなのかな。
それならすごく嬉しい。
「このままちょっと眠ってもいいかな?」
「はい。どうぞ。あ、でも寝にくくないですか?」
「いや、ちょうどいいよ。じゃあ少しだけ休ませてもらうね」
そう言うと、八尋さんは電気をほんの少し暗くしてからスーッと眠りに落ちていった。
目の辺りを覆っていた腕も下げられて、八尋さんの顔が正面に見える。
いろんなことが重なったからだろう。
表情に疲れの色が見える。
身内が亡くなっただけでも辛いのに、お葬式や火葬の後にそんないざこざがあったらそりゃあ疲れもするだろう。
しかもいろんな人の未来を左右するような決断を迫られるなんて。
その上、寝ている時にこっそり入ってくるなんて……。
もしかしたらそんなこともあるかも……と思って八尋さんは警戒していたんだから、身体を休めることもできなかったに違いない。
ここに帰ってきてようやく安心して眠りにつけたんだな。
しかも俺の膝の上で。
たまたま俺がここにいたからだとは思うけど、このポジションに居られることが何よりも嬉しい。
ああ、八尋さんって、こんなにまつ毛が長いんだな。
鼻もスーッと高くて美形ってこういう人のことを言うんだろうなって思う。
もちろん社長や、安慶名さん、松川さんも美形なんだけど、やっぱり俺は八尋さんのほうがより美形だと思ってしまう。
それが好きだってことなんだろう。
きっと砂川さんや名嘉村さんも、きっと自分の恋人が一番美形だっていうだろうし。
あっ、俺は恋人じゃないけれど、心の中で思うくらいならいいよね。
起きないようにそっと、八尋さんの髪に触れる。
少し柔らかなパーマがかかっているけれど、これは天パかな。
本当なら俺より背の高い八尋さんの髪に触れるなんて絶対にできないのに、これができるのが嬉しい。
「う、ん……っ」
「ひゃっ!」
俺が髪に触れたせいでくすぐったかったのか、仰向けで寝ていた八尋さんが俺のお腹の方に顔を向けて横向きになってしまった。
余計なことをしてしまったせいで、八尋さんを起こしそうになってしまったばかりか、八尋さんの顔が俺のお腹に当たってドキドキする。
「――っ!!」
しかも、腰に抱きつくように腕を回されて動けなくなってしまう。
満員電車の中でおじさんに抱きつかれた時は、満員だから仕方がないという気持ちと、気持ち悪いという気持ちしかなかったけれど、八尋さんにこうして抱きつかれるのは嬉しさしかない。
それにもしかしたらこれは、八尋さんと付き合いの長い砂川さんたちでさえ知らない八尋さんの姿なんじゃないかな?
そう思うだけでさらに喜びが増す気がする。
疲れ果てて弱っている八尋さんを前にしてそんなことを思うのは申し訳ない気もするけれど、心の中で思うだけならいいよね?
八尋さんに抱きつかれているからか、だんだん身体が熱くなってくる。
そのまま眠くなってしまって、気づけば俺も夢の世界に落ちてしまっていた。
「んっ……」
暖かくていい匂いがする。
これはものすごく安心する匂いだ。
心地よい何かに包まれている感覚に幸せを感じながら目を開けると、
「わっ!!」
目の前に八尋さんが現れた。
知らない間に、俺は八尋さんに抱き込まれてソファーに横たわっていたみたいだ。
「なんで……?」
確かに八尋さんを膝に乗せていたはずなのに……。
どうしてこんなことになっているんだろう?
わけがわからないまま茫然と、寝ている八尋さんを見つめていると、八尋さんの目がゆっくりと開いた。
「ああ、平松くん。君のおかげで久々にぐっすり眠れたよ」
満足そうな八尋さんの表情に、どうしてこんなふうになったのか聞くタイミングを失ってしまった。
まぁいいか。
八尋さんもよく眠れたみたいだし。
そう思いながら、ハッと気づいた。
「そろそろ帰らないと!」
日が落ちてしまったら一人で帰れなくなってしまう。
砂川さんたちに約束したし、外を一人で歩けない。
慌てて窓の外を見れば、
「あっ……」
すっかり日が落ちてしまっている。
「うそ……っ」
「眠っていて暗くなったのに気づかなかったみたいだな。平松くん、悪い……」
「いえ、あの……八尋さん……」
「どうかした?」
「あの、今日……本当にここに泊めてもらってもいいんですか?」
「えっ?」
俺の突然の言葉に八尋さんの動きが一瞬止まってしまった気がした。
* * *
「全部話せてスッキリしたよ」
「わかります。人に話してみるだけで気持ちが楽になりますよね」
「身内の恥だから、誰にも言えないかなって思っていたけど、平松くんがいてくれて良かったよ」
「八尋さん……」
俺なんかでも、少しは八尋さんの役に立ててるってことなのかな。
それならすごく嬉しい。
「このままちょっと眠ってもいいかな?」
「はい。どうぞ。あ、でも寝にくくないですか?」
「いや、ちょうどいいよ。じゃあ少しだけ休ませてもらうね」
そう言うと、八尋さんは電気をほんの少し暗くしてからスーッと眠りに落ちていった。
目の辺りを覆っていた腕も下げられて、八尋さんの顔が正面に見える。
いろんなことが重なったからだろう。
表情に疲れの色が見える。
身内が亡くなっただけでも辛いのに、お葬式や火葬の後にそんないざこざがあったらそりゃあ疲れもするだろう。
しかもいろんな人の未来を左右するような決断を迫られるなんて。
その上、寝ている時にこっそり入ってくるなんて……。
もしかしたらそんなこともあるかも……と思って八尋さんは警戒していたんだから、身体を休めることもできなかったに違いない。
ここに帰ってきてようやく安心して眠りにつけたんだな。
しかも俺の膝の上で。
たまたま俺がここにいたからだとは思うけど、このポジションに居られることが何よりも嬉しい。
ああ、八尋さんって、こんなにまつ毛が長いんだな。
鼻もスーッと高くて美形ってこういう人のことを言うんだろうなって思う。
もちろん社長や、安慶名さん、松川さんも美形なんだけど、やっぱり俺は八尋さんのほうがより美形だと思ってしまう。
それが好きだってことなんだろう。
きっと砂川さんや名嘉村さんも、きっと自分の恋人が一番美形だっていうだろうし。
あっ、俺は恋人じゃないけれど、心の中で思うくらいならいいよね。
起きないようにそっと、八尋さんの髪に触れる。
少し柔らかなパーマがかかっているけれど、これは天パかな。
本当なら俺より背の高い八尋さんの髪に触れるなんて絶対にできないのに、これができるのが嬉しい。
「う、ん……っ」
「ひゃっ!」
俺が髪に触れたせいでくすぐったかったのか、仰向けで寝ていた八尋さんが俺のお腹の方に顔を向けて横向きになってしまった。
余計なことをしてしまったせいで、八尋さんを起こしそうになってしまったばかりか、八尋さんの顔が俺のお腹に当たってドキドキする。
「――っ!!」
しかも、腰に抱きつくように腕を回されて動けなくなってしまう。
満員電車の中でおじさんに抱きつかれた時は、満員だから仕方がないという気持ちと、気持ち悪いという気持ちしかなかったけれど、八尋さんにこうして抱きつかれるのは嬉しさしかない。
それにもしかしたらこれは、八尋さんと付き合いの長い砂川さんたちでさえ知らない八尋さんの姿なんじゃないかな?
そう思うだけでさらに喜びが増す気がする。
疲れ果てて弱っている八尋さんを前にしてそんなことを思うのは申し訳ない気もするけれど、心の中で思うだけならいいよね?
八尋さんに抱きつかれているからか、だんだん身体が熱くなってくる。
そのまま眠くなってしまって、気づけば俺も夢の世界に落ちてしまっていた。
「んっ……」
暖かくていい匂いがする。
これはものすごく安心する匂いだ。
心地よい何かに包まれている感覚に幸せを感じながら目を開けると、
「わっ!!」
目の前に八尋さんが現れた。
知らない間に、俺は八尋さんに抱き込まれてソファーに横たわっていたみたいだ。
「なんで……?」
確かに八尋さんを膝に乗せていたはずなのに……。
どうしてこんなことになっているんだろう?
わけがわからないまま茫然と、寝ている八尋さんを見つめていると、八尋さんの目がゆっくりと開いた。
「ああ、平松くん。君のおかげで久々にぐっすり眠れたよ」
満足そうな八尋さんの表情に、どうしてこんなふうになったのか聞くタイミングを失ってしまった。
まぁいいか。
八尋さんもよく眠れたみたいだし。
そう思いながら、ハッと気づいた。
「そろそろ帰らないと!」
日が落ちてしまったら一人で帰れなくなってしまう。
砂川さんたちに約束したし、外を一人で歩けない。
慌てて窓の外を見れば、
「あっ……」
すっかり日が落ちてしまっている。
「うそ……っ」
「眠っていて暗くなったのに気づかなかったみたいだな。平松くん、悪い……」
「いえ、あの……八尋さん……」
「どうかした?」
「あの、今日……本当にここに泊めてもらってもいいんですか?」
「えっ?」
俺の突然の言葉に八尋さんの動きが一瞬止まってしまった気がした。
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