初めて恋したイケメン社長のお相手は童顔の美少年でした

波木真帆

文字の大きさ
10 / 10
番外編

今からすぐに

しおりを挟む
「蛍、これからすぐに北海道に向かおう」

幸いにもこれから三時間後の札幌行きの飛行機に空きがあった。
札幌で仕事がある時に必ず利用するホテルにも連絡を入れてなんとか今夜のスイートルームの予約だけ取れた。
明日からは彼らと同じ宿泊先に泊まれることになっているから問題ない。

到着は夜になるが、二人で夕食をとれる。
ゆっくりとホテルで休んでから明日、空港か直接音楽ホールで待ち合わせをするのもいい。

スキーをするのがメインだと言っていたから、日程的には到着日に我々と合流して、そのまま演奏会、翌日は一日たっぷりと雪遊びをして、最終日は買い物と美味しいもの巡りというコースになるだろう。

というわけで、最低限必要なものをまとめて私たちは空港に向かった。

日本で彼らと会うことが決まってから、外を出歩いてもいいように蛍のために暖かなコートと冬服を新調しておいたがそれが早速役に立ちそうでよかった。

まさか北海道に飛ぶとは思っていなかったが、こうしてフットワークが軽いのもさすがだ。

「蛍がしてみたいなら、私たちも一緒に雪遊びに参加しようか? スキーやスケートはしたことある?」

空港に向かう車の中で助手席に座る蛍に尋ねたが、彼は小さく首を振った。

「怪我をしそうな遊びはしたことがないんです。突き指でもピアノが弾けなくなるので……だから、スキーやスケートだけでなく、ほとんどの遊びをしたことがないです」

学校に通っていた時から、常に手を守る生活をしていたという。
体育ではマラソンなどの授業は受けていたけれど、球技は必ず見学。
そこまで徹底していたとなると、かなり厳しい学生生活だっただろう。

「料理は?」

私と生活を共にしてからは、私が料理が趣味なこともあって全て作ってきた。
一度は蛍の手料理が食べてみたいと思う気持ちがないわけではないが、無理に作って欲しいわけでもない。

「料理も一人暮らしをするまでしたことはなかったですけど、極力包丁やスライサーを使わないような料理は作りますよ。でも買って食べるほうが圧倒的に多いですね」

「そうか」

「料理もできないなんて、幻滅しましたか?」

「いや、そんなこと思うはずがない。蛍にずっと私の料理を食べてもらえるのは嬉しいよ」

そういうと、蛍はホッとしたように可愛い笑顔を見せてくれた。

「もし、彼らに雪遊びを誘われたら断らなくていいよ。私が絶対に蛍を怪我させないと誓うから、初めての雪遊びを満喫するといい」

「えっ、いいんですか?」

「ああ、せっかくの機会だ。一緒に楽しもう」

蛍がみんなと同じ思い出を作れるように私は精一杯頑張るとしよう。

「やったぁ、雪遊び~!!」

隣で浮かれる蛍が可愛くてたまらない。
ちょうど駐車場に到着した私は、車を止めてすぐに身を乗り出して蛍の小さくて甘い唇にキスをした。

「んっ……」

最初は驚いて身体を震わせていた蛍だったが、唇を啄み舌を滑り込ませると、声が甘くなってくる。
重ねるだけのつもりだったがやはり欲望には勝てない。

蛍との甘いキスを堪能して唇を離した。

「匡、さん……」

「蛍……好きだよ」

「僕も好き……」

蛍の目が私を甘く誘う。
だが、飛行機の時間も迫っている。

「続きは夜に……」

そういうと、蛍は可愛い微笑みを浮かべて頷いた。
ああ、失敗した。
欲望に負けてキスをしてしまったが、ここから大勢の前にこの色気ダダ漏れの蛍を晒すと思うと嫌になる。

「蛍、私から離れないように……」

しっかりと肩を抱いて、私の寄り添わせたまま空港に向かった。
搭乗手続きを済ませ、荷物を預けて早々とラウンジで休憩を取る。

「北海道は天気いいんですか?」

「そうだな。晴れているみたいだよ。こういう日は地面も滑りやすいから気をつけるように」

「匡さんと手を繋いでいたら大丈夫ですね」

あちらでもずっと手を繋いでいてくれるのか。それは嬉しい。

そうして、あっという間に機内に乗り込む時間になった。

私は仕事の都合で飛行機に乗ることも多い。
だが、それを言えば蛍も同じようなものだ。

世界を回ってコンサートをしている蛍は飛行機には乗り慣れている印象だ。

「移動はいつもファーストクラスだった?」

「そうですね。招待を受ける場合はほとんどファーストクラスの席を用意してもらってました。ゆっくり休めるのでありがたかったです。今回はプライベートでの帰国だったのでエコノミーにしようかと思ってたんですけど、ファーストクラスしか空いてなかったのでそれで帰ってきました。でもやっぱり仕事でもないのにファーストクラスに乗るのは贅沢だなって感じちゃいますね」

そう笑って言っているが、蛍がエコノミーに乗るなんて絶対にダメだ。

あんなに隣との距離が近い席、セキュリティも何もあったものじゃない。

これまで何も被害がなくて本当に良かった。
しおりを挟む
感想 18

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(18件)

いぬぞ~
2025.11.21 いぬぞ~
ネタバレ含む
2025.11.27 波木真帆

いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
指遊びではしゃぐ28歳(笑)
確かにいっぱいいそうwww
大智は30でもめちゃくちゃはしゃいでそうですよね。
リュカの巧みなスキー&スノボ滑りかなりかっこいいでしょうね。

蛍がエコノミーで、途中寝ちゃったりしたら危険が増しますね。
伊織は危険よりも体格的に辛そうですね。長い足が飛び出ちゃいそう(笑)

もちろん今の間に蛍用のもこもこ上着準備してそうですね💕

解除
四葩(よひら)
ネタバレ含む
2025.11.27 波木真帆

四葩さま。コメントありがとうございます!
誤変換よくあることですから。私もしょっちゅうやばいことになってます(笑)

さて、一足早く北海道に飛んだ匡と蛍。
急遽でもファーストクラスとスイートルームは欠かせませんwww
やっぱりV.I.Pはすごいですよね。

子どもの時から才能あふれていたのでみんながピアニストになると思っていたんでしょうね。
そのため、手を怪我してしまうことは避けまくってました。
そうそう、手タレの人すごいんですよね。
爪が欠けたり指を怪我しないようにプルタブも開けたりしないんですよね。
スプーンとか使って開けていたのを見た気がします。
それくらい大変なんですよね。

未成年に見えちゃった蛍もちみっこちゃんたちの中にいると大人に見えそうですね。
ふふ🤭匡の驚く顔が楽しみですね。

解除
四葩(よひら)
ネタバレ含む
2025.08.17 波木真帆

四葩さま。コメントありがとうございます!
リアルタイムでやり取りすると楽しくなってきますよね。
スキー&スケートしたいお話から危うく演奏会がなくなりかけましたがそこは旦那様たちの力でちゃんと確保できました💕
演奏会も楽しみだけど、その後のにゃんこ&ママ会がもっと楽しくなりそうですね。
匡はエヴァンとの対面にドッキドキかも(笑)

解除

あなたにおすすめの小説

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。