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番外編
願いを叶えるために……
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『天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます』の日本旅行編
<bonhomme de neige>というお話を受けてのこちらのお話。
合わせて楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side匡>
「えっ……」
ミシェル・ロレーヌにメッセージを送ってしばらく経ってから蛍のスマホが振動を伝えた。
笑顔でメッセージを開いた蛍だったが、その表情が曇っていく。
もしかしたら明日、明後日では都合が悪かったのかもしれない。
それなら無理にとは言わないが、蛍はすでに乗り気になっていたから少し可哀想な気もする。
とはいえ、あちらにも都合があるのだから仕方がないが。
「都合が悪かったのか?」
「あ、いえ。そうではなくて……演奏会自体はすごく乗り気になってくれたんですけど……」
そう言って浮かない表情のまま私にスマホを差し出した。
画面を見ると、長文でのメッセージが送られていた。
しかも送信者はミシェル・ロレーヌではなく、その伴侶のセルジュ・ロレーヌだ。
かなり丁寧な文章で書かれているそのメッセージには、演奏会を計画してくれたことに対するお礼から始まっていたが、明日、急遽北海道に向かうことになったと書かれていた。
「北海道? それはまた急だな……」
あまりにも急なことにさすがに驚いたが読み進めると、その理由がよくわかった。
そもそも今回の旅行は、ロレーヌ総帥が結婚したばかりの伴侶を連れ、日本の友人家族との楽しい時間を過ごすことを目的としているようで、急遽北海道に行くことに決めたのもスキーを楽しみたいという愛しい人たちの要望なのだそうだ。
ロレーヌ総帥にしてみれば、溺愛している可愛い伴侶がスキーに行きたいと言えばすぐに願いを叶えるために動くのも無理はない。
このメッセージは可能ならば他の日程、もしくは私たちにも北海道に来てくれないかという打診だった。
そんな提案をしてくるということは彼らも蛍との演奏会を楽しみにしてくれているということだ。それなら私も蛍と彼らの願いを叶えるまでだ。一ノ宮グループ社長の名にかけて、必ず実現して見せよう。
「匡さん……」
不安げな表情で私を見つめる蛍をすぐにでも安心させてやりたい。
「蛍、心配はいらない。必ず演奏会はできるよ」
「えっ、でも……」
「大丈夫。少しだけ時間をもらえるか?」
蛍にはピアノを弾いて待っていてもらうことにして、私は急いで関係各所に連絡を取った。
彼らが動きやすいようにと関東近郊の音楽ホールのスケジュールを確認していたのだが、実は幸いにも一ノ宮グループの所有する音楽ホールは北海道にもある。しかもメッセージに書かれていた彼らの滞在予定の宿泊所からそんなに離れていない。あの場所が押さえられれば演奏会は問題なくできるだろう。
浬にも声をかけ、確認作業をしてもらうと、彼らが北海道に滞在予定の全日程で音楽ホールを貸し切ることができた。
これで私たちも北海道に飛べば問題ない。
「蛍、大丈夫だ。演奏会はできるよ!」
私は演奏ルームで待ってくれている蛍の元に駆けつけ、そう声をかけた。
「えっ? 本当ですか? でもどうやって……?」
「私たちも北海道に行けばいい。音楽ホールは全ての日程を押さえたから彼らの都合に合わせられるよ」
「そんなことが……っ! すごい! 匡さん、ありがとうございます! なんてお礼を言っていいか……」
「何言ってるんだ。私は蛍の笑顔が見られればそれで満足なんだよ」
蛍の願いを叶えつつ、私は蛍との初めての旅行に胸を高鳴らせていた。
もちろん、蛍がその旨をミシェル・ロレーヌにメッセージで送ったところ、大喜びのメッセージが返ってきたのはいうまでもない。
<bonhomme de neige>というお話を受けてのこちらのお話。
合わせて楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side匡>
「えっ……」
ミシェル・ロレーヌにメッセージを送ってしばらく経ってから蛍のスマホが振動を伝えた。
笑顔でメッセージを開いた蛍だったが、その表情が曇っていく。
もしかしたら明日、明後日では都合が悪かったのかもしれない。
それなら無理にとは言わないが、蛍はすでに乗り気になっていたから少し可哀想な気もする。
とはいえ、あちらにも都合があるのだから仕方がないが。
「都合が悪かったのか?」
「あ、いえ。そうではなくて……演奏会自体はすごく乗り気になってくれたんですけど……」
そう言って浮かない表情のまま私にスマホを差し出した。
画面を見ると、長文でのメッセージが送られていた。
しかも送信者はミシェル・ロレーヌではなく、その伴侶のセルジュ・ロレーヌだ。
かなり丁寧な文章で書かれているそのメッセージには、演奏会を計画してくれたことに対するお礼から始まっていたが、明日、急遽北海道に向かうことになったと書かれていた。
「北海道? それはまた急だな……」
あまりにも急なことにさすがに驚いたが読み進めると、その理由がよくわかった。
そもそも今回の旅行は、ロレーヌ総帥が結婚したばかりの伴侶を連れ、日本の友人家族との楽しい時間を過ごすことを目的としているようで、急遽北海道に行くことに決めたのもスキーを楽しみたいという愛しい人たちの要望なのだそうだ。
ロレーヌ総帥にしてみれば、溺愛している可愛い伴侶がスキーに行きたいと言えばすぐに願いを叶えるために動くのも無理はない。
このメッセージは可能ならば他の日程、もしくは私たちにも北海道に来てくれないかという打診だった。
そんな提案をしてくるということは彼らも蛍との演奏会を楽しみにしてくれているということだ。それなら私も蛍と彼らの願いを叶えるまでだ。一ノ宮グループ社長の名にかけて、必ず実現して見せよう。
「匡さん……」
不安げな表情で私を見つめる蛍をすぐにでも安心させてやりたい。
「蛍、心配はいらない。必ず演奏会はできるよ」
「えっ、でも……」
「大丈夫。少しだけ時間をもらえるか?」
蛍にはピアノを弾いて待っていてもらうことにして、私は急いで関係各所に連絡を取った。
彼らが動きやすいようにと関東近郊の音楽ホールのスケジュールを確認していたのだが、実は幸いにも一ノ宮グループの所有する音楽ホールは北海道にもある。しかもメッセージに書かれていた彼らの滞在予定の宿泊所からそんなに離れていない。あの場所が押さえられれば演奏会は問題なくできるだろう。
浬にも声をかけ、確認作業をしてもらうと、彼らが北海道に滞在予定の全日程で音楽ホールを貸し切ることができた。
これで私たちも北海道に飛べば問題ない。
「蛍、大丈夫だ。演奏会はできるよ!」
私は演奏ルームで待ってくれている蛍の元に駆けつけ、そう声をかけた。
「えっ? 本当ですか? でもどうやって……?」
「私たちも北海道に行けばいい。音楽ホールは全ての日程を押さえたから彼らの都合に合わせられるよ」
「そんなことが……っ! すごい! 匡さん、ありがとうございます! なんてお礼を言っていいか……」
「何言ってるんだ。私は蛍の笑顔が見られればそれで満足なんだよ」
蛍の願いを叶えつつ、私は蛍との初めての旅行に胸を高鳴らせていた。
もちろん、蛍がその旨をミシェル・ロレーヌにメッセージで送ったところ、大喜びのメッセージが返ってきたのはいうまでもない。
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