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笑顔が眩しい
「んっ? どうかした?」
「あ、いえ……」
「とにかく助かったよ。ありがとう」
急に言葉が少なくなった彼にお礼を言って立ち去ろうと思ったけれど、お礼だけで終わらすのもなんとなく申し訳ない気がする。
みんな素知らぬふりする中でわざわざ助けてくれたんだしな。
それに、借りを作るのも嫌だし、試合時間にはまだ少し早い。
「君、この後何か予定ある?」
「いえ、この辺を散策してただけなので」
「なら、助けてくれたお礼に食事でも奢るよ」
「あ、あの、失礼なことを言ったお詫びに私に奢らせてくださいっ!」
「えっ? でも、それじゃあお礼に――」
「いいんです! 早く行きましょう!」
「わっ!」
彼にさっと手を取られ、思わず声が出てしまったのは日本では外で手を繋ぐなんてこと考えられなかったからだ。
「どうしたんですか?」
「いや、あの、手……」
「ふふっ。そんなことを気にしてるんですか? 私たちが手を繋いでいるからって気にする人なんて誰もいませんよ。それよりも逸れて、また絡まれでもしたら大変ですよ。さぁ、行きましょう。この辺のお店でおすすめはありますか?」
「いや、特には……」
「なら、私の知っている店に行きましょう。美味しいハンバーガーを出してくれる店があるんですよ」
彼のその溌剌とした様子に思わず笑みが溢れる。
こんなふうに誰かに誘われて食事をするなんて、いつぶりだろう。
あんなふうに俺のことを捨てた宏樹は、付き合っていた頃は俺が誰かと食事に行くのも嫌がっていた。
それを愛されていると勘違いしちゃってたんだな。
あいつはただ自分の言う通りなる存在が欲しいだけなんだって、もっと早く気づければよかったのに。
「どうかしました?」
「えっ? あ、いやなんでもない」
バカだな。
また思い出してる。
全部忘れようとロサンゼルスまで来たっていうのに。
「そうですか? あ、そうだ。私、田辺透也と言います。お名前、伺ってもいいですか?」
「ああ。私は杉山大智。君はいくつ?」
「25歳です。まさか年上だとは思わなかったので失礼を……」
「もうそれはいいよ。それで、旅行にきているの? それともここに住んでるとか?」
「出張で三週間くらい前に来て、あと二ヶ月くらいいる予定です」
入社3年で3ヶ月もの海外出張か……。
英語にも長けていたし、さっきの男たちへの堂々とした態度も素晴らしかったな。
「そうか、若いのに海外出張を任されるなんて仕事ができるんだろうな」
「いえ、そんなことは……。あの、杉山さんはこちらに住んでいらっしゃるんですか?」
「いや、私は海外赴任でこっちに来たばかりで数年はこっちにいる予定かな」
「ええっ! それって、すごいことなんじゃないですか?」
「まぁ、一応支社長として赴任したからね。と言ってもまだ来たばかりで右往左往してるけどね」
「会社はこの辺なんですか?」
「いや、サンタモニカの辺りかな」
「えっ? まさか、そこから一人で来たんですか?」
なぜか彼の顔が一気に青褪めていく。
不思議に思いながらも俺は平然と話を続けた。
「ああ、もちろん。電車で、駅からはスタジアムまでシャトルバスが出ていたし、迷うこともないよ」
「電車とバスって……危ない目にはあいませんでしたか?」
「危ない目って、私はもう30だって言ったろう? 大学時代にもアメリカに住んでいたことはあるし、慣れてるから問題ないよ」
「えっ? その時も一人で電車やバスに乗ってたんですか?」
「いや、それはないけど……」
そういえば、あの時はいつも周りに友達がいてくれたな。
一緒にいた方が楽でいいからって。
「はぁーっ。本当危ないな。この人」
「何か言ったか?」
「いや、あの……今日のこれからの予定は何かあるんですか?」
「ああ。ここまで来たのは、ほら、このチケットを貰ってね。それで来たんだ」
俺がバッグからチケットを取って見せると、
「えっ? すごいチケットじゃないですかっ! こんなチケットをくれる人がいるんですか?」
目を輝かせながら驚いていた。
「そうだろう? 誰かと一緒にどうぞって言われたんだけど、誘う相手もいなくて……って、ああ、もしよかったら、田辺くん。一緒にどう?」
「いいんですか?」
「ああ。このまま無駄にするところだったし。あっ、予定があるなら全然――」
「予定なんてないですっ!! ぜひ、お供させていただきます」
「そ、そう? なら、よかった」
突然一緒に野球観戦する話になって驚いたが、貰い物のチケットが無駄にならずに済んでよかった。
「お礼に帰りは家までお送りしますよ」
「えっ? 送るって……」
「私、ここまで車で来たんですよ」
「いや、でも、そんなの迷惑じゃ……」
「迷惑なら最初から声かけたりしませんよ。夜になると流石に危険な場所も増えますし、私も社宅がサンタモニカにあるんです。同じ方向に帰るんだから乗って行った方が楽でしょう?」
確かに夜に出歩くのは流石に怖いか……。
ジャックに連絡すればキースを迎えに寄越してくれるかもしれないけれど、それは申し訳ないし……。
「じゃあ、お願いしようか」
「はい。今日は野球観戦、思いっきり楽しみましょうね」
「ーーっ!!」
にこやかな笑顔を浮かべる田辺くんに一瞬ドキッとしてしまったことに、俺は驚きを隠せなかった。
「あ、いえ……」
「とにかく助かったよ。ありがとう」
急に言葉が少なくなった彼にお礼を言って立ち去ろうと思ったけれど、お礼だけで終わらすのもなんとなく申し訳ない気がする。
みんな素知らぬふりする中でわざわざ助けてくれたんだしな。
それに、借りを作るのも嫌だし、試合時間にはまだ少し早い。
「君、この後何か予定ある?」
「いえ、この辺を散策してただけなので」
「なら、助けてくれたお礼に食事でも奢るよ」
「あ、あの、失礼なことを言ったお詫びに私に奢らせてくださいっ!」
「えっ? でも、それじゃあお礼に――」
「いいんです! 早く行きましょう!」
「わっ!」
彼にさっと手を取られ、思わず声が出てしまったのは日本では外で手を繋ぐなんてこと考えられなかったからだ。
「どうしたんですか?」
「いや、あの、手……」
「ふふっ。そんなことを気にしてるんですか? 私たちが手を繋いでいるからって気にする人なんて誰もいませんよ。それよりも逸れて、また絡まれでもしたら大変ですよ。さぁ、行きましょう。この辺のお店でおすすめはありますか?」
「いや、特には……」
「なら、私の知っている店に行きましょう。美味しいハンバーガーを出してくれる店があるんですよ」
彼のその溌剌とした様子に思わず笑みが溢れる。
こんなふうに誰かに誘われて食事をするなんて、いつぶりだろう。
あんなふうに俺のことを捨てた宏樹は、付き合っていた頃は俺が誰かと食事に行くのも嫌がっていた。
それを愛されていると勘違いしちゃってたんだな。
あいつはただ自分の言う通りなる存在が欲しいだけなんだって、もっと早く気づければよかったのに。
「どうかしました?」
「えっ? あ、いやなんでもない」
バカだな。
また思い出してる。
全部忘れようとロサンゼルスまで来たっていうのに。
「そうですか? あ、そうだ。私、田辺透也と言います。お名前、伺ってもいいですか?」
「ああ。私は杉山大智。君はいくつ?」
「25歳です。まさか年上だとは思わなかったので失礼を……」
「もうそれはいいよ。それで、旅行にきているの? それともここに住んでるとか?」
「出張で三週間くらい前に来て、あと二ヶ月くらいいる予定です」
入社3年で3ヶ月もの海外出張か……。
英語にも長けていたし、さっきの男たちへの堂々とした態度も素晴らしかったな。
「そうか、若いのに海外出張を任されるなんて仕事ができるんだろうな」
「いえ、そんなことは……。あの、杉山さんはこちらに住んでいらっしゃるんですか?」
「いや、私は海外赴任でこっちに来たばかりで数年はこっちにいる予定かな」
「ええっ! それって、すごいことなんじゃないですか?」
「まぁ、一応支社長として赴任したからね。と言ってもまだ来たばかりで右往左往してるけどね」
「会社はこの辺なんですか?」
「いや、サンタモニカの辺りかな」
「えっ? まさか、そこから一人で来たんですか?」
なぜか彼の顔が一気に青褪めていく。
不思議に思いながらも俺は平然と話を続けた。
「ああ、もちろん。電車で、駅からはスタジアムまでシャトルバスが出ていたし、迷うこともないよ」
「電車とバスって……危ない目にはあいませんでしたか?」
「危ない目って、私はもう30だって言ったろう? 大学時代にもアメリカに住んでいたことはあるし、慣れてるから問題ないよ」
「えっ? その時も一人で電車やバスに乗ってたんですか?」
「いや、それはないけど……」
そういえば、あの時はいつも周りに友達がいてくれたな。
一緒にいた方が楽でいいからって。
「はぁーっ。本当危ないな。この人」
「何か言ったか?」
「いや、あの……今日のこれからの予定は何かあるんですか?」
「ああ。ここまで来たのは、ほら、このチケットを貰ってね。それで来たんだ」
俺がバッグからチケットを取って見せると、
「えっ? すごいチケットじゃないですかっ! こんなチケットをくれる人がいるんですか?」
目を輝かせながら驚いていた。
「そうだろう? 誰かと一緒にどうぞって言われたんだけど、誘う相手もいなくて……って、ああ、もしよかったら、田辺くん。一緒にどう?」
「いいんですか?」
「ああ。このまま無駄にするところだったし。あっ、予定があるなら全然――」
「予定なんてないですっ!! ぜひ、お供させていただきます」
「そ、そう? なら、よかった」
突然一緒に野球観戦する話になって驚いたが、貰い物のチケットが無駄にならずに済んでよかった。
「お礼に帰りは家までお送りしますよ」
「えっ? 送るって……」
「私、ここまで車で来たんですよ」
「いや、でも、そんなの迷惑じゃ……」
「迷惑なら最初から声かけたりしませんよ。夜になると流石に危険な場所も増えますし、私も社宅がサンタモニカにあるんです。同じ方向に帰るんだから乗って行った方が楽でしょう?」
確かに夜に出歩くのは流石に怖いか……。
ジャックに連絡すればキースを迎えに寄越してくれるかもしれないけれど、それは申し訳ないし……。
「じゃあ、お願いしようか」
「はい。今日は野球観戦、思いっきり楽しみましょうね」
「ーーっ!!」
にこやかな笑顔を浮かべる田辺くんに一瞬ドキッとしてしまったことに、俺は驚きを隠せなかった。
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