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不思議な感覚
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「えっ? 現金使えないのか?」
意気揚々とお金を払おうと思ったら、ここはどうやらソラスフーズのアプリから電子マネーで払うシステムらしい。
その分、価格を下げているのがウリなんだとか。
流石にレジでアプリを入れてチャージして……だと時間がかかりすぎる。
「悪い……じゃあ、後でまとめて現金で渡すよ」
そういうと、透也くんはニコッと笑って、手慣れたようにレジ台に電子マネーのバーコードをかざして支払いを終えていた。
大きな袋3個分にもなってしまった食材たち。
俺一人なら、袋に詰めるだけでもかなりの時間がかなりそうだ。
その点透也くんは本当に手慣れている。
さすがだな。
野菜もたっぷり買ったし、肉も塊でいくつか買っていたから、かなり重量感がありそうだ。
それを透也くんは軽々と持っているけれど、流石に3個もの大袋を透也くんだけに持たせるわけにはいかない。
「私も持とう」
「じゃあ、こっちお願いします」
そう言って渡されたものは、びっくりするほど軽い。
袋を開いてみれば、中には俺が選んだお菓子がメインに入っていた。
重量感のあるものといえば、桃くらいか。
それでも軽すぎる。
「そっちの重い物を持つよ」
「いえ、両手に同じくらいの重さを持った方がバランスが良くて歩きやすいんですよ。それに大智さんの持っている袋、お菓子は割れやすいし、桃も潰れやすいのでそれくらいがちょうどいい量なんですよ。これ以上入れると、割れたり潰れたりしてしまいますから」
スーパーに慣れている透也くんにそうまで言われると、それ以上反論もできなくて、俺は言われた通りお菓子と桃が入った軽い袋を持ってスーパーを出た。
「重くなったら交換するから言ってくれ」
「ふふっ。わかりました。あっ、いいこと思いつきました」
「いいこと?」
「はい。大智さん、ここ持ってください」
そう言って透也くんは両手で持っていた荷物を片手で持ち直すと、俺の空いている方の手を取って自分の腕に掴ませた。
「えっ? なんで?」
「こっちの荷物の方が少し軽かったので大智さんが掴んでくれたらちょうど良くなりました。これですごく歩きやすいですよ。大智さんのおかげですね。じゃあ、帰りましょうか」
俺が戸惑っている間に、俺は透也くんと腕を組んで元来た道を戻ることになってしまった。
行くときは軽く手を繋いでいたけれど、今はさっきよりも余計にくっついちゃってる。
密着度がかなり増した気がするけれど、透也くんは何も気にしていないどころか、
「大智さんのおかげで歩きやすいですね」
と何度も言ってくれる。
そう言われると、本当に歩きやすさのためだけに腕を組んでいるという気になってくる。
それどころか、気にする方がおかしいんだと思ってしまう。
『これはたくさん買われましたね』
社宅に着いてジャックに何か言われるかと思ったけれど、ジャックは荷物の多さには驚いても、俺が透也くんと腕を組んでいることには何も言わない。
なんだ。そうか、やっぱり気にならないものなんだな。
俺も透也くんと腕を組んで歩いた時、自分一人で歩くよりもなんとなく歩きやすかった気がした。
さりげなく歩道側に行かせてくれていたからかもしれないけれど、それでもすごく歩きやすかった。
誰もおかしいと思わないのなら、この歩き方で行こうかな。
そう思ってしまうくらいには透也くんと腕を組んで歩くのは楽しかった。
「明日は仕事ですし、とりあえず食材はうちの冷蔵庫に入れておきましょうか。夕食も朝食もうちで召し上がるでしょう?」
「ああ、そうだな。うちに置いておいて腐らせても怖いし」
「ふふっ。そんなにすぐには腐らないから大丈夫ですよ。桃も冷やしておいて今夜のデザートにしましょう」
「そうだ、桃を買ったんだったな」
久しぶりに家で桃が食べられるのか。
本当に嬉しいな。
透也くんの部屋に入りながら、
「よかったら、剥き方も教えてくれないか? 自分で剥けるようになったら、好きなだけ買えるようになるし」
というと、透也くんはにっこりと笑いながら、俺の耳元に顔を近づけた。
「ふふっ。本当にお好きなんですね。いいですよ、私が手取り足取り剥き方を教えてあげます」
「――っ!!」
耳元で優しく声をかけられた瞬間、ゾクゾクと何かが身体中を駆け抜けていった。
今の、なんだ?
感じたことのない感覚に茫然としていると、
「大智さん?」
と声をかけられた。
ハッと我に返って透也くんを見ると、
「外を歩いて疲れたでしょうから、手を洗ってお茶にしましょう」
と笑顔を見せてくれた。
さっきのは一体なんだったんだろうな?
不思議に思いながらも手を洗い、座り心地の良いソファーに腰を下ろした。
「コーヒーにしますか? 紅茶もありますよ。あっ、アイスもホットもできますよ」
喫茶店さながらにそう言われて思わず笑ってしまった。
「ふふっ。じゃあ、アイスコーヒーをもらおうかな。あっ、シロップはないかな?」
「大丈夫ですよ、さっきスーパーで買っておいたんです」
「そんなの買ってくれていたのか? いつの間に?」
「お菓子が好きだって仰ってましたから、もしかしたらシロップも使うかもと思ったんです。大智さんがポテチかチーズクラッカーかで悩んでいた時にこっそり忍ばせておきました」
いたずらっ子のようにそう言ってくれる透也くんに思わずときめいている自分がいた。
意気揚々とお金を払おうと思ったら、ここはどうやらソラスフーズのアプリから電子マネーで払うシステムらしい。
その分、価格を下げているのがウリなんだとか。
流石にレジでアプリを入れてチャージして……だと時間がかかりすぎる。
「悪い……じゃあ、後でまとめて現金で渡すよ」
そういうと、透也くんはニコッと笑って、手慣れたようにレジ台に電子マネーのバーコードをかざして支払いを終えていた。
大きな袋3個分にもなってしまった食材たち。
俺一人なら、袋に詰めるだけでもかなりの時間がかなりそうだ。
その点透也くんは本当に手慣れている。
さすがだな。
野菜もたっぷり買ったし、肉も塊でいくつか買っていたから、かなり重量感がありそうだ。
それを透也くんは軽々と持っているけれど、流石に3個もの大袋を透也くんだけに持たせるわけにはいかない。
「私も持とう」
「じゃあ、こっちお願いします」
そう言って渡されたものは、びっくりするほど軽い。
袋を開いてみれば、中には俺が選んだお菓子がメインに入っていた。
重量感のあるものといえば、桃くらいか。
それでも軽すぎる。
「そっちの重い物を持つよ」
「いえ、両手に同じくらいの重さを持った方がバランスが良くて歩きやすいんですよ。それに大智さんの持っている袋、お菓子は割れやすいし、桃も潰れやすいのでそれくらいがちょうどいい量なんですよ。これ以上入れると、割れたり潰れたりしてしまいますから」
スーパーに慣れている透也くんにそうまで言われると、それ以上反論もできなくて、俺は言われた通りお菓子と桃が入った軽い袋を持ってスーパーを出た。
「重くなったら交換するから言ってくれ」
「ふふっ。わかりました。あっ、いいこと思いつきました」
「いいこと?」
「はい。大智さん、ここ持ってください」
そう言って透也くんは両手で持っていた荷物を片手で持ち直すと、俺の空いている方の手を取って自分の腕に掴ませた。
「えっ? なんで?」
「こっちの荷物の方が少し軽かったので大智さんが掴んでくれたらちょうど良くなりました。これですごく歩きやすいですよ。大智さんのおかげですね。じゃあ、帰りましょうか」
俺が戸惑っている間に、俺は透也くんと腕を組んで元来た道を戻ることになってしまった。
行くときは軽く手を繋いでいたけれど、今はさっきよりも余計にくっついちゃってる。
密着度がかなり増した気がするけれど、透也くんは何も気にしていないどころか、
「大智さんのおかげで歩きやすいですね」
と何度も言ってくれる。
そう言われると、本当に歩きやすさのためだけに腕を組んでいるという気になってくる。
それどころか、気にする方がおかしいんだと思ってしまう。
『これはたくさん買われましたね』
社宅に着いてジャックに何か言われるかと思ったけれど、ジャックは荷物の多さには驚いても、俺が透也くんと腕を組んでいることには何も言わない。
なんだ。そうか、やっぱり気にならないものなんだな。
俺も透也くんと腕を組んで歩いた時、自分一人で歩くよりもなんとなく歩きやすかった気がした。
さりげなく歩道側に行かせてくれていたからかもしれないけれど、それでもすごく歩きやすかった。
誰もおかしいと思わないのなら、この歩き方で行こうかな。
そう思ってしまうくらいには透也くんと腕を組んで歩くのは楽しかった。
「明日は仕事ですし、とりあえず食材はうちの冷蔵庫に入れておきましょうか。夕食も朝食もうちで召し上がるでしょう?」
「ああ、そうだな。うちに置いておいて腐らせても怖いし」
「ふふっ。そんなにすぐには腐らないから大丈夫ですよ。桃も冷やしておいて今夜のデザートにしましょう」
「そうだ、桃を買ったんだったな」
久しぶりに家で桃が食べられるのか。
本当に嬉しいな。
透也くんの部屋に入りながら、
「よかったら、剥き方も教えてくれないか? 自分で剥けるようになったら、好きなだけ買えるようになるし」
というと、透也くんはにっこりと笑いながら、俺の耳元に顔を近づけた。
「ふふっ。本当にお好きなんですね。いいですよ、私が手取り足取り剥き方を教えてあげます」
「――っ!!」
耳元で優しく声をかけられた瞬間、ゾクゾクと何かが身体中を駆け抜けていった。
今の、なんだ?
感じたことのない感覚に茫然としていると、
「大智さん?」
と声をかけられた。
ハッと我に返って透也くんを見ると、
「外を歩いて疲れたでしょうから、手を洗ってお茶にしましょう」
と笑顔を見せてくれた。
さっきのは一体なんだったんだろうな?
不思議に思いながらも手を洗い、座り心地の良いソファーに腰を下ろした。
「コーヒーにしますか? 紅茶もありますよ。あっ、アイスもホットもできますよ」
喫茶店さながらにそう言われて思わず笑ってしまった。
「ふふっ。じゃあ、アイスコーヒーをもらおうかな。あっ、シロップはないかな?」
「大丈夫ですよ、さっきスーパーで買っておいたんです」
「そんなの買ってくれていたのか? いつの間に?」
「お菓子が好きだって仰ってましたから、もしかしたらシロップも使うかもと思ったんです。大智さんがポテチかチーズクラッカーかで悩んでいた時にこっそり忍ばせておきました」
いたずらっ子のようにそう言ってくれる透也くんに思わずときめいている自分がいた。
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