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スーパーが楽しすぎる
『どちらにお出かけですか?』
ロビーにいたジャックに声をかけられた。
『スーパーに買い物に行ってきます』
『今日はソラスフーズがおすすめですよ』
『ああ、そうか。ありがとう』
透也くんはにこやかにお礼を言い、東に向かって歩き始めた。
「さっきジャックが言っていたソラスフーズに行くのか?」
「ええ。今日は食材が豊富に揃う日なので、買いだめをするにはもってこいなんですよ」
「なるほど。そんな日があるんだな。知らなかった……と言うか、社宅のこっち側に来たのも初めてだよ」
いつも会社帰りにキースが寄ってくれる小さなスーパーは値段は少々張るものの、日本で見ていたような見慣れたものが置いてあった。
だからキースが連れて行ってくれたのかもしれない。
「ふふっ。そうなんですね。こっちはスーパーとか、ドラッグストアとか生活に必要なものが揃っているエリアですよ」
説明を受けながら着いたスーパーは社宅から徒歩で5分ほどの場所にあり、広々とした駐車場を持つ綺麗なスーパーだった。
会社とは逆方向だから全然知らなかったな。
透也くんと来なければ多分、来ることはなかっただろう。
「あっちが入り口ですよ」
大きなカートを取り、中に入るとその広さに圧倒される。
「うわぁっ、広いなっ。それに種類がすごいっ!!」
いつも見る果物の10倍くらい種類がありそうだ。
しかも果物もカットしたやつじゃなく原型のまま置いてある。
「あっ、桃だ!」
「大智さん、桃……好きなんですか?」
「ああ、昔から桃には目がなくて。でも、一人暮らししてからは全然食べてないな」
「えっ? どうしてですか?」
「皮をどうやって剥いたらいいかわからないんだ」
「ああ、そうなんですね。じゃあ、買っていきましょう。私が剥きますよ」
「えーっ、本当か? やったっ!!」
「ふふっ」
「――っ!!」
もう30だというのに年甲斐もなくはしゃいでしまって恥ずかしい。
けれど、透也くんはなにも気にしていない様子で、
「野菜も買っていきましょう」
と声をかけてくれた。
見たことのある野菜も、見慣れない野菜もたくさんある中で、透也君は真剣な表情で野菜をチェックし、次々にカートに入れていく。
どれをどういう基準で選んでいるのかもわからない。
だけど、きっと透也くんが選んだものなら大丈夫だと思えた。
「大智さんは和食、洋食、中華、イタリアン、どれが好きですか?」
「うーん。そうだな。どれもよく食べるけど、やっぱり和食が一番好きかな。でもアメリカだとなかなか食材とか調味料とかも探すのは難しいだろう?」
「ああ、大丈夫ですよ。ここは本当に品揃えがいいので、あっ、実際に見てみますか?」
そう言って連れて行かれたのはスーパーのある一角にあるコーナー。
「あっ、これ日本のメーカーの醤油だ。味噌もある!」
「ここは割と揃ってるんですよ。どうしても見つからないものだけ日本から送ってもらってるんです。干物もアメリカで探せばあるんですけど、今日の干物は昔から贔屓にしているところから取り寄せたんですよ」
「ああ、あの干物はすごくおいしかった。こだわりのところからのものだったんだな」
「ふふっ。大智さんが気に入ってくださって嬉しいです。定期的に送ってもらう予定にしているので、たくさん食べてくださいね」
「ああ、ありがとう」
まさかアメリカに来てからの方が、食生活が充実するとは思ってもみなかったな。
そこのコーナーでいくつか商品を選び、今度は肉コーナーに向かった。
さすがアメリカだけあって、大きな肉が多い。
「薄切り肉とかないんだな」
「こっちでは肉を薄く切って作る料理がないそうなんですよ」
「へぇ、じゃあすき焼きとかしたいときはどうするんだ?」
「大丈夫です。うちにミートスライサーがありますから。それで塊肉を薄切りにできますよ」
「そんなのもあるのか? すごいな」
「ふふっ。じゃあ、今夜はすき焼きにしましょうか? ここは生卵も置いてるので家ですき焼きを楽しめますよ」
「家ですき焼きができるなんて最高だな!!」
俺が賛成すると、すぐに材料を揃えてくれた。
さすがに材料が多すぎるんじゃないかと思ったけれど、同じ食材で鍋やホイル焼きも作れると言うのだから、本当にすごすぎる。
社会人になってから、すき焼きは外で食べるものだとばかり思っていたな……。
まさかこれをアメリカで食べられるなんて……千鶴が聞いたら、驚くなんてものじゃないだろうな。
何人分くらいあるんだろうと思うほど大きな肉の塊をいくつかカートに乗せ、店内を歩いていると甘いチョコレートの匂いが漂ってきた。
「あっ、お菓子がある!」
「大智さん、お菓子好きなんですか?」
「恥ずかしいんだが、実はそうなんだ。でも、仕事帰りにスーツでなかなかお菓子を買いづらくて……」
「そんなこと気にしてたんですか? ふふっ。大智さんって可愛いですね。じゃあ、いくつか買っていきましょう」
可愛いって……。
そんなこと言われたの初めてだ。
「こっちはアメリカの、こっちには日本のお菓子もありますよ」
「やっぱり日本の方が馴染みがあるな。うーん、いっぱいあって悩むなぁ……チョコクッキーは決定だけど、こっちのポテチもいいし、チーズクラッカーも捨てがたい」
「ふふっ。全部買いましょう」
「えっ? でも……さすがに太るんじゃないか?」
30を超えるとさすがにお菓子の食べ過ぎは気になる。
「一緒に食べれば大丈夫ですよ。それに一緒にジムに通うでしょう?」
「――っ、ああっ! そうだったな。じゃあ、いいか」
「ふふっ。いいですよ」
悩みまくっていたお菓子を大人買いして、カートに入れる。
スーパーがこんなに楽しいなんて知らなかったな。
ロビーにいたジャックに声をかけられた。
『スーパーに買い物に行ってきます』
『今日はソラスフーズがおすすめですよ』
『ああ、そうか。ありがとう』
透也くんはにこやかにお礼を言い、東に向かって歩き始めた。
「さっきジャックが言っていたソラスフーズに行くのか?」
「ええ。今日は食材が豊富に揃う日なので、買いだめをするにはもってこいなんですよ」
「なるほど。そんな日があるんだな。知らなかった……と言うか、社宅のこっち側に来たのも初めてだよ」
いつも会社帰りにキースが寄ってくれる小さなスーパーは値段は少々張るものの、日本で見ていたような見慣れたものが置いてあった。
だからキースが連れて行ってくれたのかもしれない。
「ふふっ。そうなんですね。こっちはスーパーとか、ドラッグストアとか生活に必要なものが揃っているエリアですよ」
説明を受けながら着いたスーパーは社宅から徒歩で5分ほどの場所にあり、広々とした駐車場を持つ綺麗なスーパーだった。
会社とは逆方向だから全然知らなかったな。
透也くんと来なければ多分、来ることはなかっただろう。
「あっちが入り口ですよ」
大きなカートを取り、中に入るとその広さに圧倒される。
「うわぁっ、広いなっ。それに種類がすごいっ!!」
いつも見る果物の10倍くらい種類がありそうだ。
しかも果物もカットしたやつじゃなく原型のまま置いてある。
「あっ、桃だ!」
「大智さん、桃……好きなんですか?」
「ああ、昔から桃には目がなくて。でも、一人暮らししてからは全然食べてないな」
「えっ? どうしてですか?」
「皮をどうやって剥いたらいいかわからないんだ」
「ああ、そうなんですね。じゃあ、買っていきましょう。私が剥きますよ」
「えーっ、本当か? やったっ!!」
「ふふっ」
「――っ!!」
もう30だというのに年甲斐もなくはしゃいでしまって恥ずかしい。
けれど、透也くんはなにも気にしていない様子で、
「野菜も買っていきましょう」
と声をかけてくれた。
見たことのある野菜も、見慣れない野菜もたくさんある中で、透也君は真剣な表情で野菜をチェックし、次々にカートに入れていく。
どれをどういう基準で選んでいるのかもわからない。
だけど、きっと透也くんが選んだものなら大丈夫だと思えた。
「大智さんは和食、洋食、中華、イタリアン、どれが好きですか?」
「うーん。そうだな。どれもよく食べるけど、やっぱり和食が一番好きかな。でもアメリカだとなかなか食材とか調味料とかも探すのは難しいだろう?」
「ああ、大丈夫ですよ。ここは本当に品揃えがいいので、あっ、実際に見てみますか?」
そう言って連れて行かれたのはスーパーのある一角にあるコーナー。
「あっ、これ日本のメーカーの醤油だ。味噌もある!」
「ここは割と揃ってるんですよ。どうしても見つからないものだけ日本から送ってもらってるんです。干物もアメリカで探せばあるんですけど、今日の干物は昔から贔屓にしているところから取り寄せたんですよ」
「ああ、あの干物はすごくおいしかった。こだわりのところからのものだったんだな」
「ふふっ。大智さんが気に入ってくださって嬉しいです。定期的に送ってもらう予定にしているので、たくさん食べてくださいね」
「ああ、ありがとう」
まさかアメリカに来てからの方が、食生活が充実するとは思ってもみなかったな。
そこのコーナーでいくつか商品を選び、今度は肉コーナーに向かった。
さすがアメリカだけあって、大きな肉が多い。
「薄切り肉とかないんだな」
「こっちでは肉を薄く切って作る料理がないそうなんですよ」
「へぇ、じゃあすき焼きとかしたいときはどうするんだ?」
「大丈夫です。うちにミートスライサーがありますから。それで塊肉を薄切りにできますよ」
「そんなのもあるのか? すごいな」
「ふふっ。じゃあ、今夜はすき焼きにしましょうか? ここは生卵も置いてるので家ですき焼きを楽しめますよ」
「家ですき焼きができるなんて最高だな!!」
俺が賛成すると、すぐに材料を揃えてくれた。
さすがに材料が多すぎるんじゃないかと思ったけれど、同じ食材で鍋やホイル焼きも作れると言うのだから、本当にすごすぎる。
社会人になってから、すき焼きは外で食べるものだとばかり思っていたな……。
まさかこれをアメリカで食べられるなんて……千鶴が聞いたら、驚くなんてものじゃないだろうな。
何人分くらいあるんだろうと思うほど大きな肉の塊をいくつかカートに乗せ、店内を歩いていると甘いチョコレートの匂いが漂ってきた。
「あっ、お菓子がある!」
「大智さん、お菓子好きなんですか?」
「恥ずかしいんだが、実はそうなんだ。でも、仕事帰りにスーツでなかなかお菓子を買いづらくて……」
「そんなこと気にしてたんですか? ふふっ。大智さんって可愛いですね。じゃあ、いくつか買っていきましょう」
可愛いって……。
そんなこと言われたの初めてだ。
「こっちはアメリカの、こっちには日本のお菓子もありますよ」
「やっぱり日本の方が馴染みがあるな。うーん、いっぱいあって悩むなぁ……チョコクッキーは決定だけど、こっちのポテチもいいし、チーズクラッカーも捨てがたい」
「ふふっ。全部買いましょう」
「えっ? でも……さすがに太るんじゃないか?」
30を超えるとさすがにお菓子の食べ過ぎは気になる。
「一緒に食べれば大丈夫ですよ。それに一緒にジムに通うでしょう?」
「――っ、ああっ! そうだったな。じゃあ、いいか」
「ふふっ。いいですよ」
悩みまくっていたお菓子を大人買いして、カートに入れる。
スーパーがこんなに楽しいなんて知らなかったな。
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