25 / 133
自分がわからない
しおりを挟む
他の自作品キャラクターと透也兄の名前が被ってたので、変更しました。
* * *
「どうかしたか?」
「いえ。じゃあ、行きましょうか」
「ああ。どんな店に連れて行ってくれるんだ?」
「ここからそんなに離れてないんですよ。でも穴場ですよ」
いたずらっ子のような表情でパチンとウィンクして見せると、ロビーが一瞬騒ついた気がした。
「んっ?」
気になって振り返ると、ロビーに出てこようとしている女性社員たちが透也くんを見て
『みた? 今、ウィンクしてた! イケメンのウィンク破壊力強すぎでしょ』
『あんなイケメン、この支社にいたっけ?』
『えーっ、わかんない。どこの部署だろ?』
『しかも支社長と一緒なんて! ああーっ、目の保養だわ!』
と、キャーキャー騒いでいるのが目に入った。
なんとなく、モヤモヤした気持ちが蠢いているのがわかる。
透也くんのウィンクを見ていいのは俺だけなのに。
そんな気持ちでいっぱいになり、なんとなく面白くない。
「田辺くん、行こう」
「えっ? 大智さんっ」
透也くんの手を取り、さっさと会社から出る。
「どっちに行くんだ?」
「あ、こっちですけど……」
手を取ったまま、言われた方向に向かって歩いている間もずっと心の中がモヤモヤしっぱなしで嫌になる。
「あの、大智さんっ! ちょっと待ってください!」
スタスタと歩いていると、歩道の脇にある小さな休憩スペースに差し掛かった時に足を止められた。
それでハッとして、透也くんに振り返った。
「えっ? あっ、ごめんっ! 手、痛かった?」
「いえ、それは大丈夫です。そんなことより、何か怒ってますか?」
「――っ、別に……怒ってなんか……」
「大智さん。ちゃんと俺の目を見て言ってください。俺、何か怒らせるようなことしましたか?」
いつも自信満々なのに、困った表情で俺の様子を窺う姿がなんとなく大きなワンコみたいに見えて、愛しく思える。
なんか透也くん、可愛いな……。
そう思ったら、急に心の中のモヤモヤがさぁーっと消えて行ったような気がした。
「大智さん?」
「ああ、ごめん。違うんだ。なんか俺もよくわからないんだけど……なんとなく、嫌だったんだ」
「何が、嫌だったんですか?」
「だから、その……さっき、ロビーで……女性社員たちが、その……透也くんのウィンク見て、騒いでるの見て……なんかモヤモヤして……早くあそこから抜け出したくなったんだ」
「――っ、大智さん……」
「ごめん、俺……本当自分でもわからなくて……」
「あの、じゃあ……俺のこと、田辺くんって呼んだのはどうしてですか?」
「あ、あの時は……その、みんなに透也くんの名前知られたくないなって、思っちゃって……」
って、どうしてそんなこと思ったんだろう?
あの時の自分の気持ちが自分でもよくわからない。
「ごめん。それも、自分でも意味がわからないんだ。なんでそんなことしちゃったのか……」
「大智さん、本当にわかってないんですか?」
「えっ? どういう意味?」
「後で教えてあげます。とりあえず、お店すぐそこなので、行きましょうか」
さっきまでの不安そうな表情から一変、急に嬉しそうな笑顔を見せながら、俺の手を握ったまま歩き始めた。
透也くんのおすすめの店は本当に近くて、さっきの場所から裏道に入って3分ほど進んだ場所にあった。
「ここですよ」
「ここが、お店?」
パッと見た感じ、何かの会社の倉庫のような外観をしている。
多分、連れてこられなければ、素通りしてしまっているはずだ。
「さぁ、入りましょう」
「あ、ああ」
不思議な店に緊張しつつも、連れられて中に入ると中は思っていたよりもずっと広く、落ち着いた雰囲気だった。
「外観と中身が違いすぎだな」
「ふふっ。そうなんですよ。店のことを知っている人しか来ないので、安心ですよ」
にっこりと微笑む透也くんを見ていると、緊張感が消えてホッとする。
「ああ、来たな。ちょうどいい時間だぞ」
「わっ!」
突然、声をかけられて驚いたけれど、どうやらここの店の人みたいだ。
「兄貴、急に声をかけてくるなよ。驚くだろ」
「悪い、悪い」
「えっ? お兄さん?」
「ええ、実はそうなんです。兄の祥也です。日本で料理を学んで5年ほど前にこっちで店を出したんですよ」
まさか、お兄さんのお店に連れられてくるとは夢にも思わなかった。
「初めまして。田辺祥也です。弟が随分とお世話になっているようでありがとうございます」
お兄さんの突然の出現と挨拶にあまりにも焦った俺はつい、
「は、初めまして。透也くんとおつきあいさせていただいています杉山大智と申します」
と言ってしまった。
「えっ?」
「大智さん……!」
驚きの表情を見せるお兄さんと、嬉しそうに俺を見つめる透也くんの表情で、俺はとんでもないことを言ってしまったことに気づいた。
* * *
「どうかしたか?」
「いえ。じゃあ、行きましょうか」
「ああ。どんな店に連れて行ってくれるんだ?」
「ここからそんなに離れてないんですよ。でも穴場ですよ」
いたずらっ子のような表情でパチンとウィンクして見せると、ロビーが一瞬騒ついた気がした。
「んっ?」
気になって振り返ると、ロビーに出てこようとしている女性社員たちが透也くんを見て
『みた? 今、ウィンクしてた! イケメンのウィンク破壊力強すぎでしょ』
『あんなイケメン、この支社にいたっけ?』
『えーっ、わかんない。どこの部署だろ?』
『しかも支社長と一緒なんて! ああーっ、目の保養だわ!』
と、キャーキャー騒いでいるのが目に入った。
なんとなく、モヤモヤした気持ちが蠢いているのがわかる。
透也くんのウィンクを見ていいのは俺だけなのに。
そんな気持ちでいっぱいになり、なんとなく面白くない。
「田辺くん、行こう」
「えっ? 大智さんっ」
透也くんの手を取り、さっさと会社から出る。
「どっちに行くんだ?」
「あ、こっちですけど……」
手を取ったまま、言われた方向に向かって歩いている間もずっと心の中がモヤモヤしっぱなしで嫌になる。
「あの、大智さんっ! ちょっと待ってください!」
スタスタと歩いていると、歩道の脇にある小さな休憩スペースに差し掛かった時に足を止められた。
それでハッとして、透也くんに振り返った。
「えっ? あっ、ごめんっ! 手、痛かった?」
「いえ、それは大丈夫です。そんなことより、何か怒ってますか?」
「――っ、別に……怒ってなんか……」
「大智さん。ちゃんと俺の目を見て言ってください。俺、何か怒らせるようなことしましたか?」
いつも自信満々なのに、困った表情で俺の様子を窺う姿がなんとなく大きなワンコみたいに見えて、愛しく思える。
なんか透也くん、可愛いな……。
そう思ったら、急に心の中のモヤモヤがさぁーっと消えて行ったような気がした。
「大智さん?」
「ああ、ごめん。違うんだ。なんか俺もよくわからないんだけど……なんとなく、嫌だったんだ」
「何が、嫌だったんですか?」
「だから、その……さっき、ロビーで……女性社員たちが、その……透也くんのウィンク見て、騒いでるの見て……なんかモヤモヤして……早くあそこから抜け出したくなったんだ」
「――っ、大智さん……」
「ごめん、俺……本当自分でもわからなくて……」
「あの、じゃあ……俺のこと、田辺くんって呼んだのはどうしてですか?」
「あ、あの時は……その、みんなに透也くんの名前知られたくないなって、思っちゃって……」
って、どうしてそんなこと思ったんだろう?
あの時の自分の気持ちが自分でもよくわからない。
「ごめん。それも、自分でも意味がわからないんだ。なんでそんなことしちゃったのか……」
「大智さん、本当にわかってないんですか?」
「えっ? どういう意味?」
「後で教えてあげます。とりあえず、お店すぐそこなので、行きましょうか」
さっきまでの不安そうな表情から一変、急に嬉しそうな笑顔を見せながら、俺の手を握ったまま歩き始めた。
透也くんのおすすめの店は本当に近くて、さっきの場所から裏道に入って3分ほど進んだ場所にあった。
「ここですよ」
「ここが、お店?」
パッと見た感じ、何かの会社の倉庫のような外観をしている。
多分、連れてこられなければ、素通りしてしまっているはずだ。
「さぁ、入りましょう」
「あ、ああ」
不思議な店に緊張しつつも、連れられて中に入ると中は思っていたよりもずっと広く、落ち着いた雰囲気だった。
「外観と中身が違いすぎだな」
「ふふっ。そうなんですよ。店のことを知っている人しか来ないので、安心ですよ」
にっこりと微笑む透也くんを見ていると、緊張感が消えてホッとする。
「ああ、来たな。ちょうどいい時間だぞ」
「わっ!」
突然、声をかけられて驚いたけれど、どうやらここの店の人みたいだ。
「兄貴、急に声をかけてくるなよ。驚くだろ」
「悪い、悪い」
「えっ? お兄さん?」
「ええ、実はそうなんです。兄の祥也です。日本で料理を学んで5年ほど前にこっちで店を出したんですよ」
まさか、お兄さんのお店に連れられてくるとは夢にも思わなかった。
「初めまして。田辺祥也です。弟が随分とお世話になっているようでありがとうございます」
お兄さんの突然の出現と挨拶にあまりにも焦った俺はつい、
「は、初めまして。透也くんとおつきあいさせていただいています杉山大智と申します」
と言ってしまった。
「えっ?」
「大智さん……!」
驚きの表情を見せるお兄さんと、嬉しそうに俺を見つめる透也くんの表情で、俺はとんでもないことを言ってしまったことに気づいた。
475
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
【完結】おじさんダンジョン配信者ですが、S級探索者の騎士を助けたら妙に懐かれてしまいました
大河
BL
世界を変えた「ダンジョン」出現から30年──
かつて一線で活躍した元探索者・レイジ(42)は、今や東京の片隅で地味な初心者向け配信を続ける"おじさん配信者"。安物機材、スポンサーゼロ、視聴者数も控えめ。華やかな人気配信者とは対照的だが、その真摯な解説は密かに「信頼できる初心者向け動画」として評価されていた。
そんな平穏な日常が一変する。ダンジョン中層に災厄級モンスターが突如出現、人気配信パーティが全滅の危機に!迷わず単身で救助に向かうレイジ。絶体絶命のピンチを救ったのは、国家直属のS級騎士・ソウマだった。
冷静沈着、美形かつ最強。誰もが憧れる騎士の青年は、なぜかレイジを見た瞬間に顔を赤らめて……?
若き美貌の騎士×地味なおじさん配信者のバディが織りなす、年の差、立場の差、すべてを越えて始まる予想外の恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる