13 / 45
最高の幸せ
しおりを挟む
「伊月くんが入院したばかりの頃に、砂川くんの知り合いだと言って事故の話を聞きにきた人を覚えている?」
「はい。あの、弁護士さんですよね?」
「そうそう。あの人、成瀬優一さんって言って、同じ大学の一年先輩なんだよ。医学部在学中に司法試験に合格して、今は弁護士として働いている人でね。俺も大学で獣医師の勉強をしながら司法試験の勉強をしていたから、ダブルライセンスの話を聞きたくて医学部まで声をかけに行ったんだ」
「ダブルライセンス……慎一さんも成瀬さんもすごい人なんですね……」
「いやいや、成瀬さんはともかく俺は大したことないよ」
純粋に褒められることに少し照れてしまってそう言ったけれど、伊月くんは尊敬の眼差しで俺を見つめてくれて嬉しかった。
医学部専用の図書館にいたユウさんに俺が声をかけにいった時、一瞬冷ややかな表情を向けられて身体がゾクっとしたのを覚えている。それでも臆する事なく、ダブルライセンスの話をするとさっきまでの冷ややかな表情が一変してホッとした。
ちゃんと話を聞こうと言ってくれて近くの『ミモザ』という喫茶店に案内されて、そこでダブルライセンスの話から、この大学に行き着くまでの過程を話すと「俺と同じだな」と笑ってくれたのが印象的だった。ユウさんも俺と同じく、人に好意を持たれることに辟易していたようだ。
学部は違うし、ユウさんは一つ先輩だけどそれからはかなり頻繁にあっていたと思う。そのおかげで俺たち二人に寄ってくるものは格段に減った。ユウさんの助言のおかげで在学中に司法試験に合格し、大学六年次には無事に獣医師の国家試験にも合格し大学を卒業して今度は司法修習に行き、目まぐるしい日々を過ごしていた。
ユウさんはユウさんで大学卒業後は医師として二年間臨床研修を受け、その後一年間司法修習を受け現在は弁護士として働いている。
「俺は大学卒業して司法修習を終えてからは、獣医師として動物病院で雇われで働いてたんだけど、成瀬さんが独立して法律事務所を開いた時に声をかけてもらったんだ」
「えっ? 弁護士さんとして、ですか?」
「うーん、弁護士としてでも俺は働けるけど、声をかけてもらったのは、伊月くんと出会った時のように調査員として、かな」
「調査員、って……」
「わかりやすく言えば探偵ってことかな」
「探偵……」
「うん。表立って調査できないところに入り込んで裏事情を探るのが仕事。そういう時に弁護士の資格を持っていると調査しやすくてね、成瀬さんの声かけに乗ったんだ」
「でも、せっかく獣医師さんとして働いていたのに……慎一さんはそれでよかったんですか?」
まぁ、そう思うのが普通だろうな。調査員や探偵なんて言ったら陰で働くって感じだろうし。
「俺にはブリーダーになるって夢があるって言っただろう? それを実現させるための人脈作りとかしたかったし、時間にゆとりのある働き方は俺にとっても好都合だったし、それに……」
「それに?」
「伊月くんや砂川くんみたいに、困っているのに法律ではまだ手を出せない状況の子たちを守れるように証拠を集めて、悪い奴を捕まえて罪を償わせるのは良いことだって思ったんだ。元々、成瀬さんが俺に調査員という仕事を頼んできたのも困っている人を助けたいっていう思いからだからね。そのために俺の力が必要だっていうなら、助けになりたかったんだ」
「慎一さん……でも、危なくないんですか? 僕……慎一さんに怪我はしてほしくないです」
「ありがとう、でも大丈夫。そんなヘマはしないよ。俺には伊月くんっていう大事な存在ができたから絶対に危ない目には遭わないよ」
「約束ですよ……」
「ああ、約束だ。でも俺は、調査員の仕事をしてよかったって思ってるんだよ」
「どうして?」
「だって、そのおかげで伊月くんに会えたんだから……」
「慎一さん……」
俺が怪我をすることを心配してくれたんだろう。少し潤んだ目で見上げられてキスがしたくてたまらなくなった。
キスしてもいい? そんな無粋なことを聞きたくない。きっと伊月くんなら許してくれる。そんな気がした。
「伊月くん……」
ゆっくりと顔を近づけると、スッと伊月くんの目が閉じていく。許してもらえたのが嬉しくて、俺はそのまま伊月くんの小さくて形のいい唇に自分のそれをそっと重ねた。
一瞬、伊月くんの身体がピクッと震えたけれど、嫌がっている感じはない。
「んっ……」
それどころか伊月くんの口から甘い吐息が漏れる。それが何よりも可愛い。
伊月くんが俺とのキスを望んでくれていると思うと嬉しくて、俺はたっぷりと伊月くんの唇を堪能した。
流石に最初から舌まで入れるのは憚られたけれど、それでも伊月くんの柔らかな下唇を何度も喰み、その度に伊月くんから可愛い声が漏れて、俺は最高の幸せを感じていた。
「はい。あの、弁護士さんですよね?」
「そうそう。あの人、成瀬優一さんって言って、同じ大学の一年先輩なんだよ。医学部在学中に司法試験に合格して、今は弁護士として働いている人でね。俺も大学で獣医師の勉強をしながら司法試験の勉強をしていたから、ダブルライセンスの話を聞きたくて医学部まで声をかけに行ったんだ」
「ダブルライセンス……慎一さんも成瀬さんもすごい人なんですね……」
「いやいや、成瀬さんはともかく俺は大したことないよ」
純粋に褒められることに少し照れてしまってそう言ったけれど、伊月くんは尊敬の眼差しで俺を見つめてくれて嬉しかった。
医学部専用の図書館にいたユウさんに俺が声をかけにいった時、一瞬冷ややかな表情を向けられて身体がゾクっとしたのを覚えている。それでも臆する事なく、ダブルライセンスの話をするとさっきまでの冷ややかな表情が一変してホッとした。
ちゃんと話を聞こうと言ってくれて近くの『ミモザ』という喫茶店に案内されて、そこでダブルライセンスの話から、この大学に行き着くまでの過程を話すと「俺と同じだな」と笑ってくれたのが印象的だった。ユウさんも俺と同じく、人に好意を持たれることに辟易していたようだ。
学部は違うし、ユウさんは一つ先輩だけどそれからはかなり頻繁にあっていたと思う。そのおかげで俺たち二人に寄ってくるものは格段に減った。ユウさんの助言のおかげで在学中に司法試験に合格し、大学六年次には無事に獣医師の国家試験にも合格し大学を卒業して今度は司法修習に行き、目まぐるしい日々を過ごしていた。
ユウさんはユウさんで大学卒業後は医師として二年間臨床研修を受け、その後一年間司法修習を受け現在は弁護士として働いている。
「俺は大学卒業して司法修習を終えてからは、獣医師として動物病院で雇われで働いてたんだけど、成瀬さんが独立して法律事務所を開いた時に声をかけてもらったんだ」
「えっ? 弁護士さんとして、ですか?」
「うーん、弁護士としてでも俺は働けるけど、声をかけてもらったのは、伊月くんと出会った時のように調査員として、かな」
「調査員、って……」
「わかりやすく言えば探偵ってことかな」
「探偵……」
「うん。表立って調査できないところに入り込んで裏事情を探るのが仕事。そういう時に弁護士の資格を持っていると調査しやすくてね、成瀬さんの声かけに乗ったんだ」
「でも、せっかく獣医師さんとして働いていたのに……慎一さんはそれでよかったんですか?」
まぁ、そう思うのが普通だろうな。調査員や探偵なんて言ったら陰で働くって感じだろうし。
「俺にはブリーダーになるって夢があるって言っただろう? それを実現させるための人脈作りとかしたかったし、時間にゆとりのある働き方は俺にとっても好都合だったし、それに……」
「それに?」
「伊月くんや砂川くんみたいに、困っているのに法律ではまだ手を出せない状況の子たちを守れるように証拠を集めて、悪い奴を捕まえて罪を償わせるのは良いことだって思ったんだ。元々、成瀬さんが俺に調査員という仕事を頼んできたのも困っている人を助けたいっていう思いからだからね。そのために俺の力が必要だっていうなら、助けになりたかったんだ」
「慎一さん……でも、危なくないんですか? 僕……慎一さんに怪我はしてほしくないです」
「ありがとう、でも大丈夫。そんなヘマはしないよ。俺には伊月くんっていう大事な存在ができたから絶対に危ない目には遭わないよ」
「約束ですよ……」
「ああ、約束だ。でも俺は、調査員の仕事をしてよかったって思ってるんだよ」
「どうして?」
「だって、そのおかげで伊月くんに会えたんだから……」
「慎一さん……」
俺が怪我をすることを心配してくれたんだろう。少し潤んだ目で見上げられてキスがしたくてたまらなくなった。
キスしてもいい? そんな無粋なことを聞きたくない。きっと伊月くんなら許してくれる。そんな気がした。
「伊月くん……」
ゆっくりと顔を近づけると、スッと伊月くんの目が閉じていく。許してもらえたのが嬉しくて、俺はそのまま伊月くんの小さくて形のいい唇に自分のそれをそっと重ねた。
一瞬、伊月くんの身体がピクッと震えたけれど、嫌がっている感じはない。
「んっ……」
それどころか伊月くんの口から甘い吐息が漏れる。それが何よりも可愛い。
伊月くんが俺とのキスを望んでくれていると思うと嬉しくて、俺はたっぷりと伊月くんの唇を堪能した。
流石に最初から舌まで入れるのは憚られたけれど、それでも伊月くんの柔らかな下唇を何度も喰み、その度に伊月くんから可愛い声が漏れて、俺は最高の幸せを感じていた。
801
あなたにおすすめの小説
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる