異世界で監禁された僕は助けてくれた公爵さまからこの上ない寵愛を受けています

波木真帆

文字の大きさ
55 / 66

陛下からの祝福

しおりを挟む
それは、エリアスさんに依存している。
愛情じゃない。

そう言われたら、困ってしまう。
だって、エリアスさんに依存していることは事実だから。

でも、エリアスさんが隣にいてくれる安心感は他の人では決して得られない。
たとえ目の前にいる国王さまが隣にいても、僕が心から安心する場所を得ることはできない。

僕が自然な僕でいられるのは、やっぱりエリアスさんの隣だけなんだ。

僕がエリアスさんの夫となることで、ずっとエリアスさんのそばにいられる。
それで、いつか離れるかもしれないという不安が消えるのなら、僕はエリアスさんの夫になりたい。

エリアスさんは心から僕を思ってくれているのに、こんな気持ちでオッケーしていいのかな?
そんな申し訳なさもある。

そっとエリアスさんを見上げる。
彼の表情は少し緊張しているようにも、不安そうにも見える。
でも、何も言わない。
ただ、静かに僕の答えを待ってくれている。

もし、僕が夫になることを拒んでも、受け入れるつもりなんだろう。
そして、自分の気持ちを抑えながらも、僕が望む限りそばにいようとしてくれるだろう。

それがエリアスさんの表情から感じ取れた。

今はまだ夫とか夫夫についてよくわかっていないけれど、エリアスさんと離れたくないと改めて思う。
だから、その思いを伝えたい。

「……エリアス、さん……」

名前を呼ぶだけで、胸がいっぱいになる。
でも、ちゃんと言わなきゃ。

「僕……エリアスさんと、夫夫になりたいです。だから――」

震える声で必死に告げた瞬間、僕はエリアスさんに強く抱きしめられた。

「ありがとう。ありがとう……トキ。嬉しいよ」

僕以上に震える声でそう告げるエリアスさんの声を聞きながら、僕は彼の安心する匂いに包まれていた。


<sideエリアス>

陛下の提案には驚いた。

まさか、トキをご自分の養子にした上で私と夫夫にさせようなどと仰るとは思っていなかった。
だが、王子がトキにしたあの酷い仕打ちに心を痛めていらっしゃったのだろう。
だからこそ、トキがこれから先、この国で安心して過ごせるようにお考えくださったのだ。

トキが陛下の養子となり、陛下が後ろ盾となればもう二度と怖い思いをすることはない。
あの王子はすでに陛下の手から離れ、トキと会うこともない。

それならば、トキはこれから先、私の隣で心穏やかに過ごせるだろう。

陛下が義父となることは些か戸惑いはあるが、たいした問題ではない。
私にとっては全く異存のない提案だ。
すぐに了承したが、それは私だけの気持ち。

トキには寝耳に水の話で、まだ考えも及ばないだろう。
だが、私の気持ちだけを伝えておきたかった。

その上でトキの気持ちが固まるまでいつまででも待とう。
たとえ、それでトキが私と夫夫になることを断ったとしても、それは受け入れよう。
私はトキ以上に愛せる者はいないし、これからも出てこない。
だから、断られてもトキのそばで変わらぬ愛情を注ぐことを誓う。

トキは不安げに私を見たが、私は目を逸らすことはしない。
それが私のトキへの強い思いの表れだから。

すると時は意を決したように、震える声で私の名を呼んだ。

そして――

僕……エリアスさんと、夫夫になりたいです。

その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。
トキの声は震えていたが、私の耳にはしっかりと届いた。
陛下の存在も一緒で意識の外に押し出されるほどに、トキの声だけが私の中を占領した。

トキに選ばれた。

そう理解するまで時間が必要だったが、理解するより先に身体が動いていた。
腕に力を込め、離したくなくて強く抱きしめる。

服越しにトキの早い鼓動が聞こえる、
だが、それ以上に私の鼓動も騒がしかった。

トキの気持ちが整うまで待とう。
それだけでなく、断られる覚悟もしていたが、本当は怖くてたまらなかったのだ。

「ありがとう。ありがとう……トキ」

情けないが、声が震えて止まらない。
トキの小さな手がそっと私の背中に回る。

その温もりに、救われる。
私は守るだけでなく、トキからも守られていたのだ。

私たちは、やはり離れてはいけない。

私たちの未来には、お互いが必要なのだと改めてわかる。

ああ……トキをこの腕に抱けて幸せだ。

「……良い答えだったな、公爵」

陛下の低い声に、ここが陛下の御前だったことを思い出す。
それほど私にはトキしか見えていなかったようだ。

「エリアス・ランチェスター」

名を呼ばれて、私は姿勢を正す。
もちろん、トキを抱く腕だけは離さなかった。

「そして、トキ殿」

陛下の視線は、この上なく穏やかで優しい。

「汝らの意思、確かに受け取った」

陛下のよく通る声が広間に響く。

「これよりトキ殿を我が養子として迎える。そして、エリアス・ランチェスターの夫として降嫁させることを王として正式に宣言する」

一拍おいて、陛下は続けた。

「この婚姻は、誰にも侵されぬ。二人が選び、二人が望んだ結果だ」

その言葉に、私とトキは顔を見合わせて微笑み合い二人で深く頭を下げた。

「ありがたきお言葉、身に余る光栄に存じます。一生離れず、愛し合うことをここに誓います」

陛下からの祝福に、しっかりと誓いを告げる。
陛下はほんのわずかに口元を緩めた。

「トキ殿」

再び名を呼ばれ、腕の中のトキが小さく身動ぐがそこに不安は見えない。

「幸せになるのだぞ」

その一言に、トキは満面の笑みで答えた。

「はい。国王さま。ありがとうございます」

トキのその笑顔に、陛下がほんのり頬を染めたように見えたが、これは見て見ぬふりをしておいた。
陛下は満足そうにゆっくりと謁見の間を出ていかれ、大きな広間に私とトキだけが残った。
しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。 「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」 王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。 そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。 絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。 「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」 冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。 連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。 俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。 彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。 これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...