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番外編

直己さんの実家  <後編>

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これで挨拶編終了です。
読んでいただきありがとうございます!
途中で視点が変わります。

入れたかったシーンを入れ忘れてたので、こっそり追加してます♡
気付いていただけたら嬉しいです♫





「直己、七海と翔太くんが来たぞ」

部屋の外から声をかけられ、直己さんは少し残念そうにしながら僕の隣から立ち上がって部屋の扉を開けた。

「ああ、すぐ行くよ」

「早く来いよ。佳都くん待ってるから」

扉の隙間からお父さんに誘われて『はい』と声を上げると、にっこりと笑顔を見せて去っていった。

「ああ……2人っきりの時間が終わってしまったな」

「ふふっ。家に帰ったらまた2人じゃないですか」

「まぁ、それはそうだが……」

「でも、このお部屋居心地良かったので少し寂しいですね」

「そうか、この部屋気に入ってくれたか」

「もちろんです。直己さんと直己さんの大事なものに囲まれるのって幸せですよ」

僕がそういうと直己さんは嬉しそうに僕を抱きかかえて、

「私も佳都の部屋に初めて入った時、同じ気持ちだったよ。
佳都の好きなものに囲まれながら自分も同じ空間にいるのは本当に幸せだったな」

と言ってくれた。

そっか、直己さんもあの時同じ気持ちになってくれてたんだ。
だから、僕の部屋をそっくりそのまま直己さんのマンションに移してくれたのかな。
ほんと優しい。


直己さんに抱きかかえられたまま、部屋を出てリビングに向かうと七海ちゃんと翔太がお父さんとリビングで話をしていた。

「おっ、佳都――」

翔太は僕に挨拶をしかけてそのままこっちを向いて止まっている。
なんで? と思ったけど、そういえば僕直己さんに抱きかかえられたままだと思い出して、慌てて下ろしてもらうように頼んだけれど、

「えーっ、なんで? そのままでいいじゃない」

と七海ちゃんが僕たちをキラキラとした目で見ながら翔太に向き直り、

「っていうか、翔太も私をお姫さま抱っこしてよ」

と少し拗ねた様子でおねだりしていた。

「えっ――でも、それはちょっと……」

翔太は隣にいるお父さんに遠慮しているようだったけれど、

「ねぇ、お父さんいいよね? 私も翔太にお姫さま抱っこしてほしい」

と七海ちゃんがいうと、お父さんは

「……それはまだ早いんじゃないか」

と低い声で言っていた。

「ええーっ、お兄ちゃんと佳都くんはしてるのにぃー」

「直己と佳都くんはもうすぐ結婚式挙げるんだからいいんだ。お前たちはまだ違うだろ」

「えーっ、パパのケチーっ」

口を尖らせて拗ねている七海ちゃんが可愛い。
お父さん、きっと翔太に妬いたんだろうな。
ふふっ。なんかこういうところ直己さんと似ている気がする。


「さぁさぁ、ご飯にしましょう」

話題を変えるようにお母さんが声をかけてくれた。

直己さんの家のダイニングテーブルは大人6人でもまだまだ余るくらい広い。
その真ん中に大きなすき焼き鍋が二つも並んでいて美味しそうなお肉がぐつぐつと煮込まれている。

「美味しそうっ!!」

思わず声を上げてしまい、少し恥ずかしかったけれど

「ふふっ。いっぱい食べてね」

とお母さんに優しく微笑まれて嬉しくなってしまう。

そういえば、家族でこうやって鍋を囲むなんていつぶりだろう。
なんか家族っていいな。

「ほら、佳都。肉ができてるぞ」

直己さんが僕の器にどんどんお肉を入れてくる。

「あ、直己さんとお父さんの分が……」

「大丈夫、肉ならいっぱい買ってあるから」

お父さんにそう言われて、僕は

「いただきます」

とお肉を口に入れた。

「――っ! おいしっ!!」

口の中でお肉がとろけていく。
こんなお肉初めてだ!!

前に直己さんに食べさせてもらったステーキもとっても美味しかったけど、今日のお肉も柔らかくてすっごく美味しい!

パッと翔太に目を向けると翔太も

「うまっ!!!」

と感動している。
そうだよね~、大学生男子にこのお肉は途轍もない衝撃だよ!!

「ふふっ。佳都くんも翔太くんもいっぱい食べて」

お母さんが追加のお肉をどんどん入れてくれる。
僕はもう嬉しくていっぱい食べてしまった。

「佳都くんも酒は呑めるんだろ?」

「あんまり呑んだことはないですけど……」

「佳都、大丈夫か?」

直己さんは心配そうだけど、

「眠くなったらうちに泊まっていけばいいし、直己も一緒だからいいだろう」

とお父さんに勧められてお父さんのお気に入りの日本酒をご馳走になった。

お父さんとお酒を呑む……自分の父親が亡くなった今、それは体験できないことだと思っていたけれど、こうやってお父さんとお酒が呑める日が来るなんて思いもしなかったな。

僕はそれが嬉しくて、ついつい勧められるがままにお酒を呑んでしまっていた。


 ✳︎   ✳︎     ✳︎


「ちょ――っ、やめろよ、佳都っ!」

「しょーたぁ、だぁ~いすき!」

「離せって! こんなの、直己さんに見られたら――」
「何やってるんだ?!」

「うわぁっ!!」

酒を呑もうと思ったら仕事の電話がかかってきてほんの少しだけ席を外して帰ってきたら、佳都がベロベロに酔っ払って翔太くんに抱きついていた。

俺を見て『ヤバい』と言いながら真っ青な顔をしている翔太くんから急いで佳都を奪い取り、

「どういうことなんだ?」

と尋ねると、翔太くんと七海と母さんは一斉に親父に目を向けた。

「ああ~っ、なおきさんがいるぅ~~!」

ようやく俺の存在に気付いたらしい佳都が顔を真っ赤にして、俺に抱きついてきた。


「佳都、呑みすぎじゃないか?」

「だってぇ~、すっごくおいしかったからぁ~」

「美味しかったって……親父、呑ませすぎだろ」

「いや、ちょっと目を離した隙に自分でお代わり淹れてたみたいでな。こんなに弱いとは思わなかったものだから」

「はぁーっ、これから呑ませるの禁止にしたほうがいいな」

ポツリと呟いたその言葉が佳都の耳に入ったのか

「ええーっ、もう……のんじゃ、らめ……?」

と涙を潤ませて俺を見上げてくる。
その舌ったらずな口調とほんのり赤い顔で可愛く見上げられると弱いんだが……。

「なおき、さん……らめ?」

「す、少しだけなら、な」

「わぁっ、なおきさん……だいすき!!」

「んんっ……!」

嬉しそうに佳都の方からキスをしてくる。
みんなの前でこんなことは絶対にしないはずだからこれは相当に酔ってるな。

「なおきさん……なんか、あつい……」

そういうと、佳都はシャツを脱ぎ始めた。
脱げかかったシャツの隙間から、俺が昨日佳都につけた花弁があちらこちらに見える。

「佳都っ!」

「お前……」

親父の呆れたような声が聞こえるが今はそれは無視だ。

慌てて佳都の手を止めて

「俺たち部屋に戻るから」

と言って急いで佳都を抱きかかえて部屋に向かった。
ふぅと一息ついて佳都を寝かせようとベッドに座らせると、

「あれーっ、なおきさんのへやだぁー」

と佳都は嬉しそうに脱ぎかけのシャツを脱ぎ捨てた。

「きょうは、ここで、おとまりー?」

「いや、少し休んだら帰ろうか」

「ぼく、きょうここでねるぅー」

もうすっかり酔っ払ってこどもみたいになってるな。
ここは大人しく話に合わせたほうがいいだろう。

「ああ、わかった。そうしよう」

「わぁーい、じゃあ、なおきさんもあついから、ぬいでぇー」

そう言いながら、俺の服を脱がしにかかる。
もしかして佳都は酔うと脱ぐタイプなのか?

抵抗すると悲しげな顔をするので仕方なく上半身だけ脱いで横たわると、佳都は満足そうに俺の上半身に抱きつきながらあっという間に眠りについた。

俺はしばらくそのままでいたが、とりあえず状況を説明しに行こうとゆっくり佳都から離れ、シャツを羽織ってリビングへと戻った。

両親も七海たちも俺の姿に一瞬驚いていたものの説明するとホッとしたように笑っていた。

「佳都くん、あんなに弱かったんだな。翔太くんは知ってたのか?」

「いえ、俺も佳都とは呑んだことなくて、俺が知っている限り誰とも呑みには行ってないんできょう初めて呑んだんじゃないかと……」

「そうか、なら、もうお前以外の前では呑ませないほうがいいな。あの子は危ない」

「ああ、わかってる。とりあえず少し休んだら帰るよ」

「今日は動かさないほうがいいんじゃないか。うちに泊まっていきなさい」

「仕方ないな」

俺は話を終わらせ佳都のいる自室へと戻った。
すると、閉めて行ったはずの扉が開いている。
もしかして佳都がトイレにでも行ったのか?

と急いで部屋を見ると、

「ライリー……」

知らぬ間に俺の部屋に入り込んだライリーが俺のベッドで佳都と抱き合って眠っている。
佳都はライリーのもふもふに埋もれながら幸せそうに笑顔で眠っている。

くそっ、俺の場所なのに……。

俺は大人げないと思いながらもライリーから佳都を必死で引き離し、

「やっぱり今日は帰る!!!」

と宣言して、自宅へと連れ帰った。

はぁーっ、俺の最大のライバルはもしかしたらライリーなのかもしれないな……。
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