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番外編
ジュールさんの優しさ
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食事の後、弓弦くんとミシェルさん、そしてリュカさんの三人は母たちに誘われて奥の和室に向かった。
あの部屋で今から何が行われるか、それはよくわかっている。
なんせあの部屋にとんでもない量の着物が揃えられているのを見たんだから。
明日の初詣で弓弦くんたちに着物を着させようと画策した母たちの作戦だ。
フランスでウェディングドレスに袖を通し、美しい姿を見せてくれた弓弦くんたちの和装がみたい。
それが母たちの願いだった。
もちろん、佳都と理央くん、そして空良くんと秀吾くんも、もちろん明日は着物を着ることが決定している。
それぞれの母たちが思い入れのある着物を用意しているのだ。
俺としても佳都が着物を着てくれるのは嬉しいことだ。
だが、母親と七海も含めて総勢十三人の着物美人たちを連れての初詣か……。
まぁ、あまりにも目を惹きすぎて逆に近寄れないということもあるだろうが、どれだけ警戒してもおかしな奴というのは現れる。
そこだけを十分気をつけないといけないな。
弓弦くんたちが着物を選んでいる間に、ロレーヌたちにも明日の説明をする。
明日の初詣に着て行く着物を選んでいると伝えると喜んでくれたが肝心なのはその後の話だ。
ロレーヌたちが今日の宿泊先に定宿であるホテルに帰るつもりなのはわかっていたが、明日の着付けの問題もあって今日はそれぞれの家に泊まって欲しいと告げると、喜んで賛成してくれて助かった。断られなくて本当によかった。
うちの実家ではジュールさんに泊まっていただくことになった。
もちろん佳都と母の望み通りだ。
弓弦くんたちが戻ってきてお茶の時間にジュールさんが紅茶を淹れてくれたが、フランスで飲んだ時と変わらない味に驚いてしまった。
なんせフランスの水は硬水で日本の水は軟水。
一般的に軟水で紅茶を淹れると香りが出やすいと言われている。
そのためフランスで紅茶を淹れる時と同じやり方で日本で淹れると紅茶の味が強く出てしまう。
それなのに、ジュールさんが淹れた紅茶はフランスと変わらぬ味をしている。
これは本当に長年培ってきた経験と、紅茶を淹れる才能の両方を持っているからだろう。
佳都はジュールさんの淹れてくれた紅茶を飲んで、母たちにこれを飲ませたかったのだと喜んでいたし、母たちもこの紅茶を淹れられるようになりたいと大興奮していた。
そんな佳都と母たちを見て、
「直己、私もジュールさんに紅茶の淹れ方を習うぞ。お前も習っておいた方がいい」
と父が声をかけてきたのが印象的だった。
どうやら少なからずジュールさんに嫉妬したようだ。
いつまで経っても母に対する父の独占欲が消えないように、俺もきっといつまでも佳都の一番でありたいと願うんだろう。
なんだか将来の自分の姿が見えたような気がして、思わず笑ってしまった。
観月たちと別れ、ジュールさんと共にうちの実家に向かう。
ジュールさんを実家に泊めるのは急遽決まったことだが、うちではいつでも客間は整えてあるから安心だ。
そこでジュールさんにはゆっくりと休んでもらおう。
ロレーヌ家では筆頭執事として忙しい毎日を過ごしているようだし、たまには主人と離れて過ごす時間があってもいい。
――今夜は旦那さまが暴走されないか見張るものがおりませんので、それが少し心配でございまして……
そんなことを言われていたロレーヌがいささか心配だが、観月たちも一緒だし、きっと大丈夫だろう。
「あの、直己さん、ジュールさんを部屋に案内したいです。一緒に行ってもらえますか?」
ジュールさんは日本語がほとんど理解ができないから、自分から率先して声をかけたい佳都はもどかしいだろう。
できるだけ俺が佳都とジュールさんの間に入ってやらないとな。
「ああ、もちろんだよ」
ジュールさんに佳都が部屋に案内すると声をかけると、笑顔で佳都に
『Merci!』
と声をかけていた。
普段ならこんな砕けたお礼は言わないジュールさんだが、きっと佳都にもわかるように返したんだ。
そんなジュールさんの優しさに俺は思わず笑みが溢れた。
あの部屋で今から何が行われるか、それはよくわかっている。
なんせあの部屋にとんでもない量の着物が揃えられているのを見たんだから。
明日の初詣で弓弦くんたちに着物を着させようと画策した母たちの作戦だ。
フランスでウェディングドレスに袖を通し、美しい姿を見せてくれた弓弦くんたちの和装がみたい。
それが母たちの願いだった。
もちろん、佳都と理央くん、そして空良くんと秀吾くんも、もちろん明日は着物を着ることが決定している。
それぞれの母たちが思い入れのある着物を用意しているのだ。
俺としても佳都が着物を着てくれるのは嬉しいことだ。
だが、母親と七海も含めて総勢十三人の着物美人たちを連れての初詣か……。
まぁ、あまりにも目を惹きすぎて逆に近寄れないということもあるだろうが、どれだけ警戒してもおかしな奴というのは現れる。
そこだけを十分気をつけないといけないな。
弓弦くんたちが着物を選んでいる間に、ロレーヌたちにも明日の説明をする。
明日の初詣に着て行く着物を選んでいると伝えると喜んでくれたが肝心なのはその後の話だ。
ロレーヌたちが今日の宿泊先に定宿であるホテルに帰るつもりなのはわかっていたが、明日の着付けの問題もあって今日はそれぞれの家に泊まって欲しいと告げると、喜んで賛成してくれて助かった。断られなくて本当によかった。
うちの実家ではジュールさんに泊まっていただくことになった。
もちろん佳都と母の望み通りだ。
弓弦くんたちが戻ってきてお茶の時間にジュールさんが紅茶を淹れてくれたが、フランスで飲んだ時と変わらない味に驚いてしまった。
なんせフランスの水は硬水で日本の水は軟水。
一般的に軟水で紅茶を淹れると香りが出やすいと言われている。
そのためフランスで紅茶を淹れる時と同じやり方で日本で淹れると紅茶の味が強く出てしまう。
それなのに、ジュールさんが淹れた紅茶はフランスと変わらぬ味をしている。
これは本当に長年培ってきた経験と、紅茶を淹れる才能の両方を持っているからだろう。
佳都はジュールさんの淹れてくれた紅茶を飲んで、母たちにこれを飲ませたかったのだと喜んでいたし、母たちもこの紅茶を淹れられるようになりたいと大興奮していた。
そんな佳都と母たちを見て、
「直己、私もジュールさんに紅茶の淹れ方を習うぞ。お前も習っておいた方がいい」
と父が声をかけてきたのが印象的だった。
どうやら少なからずジュールさんに嫉妬したようだ。
いつまで経っても母に対する父の独占欲が消えないように、俺もきっといつまでも佳都の一番でありたいと願うんだろう。
なんだか将来の自分の姿が見えたような気がして、思わず笑ってしまった。
観月たちと別れ、ジュールさんと共にうちの実家に向かう。
ジュールさんを実家に泊めるのは急遽決まったことだが、うちではいつでも客間は整えてあるから安心だ。
そこでジュールさんにはゆっくりと休んでもらおう。
ロレーヌ家では筆頭執事として忙しい毎日を過ごしているようだし、たまには主人と離れて過ごす時間があってもいい。
――今夜は旦那さまが暴走されないか見張るものがおりませんので、それが少し心配でございまして……
そんなことを言われていたロレーヌがいささか心配だが、観月たちも一緒だし、きっと大丈夫だろう。
「あの、直己さん、ジュールさんを部屋に案内したいです。一緒に行ってもらえますか?」
ジュールさんは日本語がほとんど理解ができないから、自分から率先して声をかけたい佳都はもどかしいだろう。
できるだけ俺が佳都とジュールさんの間に入ってやらないとな。
「ああ、もちろんだよ」
ジュールさんに佳都が部屋に案内すると声をかけると、笑顔で佳都に
『Merci!』
と声をかけていた。
普段ならこんな砕けたお礼は言わないジュールさんだが、きっと佳都にもわかるように返したんだ。
そんなジュールさんの優しさに俺は思わず笑みが溢れた。
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