71 / 79
番外編
悠真が望むなら……
しおりを挟む
ある一部分だけが書きたくて書いてしまったお話。
可愛い二人の様子を楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side伊織>
翌日は休みだからと悠真とたっぷりと愛し合って裸のまま眠った。
私の腕の付け根と肩に当たる場所は悠真が頭をおく定位置。
ピッタリと隙間なく抱きついたまま、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てる悠真を愛おしく思いながら、幸せを噛み締める。
こうして悠真の隣で眠った恋人がいないことが何よりも嬉しい。
きっと悠真も同じように思ってくれているだろう。
神に誓っていう。
私は物心ついてから、同じ布団やベッドを共にした人は一人もいない。
悠真と出会うまで誠実に生きてきて本当に良かった。
無性に悠真への愛が溢れてきて、ぎゅっと抱きしめると私の力が強かったのか、悠真が目を覚ましてしまった。
「い、おりさん……?」
「すみません、悠真。幸せすぎてつい悠真を抱きしめてしまいました」
「いいですよ、好きなだけ抱きしめてください……私も伊織さんの隣でこうして寝られるのが幸せです」
優しい悠真は睡眠の邪魔をされてもこんな優しい言葉を返してくれる。
「私の腕枕は悠真専用ですよ。悠真の腕枕も私のものでしょう?」
「ええ、そうですね。今は伊織さんのものですよ」
「えっ……」
今は?
今はって言ったのか?
それって、以前は他の人のものだったということか?
「それって……」
「ふふっ。嫉妬しましたか?」
私の焦る顔を見て嬉しそうに笑う悠真の表情にホッとした。
「なんだ、私を驚かせるための冗談ですか?」
「冗談ではないです。でも相手は、真琴ですよ」
「えっ、ああ……なるほど」
真琴くんか。
それなら納得だな。
悠真の八歳年下の弟、真琴くんと悠真はこちらが見ていて妬けるほど仲がいい。
兄弟というのはこんなにも仲がいいものかと驚いたほどだ。
だがほぼ変わらない年齢差の周平さんと涼平さんは兄弟仲は悪くないが、悠真たちとは雲泥の差だ。
やはり悠真たちが特別なのだろう。
宮古島の実家を訪れたときに二人が子どもの頃の映像を見せてもらったが、幼い真琴くんは天使のように可愛らしく、悠真もまた女神のように美しかった。
あんなに可愛い弟なら一緒に寝ていたのも頷ける。
「いつも一緒に寝ていたんですが、私が大学受験の勉強をし始めた頃、邪魔しちゃいけないから一人で寝るって言って別々に寝たことがあったんです」
「そうなんですか、真琴くんも悠真のために我慢したんでしょうね」
「ふふ、でもその日の夜中に枕持って私の部屋に来たんですよ。にぃにぃが寂しくて寝られないかもしれないからって。本当は真琴が寂しかったんだと思うんですけど、私のために来てあげたって……おっきな枕を両手で胸に抱いて。可愛いでしょう?」
確かに想像するだけで可愛い。
きっと悠真の部屋に行くまでに葛藤したんだろうな。
「それでずっと一緒に寝ていたんですか?」
「ええ。もともと真琴が一歳くらいから私の隣だと朝まで熟睡してくれるから一緒に寝る習慣がついていたので、真琴がいた方がぐっすり寝られましたね。勉強にもその方が集中できるからって、結局実家に住んでいる間はずっと一緒に寝てました」
あの部屋で二人で……本当に可愛いしかないな。
「大学が休みのときに帰省した時は嬉しそうに枕持ってやってきて……大学での生活を話したり、真琴の学校の話を聞いたりしているうちに寝落ちして……ふふ、楽しかったな」
懐かしそうに思い出話をする悠真を見ているとつい聞きたくなってしまった。
「今でもまた真琴くんと二人で寝たいですか?」
積極的にさせたくはないが、悠真が望むなら叶えてあげたいと思う。
「うーん、そうですね。もちろん楽しいとは思いますし、そういう機会があるなら喜んで寝たいですが、成瀬さんがダメだって言いそうですね」
「ああ……。成瀬、か……」
真琴くんに関しては悠真にさえ嫉妬してしまう男だからな。
「それに、今は伊織さんと一緒の方がぐっすり寝れますから。私専用の腕枕は誰にも渡しませんよ」
私を誘うような悠真の熱を帯びた目に一気に昂るのがわかる。
「悠真……いいですか?」
「ええ、私も伊織さんが欲しいです……」
悠真のその言葉を合図に唇を重ね合わせた。
ピッタリと隙間なく抱き合って、お互いの熱を感じながら私たちの甘い時間がまた始まる。
可愛い二人の様子を楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side伊織>
翌日は休みだからと悠真とたっぷりと愛し合って裸のまま眠った。
私の腕の付け根と肩に当たる場所は悠真が頭をおく定位置。
ピッタリと隙間なく抱きついたまま、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てる悠真を愛おしく思いながら、幸せを噛み締める。
こうして悠真の隣で眠った恋人がいないことが何よりも嬉しい。
きっと悠真も同じように思ってくれているだろう。
神に誓っていう。
私は物心ついてから、同じ布団やベッドを共にした人は一人もいない。
悠真と出会うまで誠実に生きてきて本当に良かった。
無性に悠真への愛が溢れてきて、ぎゅっと抱きしめると私の力が強かったのか、悠真が目を覚ましてしまった。
「い、おりさん……?」
「すみません、悠真。幸せすぎてつい悠真を抱きしめてしまいました」
「いいですよ、好きなだけ抱きしめてください……私も伊織さんの隣でこうして寝られるのが幸せです」
優しい悠真は睡眠の邪魔をされてもこんな優しい言葉を返してくれる。
「私の腕枕は悠真専用ですよ。悠真の腕枕も私のものでしょう?」
「ええ、そうですね。今は伊織さんのものですよ」
「えっ……」
今は?
今はって言ったのか?
それって、以前は他の人のものだったということか?
「それって……」
「ふふっ。嫉妬しましたか?」
私の焦る顔を見て嬉しそうに笑う悠真の表情にホッとした。
「なんだ、私を驚かせるための冗談ですか?」
「冗談ではないです。でも相手は、真琴ですよ」
「えっ、ああ……なるほど」
真琴くんか。
それなら納得だな。
悠真の八歳年下の弟、真琴くんと悠真はこちらが見ていて妬けるほど仲がいい。
兄弟というのはこんなにも仲がいいものかと驚いたほどだ。
だがほぼ変わらない年齢差の周平さんと涼平さんは兄弟仲は悪くないが、悠真たちとは雲泥の差だ。
やはり悠真たちが特別なのだろう。
宮古島の実家を訪れたときに二人が子どもの頃の映像を見せてもらったが、幼い真琴くんは天使のように可愛らしく、悠真もまた女神のように美しかった。
あんなに可愛い弟なら一緒に寝ていたのも頷ける。
「いつも一緒に寝ていたんですが、私が大学受験の勉強をし始めた頃、邪魔しちゃいけないから一人で寝るって言って別々に寝たことがあったんです」
「そうなんですか、真琴くんも悠真のために我慢したんでしょうね」
「ふふ、でもその日の夜中に枕持って私の部屋に来たんですよ。にぃにぃが寂しくて寝られないかもしれないからって。本当は真琴が寂しかったんだと思うんですけど、私のために来てあげたって……おっきな枕を両手で胸に抱いて。可愛いでしょう?」
確かに想像するだけで可愛い。
きっと悠真の部屋に行くまでに葛藤したんだろうな。
「それでずっと一緒に寝ていたんですか?」
「ええ。もともと真琴が一歳くらいから私の隣だと朝まで熟睡してくれるから一緒に寝る習慣がついていたので、真琴がいた方がぐっすり寝られましたね。勉強にもその方が集中できるからって、結局実家に住んでいる間はずっと一緒に寝てました」
あの部屋で二人で……本当に可愛いしかないな。
「大学が休みのときに帰省した時は嬉しそうに枕持ってやってきて……大学での生活を話したり、真琴の学校の話を聞いたりしているうちに寝落ちして……ふふ、楽しかったな」
懐かしそうに思い出話をする悠真を見ているとつい聞きたくなってしまった。
「今でもまた真琴くんと二人で寝たいですか?」
積極的にさせたくはないが、悠真が望むなら叶えてあげたいと思う。
「うーん、そうですね。もちろん楽しいとは思いますし、そういう機会があるなら喜んで寝たいですが、成瀬さんがダメだって言いそうですね」
「ああ……。成瀬、か……」
真琴くんに関しては悠真にさえ嫉妬してしまう男だからな。
「それに、今は伊織さんと一緒の方がぐっすり寝れますから。私専用の腕枕は誰にも渡しませんよ」
私を誘うような悠真の熱を帯びた目に一気に昂るのがわかる。
「悠真……いいですか?」
「ええ、私も伊織さんが欲しいです……」
悠真のその言葉を合図に唇を重ね合わせた。
ピッタリと隙間なく抱き合って、お互いの熱を感じながら私たちの甘い時間がまた始まる。
521
あなたにおすすめの小説
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる