南国特有のスコールが初恋を連れてきてくれました

波木真帆

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番外編

悠真が望むなら……

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ある一部分だけが書きたくて書いてしまったお話。
可愛い二人の様子を楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *

<side伊織>

翌日は休みだからと悠真とたっぷりと愛し合って裸のまま眠った。
私の腕の付け根と肩に当たる場所は悠真が頭をおく定位置。
ピッタリと隙間なく抱きついたまま、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てる悠真を愛おしく思いながら、幸せを噛み締める。

こうして悠真の隣で眠った恋人がいないことが何よりも嬉しい。
きっと悠真も同じように思ってくれているだろう。

神に誓っていう。
私は物心ついてから、同じ布団やベッドを共にした人は一人もいない。
悠真と出会うまで誠実に生きてきて本当に良かった。

無性に悠真への愛が溢れてきて、ぎゅっと抱きしめると私の力が強かったのか、悠真が目を覚ましてしまった。

「い、おりさん……?」

「すみません、悠真。幸せすぎてつい悠真を抱きしめてしまいました」

「いいですよ、好きなだけ抱きしめてください……私も伊織さんの隣でこうして寝られるのが幸せです」

優しい悠真は睡眠の邪魔をされてもこんな優しい言葉を返してくれる。

「私の腕枕は悠真専用ですよ。悠真の腕枕も私のものでしょう?」

「ええ、そうですね。今は伊織さんのものですよ」

「えっ……」

今は?
今はって言ったのか?

それって、以前は他の人のものだったということか?

「それって……」

「ふふっ。嫉妬しましたか?」

私の焦る顔を見て嬉しそうに笑う悠真の表情にホッとした。

「なんだ、私を驚かせるための冗談ですか?」

「冗談ではないです。でも相手は、真琴ですよ」

「えっ、ああ……なるほど」

真琴くんか。
それなら納得だな。

悠真の八歳年下の弟、真琴くんと悠真はこちらが見ていて妬けるほど仲がいい。
兄弟というのはこんなにも仲がいいものかと驚いたほどだ。

だがほぼ変わらない年齢差の周平さんと涼平さんは兄弟仲は悪くないが、悠真たちとは雲泥の差だ。
やはり悠真たちが特別なのだろう。

宮古島の実家を訪れたときに二人が子どもの頃の映像を見せてもらったが、幼い真琴くんは天使のように可愛らしく、悠真もまた女神のように美しかった。

あんなに可愛い弟なら一緒に寝ていたのも頷ける。

「いつも一緒に寝ていたんですが、私が大学受験の勉強をし始めた頃、邪魔しちゃいけないから一人で寝るって言って別々に寝たことがあったんです」

「そうなんですか、真琴くんも悠真のために我慢したんでしょうね」

「ふふ、でもその日の夜中に枕持って私の部屋に来たんですよ。にぃにぃが寂しくて寝られないかもしれないからって。本当は真琴が寂しかったんだと思うんですけど、私のために来てあげたって……おっきな枕を両手で胸に抱いて。可愛いでしょう?」

確かに想像するだけで可愛い。
きっと悠真の部屋に行くまでに葛藤したんだろうな。

「それでずっと一緒に寝ていたんですか?」

「ええ。もともと真琴が一歳くらいから私の隣だと朝まで熟睡してくれるから一緒に寝る習慣がついていたので、真琴がいた方がぐっすり寝られましたね。勉強にもその方が集中できるからって、結局実家に住んでいる間はずっと一緒に寝てました」

あの部屋で二人で……本当に可愛いしかないな。

「大学が休みのときに帰省した時は嬉しそうに枕持ってやってきて……大学での生活を話したり、真琴の学校の話を聞いたりしているうちに寝落ちして……ふふ、楽しかったな」

懐かしそうに思い出話をする悠真を見ているとつい聞きたくなってしまった。

「今でもまた真琴くんと二人で寝たいですか?」

積極的にさせたくはないが、悠真が望むなら叶えてあげたいと思う。

「うーん、そうですね。もちろん楽しいとは思いますし、そういう機会があるなら喜んで寝たいですが、成瀬さんがダメだって言いそうですね」

「ああ……。成瀬、か……」

真琴くんに関しては悠真にさえ嫉妬してしまう男だからな。

「それに、今は伊織さんと一緒の方がぐっすり寝れますから。私専用の腕枕は誰にも渡しませんよ」

私を誘うような悠真の熱を帯びた目に一気に昂るのがわかる。

「悠真……いいですか?」

「ええ、私も伊織さんが欲しいです……」

悠真のその言葉を合図に唇を重ね合わせた。
ピッタリと隙間なく抱き合って、お互いの熱を感じながら私たちの甘い時間がまた始まる。
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