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ミロの匂い
「何を今更」
「えっ?」
「目が合った時から、わかっていた」
さらりと言い切られて、言葉に詰まる。
「そのような格好をしていても、匂いでわかる。最初から男だとわかっていた」
「じゃあ、どうして……」
男だとわかっていて、花嫁だと受け入れられる理由がわからなかった。
混乱したまま見上げると、カイはほんのわずかに首を傾げる。
「どうして、とは?」
逆に問い返されて、返答に困る。
「だって、男じゃ子どもが……」
男だと知られたら後継も作れない。
だから、絶対に拒絶されると思っていた。
それなのに、否定されないどころか、当たり前のように受け入れられている。
その理由がわからなくて怖い。
すると、カイは少しだけ目を細めた。
「そんなのは簡単だ。其方だからだ」
「えっ?」
「最初から、私は其方を選んでいる」
低くはっきりした声。迷いは一切感じられない。
「でも、僕は……」
選ばれることなんて、今まで一度もなかった。
ましてや、自分は代わりで……
「代わり、ではない」
ミロの心を読んだように、言葉が落ちてきた。
「お前が来るとわかっていた」
その言葉に、胸の奥が強く締め付けられる。
どういうことかわからないのに、その言葉だけがまっすぐに刺さった。
「だから迎えた。それだけだ」
当然とでも言いたげな声にミロは心の声を漏らした。
「そんなの、おかしいです……」
気づけばポツリと呟いていた。
自分でも驚くくらい小さな声、
けれど、カイの耳はぴくりと動き、しっかりとそれを拾う。
「何が、おかしいんだ?」
「だって、僕なんて……」
言いかけて、言葉が詰まる。
穢れている、価値がない。何度も刷り込まれてきた言葉が、喉の奥に引っかかる。
「僕は、その……」
続けようとした瞬間、胸元に抱き寄せられる。
「言うな。それ以上、自分を貶める言葉は口にするな」
怒られているのかと思った。
けれど、違う。カイがミロを見る眼差しはこの上なく優しい。
「其方は私が選んだ運命の相手だ。それを否定するのは、私を否定することと同じだぞ」
「カイが、僕を選んだ……?」
「ああ、そして、私も其方に選ばれた」
そう言って、カイはわずかに距離を詰める。
「だから、この匂いが心地よいのだろう?」
問われて、ミロは小さく頷いた。
どんどん強くなっていくこの香りが心地いい。
「はい。落ち着く、というか……すごく、安心します」
自分でも不思議だった。
こんなにも甘い香りなのに、嫌じゃない。
むしろ、ずっと包まれていたいとさえ思う。
すると、カイはゆっくりと目を細めた
「そうか」
満足したような声。同時にカイの尻尾が大きく揺れる。
「それは当然だ。これは私の匂いだからな」
「え……?」
意味がわからず、目を瞬かせる。
逃げるまもなく、腕の中に強く引き寄せられた。
「其方にだけ、そう感じるようにできている」
耳元で囁かれ、身体の奥がキュンと疼く。
「他の者には、ただ強すぎるだけの香りだ」
その言葉にハッとする。
だから、あの侍従たちはあんな表情を……
「本当に、僕だけなんですか?」
震える声で尋ねると、カイは迷いなく答えた。
「ああ、そうだ。だが、今のお前の匂いは耐えられん」
「っ!」
カイに顔を顰められて、カッと顔が赤くなる。
お風呂は週に一度しか入らせてもらっていなかった。
許されたのは、濡れタオルで身体を拭くことだけ。
そんな身体だから、臭いに決まっている。
こんな匂いをこれ以上カイに嗅がせたくなくて、ミロは思わず身体をすくめた。
「僕……やっぱり、臭いんだ……ごめんなさい」
すると、カイは眉を顰めた。
「違う。其方の匂いではない」
「えっ?」
戸惑いながら見上げると、カイは静かにミロの服に手をかけた。
「この匂いだ。其方以外の、雑多な匂いが強すぎる。私以外の誰かに触れさせただろう?」
「あの、着替えの時に……」
「私はお前自身の匂いを嗅ぎたいのだ。他の匂いに邪魔されるのは耐えられん。だから、良いな?」
カイの問いかけの意味がわからない。
けれど、僕を受け入れてくれたように、僕もカイの全てを受け入れたい。
「は、はい」
その返事に、カイは静かにミロを腕から下ろした。
片手でミロを抱きしめながら、もう片方でドレスの紐を解いていく。
「……っ、あ」
紐が解けて、ふっと息がしやすくなる。
身体がどんどん楽になるのを感じていると、ドレスがスッと床に落ちた。
「こんなものまで」
強く締め付けられたコルセットが外されると、一気に身体が軽くなった。
「まだ邪魔な匂いがついているが、ここは其方の匂いが強いな。いい匂いだ」
首筋に顔を寄せられて、ミロの身体は一瞬で熱くなった。
自分の匂いが心地よく受け止められていることに、恥ずかしさと嬉しさが混じり合う。
「カ、カイ……もう」
「まだまだ足りぬ。もっとたっぷり味わわせてくれ」
そう言われて、ミロは胸のドキドキを抑えることができなかった。
「えっ?」
「目が合った時から、わかっていた」
さらりと言い切られて、言葉に詰まる。
「そのような格好をしていても、匂いでわかる。最初から男だとわかっていた」
「じゃあ、どうして……」
男だとわかっていて、花嫁だと受け入れられる理由がわからなかった。
混乱したまま見上げると、カイはほんのわずかに首を傾げる。
「どうして、とは?」
逆に問い返されて、返答に困る。
「だって、男じゃ子どもが……」
男だと知られたら後継も作れない。
だから、絶対に拒絶されると思っていた。
それなのに、否定されないどころか、当たり前のように受け入れられている。
その理由がわからなくて怖い。
すると、カイは少しだけ目を細めた。
「そんなのは簡単だ。其方だからだ」
「えっ?」
「最初から、私は其方を選んでいる」
低くはっきりした声。迷いは一切感じられない。
「でも、僕は……」
選ばれることなんて、今まで一度もなかった。
ましてや、自分は代わりで……
「代わり、ではない」
ミロの心を読んだように、言葉が落ちてきた。
「お前が来るとわかっていた」
その言葉に、胸の奥が強く締め付けられる。
どういうことかわからないのに、その言葉だけがまっすぐに刺さった。
「だから迎えた。それだけだ」
当然とでも言いたげな声にミロは心の声を漏らした。
「そんなの、おかしいです……」
気づけばポツリと呟いていた。
自分でも驚くくらい小さな声、
けれど、カイの耳はぴくりと動き、しっかりとそれを拾う。
「何が、おかしいんだ?」
「だって、僕なんて……」
言いかけて、言葉が詰まる。
穢れている、価値がない。何度も刷り込まれてきた言葉が、喉の奥に引っかかる。
「僕は、その……」
続けようとした瞬間、胸元に抱き寄せられる。
「言うな。それ以上、自分を貶める言葉は口にするな」
怒られているのかと思った。
けれど、違う。カイがミロを見る眼差しはこの上なく優しい。
「其方は私が選んだ運命の相手だ。それを否定するのは、私を否定することと同じだぞ」
「カイが、僕を選んだ……?」
「ああ、そして、私も其方に選ばれた」
そう言って、カイはわずかに距離を詰める。
「だから、この匂いが心地よいのだろう?」
問われて、ミロは小さく頷いた。
どんどん強くなっていくこの香りが心地いい。
「はい。落ち着く、というか……すごく、安心します」
自分でも不思議だった。
こんなにも甘い香りなのに、嫌じゃない。
むしろ、ずっと包まれていたいとさえ思う。
すると、カイはゆっくりと目を細めた
「そうか」
満足したような声。同時にカイの尻尾が大きく揺れる。
「それは当然だ。これは私の匂いだからな」
「え……?」
意味がわからず、目を瞬かせる。
逃げるまもなく、腕の中に強く引き寄せられた。
「其方にだけ、そう感じるようにできている」
耳元で囁かれ、身体の奥がキュンと疼く。
「他の者には、ただ強すぎるだけの香りだ」
その言葉にハッとする。
だから、あの侍従たちはあんな表情を……
「本当に、僕だけなんですか?」
震える声で尋ねると、カイは迷いなく答えた。
「ああ、そうだ。だが、今のお前の匂いは耐えられん」
「っ!」
カイに顔を顰められて、カッと顔が赤くなる。
お風呂は週に一度しか入らせてもらっていなかった。
許されたのは、濡れタオルで身体を拭くことだけ。
そんな身体だから、臭いに決まっている。
こんな匂いをこれ以上カイに嗅がせたくなくて、ミロは思わず身体をすくめた。
「僕……やっぱり、臭いんだ……ごめんなさい」
すると、カイは眉を顰めた。
「違う。其方の匂いではない」
「えっ?」
戸惑いながら見上げると、カイは静かにミロの服に手をかけた。
「この匂いだ。其方以外の、雑多な匂いが強すぎる。私以外の誰かに触れさせただろう?」
「あの、着替えの時に……」
「私はお前自身の匂いを嗅ぎたいのだ。他の匂いに邪魔されるのは耐えられん。だから、良いな?」
カイの問いかけの意味がわからない。
けれど、僕を受け入れてくれたように、僕もカイの全てを受け入れたい。
「は、はい」
その返事に、カイは静かにミロを腕から下ろした。
片手でミロを抱きしめながら、もう片方でドレスの紐を解いていく。
「……っ、あ」
紐が解けて、ふっと息がしやすくなる。
身体がどんどん楽になるのを感じていると、ドレスがスッと床に落ちた。
「こんなものまで」
強く締め付けられたコルセットが外されると、一気に身体が軽くなった。
「まだ邪魔な匂いがついているが、ここは其方の匂いが強いな。いい匂いだ」
首筋に顔を寄せられて、ミロの身体は一瞬で熱くなった。
自分の匂いが心地よく受け止められていることに、恥ずかしさと嬉しさが混じり合う。
「カ、カイ……もう」
「まだまだ足りぬ。もっとたっぷり味わわせてくれ」
そう言われて、ミロは胸のドキドキを抑えることができなかった。
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----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
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詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!