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番外編
息子が王太子妃になるそうです
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「可愛い息子ができました」「可愛い孫ができました」に続く第三弾です(笑)
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「はぁ? ちょ――っ、透っ! あんた、今、何て言ったの?」
「だから、ロサラン王国の王太子妃になってこっちで暮らすことになったから、一度王太子と一緒に日本に帰るよ。王太子が父さんと母さんに挨拶がしたいんだって」
卒業旅行に大好きなロサラン王国に行ってくると行って旅立った息子から、数日ぶりに電話が来たと思ったら、こんな詐欺まがいの電話で思わずスマホを落としそうになってしまった。
「いやいや、透、あんた何の詐欺に引っ掛かってるの? いいから、早く逃げて帰ってきなさい!」
「違うって! 本当なんだってば。今だって、王宮にいて、近くに王太子もいるんだから」
自分で言うのもなんだけれど、真面目で素直で心優しくて……勉強だって、自分から進んでやるような良い子で、いつの頃からかロサラン王国というヨーロッパの小さな国に惹かれて、ロサラン語まで話せるようになった努力家の息子。
これまで心配事ひとつかけたことがない、本当にどこに出しても恥ずかしくない息子なのに、この数日で一体どうしてしまったのかしら?
ロサラン王国はヨーロッパでも治安がいいことで有名で、あの国なら透を行かせても大丈夫だと思って行かせたのに。
今、透の身に何が起こっているのか、全くわからない。
だって、いきなり息子が王太子妃になるって電話してきて信じられる?
そもそもうちのは息子であって、娘でもないのに。
「ねぇ、透。ちょっと落ち着いて話をしましょう。そっちで一体何があったの?」
「そう冷静に聞かれるとちょっと恥ずかしいんだけど……」
「恥ずかしいって何? どういうこと?」
「だから……ああ、もうはっきりいうよ。こっちで好きな人ができて、そのまま愛し合ったんだ」
「愛し合ったって……その」
「そう! 身も心も全部曝け出して、愛し合ったんだ。その相手がロサラン王国の王太子だったんだよ」
「そんなことって……そもそも、あんたは男が好きだったの?」
透が今までに女の子どころか誰にも興味を持っていなさそうなことは気づいていた。
でもただ単に今は女の子への興味より勉強が楽しいからだと思っていた。
だから、大学の卒業と就職先が決まってこれからゆっくり恋愛を楽しむんだろうと思っていた。
それはその通りになったのだけど、まさか男性を相手に選ぶとは思ってもみなかった。
「いや、それはわからないけど、でも僕はここで彼に……ジェリーさんに惹かれたんだ。彼と出会って彼に愛して欲しいって思った。だから、こうなったんだよ。母さんは知らないと思うけどロサランの男は生涯でたった一人しか愛さない。それを生まれた時から教えられているジェリーさんが僕を選んで僕を愛してくれたのは、相当の覚悟を持ってくれたんだと思う。だから、僕はずっと一緒にいるって決めたんだ」
「透……」
「母さんと父さんがどれだけ反対しても、僕の意思は変わらないし、ジェリーさんとの結婚を辞める気もない。もう一生をこのロサラン王国でジェリーさんと一緒に過ごすって決めたんだ。母さんたちがどうしても受け入れられないっていうならそれは仕方がないと思ってる。母さんたちともう一生会えなくても、僕はジェリーさんと一緒にいるって決めたんだ」
覚悟を決めた透のその口ぶりに私はもう反対する気など失せてしまった。
真面目で素直な息子だけど、自分が決めたことは絶対に曲げない頑固なところがある。
それがわかっているから、もう何を言っても変わらない。
どうせ、これから先、就職して、結婚してしまえば、相手が女性だろうが男性だろうが息子と離れて暮らすことに変わりはない。
それが遠く海外であっても気持ちが通じ合っているのと、お互いに縁を切って一生会えないのとどちらを選択するといえば、間違いなく前者だろう。
私は大きく深呼吸をして、電話口にいる息子に声をかけた。
「透が真剣だってわかったから、母さんはもう何も言わない。父さんのことも私が説得しておくわ。だから、王太子さま……ジェリーさんだった? その方を連れてきて。会えるのを楽しみにしているからって伝えて」
「母さん……ありがとう。じゃあ帰国する日が決まったら連絡するから。ありがとう」
最後のありがとうは少し声が潤んでいた。
泣き虫なあの子だから、泣いているのかもしれない。
ああ、これから忙しくなるわ。
まずは元さんを説得しなきゃ!
透を溺愛しているから大変かもね。
でも、透が幸せになれるのなら頑張るわよ!
ああ、二人が来る日が待ち遠しいわ。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「はぁ? ちょ――っ、透っ! あんた、今、何て言ったの?」
「だから、ロサラン王国の王太子妃になってこっちで暮らすことになったから、一度王太子と一緒に日本に帰るよ。王太子が父さんと母さんに挨拶がしたいんだって」
卒業旅行に大好きなロサラン王国に行ってくると行って旅立った息子から、数日ぶりに電話が来たと思ったら、こんな詐欺まがいの電話で思わずスマホを落としそうになってしまった。
「いやいや、透、あんた何の詐欺に引っ掛かってるの? いいから、早く逃げて帰ってきなさい!」
「違うって! 本当なんだってば。今だって、王宮にいて、近くに王太子もいるんだから」
自分で言うのもなんだけれど、真面目で素直で心優しくて……勉強だって、自分から進んでやるような良い子で、いつの頃からかロサラン王国というヨーロッパの小さな国に惹かれて、ロサラン語まで話せるようになった努力家の息子。
これまで心配事ひとつかけたことがない、本当にどこに出しても恥ずかしくない息子なのに、この数日で一体どうしてしまったのかしら?
ロサラン王国はヨーロッパでも治安がいいことで有名で、あの国なら透を行かせても大丈夫だと思って行かせたのに。
今、透の身に何が起こっているのか、全くわからない。
だって、いきなり息子が王太子妃になるって電話してきて信じられる?
そもそもうちのは息子であって、娘でもないのに。
「ねぇ、透。ちょっと落ち着いて話をしましょう。そっちで一体何があったの?」
「そう冷静に聞かれるとちょっと恥ずかしいんだけど……」
「恥ずかしいって何? どういうこと?」
「だから……ああ、もうはっきりいうよ。こっちで好きな人ができて、そのまま愛し合ったんだ」
「愛し合ったって……その」
「そう! 身も心も全部曝け出して、愛し合ったんだ。その相手がロサラン王国の王太子だったんだよ」
「そんなことって……そもそも、あんたは男が好きだったの?」
透が今までに女の子どころか誰にも興味を持っていなさそうなことは気づいていた。
でもただ単に今は女の子への興味より勉強が楽しいからだと思っていた。
だから、大学の卒業と就職先が決まってこれからゆっくり恋愛を楽しむんだろうと思っていた。
それはその通りになったのだけど、まさか男性を相手に選ぶとは思ってもみなかった。
「いや、それはわからないけど、でも僕はここで彼に……ジェリーさんに惹かれたんだ。彼と出会って彼に愛して欲しいって思った。だから、こうなったんだよ。母さんは知らないと思うけどロサランの男は生涯でたった一人しか愛さない。それを生まれた時から教えられているジェリーさんが僕を選んで僕を愛してくれたのは、相当の覚悟を持ってくれたんだと思う。だから、僕はずっと一緒にいるって決めたんだ」
「透……」
「母さんと父さんがどれだけ反対しても、僕の意思は変わらないし、ジェリーさんとの結婚を辞める気もない。もう一生をこのロサラン王国でジェリーさんと一緒に過ごすって決めたんだ。母さんたちがどうしても受け入れられないっていうならそれは仕方がないと思ってる。母さんたちともう一生会えなくても、僕はジェリーさんと一緒にいるって決めたんだ」
覚悟を決めた透のその口ぶりに私はもう反対する気など失せてしまった。
真面目で素直な息子だけど、自分が決めたことは絶対に曲げない頑固なところがある。
それがわかっているから、もう何を言っても変わらない。
どうせ、これから先、就職して、結婚してしまえば、相手が女性だろうが男性だろうが息子と離れて暮らすことに変わりはない。
それが遠く海外であっても気持ちが通じ合っているのと、お互いに縁を切って一生会えないのとどちらを選択するといえば、間違いなく前者だろう。
私は大きく深呼吸をして、電話口にいる息子に声をかけた。
「透が真剣だってわかったから、母さんはもう何も言わない。父さんのことも私が説得しておくわ。だから、王太子さま……ジェリーさんだった? その方を連れてきて。会えるのを楽しみにしているからって伝えて」
「母さん……ありがとう。じゃあ帰国する日が決まったら連絡するから。ありがとう」
最後のありがとうは少し声が潤んでいた。
泣き虫なあの子だから、泣いているのかもしれない。
ああ、これから忙しくなるわ。
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でも、透が幸せになれるのなら頑張るわよ!
ああ、二人が来る日が待ち遠しいわ。
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