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これって現実?
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『そ、それで君はどうして1人でこのコンサートに? チケットが2枚あるということは、誰かと一緒に来る予定だったんだろう?』
『あ、はい。実は、俺……いや、僕にアーチーを教えてくれた祖父と一緒に来るはずだったんです』
『おじいさんと?』
『はい。祖父は若い頃からアーチーの大ファンで、僕は祖父に可愛がってもらっていたので幼い頃から自然とアーチーの曲を耳にしていて、それで今回のコンサートも祖父と一緒に行こうってチケットを申し込んだんです。でも……3ヶ月前に病気で亡くなってしまって……』
『――っ!』
『ずっと待ち望んでいたアーチーのコンサートでしたから、祖父の思いが詰まったこのチケットだけでも一緒に連れてきてあげられたら……と思って来たんです。ただ余っているチケットなら、あの人に差し上げてもよかったんですけど……祖父がずっと神棚に祀って今日のこの日を楽しみにしていたチケットだから、どうしても渡せなくて、それであんな騒ぎに……』
『そう、だったのか……』
『すみません、せっかくのアーチーのコンサートの日にこんな騒ぎを起こしてしまって……。あの、騒ぎを起こしてしまった僕も会場から追い出されたり、しますか……?』
じいちゃんのチケットを守るためだったとはいえ、騒ぎを起こしてしまったのは事実。
関係者の人に出て行ってくれと言われればそれに従うしかない。
『そんなことしないよ。君にはしっかりとお祖父さんの分まで楽しいんでいって欲しい』
『本当ですかっ? ああ……よかった……』
『――っ!!』
心からホッとした瞬間、思わず涙が出た。
じいちゃんとの約束を守れるのが嬉しくて感極まったのかもしれない。
すると急に大きなものに包み込まれて驚いた。
えっ? どうして俺……抱きしめられてるんだ?
『あ、あの……』
『私は今、君のお祖父さんにもアーチーにも嫉妬してる』
『えっ? し、っと? どうして、ですか?』
『君に涙を流させるほど、君の心の中に2人がいるからだよ』
『そんな……』
彼がどんな思いで俺を抱きしめてくれているかはわからないけれど、彼のぬくもりにホッとしている自分がいることに俺自身も驚いていた。
しばらく彼に抱きしめられて、
『君の名前を聞いてもいいかな?』
と尋ねられた。
そういえば、あんなにお世話になったのにまだ名前も言ってない。
『すみません、僕……何も話さずにいて……。僕、吾妻洋輔と言います』
『ヨウスケ?』
『はい。ヨウスケです』
『ヨウスケ、いい名前だな』
『あ、ありがとうございます』
優しい笑顔でそう言ってもらえて嬉しい。
洋輔という名前はじいちゃんが名付けてくれて、俺もすごく気に入っている名前なんだ。
『あ、あの……名前を伺っても?』
『ああ、私は……そうだな。私の名前を言う前にぜひ紹介したい人がいる。一緒にきてもらえるか?』
『僕に紹介したい人? それは、誰ですか?』
『ふふっ。会った時の楽しみだよ。さぁ、行こう』
そういうと、彼は俺を抱き上げたまま部屋を出た。
『あ、あの僕……下ります』
『気にしないでいい。こうやっておくほうがヨウスケにとっても安全だからね』
『安全? どう言う意味ですか?』
ここってそんなに危ない場所?
ロサラン王国は治安がいいで有名だったはずだけど。
『部屋に入ったら下ろしてあげるからそれまで私の腕の中にいてくれ』
そう言われたらこれ以上わがまま言うわけにもいかない。
頷いて大人しく彼の腕の中にいると、
『ああ、いい子だ』
と優しく微笑まれた。
さっきの部屋から少し離れた突き当たりの部屋に着くとここにも警備の人がいた。
彼はその警備の人に何かロサラン語で尋ねると、すぐに扉を開けてくれた。
『さぁ、ヨウスケ。入るよ』
そっと下ろされて手を引かれ嬉しそうに中へと案内された俺の目に飛び込んできたのは……
「えっ……アー、チー?? うそっ、本物??」
紛うことなき、アーチー本人だった。
「えっ? うそっ、なんで……あの、えっ?」
驚きすぎて日本語しか出ていないことにも気づいていない。
あまりの衝撃に身体の力が抜けて立っていられない。
ふらふらと倒れそうになった瞬間、彼にギュッと抱きしめられた。
『ごめん、驚かせすぎたかな?』
『えっ……あの、これって、どういうこと、ですか?』
もう何が何だかわからない。
目の前のアーチーは俺をみて微笑んでくれているし、隣ではアーチーによく似た人に抱きしめられて……。
もう夢以上の出来事に頭が働かない。
『実は、私はエリック・カーディフ。アーチーの孫なんだよ』
『――っ、あ、あなたが……アーチーの、お孫さん? だから、そんなに似ている、んですか?』
『ああ、そうだな。こういうのを隔世遺伝と言うらしいが、私は特にアーチーにそっくりだな』
『うそ……っ、こんなことが起きるなんて……っ』
まさか……ずっと大ファンだったアーチーにこんなに近くで会えたばかりか、そのお孫さんに優しくしてもらえるなんて……。
『エリック。この子はもしかして、お前の……?』
『ああ、そうなる予定の子だよ。アーチーのファンだって言うから、紹介ついでに会わせてあげようと思って連れてきたんだが本当はお祖父さんと一緒に来るつもりだったらしい。コンサート直前に亡くなって1人で来たみたいだけどね』
『そうなのか……それは辛いことで……。君のお祖父さんの話を聞かせてもらっても?』
アーチーがじいちゃんのことを尋ねてるよ!!!
こんなこと本当に現実に起こってるの?
『あ、はい。実は、俺……いや、僕にアーチーを教えてくれた祖父と一緒に来るはずだったんです』
『おじいさんと?』
『はい。祖父は若い頃からアーチーの大ファンで、僕は祖父に可愛がってもらっていたので幼い頃から自然とアーチーの曲を耳にしていて、それで今回のコンサートも祖父と一緒に行こうってチケットを申し込んだんです。でも……3ヶ月前に病気で亡くなってしまって……』
『――っ!』
『ずっと待ち望んでいたアーチーのコンサートでしたから、祖父の思いが詰まったこのチケットだけでも一緒に連れてきてあげられたら……と思って来たんです。ただ余っているチケットなら、あの人に差し上げてもよかったんですけど……祖父がずっと神棚に祀って今日のこの日を楽しみにしていたチケットだから、どうしても渡せなくて、それであんな騒ぎに……』
『そう、だったのか……』
『すみません、せっかくのアーチーのコンサートの日にこんな騒ぎを起こしてしまって……。あの、騒ぎを起こしてしまった僕も会場から追い出されたり、しますか……?』
じいちゃんのチケットを守るためだったとはいえ、騒ぎを起こしてしまったのは事実。
関係者の人に出て行ってくれと言われればそれに従うしかない。
『そんなことしないよ。君にはしっかりとお祖父さんの分まで楽しいんでいって欲しい』
『本当ですかっ? ああ……よかった……』
『――っ!!』
心からホッとした瞬間、思わず涙が出た。
じいちゃんとの約束を守れるのが嬉しくて感極まったのかもしれない。
すると急に大きなものに包み込まれて驚いた。
えっ? どうして俺……抱きしめられてるんだ?
『あ、あの……』
『私は今、君のお祖父さんにもアーチーにも嫉妬してる』
『えっ? し、っと? どうして、ですか?』
『君に涙を流させるほど、君の心の中に2人がいるからだよ』
『そんな……』
彼がどんな思いで俺を抱きしめてくれているかはわからないけれど、彼のぬくもりにホッとしている自分がいることに俺自身も驚いていた。
しばらく彼に抱きしめられて、
『君の名前を聞いてもいいかな?』
と尋ねられた。
そういえば、あんなにお世話になったのにまだ名前も言ってない。
『すみません、僕……何も話さずにいて……。僕、吾妻洋輔と言います』
『ヨウスケ?』
『はい。ヨウスケです』
『ヨウスケ、いい名前だな』
『あ、ありがとうございます』
優しい笑顔でそう言ってもらえて嬉しい。
洋輔という名前はじいちゃんが名付けてくれて、俺もすごく気に入っている名前なんだ。
『あ、あの……名前を伺っても?』
『ああ、私は……そうだな。私の名前を言う前にぜひ紹介したい人がいる。一緒にきてもらえるか?』
『僕に紹介したい人? それは、誰ですか?』
『ふふっ。会った時の楽しみだよ。さぁ、行こう』
そういうと、彼は俺を抱き上げたまま部屋を出た。
『あ、あの僕……下ります』
『気にしないでいい。こうやっておくほうがヨウスケにとっても安全だからね』
『安全? どう言う意味ですか?』
ここってそんなに危ない場所?
ロサラン王国は治安がいいで有名だったはずだけど。
『部屋に入ったら下ろしてあげるからそれまで私の腕の中にいてくれ』
そう言われたらこれ以上わがまま言うわけにもいかない。
頷いて大人しく彼の腕の中にいると、
『ああ、いい子だ』
と優しく微笑まれた。
さっきの部屋から少し離れた突き当たりの部屋に着くとここにも警備の人がいた。
彼はその警備の人に何かロサラン語で尋ねると、すぐに扉を開けてくれた。
『さぁ、ヨウスケ。入るよ』
そっと下ろされて手を引かれ嬉しそうに中へと案内された俺の目に飛び込んできたのは……
「えっ……アー、チー?? うそっ、本物??」
紛うことなき、アーチー本人だった。
「えっ? うそっ、なんで……あの、えっ?」
驚きすぎて日本語しか出ていないことにも気づいていない。
あまりの衝撃に身体の力が抜けて立っていられない。
ふらふらと倒れそうになった瞬間、彼にギュッと抱きしめられた。
『ごめん、驚かせすぎたかな?』
『えっ……あの、これって、どういうこと、ですか?』
もう何が何だかわからない。
目の前のアーチーは俺をみて微笑んでくれているし、隣ではアーチーによく似た人に抱きしめられて……。
もう夢以上の出来事に頭が働かない。
『実は、私はエリック・カーディフ。アーチーの孫なんだよ』
『――っ、あ、あなたが……アーチーの、お孫さん? だから、そんなに似ている、んですか?』
『ああ、そうだな。こういうのを隔世遺伝と言うらしいが、私は特にアーチーにそっくりだな』
『うそ……っ、こんなことが起きるなんて……っ』
まさか……ずっと大ファンだったアーチーにこんなに近くで会えたばかりか、そのお孫さんに優しくしてもらえるなんて……。
『エリック。この子はもしかして、お前の……?』
『ああ、そうなる予定の子だよ。アーチーのファンだって言うから、紹介ついでに会わせてあげようと思って連れてきたんだが本当はお祖父さんと一緒に来るつもりだったらしい。コンサート直前に亡くなって1人で来たみたいだけどね』
『そうなのか……それは辛いことで……。君のお祖父さんの話を聞かせてもらっても?』
アーチーがじいちゃんのことを尋ねてるよ!!!
こんなこと本当に現実に起こってるの?
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