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甘い夜の始まり
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「お父さま」
「おお、ユーリ。んっ? どうした? 目が赤いな」
陛下に早速報告に行きたいというジーノ、いやユーリと一緒に陛下の元に伺うと、すぐにユーリが先ほどまで泣いていたことにお気づきになった。
これほど溺愛なさっているのだ。中身がジーノだと知れば、いくら外見がユーリさまだと伝えても悲しみを与えてしまうのは当然だ。ユーリが二人だけの秘密にしようと言ったのも頷ける。
「ヴァルフレード。ユーリを泣かせたのか?」
「違うんです、お父さま」
「何が違うんだ?」
「僕……ヴァルフレードさまが亡くなられた婚約者殿をこの上なく愛していらっしゃったことを知って、ヴァルフレードさまの一途な愛に感動して泣いてしまったのです。ですから、ヴァルフレードさまは何も悪くないんです」
「ユーリ……」
「だから、僕……決めました。その方の気持ちも全部含めてヴァルフレードさまと添い遂げようって」
陛下に話に行く前にユーリが言ってくれた。
私たちの中でジーノの存在を全て消すことはできない。
それにいくら私たちが心から愛し合っていても、見た目がユーリである以上、私たちを見て亡くなったジーノをさっさと忘れて王族であるユーリに鞍替えしたと言ってくるものもいるだろう。
それなら、最初からジーノの存在を示しておいたほうがいいのだ、と。
「ユーリ、だがそれではお前が辛すぎるのではないか? ヴァルフレードの心に他のものがいながら一生を共にするのだぞ」
陛下の思いは当然だ。誰しも、我が子が二番目になることなど望みはしないだろう。
「いいえ、今のヴァルフレードさまは亡くなられた婚約者のお方の存在があってこそ。僕は今のヴァルフレードさまを好きになったので構いません。それに、婚約者が亡くなったからといってすぐに気持ちがなくなるようなお方の方が薄情だと思いませんか?」
「そ、それは……」
「お父さまも、亡くなられたお母さまのことをずっと思い続けていらっしゃるでしょう? 僕は、そんなお父さまを見てきたのでヴァルフレードさまのお気持ちが痛いほどわかるのです。僕はそんなヴァルフレードさまに寄り添って生きていきたい。もう決めました」
「ユーリ……やはりお前は変わったな。本当に強くなった。それもヴァルフレードと出会ったからだろうか」
ユーリがその言葉に頷くと陛下は笑顔を向けられた。
「ヴァルフレード。愛しい婚約者の死は其方の心に深い悲しみを与えただろう。だが、ユーリも一時は未来への希望を失った子だ。これからはユーリと共にそれを乗り越え、そして、喜びの多い日々を過ごしてくれ。私は二人のいく末を見守るとしよう。ユーリは其方と結婚したら王族から公爵家の一員となる。ユーリが辛い目に遭うことのないように大切にしてやってくれ」
「はい。アゴスティーノの名にかけて、ユーリさまを一生守り続けると誓います」
「頼むぞ。ユーリ、これでよかったのだな?」
「はい。お父さま……ありがとうございます!」
ユーリは大粒の涙を流しながら陛下に抱きついた。
中身がジーノだと思えないほどにお互いを思い合っている姿は本当の親子にしか見えない。
私は陛下の信頼を裏切らないためにも、ユーリもジーノも大切に生きていこう。
* * *
そうして私たち二人の婚約は、陛下の発表により瞬く間に国内中に広まった。
私の両親はもちろん大喜びであったが、一つの懸念はジーノの生家であるラナーロ伯爵家の気持ちだ。
だが、それは陛下が直々にとりなしてくださったおかげで、ラナーロ伯爵家も私たちの婚約を祝福してくれた。
もう私たちには何の障害もない。
ジーノと出会って五年。
幸せになると誓う寸前で引き離されたあの日々。
絶望のどん底に落ち、命も捨てようと思いかけていたが、それを救ってくれたのはジーノの大きな愛だった。
私に愛を伝えるためにユーリとなって現れてくれたジーノ。
そして、私たちはようやく神の前で幸せを誓い合った。
もう一生手放さないと心に誓いながら……。
私たちは婚姻の儀の後、陛下の計らいで王城にある初夜のための部屋を使わせてもらうことになった。
美しい衣装に身を包んだユーリを抱きかかえてその部屋に入った。
「ユーリ……それとも、ジーノがいい? ここでは二人っきりだ。好きな名前で呼ぶとしよう」
「じゃあ、今日だけはジーノで……。ずっとこの日を夢見てきたから……」
「ああ、そうだな。ジーノ、愛しているよ」
唇への甘いキスで私たちの甘い夜が始まりを告げた。
「おお、ユーリ。んっ? どうした? 目が赤いな」
陛下に早速報告に行きたいというジーノ、いやユーリと一緒に陛下の元に伺うと、すぐにユーリが先ほどまで泣いていたことにお気づきになった。
これほど溺愛なさっているのだ。中身がジーノだと知れば、いくら外見がユーリさまだと伝えても悲しみを与えてしまうのは当然だ。ユーリが二人だけの秘密にしようと言ったのも頷ける。
「ヴァルフレード。ユーリを泣かせたのか?」
「違うんです、お父さま」
「何が違うんだ?」
「僕……ヴァルフレードさまが亡くなられた婚約者殿をこの上なく愛していらっしゃったことを知って、ヴァルフレードさまの一途な愛に感動して泣いてしまったのです。ですから、ヴァルフレードさまは何も悪くないんです」
「ユーリ……」
「だから、僕……決めました。その方の気持ちも全部含めてヴァルフレードさまと添い遂げようって」
陛下に話に行く前にユーリが言ってくれた。
私たちの中でジーノの存在を全て消すことはできない。
それにいくら私たちが心から愛し合っていても、見た目がユーリである以上、私たちを見て亡くなったジーノをさっさと忘れて王族であるユーリに鞍替えしたと言ってくるものもいるだろう。
それなら、最初からジーノの存在を示しておいたほうがいいのだ、と。
「ユーリ、だがそれではお前が辛すぎるのではないか? ヴァルフレードの心に他のものがいながら一生を共にするのだぞ」
陛下の思いは当然だ。誰しも、我が子が二番目になることなど望みはしないだろう。
「いいえ、今のヴァルフレードさまは亡くなられた婚約者のお方の存在があってこそ。僕は今のヴァルフレードさまを好きになったので構いません。それに、婚約者が亡くなったからといってすぐに気持ちがなくなるようなお方の方が薄情だと思いませんか?」
「そ、それは……」
「お父さまも、亡くなられたお母さまのことをずっと思い続けていらっしゃるでしょう? 僕は、そんなお父さまを見てきたのでヴァルフレードさまのお気持ちが痛いほどわかるのです。僕はそんなヴァルフレードさまに寄り添って生きていきたい。もう決めました」
「ユーリ……やはりお前は変わったな。本当に強くなった。それもヴァルフレードと出会ったからだろうか」
ユーリがその言葉に頷くと陛下は笑顔を向けられた。
「ヴァルフレード。愛しい婚約者の死は其方の心に深い悲しみを与えただろう。だが、ユーリも一時は未来への希望を失った子だ。これからはユーリと共にそれを乗り越え、そして、喜びの多い日々を過ごしてくれ。私は二人のいく末を見守るとしよう。ユーリは其方と結婚したら王族から公爵家の一員となる。ユーリが辛い目に遭うことのないように大切にしてやってくれ」
「はい。アゴスティーノの名にかけて、ユーリさまを一生守り続けると誓います」
「頼むぞ。ユーリ、これでよかったのだな?」
「はい。お父さま……ありがとうございます!」
ユーリは大粒の涙を流しながら陛下に抱きついた。
中身がジーノだと思えないほどにお互いを思い合っている姿は本当の親子にしか見えない。
私は陛下の信頼を裏切らないためにも、ユーリもジーノも大切に生きていこう。
* * *
そうして私たち二人の婚約は、陛下の発表により瞬く間に国内中に広まった。
私の両親はもちろん大喜びであったが、一つの懸念はジーノの生家であるラナーロ伯爵家の気持ちだ。
だが、それは陛下が直々にとりなしてくださったおかげで、ラナーロ伯爵家も私たちの婚約を祝福してくれた。
もう私たちには何の障害もない。
ジーノと出会って五年。
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絶望のどん底に落ち、命も捨てようと思いかけていたが、それを救ってくれたのはジーノの大きな愛だった。
私に愛を伝えるためにユーリとなって現れてくれたジーノ。
そして、私たちはようやく神の前で幸せを誓い合った。
もう一生手放さないと心に誓いながら……。
私たちは婚姻の儀の後、陛下の計らいで王城にある初夜のための部屋を使わせてもらうことになった。
美しい衣装に身を包んだユーリを抱きかかえてその部屋に入った。
「ユーリ……それとも、ジーノがいい? ここでは二人っきりだ。好きな名前で呼ぶとしよう」
「じゃあ、今日だけはジーノで……。ずっとこの日を夢見てきたから……」
「ああ、そうだな。ジーノ、愛しているよ」
唇への甘いキスで私たちの甘い夜が始まりを告げた。
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