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大事なミッション
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「毅の親としての気持ちもよくわかる。だが、今の直くんには昇の存在が不可欠だ。新しい中学にも通えることが決まって、ようやく前を向いて動き出そうとしているところに昇がいなくなってしまったら、直くんは再び心を病み生きていけなくなるだろう。昇が直くんのために進路を変えつつも、将来の夢を叶えるために頑張ろうとしている姿を一緒に応援してやってほしい」
頭を下げると、呆然としながら私を見つめていた毅は慌てたように声を上げた。
「ちょっ、兄さん! 顔を上げて」
「許してくれるか?」
「許すも許さないも、状況さえわかれば私も反対なんてしないよ。最初は確かに驚いて怒鳴ってしまったけれど、今は昇の真剣な気持ちも理解できたし、兄さんが怒った気持ちもわかる。だから、何も気にしてない。ただ、兄さんにああして怒鳴られたのが初めてだったから驚いただけ」
毅が本音で伝えてくれる。
「悪いな、直くんのことになるとつい感情が制御できなくなる。絢斗にも叱られたよ」
「絢斗さんに?」
「ああ、何の情報共有もしないで突然あんな報告されたら誰だって驚くって。考えてみたら、昇と直くんが将来結婚したら直くんはお前の息子にもなるわけだから、今から義理の息子としてちゃんと情報は共有しとかないとな。何も知らずに直くんの地雷を踏まないとも限らない」
いろんなトラウマを持っている直くんだからこそ、周りの大人がしっかりと守ってあげないといけないんだ。
「あの、さっきの……医者に悪戯されたって話だけど……」
「ああ、お前と二葉さんを空港まで送った日に熱を出したんだ。それで任期を終えて帰国していた賢将さんに往診を頼んで診察してもらおうとしたら、診察の言葉を聞いただけで顔色を変えたんだよ」
「それで、診察は?」
「絢斗の父親で直くんのおじいさんに当たる人だから大丈夫って安心させて、直くんも落ち着いたからよかったが、昇がトラウマの内容を聞き出して、悪戯された事実がわかったんだ。あれも昇がいなかったら聞き出すのに苦労したかもしれない」
あれは昇を心から信頼しているこそ成功したんだろう。
「それでその医者は?」
「それなら、父さんと賢将さんたちが協力者を募ってあっという間に逮捕されたよ。もう二度と直くんに関わることはない」
そう言ってやると毅は心からホッとした表情を見せた。
「父さんと賢将さんが、って……直くん、相当好かれているんだな」
「好かれているなんて言葉じゃ足りないな。あとで直くんが来たらすぐにわかるよ。父さんがどれだけ直くんを溺愛しているか」
父のあのメロメロになっている様子を見たら驚くのは間違いない。
そんな話をしている間に、毅が作っているピカタも残すは焼くだけになっていた。
<side賢将>
「直くん、それじゃあそろそろ行こうか」
そろそろ午後五時になろうとしている。
絢斗たちから到着して準備をしているとメッセージをもらってからしばらく経つし、サンタクロースの登場時間との兼ね合いもある。直くんに声をかけて、絢斗にメッセージを送ると了解の可愛いスタンプが届いた。
直くんが持ってきたぬいぐるみを両手に抱えて、私のもとに駆けてくる。
実に可愛らしい。
直くんと二人で作ったクリスマスケーキを片手にもち、直くんと家を出てから小さな身体をそっと抱き寄せた。
エレベーターで地下駐車場に降り、まずは直くんを助手席に座らせる。
その後に後部座席に取り付けておいた収納ボックスにケーキケースごと入れてしっかりと固定しておいた。
これで崩れることなく運ぶことができる。
「細心の注意を払ってゆっくり行くからね」
ここから磯山邸まではそこまで離れていない。
途中にガタガタする道や坂道もないからいつも通り運転したら大丈夫だろう。
正面ではなく裏口に辿り着くルートで行かなくてはな。
直くんに正面でないことを不思議に思われないように、裏口から入ったところに大きめの冷蔵庫を準備してくれている。
そこにケーキをこっそり隠しておくために裏口に回ったと言えば、直くんも納得してくれるだろう。
なんせ手作りのクリスマスケーキで驚かせるのを楽しみにしているのだから。
もう毅くんと二葉さんも、到着しているようだし久々の対面に驚くことだろうな。
案の定、車が裏口に到着して不思議に思っているようだったが、ケーキを隠しておくためだと伝えるとすぐに納得してくれた。
頑張って作ったケーキだ。
みんなが驚いて喜んでくれたらいい。
寛さんから借りていた鍵でそっと裏口の扉を開け、置かれていた冷蔵庫にケーキケースごと入れて保管する。
これでミッションはクリアだ。
直くんをそっと抱き寄せて、中に入るとちょうどリビングから出てきた絢斗と目があった。
「あ、直くんとお父さん。来てたんだね。もうクリスマスパーティーの準備できてるよ」
直くんを挟んで三人でリビングに入ると、
「おお、直くん。来たか」
と寛さんが駆け寄ってくる。
その目にはおそらく直くんしか映っていないだろう。
「ぬいぐるみたちも連れてきてくれたのか」
「はい。初めてのクリスマスパーティー、すごく楽しみです」
「そうか、そうか」
嬉しそうに直くんを抱きかかえるのを見ても私たちにとってはもう日常茶飯事のことだが、直くんを驚かせようと隠れていた毅くんと二葉さんが目を丸くして驚きの表情を見せていた。
頭を下げると、呆然としながら私を見つめていた毅は慌てたように声を上げた。
「ちょっ、兄さん! 顔を上げて」
「許してくれるか?」
「許すも許さないも、状況さえわかれば私も反対なんてしないよ。最初は確かに驚いて怒鳴ってしまったけれど、今は昇の真剣な気持ちも理解できたし、兄さんが怒った気持ちもわかる。だから、何も気にしてない。ただ、兄さんにああして怒鳴られたのが初めてだったから驚いただけ」
毅が本音で伝えてくれる。
「悪いな、直くんのことになるとつい感情が制御できなくなる。絢斗にも叱られたよ」
「絢斗さんに?」
「ああ、何の情報共有もしないで突然あんな報告されたら誰だって驚くって。考えてみたら、昇と直くんが将来結婚したら直くんはお前の息子にもなるわけだから、今から義理の息子としてちゃんと情報は共有しとかないとな。何も知らずに直くんの地雷を踏まないとも限らない」
いろんなトラウマを持っている直くんだからこそ、周りの大人がしっかりと守ってあげないといけないんだ。
「あの、さっきの……医者に悪戯されたって話だけど……」
「ああ、お前と二葉さんを空港まで送った日に熱を出したんだ。それで任期を終えて帰国していた賢将さんに往診を頼んで診察してもらおうとしたら、診察の言葉を聞いただけで顔色を変えたんだよ」
「それで、診察は?」
「絢斗の父親で直くんのおじいさんに当たる人だから大丈夫って安心させて、直くんも落ち着いたからよかったが、昇がトラウマの内容を聞き出して、悪戯された事実がわかったんだ。あれも昇がいなかったら聞き出すのに苦労したかもしれない」
あれは昇を心から信頼しているこそ成功したんだろう。
「それでその医者は?」
「それなら、父さんと賢将さんたちが協力者を募ってあっという間に逮捕されたよ。もう二度と直くんに関わることはない」
そう言ってやると毅は心からホッとした表情を見せた。
「父さんと賢将さんが、って……直くん、相当好かれているんだな」
「好かれているなんて言葉じゃ足りないな。あとで直くんが来たらすぐにわかるよ。父さんがどれだけ直くんを溺愛しているか」
父のあのメロメロになっている様子を見たら驚くのは間違いない。
そんな話をしている間に、毅が作っているピカタも残すは焼くだけになっていた。
<side賢将>
「直くん、それじゃあそろそろ行こうか」
そろそろ午後五時になろうとしている。
絢斗たちから到着して準備をしているとメッセージをもらってからしばらく経つし、サンタクロースの登場時間との兼ね合いもある。直くんに声をかけて、絢斗にメッセージを送ると了解の可愛いスタンプが届いた。
直くんが持ってきたぬいぐるみを両手に抱えて、私のもとに駆けてくる。
実に可愛らしい。
直くんと二人で作ったクリスマスケーキを片手にもち、直くんと家を出てから小さな身体をそっと抱き寄せた。
エレベーターで地下駐車場に降り、まずは直くんを助手席に座らせる。
その後に後部座席に取り付けておいた収納ボックスにケーキケースごと入れてしっかりと固定しておいた。
これで崩れることなく運ぶことができる。
「細心の注意を払ってゆっくり行くからね」
ここから磯山邸まではそこまで離れていない。
途中にガタガタする道や坂道もないからいつも通り運転したら大丈夫だろう。
正面ではなく裏口に辿り着くルートで行かなくてはな。
直くんに正面でないことを不思議に思われないように、裏口から入ったところに大きめの冷蔵庫を準備してくれている。
そこにケーキをこっそり隠しておくために裏口に回ったと言えば、直くんも納得してくれるだろう。
なんせ手作りのクリスマスケーキで驚かせるのを楽しみにしているのだから。
もう毅くんと二葉さんも、到着しているようだし久々の対面に驚くことだろうな。
案の定、車が裏口に到着して不思議に思っているようだったが、ケーキを隠しておくためだと伝えるとすぐに納得してくれた。
頑張って作ったケーキだ。
みんなが驚いて喜んでくれたらいい。
寛さんから借りていた鍵でそっと裏口の扉を開け、置かれていた冷蔵庫にケーキケースごと入れて保管する。
これでミッションはクリアだ。
直くんをそっと抱き寄せて、中に入るとちょうどリビングから出てきた絢斗と目があった。
「あ、直くんとお父さん。来てたんだね。もうクリスマスパーティーの準備できてるよ」
直くんを挟んで三人でリビングに入ると、
「おお、直くん。来たか」
と寛さんが駆け寄ってくる。
その目にはおそらく直くんしか映っていないだろう。
「ぬいぐるみたちも連れてきてくれたのか」
「はい。初めてのクリスマスパーティー、すごく楽しみです」
「そうか、そうか」
嬉しそうに直くんを抱きかかえるのを見ても私たちにとってはもう日常茶飯事のことだが、直くんを驚かせようと隠れていた毅くんと二葉さんが目を丸くして驚きの表情を見せていた。
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