ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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王子さま?

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<side直>

父さんと離れていた間に、父さんに大事な人ができていた。

僕にもパパとあやちゃん、毅パパとふーちゃん。それにおじいちゃんたち。
とっても大切な家族に加えて、昇さんっていうとっても大好きな人もできた。
それ以外にも一花さんをはじめ、たくさんのお友だちができた。
その人たちにいっぱい支えてもらって、僕は幸せになれた。

父さんもこのラシードさんと他にも大切な人ができてその人たちにいっぱい支えてもらって幸せになれたんだろう。
僕が知っている父さんの顔よりもずっと幸せそうに見えるから間違いない。

「父さん。よかったね。父さんが幸せになってて本当によかった」

父さんが遠く離れた場所でずっと一人でいるのかと思って心配していたから、幸せになっていたならこんなにうれしいことはない。

父さんが僕にありがとうとお礼を言う間もずっと、ラシードさんが父さんの肩を優しく抱いていて見ているだけでホッとする。なんか、母さんと並んでいる時よりもお似合いだな。

「なんだかラシードさんって、父さんが教えてくれたあの絵本に出てくる王子さまみたいだね」

二人を見ているとそんな言葉が自然と零れ落ちた。
すると、なぜか父さんが笑いだした。
その父さんの反応を見て、ラシードさんが不思議そうに声をかける。
父さんはラシードさんの耳元で囁いた。
その言葉は小さくて僕や昇さんには聞こえない。すると今度は二人揃って笑い出した。

「どうしたの? 僕、何か変なこと言った?」

「あ、いや。そうじゃないないんだ。実は――」

父さんが笑いすぎて潤んだ目をそっと人差し指で拭いながら口を開いたその瞬間、

「あの人、カマル王国のラシード殿下だよ!」

というあやちゃんの声が、部屋中に響き渡った。

「えっ? 今の、なんて……」

びっくりして声がしたほうに目を向けると、あやちゃんとパパが僕たちのいるソファーにむかって歩いてくるのが見えた。

「あやちゃん……今の……」

「あ、ごめんね。思い出したらつい大声が出ちゃって」

にっこりと笑顔を浮かべるとあやちゃんはラシードさんに向けて話し始めた。
でもその言葉は英語ではなさそう。

あやちゃんが喋りかけると、ラシードさんは一瞬驚いたものの笑顔で言葉を返す。
その様子に父さんも驚いているようだった。

「あの、パパ……あれって……」

「絢斗は彼の母国語を話しているんだ。カマル王国はアフリカの北東部にある小さな国で現在は英語とアラビア語が主流だが、古来から伝承されているカマル語と言うものが存在する。今や、それはカマルの王族だけが使うもののようだが、絢斗は言語を覚える能力は人並外れているからな。おそらくラシード殿下とお会いした時にその言葉の存在を知って覚えていたのだろう」

あやちゃんの思わぬ特殊能力を教えられて、ただただ驚きしかない。
隣で昇さんも驚いている様子だった。

「昇さんも知らなかったんですか?」

「あ、いや。主要な言語はかなり話せるらしいって言うのは知ってたけど、そこまでマイナーな言葉まで網羅しているとは思わなくて……すごいな」

昇さんのしみじみとした言い方が余計にあやちゃんの凄さを物語っている気がした。

「私もカマル語を勉強している最中なんだが、あれはかなり難解で……ラシードとあんなに話ができるなんて羨ましいな」

父さんがポツリとこぼした言葉に思わず笑みが溢れた。

「父さん、もしかしてあやちゃんに嫉妬してる?」

「えっ? い、いや。そんなことは……」

焦った様子にそれが真実だとわかる。

「それより、あやちゃんが言ってた殿下って、ラシードさんのこと?」

「ああ、実はそうなんだ。私も最初は知らなくて王子さまだって聞いて驚いたよ」

「ラシードさんが王子さまってことは、父さんは何になるの? お姫さま、とか?」

ふと思った僕の言葉に一気に父さんは顔を赤くする。

「本当にお姫さまって呼ばれてるの?」

「そ、それは……」

少し言いづらそうにしていたけれど、父さんは諦めたのか小さく頷いた。

「幻滅したか?」

「えっ、なんで?」

「なんでって……父さんがそんなふうに呼ばれてるって知ったらそう思うだろう?」

そういうものなのかな?
よくわからない。

そっと隣にいるパパに目を向けると、パパは笑って僕の頭を撫でた。

「保さん。直くんは君に幻滅なんてしないよ。むしろ、幸せな姿を見られて喜んでいるよ。直くん、そうだろう?」

そう言われて僕は正直に頷いた。
父さんは、ホッとしたように笑っていた。

「直くん。今日はここでみんなでお泊まりしよう」

ラシードさんと話をしていたあやちゃんが突然そんなことを言い出した。

「えっ、みんなでって……?」

「ここに集まっているみんなでだよ。お義父さん、いいですよね?」

「それは構わないが……」

そう話していた時、突然玄関チャイムが鳴る音が聞こえた。
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