ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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どこかで……

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<side卓>

日下部さんが直くんと昇にプレゼントを渡し、部屋が真っ暗になった後、賢将さんが日下部さんを庭から裏口に案内した。
その間に私は毅と木の下に置かれていた橇とトナカイロボットを裏口に運んだ。

倉庫にそれらを隠し終わったところで賢将さんからイヤホンに連絡が入った。

ー裏口から玄関にまわってくれ

その指示に従い、私は毅と共に玄関に向かった。
すると、暗がりに賢将さんと日下部さんの姿以外に、一台の高級車が止まっているのが見える。
庭の仕掛けの影響で玄関にもほとんど灯りはなく、中は何も見えない。

「あれは日下部さんの迎えの車ですか?」

もしかしたら一度着替えに戻るのだろうか。
そんな考えが頭をよぎって賢将さんに尋ねた。

「いや、これは日下部さんからのクリスマスプレゼントだよ」

「まさか、昇の?」

「さぁ、どうだろう」

賢将さんがニヤリと不敵な笑みを浮かべるとその車からファンファンとクラクションが鳴り響いた。
その音が聞こえたのか、家の中から走り寄ってくる音が聞こえる。

「まだ免許も持っていないのに昇にこんな高級車は……」

やはり父親というのか、毅は分不相応とでもいうようにブツブツと言っていたが、この車はかなり安全性が高い。
直くんを乗せて走るには安心な車だ。
初心者の昇が送迎係を引き受けるならこれほど安心な車はない。
そんなことを考えていると、家の中から昇が飛び出してきた。

その後に続くように絢斗と直くん、そして父が出てきた。
二葉さんもその後ろからやってきて、毅の元にやってきた。

「昇のプレゼント、車の鍵だったの」

二葉さんが毅に説明したタイミングで昇が手に持っている車のキーを押す。
すると、鍵が開くと同時にライトが光った。
その時、車の中に人影が見えた。
誰がか乗っている。それは気のせいじゃないようだ。

昇もそれに気付き声を上げる。

すると中の人影が動き、後部座席の扉が開いた。
車から降りてきた人物がちらりと私を見る。

その顔に見覚えがあるのに一瞬戸惑ってしまったのは、あまりにも表情が違って見えたからだろう。

直くんは車から降りてきた人物がずっと会いたかった父親だということに気づいたようだが、あまりにも驚き過ぎて動けないようだった。そこに父が近づき優しく声をかけ背中を押してやる。

すると直くんはゆっくりと近づいた。その様子に我慢できなくなったのか、直くんの父親のほうが直くんに駆け寄ってきた。目の前でがっしりと抱きしめ合う親子の様子に私は何も言えず見つめるばかりだった。
その時の私は、実の父と自分とを密かに比べてしまっていたのかもしれない。

するとそっと私の隣にやってきた絢斗が、私の背中に優しく触れる。

「絢斗……」

「見て、卓さん。直くん、泣いているよ」

「そう、だな……」

ようやく父親と会えて嬉しいのだろう。
もしかしたらこれからは実の父と過ごしたいと言われるかもしれない。
そんな思いがよぎったが、私は直くんの幸せだけを考えよう。
そう思って静かに二人の様子を見守った。

すると、父親はずっと直くんに謝り続ける。
これまで離れている間、自分の行いを反省していたのだろう。だから直くんに会ってその思いを伝えずにはいられなかったのだろうが、直くんは彼の謝罪を聞きながら何度も首を振っている。
その姿に私のほうが耐えられなくなって、二人の元に駆け寄った。

「直くんはあなたからの謝罪を欲しいと思っていないよ。もっと、言わないといけない言葉があるんじゃないか?」

涙に塗れた直くんが言えない言葉を私が伝えると、直くんの父親は直くんへの思いをようやく告げた。

会いたかった、と。

その言葉だけで直くんは救われた。

お互いに思いを告げあい、抱きしめ合う姿を邪魔してはいけないと思いつつ、これ以上外にいて風邪を引かせたくない。

二人に声をかけ、直くんに私がきていた上着を着せると嬉しそうに私に抱きついてくる。
それを私は直くんの父親に悪いと思いつつも、この上なく幸せな気持ちで抱きしめた。

すると車からもう一人の男性が降りてくる。

その姿に見覚えはないが、明らかに外国人の容貌をしている。
その彼は直くんの父親にそっと上着をかける。

二人のその表情に私はすぐに二人の関係を理解した。
そうか、直くんの父親があの日事務所であった彼とは全く別人のように健康的で艶々になっていたのは彼のおかげか。

直くんに会いにくると決断できたのもあの彼のおかげなのかもしれないな。

「ねぇ、卓さんは知ってたの? 直くんのお父さんが会いに来てるって」

直くんが父親との対面を果たした後、家に入り、ソファーで父親たちと直くんたちが話をしているのを見ながら、絢斗が尋ねてきた。

「いや、知らなかったよ。だから私も驚いた」

「そうだったんだ。でも直くんのお父さんも幸せそうでよかったね」

「そうだな」

「でも卓さん……あの人……どこかで見た覚えがあるんだよね。どこだったかな?」

絢斗がじっと彼を見つめる。
絢斗が彼に惹かれたわけではないと思うが、あれほどの男前を前にするとたまらなく心配になる。
私は嫉妬でいっぱいになり、彼のことは考えることもできなかったのだが、絢斗は何かを思い出したように大きな声をあげた。

「あっ! 思い出した!」

「どこかで会っていたのか?」

法に携わる人だったのなら学会やどこかで会うこともあるだろうが、私には覚えはない。

「あの人、カマル王国のラシード殿下だよ!」

想像してもいなかった絢斗のその言葉に、家中がしんと静まり返った。
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