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謝りたい!
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<side直純>
「きっと心配しているだろうから、そろそろ皆さんのところに戻ろうか」
「はい。あの、谷垣さん……話を聞いてくれてありがとうございました」
「ふふっ。僕も直純くんと話せてよかったよ。ねぇ、もしよかったら僕のこと、名前で呼んでくれないかな?」
「えっ、でも……」
「一花くんからも名前で呼ばれてるし、僕たちは同志だって言っただろう? だったら谷垣さんなんて他人行儀な呼び方じゃない方が嬉しいな」
にっこりと優しい笑顔で微笑まれて、それ以上断ることなんてできなかった。
「あ、あの……尚孝さん……」
「うん、やっぱりそっちがいい」
「僕のことも、直くんって……」
「うん、そうしようか。実は、磯山先生たちが直くんって呼んでるの、いいなぁと思っていたんだ」
その尚孝さんの笑顔が僕は嬉しかった。
部屋の扉を開けると、
「直くんっ!」
と僕を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、昇さんがものすごい勢いで駆けつけてきてくれた。
「昇さん……」
びっくりして顔を見上げると、昇さんは僕の顔をじっと見てホッとしたように笑った。
「よかった、いろいろ話せたみたいだね」
「えっ、どうしてわかったんですか?」
「ふふっ。だって直くんの顔に書いてあるよ」
「えっ……」
びっくりして慌てて両手でペタペタと顔を触っていると、
「ふふっ、直くん可愛いなぁ」
と隣にいた尚孝さんに笑われてしまった。
「そんな、尚孝さん……っ」
可愛いなんて言われて恥ずかしくなる。
それなのに、昇さんはまぜか得意げな表情をして、
「でしょう? 直くんは可愛いんです」
と言い始めた。
「えっ、何言ってるんですか……昇さんったらそんなこと……」
「ふふっ。行こう。伯父さんたちも待ってるから」
「えっ、あ、はい」
結局揶揄われてただけなんだろうけど、尚孝さんにも昇さんにも可愛いなんて言われて、恥ずかしかったな。
「直くん、おいで」
リビングに行くと、少し心配そうなあやちゃんに声をかけられて、すぐに隣に座らせてもらった。
「谷垣くんといっぱい話せた?」
「はい。僕……改めて、一花さんに心から謝りたいって思いました」
「直くん……大丈夫?」
「はい。それが僕の気持ちなんです」
そう。誰に言われたわけでもない。
それが僕の気持ち。
そもそもの話、一花さんが僕に会ってくれるかわからないけれど……。
会えないのなら手紙でもなんでもいい。
たとえ許してもらえなくても、どうしても謝罪の気持ちを伝えたい。
僕にできることはそれしかないんだから。
「そっか。自分で考えられたならよかった。ねぇ、卓さん」
「ああ、そうだよ。直くんは自分の気持ちを伝えられるようになったんだ。それだけですごいことだよ」
この家に来て、やりたいことも僕が言ったらやらせてもらえるし、食べてみたいと言ったら食べさせてもらえる。
母さんたちと住んでいたあの家では考えられなかったことだ。
僕はパパとあやちゃん、そして昇さんがいたから、尚孝さんに自分の気持ちを伝えられるようになったんだ。
「みんなのおかげです……」
本当にそれに尽きる。
「直純くんの気持ちはよくわかりました。それでは、私は直純くんのその気持ちを貴船会長にお伝えしてきます」
「えっ……は、はい。よろしくお願いします」
もう?
と正直思ってしまったけれど、時間が経っても僕の気持ちは変わらないのだからそれでいい。
「ふふっ。そんなに緊張されないで大丈夫ですよ」
志摩さんは僕に優しい言葉をかけてくれて、電話のために席を外した。
そんな志摩さんを見送って、尚孝さんが僕に話しかけてくれた。
「直くん、すぐに返事が来なくても心配することはないよ」
「えっ……」
「一花くんはね、直純くんの存在を知らないんだ」
「それって……」
「一花くんは自分が誘拐されてその犯人が捕まったことは知っているけれど、それ以外のことは何も知らない。だから、それを受け入れるまでの時間が必要かもしれない」
「あ、そうですよね……」
僕はずっと一花さんのことを知った日からずっと考えてた。
それこそ、一日だって一花さんのことが頭から離れたこともないくらいに。
それだけ考えてやっと自分の気持ちの整理がついた。
一花さんにだって、それと同じだけ整理をつける時間が必要なんだ。
「だから、ゆっくり待っていよう。直純くんの気持ちは変わらないんだから」
「はい。そうですね。ありがとうございます。尚孝さん……」
ここにいる人たちみんなの優しい言葉に心があったかくなる。
もう僕は一人じゃないんだ。
「ねぇ、谷垣くん。私も尚孝くんって呼んでいいかな?」
「えっ? はい。どうぞ」
「ふふっ。よかった。同じ学校出身だし、あまり堅苦しいのも嫌だなって思ってたんだよね」
突然のあやちゃんのその言葉に、一気に部屋の空気が和んでいくのがわかった。
あやちゃんの存在って、偉大だな。
それからしばらく、尚孝さんとあやちゃんの桜守での話を聞いていると、
「遅くなって申し訳ありません」
と志摩さんが戻ってきた。
「それで征哉くんの様子はどうだった?」
僕の代わりにパパが聞いてくれたけれど、
「はい。とりあえず直純くんの要望はお伝えしました。その後のことは、相談をしてからということでしたので、また改めてご連絡差し上げる次第です」
という言葉が返ってきた。
もしかしたら、あまりよくない反応だったかもしれない。
ううん、それが普通なんだ。
僕はただ待つだけ。
それでいいんだ。
「そうか。わかった。じゃあこの話はそれで終わりにしよう。志摩くん、谷垣くんもよかったら夕食を食べていってくれ。腕を奮うよ」
「よろしいんですか?」
「ああ、たまには大勢で食べるのもいいだろう。昇、準備を手伝ってくれ」
「よろしければ私もお手伝いします」
「志摩くんはお客さんだから気を遣わなくていいんだよ」
「いえ、磯山先生の料理の腕を一度近くで拝見したいと思っていましたので、嬉しい機会です」
「そうか、それなら頼むとしようか」
そんな話がまとまって、あっという間にパパと昇さんと志摩さんはキッチンへ入っていった。
「きっと心配しているだろうから、そろそろ皆さんのところに戻ろうか」
「はい。あの、谷垣さん……話を聞いてくれてありがとうございました」
「ふふっ。僕も直純くんと話せてよかったよ。ねぇ、もしよかったら僕のこと、名前で呼んでくれないかな?」
「えっ、でも……」
「一花くんからも名前で呼ばれてるし、僕たちは同志だって言っただろう? だったら谷垣さんなんて他人行儀な呼び方じゃない方が嬉しいな」
にっこりと優しい笑顔で微笑まれて、それ以上断ることなんてできなかった。
「あ、あの……尚孝さん……」
「うん、やっぱりそっちがいい」
「僕のことも、直くんって……」
「うん、そうしようか。実は、磯山先生たちが直くんって呼んでるの、いいなぁと思っていたんだ」
その尚孝さんの笑顔が僕は嬉しかった。
部屋の扉を開けると、
「直くんっ!」
と僕を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、昇さんがものすごい勢いで駆けつけてきてくれた。
「昇さん……」
びっくりして顔を見上げると、昇さんは僕の顔をじっと見てホッとしたように笑った。
「よかった、いろいろ話せたみたいだね」
「えっ、どうしてわかったんですか?」
「ふふっ。だって直くんの顔に書いてあるよ」
「えっ……」
びっくりして慌てて両手でペタペタと顔を触っていると、
「ふふっ、直くん可愛いなぁ」
と隣にいた尚孝さんに笑われてしまった。
「そんな、尚孝さん……っ」
可愛いなんて言われて恥ずかしくなる。
それなのに、昇さんはまぜか得意げな表情をして、
「でしょう? 直くんは可愛いんです」
と言い始めた。
「えっ、何言ってるんですか……昇さんったらそんなこと……」
「ふふっ。行こう。伯父さんたちも待ってるから」
「えっ、あ、はい」
結局揶揄われてただけなんだろうけど、尚孝さんにも昇さんにも可愛いなんて言われて、恥ずかしかったな。
「直くん、おいで」
リビングに行くと、少し心配そうなあやちゃんに声をかけられて、すぐに隣に座らせてもらった。
「谷垣くんといっぱい話せた?」
「はい。僕……改めて、一花さんに心から謝りたいって思いました」
「直くん……大丈夫?」
「はい。それが僕の気持ちなんです」
そう。誰に言われたわけでもない。
それが僕の気持ち。
そもそもの話、一花さんが僕に会ってくれるかわからないけれど……。
会えないのなら手紙でもなんでもいい。
たとえ許してもらえなくても、どうしても謝罪の気持ちを伝えたい。
僕にできることはそれしかないんだから。
「そっか。自分で考えられたならよかった。ねぇ、卓さん」
「ああ、そうだよ。直くんは自分の気持ちを伝えられるようになったんだ。それだけですごいことだよ」
この家に来て、やりたいことも僕が言ったらやらせてもらえるし、食べてみたいと言ったら食べさせてもらえる。
母さんたちと住んでいたあの家では考えられなかったことだ。
僕はパパとあやちゃん、そして昇さんがいたから、尚孝さんに自分の気持ちを伝えられるようになったんだ。
「みんなのおかげです……」
本当にそれに尽きる。
「直純くんの気持ちはよくわかりました。それでは、私は直純くんのその気持ちを貴船会長にお伝えしてきます」
「えっ……は、はい。よろしくお願いします」
もう?
と正直思ってしまったけれど、時間が経っても僕の気持ちは変わらないのだからそれでいい。
「ふふっ。そんなに緊張されないで大丈夫ですよ」
志摩さんは僕に優しい言葉をかけてくれて、電話のために席を外した。
そんな志摩さんを見送って、尚孝さんが僕に話しかけてくれた。
「直くん、すぐに返事が来なくても心配することはないよ」
「えっ……」
「一花くんはね、直純くんの存在を知らないんだ」
「それって……」
「一花くんは自分が誘拐されてその犯人が捕まったことは知っているけれど、それ以外のことは何も知らない。だから、それを受け入れるまでの時間が必要かもしれない」
「あ、そうですよね……」
僕はずっと一花さんのことを知った日からずっと考えてた。
それこそ、一日だって一花さんのことが頭から離れたこともないくらいに。
それだけ考えてやっと自分の気持ちの整理がついた。
一花さんにだって、それと同じだけ整理をつける時間が必要なんだ。
「だから、ゆっくり待っていよう。直純くんの気持ちは変わらないんだから」
「はい。そうですね。ありがとうございます。尚孝さん……」
ここにいる人たちみんなの優しい言葉に心があったかくなる。
もう僕は一人じゃないんだ。
「ねぇ、谷垣くん。私も尚孝くんって呼んでいいかな?」
「えっ? はい。どうぞ」
「ふふっ。よかった。同じ学校出身だし、あまり堅苦しいのも嫌だなって思ってたんだよね」
突然のあやちゃんのその言葉に、一気に部屋の空気が和んでいくのがわかった。
あやちゃんの存在って、偉大だな。
それからしばらく、尚孝さんとあやちゃんの桜守での話を聞いていると、
「遅くなって申し訳ありません」
と志摩さんが戻ってきた。
「それで征哉くんの様子はどうだった?」
僕の代わりにパパが聞いてくれたけれど、
「はい。とりあえず直純くんの要望はお伝えしました。その後のことは、相談をしてからということでしたので、また改めてご連絡差し上げる次第です」
という言葉が返ってきた。
もしかしたら、あまりよくない反応だったかもしれない。
ううん、それが普通なんだ。
僕はただ待つだけ。
それでいいんだ。
「そうか。わかった。じゃあこの話はそれで終わりにしよう。志摩くん、谷垣くんもよかったら夕食を食べていってくれ。腕を奮うよ」
「よろしいんですか?」
「ああ、たまには大勢で食べるのもいいだろう。昇、準備を手伝ってくれ」
「よろしければ私もお手伝いします」
「志摩くんはお客さんだから気を遣わなくていいんだよ」
「いえ、磯山先生の料理の腕を一度近くで拝見したいと思っていましたので、嬉しい機会です」
「そうか、それなら頼むとしようか」
そんな話がまとまって、あっという間にパパと昇さんと志摩さんはキッチンへ入っていった。
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