ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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みんなでできること

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<side絢斗>

ーもしもし、絢斗くん。

その一言だけで、未知子さんが喜んでいるのがわかる。
きっと一花ちゃんが直くんのことを話してくれたんだろう。

昨日のことを早速お礼を言われたけれど、お礼を言いたいのはこちらだ。

ー直くん、すごくほっとしたみたいで一花ちゃんが帰ってからもずっと一花ちゃんの話をしてましたよ。

だから、お礼がしたくて電話をしたのだというと、

ーそんな、お礼なんていいのよ。一花くんも本当に楽しかったみたいだから。それに征哉もほっとしてたわ。ずっと直純くんに対しての態度を悔やんでいたから……。

心から申し訳ないという気持ちが溢れているけれど、卓さんも直くん自身も、征哉くんの態度は一花ちゃんを思えばこそのものだからと何度も言っていた。

直くんも征哉くんにあんなにも真摯に謝罪されたことで、征哉くんへの好感度は上がったみたいだった。
まだ少し緊張感はあったけれど、直くんにとっては征哉くんは一花ちゃんの大切な人という認識で、征哉くんからは直くんは一花ちゃんの大事なお友達という認識にそれぞれ変わったみたいだったし、これからは本当に家族ぐるみで仲良くできると思う。

直くんと一花ちゃんのこの家での二人の様子を見たいだろうと思って、

ー直くんと一花ちゃんは、もうすっかり仲良しになっていて、直くんが教えながらリースを作っている動画があるので後で送りますね。

というと、未知子さんは驚きつつも何か思い出したかのように

ーわぁ! 楽しみだわ! って、そうそう。そのことで悩んでたの。

と言われた。

二人がリースを作ったことで悩み?
はて、なんだろう?

ー二人に可愛いリースを貰ったから何かお礼がしたいと思って考えてたの。でもなかなかいいお礼が思いつかなくて……。絢斗くん、何かいいアイディアないかしら?

ああ、なるほど。そういうことか。
二人にお礼をしたいくらいにあの時二人が作っていたリースを気に入ってくれたということなんだろう。

あのリースはとても上手な出来だったから気にいるのはもちろんだけど、きっと未知子さんの中では心配してくれていた直くんと、間近で見守ってきた一花ちゃんが二人で一緒に作り上げたものだからという格別な思いも入っているからなんだろうな。

未知子さんがそこまで思ってくれるのは嬉しい。
だけど……

ーうーん、そうですね……。直くんの場合ですが、何かものをもらうより自分で体験することのほうが喜びますよ。今までに何もさせてもらってなかったからでしょうけど。だから、最近は自分からなんでもやりたがってくれて……。おにぎりも自分から作りたいって言ってくれたんですよ。

今までの環境が根底にあるせいか、あの子は全く物欲がない。
というより、今まで何もなかったから欲しいものの存在自体を知らないのだろう。

どんな食べ物でも、どんな物でも喜んでくれるから基本的になんでも喜んでくれるはず。
だけど、未知子さんは心から喜んでくれるものを送りたいのだろう。

それなら、ものをもらうより、何か体験できた方がずっと喜ぶ顔が見れるはず。

家の中でできることは限られているけれど、外に出ることができるようになれば、それこそ動物園や遊園地、水族館に一花ちゃんと一緒に行けるだけで喜んでくれそうだ。

おにぎりも自分で作るだけでなく、私にも教えてくれたし……なんて思っていると、

ーあ、おにぎりの話聞いたわ。絢斗くん、直くんとおにぎり作ったんでしょう?

と尋ねられた。

ー今朝はちょっと作れなかったんですけど、私のおにぎり……思った以上に卓さんが喜んでくれて……この前、その作り方が載ってる本もプレゼントしてくれたんですよ。作り方は同じなんですけど、バリエーションが増えて、直くんと作る楽しみが増えたんです。

私の言葉に未知子さんが喜んでくれているのがわかる。
きっと私がおにぎりを作ったなんて聞いて驚いたに違いない。

それくらい私がおにぎりを作るなんてことは信じ難いことだったのだから。
それを私が作れるようになるなんて、本当に自分でも信じられない。

ああ、そういえば今日はおにぎり作れなかったな。
次のお仕事の日にはまた直くんと作ろう。

ーでも、体験ね……。一花くんも、直純くんと同じくらい、同年代の子がやっているような経験はないから、二人が楽しめるものをさせてあげるのもいいかもしれないわね。

まだ一花ちゃんが歩けないから、だいぶ制限はされてしまうだろうけど周りの協力があれば、叶わない夢じゃないはず。

何か考えておくからと言われて未知子さんとの電話は終わった。

せっかく家族ぐるみでと言われたから、何かみんなでできることを考えるのも楽しいかもしれない。
皐月に相談してみようかな。
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