ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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似合ってる?

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<side直純>

昇さんが選んでくれたドレス。すごく綺麗でこれを今から自分が着るのかと思うとドキドキしてしまう。

「先にヘアメイクを致しますね。お連れさまとご一緒の方が安心でしょうからこちらで一緒に致しましょうね」

僕が緊張しているのに気づいた神田さんがあやちゃんと並んで、大きな鏡の前にある椅子に座らせてくれた。

隣にあやちゃんがいるというだけで安心する。

「それではお化粧を始めましょうね」

「は、はい。お願いします」

隣ではあやちゃんが同じようにお化粧を始めていて、僕も真似して目を瞑った。

「お化粧水をつけますね」「乳液をつけていきますね」

何かをするごとに声をかけてくれるのでホッとする。
けれど途中で

「はぁ……っ。本当に……」

と小さな声が聞こえてドキッとする。

「あ、あの……何か……」

知らないうちに何かしてしまったのかもしれないと思って声をかけると、

「あっ、不安にさせてしまってごめんなさい。あまりにも肌が綺麗で感動してしまって……」

と言われて驚いてしまう。

「えっ? 綺麗、ですか?」

「ええ。お若いだけではなくて、綺麗にお手入れなさっていて素晴らしいですよ」

「お手入れなんてそんな……」

何もしていないといいかけたとき、

「直くん、うちで入れてる入浴剤に保湿成分が入ってるんだよ。それとお風呂上がりに乾燥しないようにってつけてるお薬あるでしょう? あれ、美容液だから」

とあやちゃんが教えてくれた。

「えっ? そうだったんですか?」

「うん。それに何より、直くん……いっぱい食べられるようになってきたから、そのおかげもあるかな」

「そうなんですね……」

でも考えてみたら、いつもほっぺたがガサガサしてて唇も切れていたけど、パパとあやちゃんと一緒に暮らし始めてからはそれもなかったな。僕……本当に変わったんだ……。

「さぁ、お化粧終わりましたよ。まだ中学生なのでナチュラルメイクにしておきました」

しばらく目を瞑っているとそんな声をかけられて、目の前の鏡を見るとあまりの違いに驚いてしまう。

「これが、僕?」

「ええ。でもほとんど何もしていないんですよ。元がいいから本当に可愛らしいです。次はヘアセットしましょうね。まぁ髪もツヤツヤで綺麗だわ」

神田さんはとっても嬉しそうに僕の髪に触れる。僕の髪が綺麗だとしたら、いつも昇さんが艶々になるオイルというのをつけて髪を乾かしてくれているからだろう。あとでお礼を言わなきゃ!

「せっかくの綺麗な髪ですから、これをそのまま活かしましょうね」

全体的に耳より少し長いくらいの髪しかないけど、大丈夫なのかな?
そう思ったけれど、神田さんは僕の髪に何かを当てていく。その機械が離れると僕の髪がくるんとカールしているのがわかる。

「わっ、すごい!!」

「これはカールアイロンといって一時的にパーマをしたような髪にできるんですよ。これで随分と印象も変わりますからね」

何も知らない僕のために神田さんは優しく教えてくれる。僕はその神田さんの手によって変わっていく自分の髪を鏡で見ながら出来上がりを楽しみにしていた。

「さぁ、できましたよ」

「わぁー、ふわふわの髪、すごい! 本当に女の子みたいに見えます」

「ふふっ。とてもよくお似合いですよ。次はドレスに着替えましょうね。こちらの下着をあちらで着てきてくださいね」

神田さんから渡された薄い下着を持って椅子から立ち上がると、

「あ、直くん。ドレスは私が着替えさせるよ。神田さん、いいかな?」

と隣の席からあやちゃんが声をかけてくれた。

「承知しました」

神田さんは笑顔でそういうと、今度はあやちゃんの着物の準備を始めた。

ちょうどお化粧と髪のセットが終わったあやちゃんが僕のところに来てくれて、一緒にカーテンの中に入ってくれる。

「あやちゃん、あの……」

「ドレスなら私も着替えさせられるから大丈夫だよ」

僕が神田さんとお着替えするのがちょっとドキドキするなって思ったことに気づいてくれたんだろう。
あやちゃんって、本当に優しい。

着ていたシャツと肌着を脱いでパンツ一枚になってから神田さんから渡された薄い下着を身につける。
そしてその上から昇さんが選んでくれたドレスを着ると、あやちゃんが後ろのファスナーを閉めてくれた。

「さぁ、これでいかな。直くん、こっち向いて」

言われた通りにあやちゃんの方を見ると、

「わぁー!! すっごく似合う!! 可愛い!! 早く昇くんと卓さんに見せたいね!!」

と笑顔で言ってくれた。うん、僕も早く見せたい!!

僕は椅子に座ってあやちゃんの支度が終わるのを待って、それからパパと昇さんのいる部屋に見せに行った。

ああ、どうかな。昇さんも可愛いって言ってくれるかな。ドキドキする。

でも、いざ昇さんの前に出ると、昇さんは僕の姿を見たままその場に固まってしまった。

やっぱり僕が女の子の格好なんて似合わなかったのかな……。

「あの、ごめんなさい……」

涙がじんわり浮かんでくる。昇さんに褒めてもらえないのがこんなにも辛いなんて思わなかった。
やっぱり僕がドレスなんて着ちゃいけなかったんだ……。

と思っていると、

「昇! 何してるんだ!!」

というパパの声が聞こえたと思ったら、昇さんの背中をバンと叩いた。
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