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卓と昇
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<side寛(卓の父)>
「おじいちゃんだよ、会いたかった」
自然に出てきた言葉に目の前の可愛い子は涙を潤ませながら、私に手を伸ばした。
その可愛い仕草に一気に胸が熱くなり、小さなその身体を抱きしめた。
ああ、可愛い。
血の繋がりなんて何も関係ない。
誰がなんと言おうとこの子は私の孫だ。
直くんもそう思ってくれているようでギュッと私の首に腕を回しながら、
「おじいちゃん……」
と小さな声で呟いた。
それだけで愛おしさが募る。
しばらく直くんを抱きしめたままその温もりを堪能していると、
「じいちゃん! もういいだろう!」
と少し怒り気味の昇の声が耳に飛び込んできた。
その表情になんとなく既視感を覚えた。
どこだったか……。
記憶を辿っていると、
「父さん。直くんとの挨拶はその辺にして食事にしましょう」
と卓から声がかかった。
その声に記憶がふっと甦る。
そうだ、あれは卓が絢斗くんを初めて紹介してくれた時だった。
昔、桜守の中等部で講演会を行った際の私の話に感動して法学部を目指したのだと握手を求められ、そのあまりの可愛さにしばらく手を離さずにいたら、
――父さん。もういいでしょう?
と卓から冷ややかな声を向けられた。
それだけでなく、パッと私から引き離すと自分の腕の中に絢斗くんを閉じ込めた。
今まで見たことのない卓の行動に驚いたんだ。
あの時の卓の表情と、今の昇の表情は同じだ。
昇は本気で直くんが好きなんだな。
私にとって可愛い孫の二人が将来をともにする。
それが確実な未来だと分かっただけで今日ここにきた意味があるというものだ。
名残惜しいが、直くんを腕から下ろした
「直くん、食事をしながらおじいちゃんに直くんのことを教えてくれ」
「――っ、はい! 僕もおじいちゃんのこと知りたいです!」
「おお、そうか。なんでも聞いてくれ」
ずっと動画や写真で見続けてきたが、実物はそれ以上に可愛い。
テーブルのこの字型の中央に私の席が設けられ、左側に卓たち、右側に昇たちが座るようだ。
「直くん、おじいちゃんの隣においで」
「えっ、ちょ――っ」
「はーい!」
「絢斗くんも私の隣に座ってくれないか?」
「ちょっ、父さ――っ」
「ふふっ。いいですよ」
昇と卓は反対しようとしていたが、直くんも絢斗くんもすぐに私の隣に座ってくれた。
昇と卓は渋々ながらも反対はせず、美味しそうな料理を目の前に並べてくれた。
「ほお、卓。料理の腕を上げたな。どれも美味しそうだ」
「美味しそうに食べてくれる人が増えましたから。父さんはアメリカで自炊していたんですか?」
「ああ、キッチンカーはよく利用していたが、ほとんどは自炊していたよ。シアトルは日本食材を売っている店も多いからな」
「キッチンカー? それってなんですか?」
隣に座る直くんがクリクリした可愛い目で見つめながら尋ねてくる。
勉強以外の知識はあまりないと聞いていたが、本当のようだな。
「調理スペースが付いている車でね、その場で食事を作ってくれるんだよ。私の家のすぐ近くにある公園にはそんなキッチンカーがいくつも出ていて、タコスやパスタ、ハンバーガーを買って食べてたんだよ」
「あの……タコスって、たこ焼き、みたいなものですか?」
「えっ? あー、えっと……そうだな……」
そうか、タコスをまだ知らなかったか……。
なんと言えばいいか悩んでいると、
「タコスってさ、説明が難しいんだ。直くん、俺美味しいタコス屋を知っているから、日曜日に村山たちと食べに行こう!」
昇が笑顔で直くんに声をかけた。
「わぁー、いいんですか?」
「ああ、そこのめちゃくちゃ美味しいから前からずっと直くんに食べさせたいと思っていたんだ」
「嬉しい! 楽しみです!!」
一瞬直くんを悲しげな表情にさせてしまったが、今はもうすっかり笑顔を取り戻している。
昇、さすがだな。直くんのことをよく分かっている。
「さぁ、食べようか」
卓が今日の夕食に用意してくれたのは、和食をメインにした私の好物ばかり。
「お義父さん。卓さんが張り切って作ってましたからたくさん召し上がってくださいね」
「ああ、ありがとう。この煮付けは流石にアメリカじゃ食べられないからな」
好物のカレイの煮付けに箸を伸ばすと、昇と直くんの目の前にも一皿だけ置かれているのが見える。
卓と絢斗くんの前にも一皿だけだ。
そっとその様子を見てみると、昇も卓もほぐした身を直くんと絢斗くんの口に運んでいる。
卓はこれまでもよく見た光景だし、私も妻によくしていたものだが、昇もしっかりと教育を受けているようだな。
幸せ溢れる食卓を囲みながら、私もまた幸せに満ち足りた気持ちを味わっていた。
「おじいちゃんだよ、会いたかった」
自然に出てきた言葉に目の前の可愛い子は涙を潤ませながら、私に手を伸ばした。
その可愛い仕草に一気に胸が熱くなり、小さなその身体を抱きしめた。
ああ、可愛い。
血の繋がりなんて何も関係ない。
誰がなんと言おうとこの子は私の孫だ。
直くんもそう思ってくれているようでギュッと私の首に腕を回しながら、
「おじいちゃん……」
と小さな声で呟いた。
それだけで愛おしさが募る。
しばらく直くんを抱きしめたままその温もりを堪能していると、
「じいちゃん! もういいだろう!」
と少し怒り気味の昇の声が耳に飛び込んできた。
その表情になんとなく既視感を覚えた。
どこだったか……。
記憶を辿っていると、
「父さん。直くんとの挨拶はその辺にして食事にしましょう」
と卓から声がかかった。
その声に記憶がふっと甦る。
そうだ、あれは卓が絢斗くんを初めて紹介してくれた時だった。
昔、桜守の中等部で講演会を行った際の私の話に感動して法学部を目指したのだと握手を求められ、そのあまりの可愛さにしばらく手を離さずにいたら、
――父さん。もういいでしょう?
と卓から冷ややかな声を向けられた。
それだけでなく、パッと私から引き離すと自分の腕の中に絢斗くんを閉じ込めた。
今まで見たことのない卓の行動に驚いたんだ。
あの時の卓の表情と、今の昇の表情は同じだ。
昇は本気で直くんが好きなんだな。
私にとって可愛い孫の二人が将来をともにする。
それが確実な未来だと分かっただけで今日ここにきた意味があるというものだ。
名残惜しいが、直くんを腕から下ろした
「直くん、食事をしながらおじいちゃんに直くんのことを教えてくれ」
「――っ、はい! 僕もおじいちゃんのこと知りたいです!」
「おお、そうか。なんでも聞いてくれ」
ずっと動画や写真で見続けてきたが、実物はそれ以上に可愛い。
テーブルのこの字型の中央に私の席が設けられ、左側に卓たち、右側に昇たちが座るようだ。
「直くん、おじいちゃんの隣においで」
「えっ、ちょ――っ」
「はーい!」
「絢斗くんも私の隣に座ってくれないか?」
「ちょっ、父さ――っ」
「ふふっ。いいですよ」
昇と卓は反対しようとしていたが、直くんも絢斗くんもすぐに私の隣に座ってくれた。
昇と卓は渋々ながらも反対はせず、美味しそうな料理を目の前に並べてくれた。
「ほお、卓。料理の腕を上げたな。どれも美味しそうだ」
「美味しそうに食べてくれる人が増えましたから。父さんはアメリカで自炊していたんですか?」
「ああ、キッチンカーはよく利用していたが、ほとんどは自炊していたよ。シアトルは日本食材を売っている店も多いからな」
「キッチンカー? それってなんですか?」
隣に座る直くんがクリクリした可愛い目で見つめながら尋ねてくる。
勉強以外の知識はあまりないと聞いていたが、本当のようだな。
「調理スペースが付いている車でね、その場で食事を作ってくれるんだよ。私の家のすぐ近くにある公園にはそんなキッチンカーがいくつも出ていて、タコスやパスタ、ハンバーガーを買って食べてたんだよ」
「あの……タコスって、たこ焼き、みたいなものですか?」
「えっ? あー、えっと……そうだな……」
そうか、タコスをまだ知らなかったか……。
なんと言えばいいか悩んでいると、
「タコスってさ、説明が難しいんだ。直くん、俺美味しいタコス屋を知っているから、日曜日に村山たちと食べに行こう!」
昇が笑顔で直くんに声をかけた。
「わぁー、いいんですか?」
「ああ、そこのめちゃくちゃ美味しいから前からずっと直くんに食べさせたいと思っていたんだ」
「嬉しい! 楽しみです!!」
一瞬直くんを悲しげな表情にさせてしまったが、今はもうすっかり笑顔を取り戻している。
昇、さすがだな。直くんのことをよく分かっている。
「さぁ、食べようか」
卓が今日の夕食に用意してくれたのは、和食をメインにした私の好物ばかり。
「お義父さん。卓さんが張り切って作ってましたからたくさん召し上がってくださいね」
「ああ、ありがとう。この煮付けは流石にアメリカじゃ食べられないからな」
好物のカレイの煮付けに箸を伸ばすと、昇と直くんの目の前にも一皿だけ置かれているのが見える。
卓と絢斗くんの前にも一皿だけだ。
そっとその様子を見てみると、昇も卓もほぐした身を直くんと絢斗くんの口に運んでいる。
卓はこれまでもよく見た光景だし、私も妻によくしていたものだが、昇もしっかりと教育を受けているようだな。
幸せ溢れる食卓を囲みながら、私もまた幸せに満ち足りた気持ちを味わっていた。
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