ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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一番好きな味

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<side寛>

愛しい妻を亡くしてから、一人暮らしを余儀なくされてきて寂しさを感じたくなくて、呼ばれるままにいろんな場所に赴いていたが、それでも夜は一人。
そんな夜を過ごすにも慣れたと思っていたが、卓の家に泊まらせてもらって、人の気配を感じられるとなんとなく嬉しく感じられる。

久しぶりに一人ではないことを感じながら、ぐっすりと眠りについた。
そのおかげか、朝の目覚めもいい。

休みの日だからいつもよりのんびりと起床すると聞いていたから、調理時間を加味して少しだけ早めに起きたのだが、キッチンにはすでに先客がいた。

炊飯器から釜を取り出し、米を炊こうとしている昇の姿に驚いて声をかけた。
私が朝食を作る約束になっていたというと、昇が驚いていたから理由を尋ねると、直くんが私に朝食を作りたいと言っていたと教えてくれた。

楽しい時間を過ごしただけでなく、可愛い孫の手料理の朝食が食べられるなんて……。
これは賢将さんも味わったことはないだろう。

だから私の分だけ直くんと昇に作ってもらうことにして、直くんたちの朝食は私が作ることにした。

手際よく米をセットした昇と代わって、キッチンに入る。
その間、直くんはキッチンがしっかりと見える位置に座ってもらった。

ストック用の冷凍庫には、肉や魚だけでなく、フルーツも数多く冷凍されていて、いつでもどんなリクエストにも対応したいという卓の心意気が現れている気がした。
昨日の夕食もかなり手の込んだものばかりだったが、本当に料理を作るのが楽しくて仕方がないらしい。

まぁ、愛しい伴侶と可愛い息子、そして食べ盛りの甥っ子があんなにも美味しそうに食べてくれるのなら作り甲斐もあるに決まっている。

パンケーキの生地を作り、一応スープとサラダも用意した。
あとはパンケーキを焼いて、冷凍されたフルーツでスムージーを作るだけだ。

「直くんはフルーツは何が好きかな?」

「えっと……どれも好きなんですけど、あの、苺が好きです」

「そうか、じゃあベリー系のスムージーにしよう」

「べりー、けい?」

「ベリーっていうのは、英語で小さな食用の果実のことを言うんだけど、苺のストロベリー、木苺のラズベリー、あとはブルーベリーとかを全部合わせてベリー系って言って、どれも栄養があって美味しい果実のことだよ。それを使って飲みやすいジュースにしたものをスムージーっていうんだ。果物だけじゃなく野菜とか入れることもあるよ」

「へぇー、そうなんですね。僕、ブルーベリーも好きです」

つい先日、ブルーベリーのタルトを初めて食べたらしく、美味しかったと教えてくれた。
だからだろう。あの冷凍庫のフルーツはベリー系が多かったな。

「じゃあブルーベリーも入れるとしよう。さぁ、キッチンを使っていいよ」

その声に昇と直くんがキッチンに入る。私は直くんと代わってキッチンの見える席に座った。

手際よく鍋にだし汁を入れていく昇と、その隣で冷蔵庫から野菜を取り出す直くん。
そんな姿を見るだけで愛おしく思える。

昇が味噌汁を作りながら、直くんに卵を割るように頼むと、直くんはボウルに慎重に卵を割り入れた。
三個すべて上手に割れた時はこの上ないくらい嬉しそうな表情をしていて、私も思わず笑みが溢れた。

そのあと、昇の指示通りに調味料を入れ、昇が綺麗に卵焼きを焼いていく。
二人の共同作業だ。

ちょうどいいタイミングでご飯も炊き上がり、直くんは嬉しそうに少し大きめのボウルに炊き立てのご飯を移した。

「じいちゃん。キッチン代わるからパンケーキとスムージーを準備始めていいよ。俺たち、そのテーブル使うから」

そう言われて、場所を変わると、直くんはテキパキと準備をして必要な材料をテーブルに乗せた。
なるほど。おにぎりか。それは美味しそうだな。

ふんわり柔らかくパンケーキを焼き上げ、スムージーが完成したと同時に直くんのおにぎりも完成したようだ。

私が直くんの前に、トレイに乗せたパンケーキとスムージーを置くと、今度は直くんと昇が私の前に、トレイに乗せたおにぎりと卵焼き、そして味噌汁をおいてくれた。

「おお! 日本の朝食だな。美味しそうだ!」

昇の朝食もテーブルに置き、みんなで早速食べることにした。

少し小さなおにぎりは直くんの手のサイズだろう。
口に入れると、程よい塩味と焼き海苔が美味しい米を引き立てているのがわかる。

具が何もないのも美味しい。
きっと昇が教えたんだろう。私が何も入っていないおにぎりが一番好きなのだと。

直くんが作ってくれたおにぎりは、懐かしい妻の味がした。
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