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嬉しい告白
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<side絢斗>
「敬介くんが来てくれたから直くんもリラックスしてたよ」
「慣れない場所だとどうしても緊張してしまうので、僕が来て安心してもらえたならよかったですよ」
貴重な休みを直くんのために使ってくれてありがたいしかない。
「周平くんは大丈夫?」
「周平さんも一緒に来てるんです。多分今頃、磯山先生と会っているかと……」
なるほど。周平くんも一緒か。
一緒に住んでいるんだし、あの周平くんが一人で行かせるわけないか。
「それよりちょっとご報告が……」
「えっ、なになに?」
敬介くんの表情にいい話だと言うことはわかったけれど、内容が気になって仕方がない。
「今日、直くんの試験官を務めてくれている斎川くんなんですけど……」
「うん、一実くんがどうかした?」
斎川一実くんは秀吾くんと同期で、私のゼミに秀吾くんがいた時、皐月のゼミで勉強していた子だ。
だから四人でお茶をしたりしていたこともあったから彼のことはよく知っている。
秀吾くんは大学を卒業して観月くんの事務所で働き始めたけれど、一実くんは院に進み、皐月のところで勉強を続けていた。勉強に対する意欲もあったし、積極的に論文も書いていたりで、てっきり院を卒業してもそのまま大学に勤めると思っていたけれど、今年の三月で大学を辞めて桜守学園の教師になったという話は聞いていた。
皐月の話では桜守学園の理事長さん、敬介くんのお父さんに直々に口説かれたと聞いている。
公民の教師が今年度で定年退職予定で、その後を受け継ぐ人材を前もって確保したかったのだろうと言っていた。
その時は勿体無いなと思ったけれど、私としては直くんの担任が一実くんなら言うことはない。
その一実くんに何かあったんだろうか?
ドキドキしながら言葉の続きを待っていると、敬介くんが笑顔を見せた。
「実は……うちの兄の恋人になりました」
「えっ? ええーーっ!」
あまりにもさらりと打ち明けられて、驚きの声をあげてしまった。
ここが防音でよかったと思うほど大きな声が出て、思わず口を押さえた。
「やっぱり驚きましたよね? 僕も話を聞いてびっくりしましたよ」
敬介くんも驚いたと言っていたけれど、私の驚きはそれ以上だ
なんせ、敬介くんの兄・知成さんといえば、敬介くん命と言えるほどの溺愛っぷりで、敬介くんが周平くんと恋人になった時は涙を流していたと聞いたくらいだ。
その知成さんに恋人ができた。
しかも相手が一実くんだと聞いたら驚かないわけがない。
「それいつ知ったの?」
「実は、うちの兄……今年の二月からしばらくイギリスに行っていて、戻ってきて久しぶりに学校に来た時に斎川くんと会って運命を感じたみたいです。かなり積極的にアプローチしていたみたいなんですけど、斎川くんの方がなかなかうんと言ってくれなかったみたいで……」
「どうして?」
「多分、兄が自分が勤める学校の次期理事長とか、いろいろあったんじゃないでしょうか。それでなかなか了承できなかったみたいです」
一実くんも真面目な子だからな。
自分が恋人になったら迷惑かけるかも……とか思ったのかも。
「でもOKもらったんだ?」
「はい。あの時の兄は絢斗先生にも見せたいくらいすごい浮かれようでしたよ」
その時のことを思い出しているんだろう。
敬介くん、すごく嬉しそうだ。
「よかったね、お兄さんも幸せになれて」
「はい。それだけが心配だったので」
敬介くんも知成さんもお互いにそれぞれの幸せだけを思っていたんだろうな。
本当にいい兄弟だ。
<side昇>
直くんを教室に送り届けて、試験官の先生が教室に入るのを確認して俺は絢斗さんたちがいる休憩室に向かった。
その入り口の扉に手をかけ少し開きかけた瞬間、
「ええーーっ!」
と絢斗さんの叫び声が聞こえて、慌てて扉を閉めた。
思わずその場にしゃがみ込んでしまったけれど、俺は何もしていないはずだ。
そっと立ち上がり、扉から中の様子を覗いてみると絢斗さんと浅香さんが顔を近づけて話をしているのが見える。
これは……邪魔したらダメなやつ、だよな……。
でも一体なんだろう?
あの絢斗さんがあれほど大きな声をあげるなんて……。
気になりつつも、俺はそっとその場を離れ、伯父さんが来るのを待った。
「昇? そんなところで何をやっているんだ? 休憩室があるんじゃなかったか?」
背後から伯父さんの声が聞こえて振り返ると、伯父さんの隣にはあの結婚式の時に会った蓮見さんの姿が見える。
「あ、やっ、あの……なんか、絢斗さんと浅香さんが大事な話をしているみたいで、休憩室に入れなくて……」
「大事な話?」
伯父さんが聞き返すと、蓮見さんはすぐにピンと来たようで笑顔を浮かべていた。
「敬介くんが来てくれたから直くんもリラックスしてたよ」
「慣れない場所だとどうしても緊張してしまうので、僕が来て安心してもらえたならよかったですよ」
貴重な休みを直くんのために使ってくれてありがたいしかない。
「周平くんは大丈夫?」
「周平さんも一緒に来てるんです。多分今頃、磯山先生と会っているかと……」
なるほど。周平くんも一緒か。
一緒に住んでいるんだし、あの周平くんが一人で行かせるわけないか。
「それよりちょっとご報告が……」
「えっ、なになに?」
敬介くんの表情にいい話だと言うことはわかったけれど、内容が気になって仕方がない。
「今日、直くんの試験官を務めてくれている斎川くんなんですけど……」
「うん、一実くんがどうかした?」
斎川一実くんは秀吾くんと同期で、私のゼミに秀吾くんがいた時、皐月のゼミで勉強していた子だ。
だから四人でお茶をしたりしていたこともあったから彼のことはよく知っている。
秀吾くんは大学を卒業して観月くんの事務所で働き始めたけれど、一実くんは院に進み、皐月のところで勉強を続けていた。勉強に対する意欲もあったし、積極的に論文も書いていたりで、てっきり院を卒業してもそのまま大学に勤めると思っていたけれど、今年の三月で大学を辞めて桜守学園の教師になったという話は聞いていた。
皐月の話では桜守学園の理事長さん、敬介くんのお父さんに直々に口説かれたと聞いている。
公民の教師が今年度で定年退職予定で、その後を受け継ぐ人材を前もって確保したかったのだろうと言っていた。
その時は勿体無いなと思ったけれど、私としては直くんの担任が一実くんなら言うことはない。
その一実くんに何かあったんだろうか?
ドキドキしながら言葉の続きを待っていると、敬介くんが笑顔を見せた。
「実は……うちの兄の恋人になりました」
「えっ? ええーーっ!」
あまりにもさらりと打ち明けられて、驚きの声をあげてしまった。
ここが防音でよかったと思うほど大きな声が出て、思わず口を押さえた。
「やっぱり驚きましたよね? 僕も話を聞いてびっくりしましたよ」
敬介くんも驚いたと言っていたけれど、私の驚きはそれ以上だ
なんせ、敬介くんの兄・知成さんといえば、敬介くん命と言えるほどの溺愛っぷりで、敬介くんが周平くんと恋人になった時は涙を流していたと聞いたくらいだ。
その知成さんに恋人ができた。
しかも相手が一実くんだと聞いたら驚かないわけがない。
「それいつ知ったの?」
「実は、うちの兄……今年の二月からしばらくイギリスに行っていて、戻ってきて久しぶりに学校に来た時に斎川くんと会って運命を感じたみたいです。かなり積極的にアプローチしていたみたいなんですけど、斎川くんの方がなかなかうんと言ってくれなかったみたいで……」
「どうして?」
「多分、兄が自分が勤める学校の次期理事長とか、いろいろあったんじゃないでしょうか。それでなかなか了承できなかったみたいです」
一実くんも真面目な子だからな。
自分が恋人になったら迷惑かけるかも……とか思ったのかも。
「でもOKもらったんだ?」
「はい。あの時の兄は絢斗先生にも見せたいくらいすごい浮かれようでしたよ」
その時のことを思い出しているんだろう。
敬介くん、すごく嬉しそうだ。
「よかったね、お兄さんも幸せになれて」
「はい。それだけが心配だったので」
敬介くんも知成さんもお互いにそれぞれの幸せだけを思っていたんだろうな。
本当にいい兄弟だ。
<side昇>
直くんを教室に送り届けて、試験官の先生が教室に入るのを確認して俺は絢斗さんたちがいる休憩室に向かった。
その入り口の扉に手をかけ少し開きかけた瞬間、
「ええーーっ!」
と絢斗さんの叫び声が聞こえて、慌てて扉を閉めた。
思わずその場にしゃがみ込んでしまったけれど、俺は何もしていないはずだ。
そっと立ち上がり、扉から中の様子を覗いてみると絢斗さんと浅香さんが顔を近づけて話をしているのが見える。
これは……邪魔したらダメなやつ、だよな……。
でも一体なんだろう?
あの絢斗さんがあれほど大きな声をあげるなんて……。
気になりつつも、俺はそっとその場を離れ、伯父さんが来るのを待った。
「昇? そんなところで何をやっているんだ? 休憩室があるんじゃなかったか?」
背後から伯父さんの声が聞こえて振り返ると、伯父さんの隣にはあの結婚式の時に会った蓮見さんの姿が見える。
「あ、やっ、あの……なんか、絢斗さんと浅香さんが大事な話をしているみたいで、休憩室に入れなくて……」
「大事な話?」
伯父さんが聞き返すと、蓮見さんはすぐにピンと来たようで笑顔を浮かべていた。
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