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どんな未来が待っているか
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<side昇>
試験が終わって駆け寄ってきた直くんの表情を見るだけで、試験がうまくいったんだろうということはすぐにわかった。
そもそも俺が解いていた桜城大学の過去問を解いてしまうような実力を持っているんだからその辺りは全然心配してなかった。
十二月に入ってからはほとんど勉強らしい勉強もさせてなかったし、それよりも直くんをリラックスさせることだけを重視したおかげで、直くんはプレッシャーを感じることなく試験を受けられたんだろうと思う。
「今日の試験の結果は一週間後に自宅に郵送されるからね」
浅香さんの言葉に初めて緊張のそぶりを見せたけれど、もう試験は終わったから大丈夫だ。
ふと教室を見ると、絢斗さんが試験官の先生と話しているのが見える。
教え子だって言ってたから久しぶりに会って話をしているんだろう。
絢斗さんは在校生だけでなく、卒業生からもずっと変わらず好かれているからすごいと思う。
絢斗さんが教室から出てくるのが見えて、俺たちもその場を離れた。
「直くんはいちご好き? 今、イリゼホテルでいちごフェアやってるよ」
「わぁ、いちご! 食べたい!」
いちごと聞いただけで直くんが笑顔になる。
これは絶対に連れて行かないとな。
直くんの喜びの声に、後ろからやってきた伯父さんがすぐに反応した。
「直くん、ご機嫌だな」
「パパ、あの……いちご食べに行きたいです!」
「いちご?」
「卓さん、イリゼホテルのスイーツビュッフェだよ。これからちょうどお昼だしいいじゃない。行こうよ」
イリゼホテルのスイーツビュッフェはスイーツがメインだけど、ローストビーフサンドや BLTサンドといったボリュームあるサンドイッチやシェフが目の前でステーキを焼いてくれたり、パスタも作ってくれるから、俺や伯父さんが行っても満足できる。
「そうだな、スイーツも食べに行こうと思っていたから一緒に食べられるなら移動する手間も省けるしいいだろう」
「じゃあ、私の方で席を予約しておきますね」
「敬介くん、ありがとう。今度は敬介くんも一緒に行こう!」
「そうですね。じゃあ、今度はお祝いの時に。ねっ」
浅香さんが直くんにパチンとウインクすると、直くんがほんのり頬を染めて頷く。
それをみて、俺は微笑ましく思えたけれど蓮見さんはさっと浅香さんに寄り添っていた。
さっきの浅香さんのお兄さんもそうだったけど、蓮見さんも似た感じだな。
やっぱり浅香さんと兄弟っていうよりはあのお兄さんと蓮見さんが兄弟っぽい気がする。
早速予約を入れてくれた浅香さんにお礼を言って、昇降口で靴を履き替える。
「車をここに持ってくるから昇たちはここで待っていなさい」
伯父さんは絢斗さんだけ連れて駐車場に向かった。
俺たちは浅香さんたちと一緒に車が来るのを待っていると、
「敬介」
と呼ぶ声が後ろから聞こえた。
「兄さん。どうしたの?」
「見送りに来たんだよ。ああ、この子かな。今日受験してくれたのは」
「そうだよ、直くん」
浅香さんは直くんの肩にそっと手を置くと、優しい笑顔を見せた。
「直くん、この人は俺の兄。桜守学園の理事長だよ」
「えっ、理事長、先生……。は、初めまして。今日は試験を受けさせてくださってありがとうございます!」
浅香さんから紹介されて驚いたのか、直くんは顔を真っ赤にしながらお兄さんに頭を下げた。
「君が我が校で勉強できることを願っているよ」
「は、はい。ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げる直くんに俺はさっと近づき、ピッタリと寄り添って立った。
これで俺が誰を大事に思っているか、あの斎川先生に近づいたりしないってことをお兄さんに知ってもらえるだろう。
案の定、お兄さんはハッとした表情を見せていた。
良かった。これでもう牽制されたりしないかな。
そう思うだけでホッとした。
<side卓>
昇降口に車を回すと伝えて、絢斗と二人で駐車場に戻った。
その間にさっきの話を聞きたかったからだ。
「それで何があった?」
「うん。実はね、直くん――」
絢斗が笑顔で話してくれたのは、直くんのテストの様子だった。
終始楽しそうにテストを受けていたばかりか、数学では問題の間違いに気づき、それをスルーすることなく、他の解き方を示して証明したという話を聞いて思わず笑ってしまった。
「斎川くんも驚いただろうな」
「うん。さすが私の息子だって。一実くんの中ではそういう認識みたい」
「戸籍上はともかく直くんは私と絢斗の子だ。何も間違ってはいない。数学が好きな絢斗に似たんだな」
「だね。でも直くんの場合はどれも満遍なく好きみたいだから将来有望だよ」
直くんはこれからどんな大人になるのか……。
今はまだなりたいものになんでも挑戦してなれる年齢だ。
もちろん法律に携わる仕事がしたいと言われればそれは嬉しいが、これからどんどん夢を持ってもらいたい。
この学校できっと大きく成長するだろう。
試験が終わって駆け寄ってきた直くんの表情を見るだけで、試験がうまくいったんだろうということはすぐにわかった。
そもそも俺が解いていた桜城大学の過去問を解いてしまうような実力を持っているんだからその辺りは全然心配してなかった。
十二月に入ってからはほとんど勉強らしい勉強もさせてなかったし、それよりも直くんをリラックスさせることだけを重視したおかげで、直くんはプレッシャーを感じることなく試験を受けられたんだろうと思う。
「今日の試験の結果は一週間後に自宅に郵送されるからね」
浅香さんの言葉に初めて緊張のそぶりを見せたけれど、もう試験は終わったから大丈夫だ。
ふと教室を見ると、絢斗さんが試験官の先生と話しているのが見える。
教え子だって言ってたから久しぶりに会って話をしているんだろう。
絢斗さんは在校生だけでなく、卒業生からもずっと変わらず好かれているからすごいと思う。
絢斗さんが教室から出てくるのが見えて、俺たちもその場を離れた。
「直くんはいちご好き? 今、イリゼホテルでいちごフェアやってるよ」
「わぁ、いちご! 食べたい!」
いちごと聞いただけで直くんが笑顔になる。
これは絶対に連れて行かないとな。
直くんの喜びの声に、後ろからやってきた伯父さんがすぐに反応した。
「直くん、ご機嫌だな」
「パパ、あの……いちご食べに行きたいです!」
「いちご?」
「卓さん、イリゼホテルのスイーツビュッフェだよ。これからちょうどお昼だしいいじゃない。行こうよ」
イリゼホテルのスイーツビュッフェはスイーツがメインだけど、ローストビーフサンドや BLTサンドといったボリュームあるサンドイッチやシェフが目の前でステーキを焼いてくれたり、パスタも作ってくれるから、俺や伯父さんが行っても満足できる。
「そうだな、スイーツも食べに行こうと思っていたから一緒に食べられるなら移動する手間も省けるしいいだろう」
「じゃあ、私の方で席を予約しておきますね」
「敬介くん、ありがとう。今度は敬介くんも一緒に行こう!」
「そうですね。じゃあ、今度はお祝いの時に。ねっ」
浅香さんが直くんにパチンとウインクすると、直くんがほんのり頬を染めて頷く。
それをみて、俺は微笑ましく思えたけれど蓮見さんはさっと浅香さんに寄り添っていた。
さっきの浅香さんのお兄さんもそうだったけど、蓮見さんも似た感じだな。
やっぱり浅香さんと兄弟っていうよりはあのお兄さんと蓮見さんが兄弟っぽい気がする。
早速予約を入れてくれた浅香さんにお礼を言って、昇降口で靴を履き替える。
「車をここに持ってくるから昇たちはここで待っていなさい」
伯父さんは絢斗さんだけ連れて駐車場に向かった。
俺たちは浅香さんたちと一緒に車が来るのを待っていると、
「敬介」
と呼ぶ声が後ろから聞こえた。
「兄さん。どうしたの?」
「見送りに来たんだよ。ああ、この子かな。今日受験してくれたのは」
「そうだよ、直くん」
浅香さんは直くんの肩にそっと手を置くと、優しい笑顔を見せた。
「直くん、この人は俺の兄。桜守学園の理事長だよ」
「えっ、理事長、先生……。は、初めまして。今日は試験を受けさせてくださってありがとうございます!」
浅香さんから紹介されて驚いたのか、直くんは顔を真っ赤にしながらお兄さんに頭を下げた。
「君が我が校で勉強できることを願っているよ」
「は、はい。ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げる直くんに俺はさっと近づき、ピッタリと寄り添って立った。
これで俺が誰を大事に思っているか、あの斎川先生に近づいたりしないってことをお兄さんに知ってもらえるだろう。
案の定、お兄さんはハッとした表情を見せていた。
良かった。これでもう牽制されたりしないかな。
そう思うだけでホッとした。
<side卓>
昇降口に車を回すと伝えて、絢斗と二人で駐車場に戻った。
その間にさっきの話を聞きたかったからだ。
「それで何があった?」
「うん。実はね、直くん――」
絢斗が笑顔で話してくれたのは、直くんのテストの様子だった。
終始楽しそうにテストを受けていたばかりか、数学では問題の間違いに気づき、それをスルーすることなく、他の解き方を示して証明したという話を聞いて思わず笑ってしまった。
「斎川くんも驚いただろうな」
「うん。さすが私の息子だって。一実くんの中ではそういう認識みたい」
「戸籍上はともかく直くんは私と絢斗の子だ。何も間違ってはいない。数学が好きな絢斗に似たんだな」
「だね。でも直くんの場合はどれも満遍なく好きみたいだから将来有望だよ」
直くんはこれからどんな大人になるのか……。
今はまだなりたいものになんでも挑戦してなれる年齢だ。
もちろん法律に携わる仕事がしたいと言われればそれは嬉しいが、これからどんどん夢を持ってもらいたい。
この学校できっと大きく成長するだろう。
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