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甘く長い……
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<side卓>
「ねぇねぇ、みんなで校門で立って待ってよーよ」
「いや、それは……」
校門のすぐ近くにある送迎用の保護者駐車場に車を止めて、昇が出てきたら向かわせるくらいなら大丈夫そうかと思っていたんだ。絢斗だけでも目立つのに、直くんも一緒に待っていたらとてつもなく目立つに決まっている。
さすがに反対するしかないと思ったが、絢斗はすっかりやる気になっている。それどころかもう直くんを仲間につけていた。これはもう反対のしようがない。
仕方がない。私が二人を守ればいい。
高校に近づくとまだ生徒の姿はどこにも見えない。
どうやら帰宅の時間には間に合ったらしい。
緩やかな坂道の中腹にある送迎専用の駐車場に車を止める。
待ちきれない様子の絢斗の元に急いで向かい扉を開けてやると嬉しそうに飛び出してきた。
絢斗は何度か連れてきたことがある場所だが、直くんにとっては初めてだ。
車を降りると興味深そうに辺りを見回している。
「パパもここに通っていたんですよね?」
「そうだよ。あの時からほとんど変わっていないよ」
古い校舎の塗り替えは多少あったが、建物自体は何も変わっていない。
「桜守もすごく素敵だったけど、この高校もかっこいいですね」
桜守も歴史は長いが、母校はそれ以上の歴史がある。
男女問わず門戸を開き良家の子女に勉学を学ぶ場を与えた桜守と違って、元々は男子校だったこの儁秀高校は日本を引っ張っていく人材を作り出すための場だった。
それだけに男女共学となった今でも男女の比率は男が断然多い。かなり閉鎖的な学校と言えるが、直くんはそれをかっこいいと言ってくれた。そこまで母校愛に満ち溢れていたわけではないが、卒業生として受け入れてもらえるのは嬉しいことだ。
「あ、生徒さんたちがもう出てきてるよ。校門で待ってよう」
絢斗は直くんの手を取ってスタスタ歩いて行こうとする。その二人の後を追いかけて直くんを間に挟み、校門に向けて歩き出した。
「こんにちはー」
私たちの姿を見た生徒が声をかけてくる。
学校にきた大人には「こんにちは」「さようなら」など声をかけることが推奨されているため、声をかけてきても不思議ではない。条件反射のように大人がいれば声をかけるから、この彼も普段のように声をかけたのだろう。
ところが、絢斗はその挨拶に笑顔を返した。
「はい。こんにちは。挨拶できてえらいねー」
「えっ、は、はい」
不意打ちの絢斗の笑顔に何が起こったのかわからない様子でその場に立ち尽くす生徒。
「ふふ、高校生かわいいね」
真っ赤になった彼を見て、笑顔でそんな言葉を置いてスタスタと歩き去っていく。
茫然と絢斗の後ろ姿を見つけるその生徒の姿は、もうすっかり絢斗に惚れてしまっているのがわかる。
だがここで釘を刺しておかないと彼は一生恋人を持つこともできなくなるだろう。
少し強めの威圧を生徒に放つとみるみる顔を青褪めさせた。
「ひぃっ!」
恐怖に塗れた声をあげながら、彼は坂道を駆け下りていった。
「はは、さすが高校生。元気だなー」
絢斗は何も気づく様子もなく振り返って笑っている。
はぁーーっ、前途多難だな。
昇、早く出てきてくれ!
そんな願いも虚しく、帰宅する生徒がどんどん増えてきた。
正門から中を覗き込む絢斗と直くんの姿に周囲は色めきだっているが、直くんは昇の姿を見つけるのに必死になって気づいていないようだ。絢斗はこういう視線を注がれることに慣れすぎて気に留める様子もない。
「昇くん、見えた?」
「人が多くて……あんまり見えないです」
背伸びをしたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねたりして一生懸命覗こうとする姿がたまらなくかわいいが、私が思っている以上に生徒たちは直くんをかわいいと思っているだろう。私は絢斗と直くんの二人を後ろから包み込むように立ち、絢斗と直くんに向けられる好意的な視線に対して次々と威圧を放っていった。
そのおかげで私たちの周囲から人の姿は消えたが、五メートルほど遠巻きにされた状態で見られている。
まだか、昇は。遅いな。
そう思った瞬間、直くんが嬉しそうな表情を見せた。
「あっ! 昇さーんっ!! 昇さんっ、こっち、こっちー!!」
人垣の隙間から昇の姿を発見したのだろう。普段の直くんからは想像できないほど大きな声をあげ、しかもその場でぴょんぴょんとジャンプして自分の姿を昇に見せようとする。
その愛らしい姿に周りにいた生徒はノックアウトされてしまったのか、一気にその場に頽れた。
人垣がなくなったことでようやく昇にも私たちの姿が見えたようだ。
「えっ、な、直くん?」
驚きつつも我々のもとに駆け寄ってくる昇を見て、直くんも私と絢斗の元から離れて学校の敷地内に入り、昇に駆け寄った。
「昇さん!」
昇はどうしてここに直くんがいるのか、頭の中は混乱しているだろう。
だがそれでも駆け寄ってくる直くんをしっかりと受け止めている。
「直くん。どうして……」
「昇さんに伝えたいことがあって……」
「伝えたいこと?」
「はい。僕……桜守に合格しました!!」
嬉しそうに飛びついた直くんをしっかりと抱きしめておめでとう! と何度も言っているのが見える。
「昇さんのおかげです。ありがとうございます!」
直くんは笑顔のまま昇の顔に自分の顔を近づけると、昇は条件反射のように自分の顔を近づけた。
そして、二人は私たちも含めて多くの観衆の中、甘く長い口付けを交わしていた。
「ねぇねぇ、みんなで校門で立って待ってよーよ」
「いや、それは……」
校門のすぐ近くにある送迎用の保護者駐車場に車を止めて、昇が出てきたら向かわせるくらいなら大丈夫そうかと思っていたんだ。絢斗だけでも目立つのに、直くんも一緒に待っていたらとてつもなく目立つに決まっている。
さすがに反対するしかないと思ったが、絢斗はすっかりやる気になっている。それどころかもう直くんを仲間につけていた。これはもう反対のしようがない。
仕方がない。私が二人を守ればいい。
高校に近づくとまだ生徒の姿はどこにも見えない。
どうやら帰宅の時間には間に合ったらしい。
緩やかな坂道の中腹にある送迎専用の駐車場に車を止める。
待ちきれない様子の絢斗の元に急いで向かい扉を開けてやると嬉しそうに飛び出してきた。
絢斗は何度か連れてきたことがある場所だが、直くんにとっては初めてだ。
車を降りると興味深そうに辺りを見回している。
「パパもここに通っていたんですよね?」
「そうだよ。あの時からほとんど変わっていないよ」
古い校舎の塗り替えは多少あったが、建物自体は何も変わっていない。
「桜守もすごく素敵だったけど、この高校もかっこいいですね」
桜守も歴史は長いが、母校はそれ以上の歴史がある。
男女問わず門戸を開き良家の子女に勉学を学ぶ場を与えた桜守と違って、元々は男子校だったこの儁秀高校は日本を引っ張っていく人材を作り出すための場だった。
それだけに男女共学となった今でも男女の比率は男が断然多い。かなり閉鎖的な学校と言えるが、直くんはそれをかっこいいと言ってくれた。そこまで母校愛に満ち溢れていたわけではないが、卒業生として受け入れてもらえるのは嬉しいことだ。
「あ、生徒さんたちがもう出てきてるよ。校門で待ってよう」
絢斗は直くんの手を取ってスタスタ歩いて行こうとする。その二人の後を追いかけて直くんを間に挟み、校門に向けて歩き出した。
「こんにちはー」
私たちの姿を見た生徒が声をかけてくる。
学校にきた大人には「こんにちは」「さようなら」など声をかけることが推奨されているため、声をかけてきても不思議ではない。条件反射のように大人がいれば声をかけるから、この彼も普段のように声をかけたのだろう。
ところが、絢斗はその挨拶に笑顔を返した。
「はい。こんにちは。挨拶できてえらいねー」
「えっ、は、はい」
不意打ちの絢斗の笑顔に何が起こったのかわからない様子でその場に立ち尽くす生徒。
「ふふ、高校生かわいいね」
真っ赤になった彼を見て、笑顔でそんな言葉を置いてスタスタと歩き去っていく。
茫然と絢斗の後ろ姿を見つけるその生徒の姿は、もうすっかり絢斗に惚れてしまっているのがわかる。
だがここで釘を刺しておかないと彼は一生恋人を持つこともできなくなるだろう。
少し強めの威圧を生徒に放つとみるみる顔を青褪めさせた。
「ひぃっ!」
恐怖に塗れた声をあげながら、彼は坂道を駆け下りていった。
「はは、さすが高校生。元気だなー」
絢斗は何も気づく様子もなく振り返って笑っている。
はぁーーっ、前途多難だな。
昇、早く出てきてくれ!
そんな願いも虚しく、帰宅する生徒がどんどん増えてきた。
正門から中を覗き込む絢斗と直くんの姿に周囲は色めきだっているが、直くんは昇の姿を見つけるのに必死になって気づいていないようだ。絢斗はこういう視線を注がれることに慣れすぎて気に留める様子もない。
「昇くん、見えた?」
「人が多くて……あんまり見えないです」
背伸びをしたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねたりして一生懸命覗こうとする姿がたまらなくかわいいが、私が思っている以上に生徒たちは直くんをかわいいと思っているだろう。私は絢斗と直くんの二人を後ろから包み込むように立ち、絢斗と直くんに向けられる好意的な視線に対して次々と威圧を放っていった。
そのおかげで私たちの周囲から人の姿は消えたが、五メートルほど遠巻きにされた状態で見られている。
まだか、昇は。遅いな。
そう思った瞬間、直くんが嬉しそうな表情を見せた。
「あっ! 昇さーんっ!! 昇さんっ、こっち、こっちー!!」
人垣の隙間から昇の姿を発見したのだろう。普段の直くんからは想像できないほど大きな声をあげ、しかもその場でぴょんぴょんとジャンプして自分の姿を昇に見せようとする。
その愛らしい姿に周りにいた生徒はノックアウトされてしまったのか、一気にその場に頽れた。
人垣がなくなったことでようやく昇にも私たちの姿が見えたようだ。
「えっ、な、直くん?」
驚きつつも我々のもとに駆け寄ってくる昇を見て、直くんも私と絢斗の元から離れて学校の敷地内に入り、昇に駆け寄った。
「昇さん!」
昇はどうしてここに直くんがいるのか、頭の中は混乱しているだろう。
だがそれでも駆け寄ってくる直くんをしっかりと受け止めている。
「直くん。どうして……」
「昇さんに伝えたいことがあって……」
「伝えたいこと?」
「はい。僕……桜守に合格しました!!」
嬉しそうに飛びついた直くんをしっかりと抱きしめておめでとう! と何度も言っているのが見える。
「昇さんのおかげです。ありがとうございます!」
直くんは笑顔のまま昇の顔に自分の顔を近づけると、昇は条件反射のように自分の顔を近づけた。
そして、二人は私たちも含めて多くの観衆の中、甘く長い口付けを交わしていた。
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