49 / 93
氷室との電話
しおりを挟む
新海から舞川さんの仕事先や上司の名前など必要な情報だけを聞き出した私は、警視庁に戻ってすぐに氷室に連絡を入れた。
<氷室に頼みたいことがある。時間ができたら連絡が欲しい。冬貴>
メッセージを送るとすぐに既読がついたかと思ったら、すぐにスマホに電話がかかってきた。
ーなんだ、連絡が早いな。休憩中だったのか?
ーちょうどスマホを持っていたんだ。それよりも頼みたいことってなんだ?
ー声が驚いているな、そんなにびっくりしたのか?
ーお前はいつも成瀬にまず声をかけるからな。わざわざ俺を指名してきたから驚いたんだ。
確かに成瀬とは高校の時からの付き合いということもあって、何かあればすぐに連絡してしまうのは否めない。
ー成瀬には今別件で頼んでいることがあるから、忙しいだろうと思ってお前に声をかけたんだよ。
ーなんだ、そういうことか。
ーあ、もちろんお前の腕も見込んでのことだぞ。
ーいいよ、そんな取り繕わなくても。それで、なんだ?
ー実は直属の部下の恋人が困っていて話を聞いてあげて欲しいんだ。その恋人っていうのがある事件の被害者なんだが、その事件でPTSDを発症して家から出られなくなったから会社に病気休暇を申請したんだよ。そうしたら上司に退職するか休暇を取り下げてすぐ復職するかの二択を迫られたようだ。
ーなるほど。もしかして退職を選んだらもう同じ業界で働けないようにしてやるとか圧力をかけられている、とか?
ーえっ、なんでわかった?
ーわかるさ。そんなことでもなければすぐにお前の部下が仕事を辞めさせているはずだろ。
ーなるほど。さすがだな。
ーははっ。少しは見直したか?
ーいや、だから最初から期待してるって。
ーわかった、わかった。とにかくその件、引き受けるよ。ちょうど手も空いたところだからな。一度本人とも話がしたいから連絡先を伝えておいてくれ。お前の部下の方でも構わないから。
ーああ、助かるよ。
氷室がついてくれればすぐに片付くだろう。
要さんといい、舞川さんといい、優秀な弁護士の友人がいて本当にありがたいな。
あとは舞川さんの就職先か。
ーなぁ、真壁……。
ーんっ? なんだ?
ーお前、何かあったか?
ーえっ? どうしてだ?
ーいや、なんとなく今までと違うような気がしたんだ。声、とか……本当になんとなくなんだが、なんか柔らかいっていうか……成瀬が真琴くんと知り合ってからの雰囲気に似ているような……
氷室の言葉にドキッとさせられる。
まさかそんなことで気づかれるとは思ってなかったな。
ーなぁ、もしかして……ないよな?
ーお前はどこまで優秀なんだよ。
ーえっ? それって……
ーもう少し落ち着いたら話そうと思っていたんだ。実は恋人ができた。今、一緒に暮らしている。
ー………………
ーおい、聞いてるか? 氷室?
ーちょっ! えぇぇーーーっ、こ、恋人? 本当に? ってか、一緒に暮らしてる? お前が?
ー落ち着けって! 全部本当だよ、ちなみに成瀬も安慶名も知ってるよ。
ーなんだよ、俺が最後なのか?
ーたまたまなんだよ、成瀬には出会うきっかけを作ってもらったようなものだったし、安慶名の場合は周平さんと電話で話をしていた時にスピーカーで聞かれただけだ。私から恋人ができたと話したのは氷室が初めてだよ。
ーそうか、それなら許してやる。でも……よかったな。真壁。
氷室の感情のこもった声に本気で喜んでくれているんだとわかって嬉しくなる。
ーありがとう。
ー今度、またみんなで飲もうぜ。お前の恋人も紹介してくれ。
ーああ、わかった。近いうちにその件で連絡するよ。
ー楽しみにしているよ。じゃあ、さっきの件はいつでも連絡してくれて構わないと伝えてくれ。すぐに終わらせるから安心していていいぞ。
そんな頼もしい言葉を吐いて氷室は電話を切った。
本当に学生時代からの友人というのはいいものだな。
「新海、さっき話していた友人の弁護士の名刺だ。いつでも連絡していいと言っていたから舞川さんと話をしてからでもいいから連絡してみろ」
「警視正! ありがとうございます!」
「再就職の件も心配しないでいいぞ。まずは会社のことを片付けてからだ」
「わかりました。本当にありがとうございます!」
新海もついこの前まで感情を露わにするのを見たことがなかったが、こんなにも表情豊かになるとは思ってなかったな。最愛の存在ができると自然とそうなってしまうものなのだろう。
さて、要さんの件だが、どのタイミングで周平さんに黒岩たちの話をしようか……。浅香さんと一緒に我が家に来てもらった時に話をしてもいいが、何かのきっかけで要さんに名前が聞かれでもしたら困るからな……。
やはり周平さんのところに直接話をしに行くのが一番かもしれない。私は急いで仕事の調整を行い、いつもの時間よりも早く警視庁を出て周平さんの会社に足を運んだ。
* * *
いつも読んでいただきありがとうございます!
後ほど近況ボードでもお知らせしますが、明日12月31日から1月4日まで全ての小説の投稿をお休みさせていただきます。年明け1月5日から小説投稿を再開しますのでどうぞよろしくお願いします。
<氷室に頼みたいことがある。時間ができたら連絡が欲しい。冬貴>
メッセージを送るとすぐに既読がついたかと思ったら、すぐにスマホに電話がかかってきた。
ーなんだ、連絡が早いな。休憩中だったのか?
ーちょうどスマホを持っていたんだ。それよりも頼みたいことってなんだ?
ー声が驚いているな、そんなにびっくりしたのか?
ーお前はいつも成瀬にまず声をかけるからな。わざわざ俺を指名してきたから驚いたんだ。
確かに成瀬とは高校の時からの付き合いということもあって、何かあればすぐに連絡してしまうのは否めない。
ー成瀬には今別件で頼んでいることがあるから、忙しいだろうと思ってお前に声をかけたんだよ。
ーなんだ、そういうことか。
ーあ、もちろんお前の腕も見込んでのことだぞ。
ーいいよ、そんな取り繕わなくても。それで、なんだ?
ー実は直属の部下の恋人が困っていて話を聞いてあげて欲しいんだ。その恋人っていうのがある事件の被害者なんだが、その事件でPTSDを発症して家から出られなくなったから会社に病気休暇を申請したんだよ。そうしたら上司に退職するか休暇を取り下げてすぐ復職するかの二択を迫られたようだ。
ーなるほど。もしかして退職を選んだらもう同じ業界で働けないようにしてやるとか圧力をかけられている、とか?
ーえっ、なんでわかった?
ーわかるさ。そんなことでもなければすぐにお前の部下が仕事を辞めさせているはずだろ。
ーなるほど。さすがだな。
ーははっ。少しは見直したか?
ーいや、だから最初から期待してるって。
ーわかった、わかった。とにかくその件、引き受けるよ。ちょうど手も空いたところだからな。一度本人とも話がしたいから連絡先を伝えておいてくれ。お前の部下の方でも構わないから。
ーああ、助かるよ。
氷室がついてくれればすぐに片付くだろう。
要さんといい、舞川さんといい、優秀な弁護士の友人がいて本当にありがたいな。
あとは舞川さんの就職先か。
ーなぁ、真壁……。
ーんっ? なんだ?
ーお前、何かあったか?
ーえっ? どうしてだ?
ーいや、なんとなく今までと違うような気がしたんだ。声、とか……本当になんとなくなんだが、なんか柔らかいっていうか……成瀬が真琴くんと知り合ってからの雰囲気に似ているような……
氷室の言葉にドキッとさせられる。
まさかそんなことで気づかれるとは思ってなかったな。
ーなぁ、もしかして……ないよな?
ーお前はどこまで優秀なんだよ。
ーえっ? それって……
ーもう少し落ち着いたら話そうと思っていたんだ。実は恋人ができた。今、一緒に暮らしている。
ー………………
ーおい、聞いてるか? 氷室?
ーちょっ! えぇぇーーーっ、こ、恋人? 本当に? ってか、一緒に暮らしてる? お前が?
ー落ち着けって! 全部本当だよ、ちなみに成瀬も安慶名も知ってるよ。
ーなんだよ、俺が最後なのか?
ーたまたまなんだよ、成瀬には出会うきっかけを作ってもらったようなものだったし、安慶名の場合は周平さんと電話で話をしていた時にスピーカーで聞かれただけだ。私から恋人ができたと話したのは氷室が初めてだよ。
ーそうか、それなら許してやる。でも……よかったな。真壁。
氷室の感情のこもった声に本気で喜んでくれているんだとわかって嬉しくなる。
ーありがとう。
ー今度、またみんなで飲もうぜ。お前の恋人も紹介してくれ。
ーああ、わかった。近いうちにその件で連絡するよ。
ー楽しみにしているよ。じゃあ、さっきの件はいつでも連絡してくれて構わないと伝えてくれ。すぐに終わらせるから安心していていいぞ。
そんな頼もしい言葉を吐いて氷室は電話を切った。
本当に学生時代からの友人というのはいいものだな。
「新海、さっき話していた友人の弁護士の名刺だ。いつでも連絡していいと言っていたから舞川さんと話をしてからでもいいから連絡してみろ」
「警視正! ありがとうございます!」
「再就職の件も心配しないでいいぞ。まずは会社のことを片付けてからだ」
「わかりました。本当にありがとうございます!」
新海もついこの前まで感情を露わにするのを見たことがなかったが、こんなにも表情豊かになるとは思ってなかったな。最愛の存在ができると自然とそうなってしまうものなのだろう。
さて、要さんの件だが、どのタイミングで周平さんに黒岩たちの話をしようか……。浅香さんと一緒に我が家に来てもらった時に話をしてもいいが、何かのきっかけで要さんに名前が聞かれでもしたら困るからな……。
やはり周平さんのところに直接話をしに行くのが一番かもしれない。私は急いで仕事の調整を行い、いつもの時間よりも早く警視庁を出て周平さんの会社に足を運んだ。
* * *
いつも読んでいただきありがとうございます!
後ほど近況ボードでもお知らせしますが、明日12月31日から1月4日まで全ての小説の投稿をお休みさせていただきます。年明け1月5日から小説投稿を再開しますのでどうぞよろしくお願いします。
698
あなたにおすすめの小説
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
いつまでもドアマットと思うなよ
あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる