52 / 93
おすすめの店
しおりを挟む
駐車場でスマホを取り出し、要さんに<あと三十分ほどで家に着きます>とメッセージを送っておいた。
このまま帰れば十分ほどで家に着くが、十八時ごろ帰ると言っていたため、きっとその時間に合わせて食事を作ってくれていることだろう。
要さんを焦らせたくはない。だから、私は余った時間で要さんへのお土産を買って帰ることにした。
要さんならどんなものを買って行っても喜んでくれるだろうが、せっかくなら美味しいものを買いたい。さて、何にしようか。これまでそんなこととは無縁だったから、いざという時に何も思いつかない。
周平さんに聞いておけばよかったと後悔するも今更どうしようもない。
どうしたものかと思っていると、スマホが振動を告げた。画面を見れば氷室からの着信だ。
きっと新海の恋人の件だろうと思い、電話をとった。
ーもしもし、氷室?
ー今、大丈夫か?
ーああ、構わないよ。
ー例の件、早速お前の部下の新海さんから連絡が来て、ビデオ通話だったが舞川さん本人とも話をした。
どうやら私が連絡先を渡してすぐに新海も帰宅したらしい。
まぁ、今日は早出していたから勤務的には問題ない。
よほど安心させたかったと見えるな。
ーそうか、それでなんだって?
ー詳しい内容は話せないが、会社を辞める方向で進めている。舞川さんは診断書もとっているし、病気申請が不当な理由で却下されているから確実に勝てるよ。すぐに終わらせる。
ーそうか、それならよかった。実はな、舞川さんも知らない事実が出てきた。
ー本人が知らない事実? なんだ、それは?
ー実は、かなりの額のデザイン料が舞川さんの知らないところで上司たちに横領されているようだ。
ー横領? それは只事じゃないな。詳しく聞かせてもらえるか?
これからしっかりとした調査に入ることを前置きした上で、周平さんから聞いた話を氷室に伝えた。
ーなるほど、それが事実ならその分はしっかり返してもらわないとな。
ーああ。まずは会社を辞めてからでも後から請求はできるんだろう?
ーもちろん。それも俺がやるよ。任せておいてくれ。
ーじゃあ調査が終わったら連絡するよ。
ーわかった。じゃあ、よろしくな。
そのまま氷室が電話を切ろうとしたところで、要さんへのお土産のことを思い出して慌てて声をかけた。
ー氷室、ちょっと待ってくれ。
ーなんだ? まだ何かあるのか?
ーその……お土産を買って帰りたいんだが、どこかおすすめのものはないか?
ーおみやげ、って……ああ、なるほどな。ははっ、お前がお土産か。
ー笑うな。
ー悪い、悪い。それだけお前が恋人のことを考えていると思ったら嬉しくなっただけだ。じゃあ、翼と真琴くんが気に入っている店をいくつか送るからその中でお前が決めたらいい。どこを選んでもハズレは無いぞ。
ー氷室と成瀬のお墨付きなら安心だな。
なんせあれだけ溺愛している恋人に贈るものだ。まずいはずがない。
電話を切るとすぐに数件の店のURLとおすすめのスイーツが丁寧に書かれていた。
相変わらず手際がいい。
私はその中でここからほど近い場所にあるケーキ屋に向かった。
選んだのは氷室おすすめのマカロンと、ショーケースを見て気になったモンブランとガトーショコラ。
ケーキは明日のおやつにでも食べて貰えばいい。
別々に箱詰めしてもらい、急いで帰途につくとちょうど十八時ごろ家に到着した。
駐車場から直接玄関に向かい、いつもなら鍵を開けて入るが今日はインターフォンを押してみた。
「は、はい」
「冬貴です」
笑顔で声をかけると「すぐに開けます」と可愛い声が聞こえて、扉が開いた。
「お帰りなさい、冬貴さん」
ほんのり頬を染めながら満面の笑みで出迎えられて、あまりの可愛さに昇天しそうになったが気を引き締めて挨拶を返す。
「――っ!! 要さん、ただいま」
「お仕事お疲れさまです」
要さんにそんな言葉をかけてもらえるだけで今日の仕事の疲れなど一気に吹き飛んでしまった。
「いい匂いがしますね」
「あ、ご飯作っておきました」
「楽しみです。これ、要さんにお土産です。食後のデザートにでも食べてください」
ケーキ屋の紙袋を渡すと目を輝かせて受け取ってくれた。
「わぁ! ここ、敬介さんが美味しいっておすすめしてくれたお店です。ありがとうございます!」
想像以上に喜んでもらえて嬉しくなる。
今度氷室に礼をしておいた方がいいかもしれない。
ジャケットを脱ぎながら、要さんの後について歩いていると要さんが振り返って手を出してくる。
「手を洗ってきてください。私がジャケットを片付けておきます」
「えっ、ありがとうございます」
全てが新婚家庭のそれに見えて嬉しくなる。
私は自分のジャケットを要さんに渡し、洗面所に向かった。
その間に要さんはランドリールームでジャケットに消臭スプレー等をしてくれたようで助かる。
愛しい人にこんな甲斐甲斐しく世話をしてもらえるなんて、私は最高に幸せだな。
このまま帰れば十分ほどで家に着くが、十八時ごろ帰ると言っていたため、きっとその時間に合わせて食事を作ってくれていることだろう。
要さんを焦らせたくはない。だから、私は余った時間で要さんへのお土産を買って帰ることにした。
要さんならどんなものを買って行っても喜んでくれるだろうが、せっかくなら美味しいものを買いたい。さて、何にしようか。これまでそんなこととは無縁だったから、いざという時に何も思いつかない。
周平さんに聞いておけばよかったと後悔するも今更どうしようもない。
どうしたものかと思っていると、スマホが振動を告げた。画面を見れば氷室からの着信だ。
きっと新海の恋人の件だろうと思い、電話をとった。
ーもしもし、氷室?
ー今、大丈夫か?
ーああ、構わないよ。
ー例の件、早速お前の部下の新海さんから連絡が来て、ビデオ通話だったが舞川さん本人とも話をした。
どうやら私が連絡先を渡してすぐに新海も帰宅したらしい。
まぁ、今日は早出していたから勤務的には問題ない。
よほど安心させたかったと見えるな。
ーそうか、それでなんだって?
ー詳しい内容は話せないが、会社を辞める方向で進めている。舞川さんは診断書もとっているし、病気申請が不当な理由で却下されているから確実に勝てるよ。すぐに終わらせる。
ーそうか、それならよかった。実はな、舞川さんも知らない事実が出てきた。
ー本人が知らない事実? なんだ、それは?
ー実は、かなりの額のデザイン料が舞川さんの知らないところで上司たちに横領されているようだ。
ー横領? それは只事じゃないな。詳しく聞かせてもらえるか?
これからしっかりとした調査に入ることを前置きした上で、周平さんから聞いた話を氷室に伝えた。
ーなるほど、それが事実ならその分はしっかり返してもらわないとな。
ーああ。まずは会社を辞めてからでも後から請求はできるんだろう?
ーもちろん。それも俺がやるよ。任せておいてくれ。
ーじゃあ調査が終わったら連絡するよ。
ーわかった。じゃあ、よろしくな。
そのまま氷室が電話を切ろうとしたところで、要さんへのお土産のことを思い出して慌てて声をかけた。
ー氷室、ちょっと待ってくれ。
ーなんだ? まだ何かあるのか?
ーその……お土産を買って帰りたいんだが、どこかおすすめのものはないか?
ーおみやげ、って……ああ、なるほどな。ははっ、お前がお土産か。
ー笑うな。
ー悪い、悪い。それだけお前が恋人のことを考えていると思ったら嬉しくなっただけだ。じゃあ、翼と真琴くんが気に入っている店をいくつか送るからその中でお前が決めたらいい。どこを選んでもハズレは無いぞ。
ー氷室と成瀬のお墨付きなら安心だな。
なんせあれだけ溺愛している恋人に贈るものだ。まずいはずがない。
電話を切るとすぐに数件の店のURLとおすすめのスイーツが丁寧に書かれていた。
相変わらず手際がいい。
私はその中でここからほど近い場所にあるケーキ屋に向かった。
選んだのは氷室おすすめのマカロンと、ショーケースを見て気になったモンブランとガトーショコラ。
ケーキは明日のおやつにでも食べて貰えばいい。
別々に箱詰めしてもらい、急いで帰途につくとちょうど十八時ごろ家に到着した。
駐車場から直接玄関に向かい、いつもなら鍵を開けて入るが今日はインターフォンを押してみた。
「は、はい」
「冬貴です」
笑顔で声をかけると「すぐに開けます」と可愛い声が聞こえて、扉が開いた。
「お帰りなさい、冬貴さん」
ほんのり頬を染めながら満面の笑みで出迎えられて、あまりの可愛さに昇天しそうになったが気を引き締めて挨拶を返す。
「――っ!! 要さん、ただいま」
「お仕事お疲れさまです」
要さんにそんな言葉をかけてもらえるだけで今日の仕事の疲れなど一気に吹き飛んでしまった。
「いい匂いがしますね」
「あ、ご飯作っておきました」
「楽しみです。これ、要さんにお土産です。食後のデザートにでも食べてください」
ケーキ屋の紙袋を渡すと目を輝かせて受け取ってくれた。
「わぁ! ここ、敬介さんが美味しいっておすすめしてくれたお店です。ありがとうございます!」
想像以上に喜んでもらえて嬉しくなる。
今度氷室に礼をしておいた方がいいかもしれない。
ジャケットを脱ぎながら、要さんの後について歩いていると要さんが振り返って手を出してくる。
「手を洗ってきてください。私がジャケットを片付けておきます」
「えっ、ありがとうございます」
全てが新婚家庭のそれに見えて嬉しくなる。
私は自分のジャケットを要さんに渡し、洗面所に向かった。
その間に要さんはランドリールームでジャケットに消臭スプレー等をしてくれたようで助かる。
愛しい人にこんな甲斐甲斐しく世話をしてもらえるなんて、私は最高に幸せだな。
805
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
いつまでもドアマットと思うなよ
あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる