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外に出すために
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要さんを抱きしめたまま、そっと時計に目をやると、針は十一時を指していた。
思いの外、時間が経っていたな。
本当なら今日は一日休みだからまだまだベッドでイチャイチャとした時間を過ごせるのだが午後には新海との約束がある。
しかも周平さんと浅香さんにも来ていただくのだから、約束を無かったことにはできない。
そもそも私が周平さんに持ちかけた話だからな……。
一つ問題があるとしたら、要さんを連れて行くかどうかだ。
そっと要さんの顔を見れば、たっぷりと愛されましたと言わんばかりの色気を醸し出している。
私でさえ、要さんと初めて深く愛し合った翌朝は警視庁中の視線を浴び、新海にも色気ダダ漏れだと言われてしまったくらいだ。
欲望の蜜をたっぷり注がれ、身体中に花びらを散らされた要さんは、どうしたってそれを隠すことなどできないだろう。
だからと言って、どれくらい時間がかかるかもわからないのに一人で部屋に置いていくのは忍びない。
それに要さんを連れて行かないと浅香さんに何か言われそうだ。
それくらい要さんのことを気にいっていたからな。
しかも、酔っ払っていたのを知っているから心配してくれているに違いない。
やはり一緒に連れていくしかないか……。
とりあえず午後の予定の話を要さんにしてみよう。
要さんが家から出たくないと言えば、それは願いを叶えてやらなければ。
新海には悪いが、少しだけ顔を出してあとは周平さんと話をしてもらうとしよう。
「要さん、今日のこれからの予定なんですが……」
要さんを抱きしめながら話しかけると少し不安そうな表情で私を見上げる。
「もしかして、お仕事ですか?」
「えっ、いえ。違いますよ。プライベートなことです」
「プライベート、ですか?」
「ええ。実は、私の部下に恋人ができて、その恋人がジュエリーデザイナーなんですが、とある事情でつい最近会社を辞めたんです。それで再就職先を周平さんに相談したところ、周平さんの会社でジュエリー部門を立ち上げるところだったそうで、周平さん自らその人と話がしたいということで話の場を設けることになったんです。それで私も仲介役として話に参加することになっているんですが、要さんは一緒に来てもらえますか?」
舞川さんが要さんと同じ相手に狙われて痴漢の被害に遭っていたことは言わなくていいだろう。
双方にとって思い出したくない過去だろうからな。
「私も一緒に行ってもいいんですか?」
「部下の恋人さんも要さんがいるほうが安心すると思います」
周平さんは優しい人だが強面だから初対面だと怖そうな人だと勘違いされるんだよな。
新海は警察官だから強面に慣れているだろうが、ただでさえPTSDを発症している舞川さんにとっては大柄の男たちの中で一人は不安だろう。
「浅香さんもいるので要さんがいきたくなければ無理には――」
「行きます!」
「えっ、本当ですか?」
「はい。私が誰かの役に立つなら喜んで!」
要さんの目が輝いている。
やっぱり秘書としてずっと働いていた人だな。
自分が誰かの役に立つのが嬉しくて仕方がないんだろう。
こんなにやる気になってくれたならもう連れていく他はない。
あとは家を出るまでにどうにかしてこの色気ダダ漏れな姿をどうにかしなくてはな。
とりあえず風呂に入ろう。
お互いの蜜を流し、入浴剤を入れた湯船でさっぱりと汗を流せば少しはなんとかできるかもしれない。
そう思ったが二日連続愛し合ったせいで、要さんが一人で動けるような状態ではない。
裸のまま抱きかかえて風呂に連れていくが、肌が触れ合っているとどうしても興奮してしまう。
なんとか自分を律してお互いの身体を洗い清めるが、その間もずっと私がつけた花びらを散らした要さんの身体に興奮しきり。風呂から出たら出たで、部屋着に着替えた要さんの風呂上がりの色っぽさにまた興奮してしまう。
このままでは外に連れ出せないな。
仕方がない。それなら風にあたるしかない。
「要さん、今日はいい天気ですしバルコニーでランチを食べましょうか」
「わぁ! それは楽しそうですね!」
「すぐに昼食を用意しますから、要さんはバルコニーでのんびりと寛いでいてください」
このバルコニーは周りからも見えないように設計されているばかりか、天気の悪い時にはスイッチ一つでベランダがサンルームにできるため、バルコニーに置いてあるテーブルやソファーなども濡れたり汚れたりする心配はない。
一人でいる時はベランダとして開放することはほとんど無かったが、こんなに喜んでくれるならときどきはベランダで食事をするのも楽しいかもしれない。
大きなソファーに座り、風を浴びている要さんは湯上がりの色っぽさはほんの少しだが消えた気がする。
出かけるまであと数時間。動けずに抱きかかえていくのは仕方がないとしても、色気だけは消し去っていきたいものだ。
それからサッと作ったパスタとスープで昼食をとり、安慶名からもらったチーズケーキをデザートに出した。
「んっ! このチーズケーキ、すっごく美味しいです!!」
「これは私の友人たちが開発した<マリアージュ>という名のチーズケーキなんですよ」
「マリアージュ……最高の組み合わせ、ですか?」
さすが要さんだ。よく知っている。
「ええ。ひと組の幸せなカップルのために作られたチーズケーキなんです。なのでこのチーズケーキは幸せなカップルだけが食べられる特別なケーキなんですよ」
「幸せな、カップル……冬貴さんと食べられるなんて幸せです……」
ああ、もう。可愛いことを言うからこのまま押し倒したくなってしまうな。
その欲望を必死に抑えて、なんとかチーズケーキを食べ終わり、バルコニーで少しうとうとして過ごしていると家を出る三十分前にはなんとか外に出せる状態にはなった。
要さんの服のテイストと似た服を選び、着替えを済ませて出かけることになったが、やはり動くのは辛いようだ。
「すみません。でもゆっくり歩けば大丈夫です」
「そんな無理はさせられません」
「でも……」
一気に不安げな表情を見せたのは、私が要さんを置いていくと思ったのだろう。
そんなことは絶対にしない。
「大丈夫です。私が抱きかかえて連れていきますよ」
「えっ」
要さんを姫のように抱き抱えると要さんは突然のことに驚きの声をあげた。
「わっ! ふ、冬貴さんっ!」
「これなら辛くないでしょう?」
「で、でもこんな格好で人前になんて……」
「心配は要りません。きっと浅香さんも同じですよ」
きっとあのあと二人も燃え上がったはず。
確信しているわけではないが、なんとなくそんな気がした。
思いの外、時間が経っていたな。
本当なら今日は一日休みだからまだまだベッドでイチャイチャとした時間を過ごせるのだが午後には新海との約束がある。
しかも周平さんと浅香さんにも来ていただくのだから、約束を無かったことにはできない。
そもそも私が周平さんに持ちかけた話だからな……。
一つ問題があるとしたら、要さんを連れて行くかどうかだ。
そっと要さんの顔を見れば、たっぷりと愛されましたと言わんばかりの色気を醸し出している。
私でさえ、要さんと初めて深く愛し合った翌朝は警視庁中の視線を浴び、新海にも色気ダダ漏れだと言われてしまったくらいだ。
欲望の蜜をたっぷり注がれ、身体中に花びらを散らされた要さんは、どうしたってそれを隠すことなどできないだろう。
だからと言って、どれくらい時間がかかるかもわからないのに一人で部屋に置いていくのは忍びない。
それに要さんを連れて行かないと浅香さんに何か言われそうだ。
それくらい要さんのことを気にいっていたからな。
しかも、酔っ払っていたのを知っているから心配してくれているに違いない。
やはり一緒に連れていくしかないか……。
とりあえず午後の予定の話を要さんにしてみよう。
要さんが家から出たくないと言えば、それは願いを叶えてやらなければ。
新海には悪いが、少しだけ顔を出してあとは周平さんと話をしてもらうとしよう。
「要さん、今日のこれからの予定なんですが……」
要さんを抱きしめながら話しかけると少し不安そうな表情で私を見上げる。
「もしかして、お仕事ですか?」
「えっ、いえ。違いますよ。プライベートなことです」
「プライベート、ですか?」
「ええ。実は、私の部下に恋人ができて、その恋人がジュエリーデザイナーなんですが、とある事情でつい最近会社を辞めたんです。それで再就職先を周平さんに相談したところ、周平さんの会社でジュエリー部門を立ち上げるところだったそうで、周平さん自らその人と話がしたいということで話の場を設けることになったんです。それで私も仲介役として話に参加することになっているんですが、要さんは一緒に来てもらえますか?」
舞川さんが要さんと同じ相手に狙われて痴漢の被害に遭っていたことは言わなくていいだろう。
双方にとって思い出したくない過去だろうからな。
「私も一緒に行ってもいいんですか?」
「部下の恋人さんも要さんがいるほうが安心すると思います」
周平さんは優しい人だが強面だから初対面だと怖そうな人だと勘違いされるんだよな。
新海は警察官だから強面に慣れているだろうが、ただでさえPTSDを発症している舞川さんにとっては大柄の男たちの中で一人は不安だろう。
「浅香さんもいるので要さんがいきたくなければ無理には――」
「行きます!」
「えっ、本当ですか?」
「はい。私が誰かの役に立つなら喜んで!」
要さんの目が輝いている。
やっぱり秘書としてずっと働いていた人だな。
自分が誰かの役に立つのが嬉しくて仕方がないんだろう。
こんなにやる気になってくれたならもう連れていく他はない。
あとは家を出るまでにどうにかしてこの色気ダダ漏れな姿をどうにかしなくてはな。
とりあえず風呂に入ろう。
お互いの蜜を流し、入浴剤を入れた湯船でさっぱりと汗を流せば少しはなんとかできるかもしれない。
そう思ったが二日連続愛し合ったせいで、要さんが一人で動けるような状態ではない。
裸のまま抱きかかえて風呂に連れていくが、肌が触れ合っているとどうしても興奮してしまう。
なんとか自分を律してお互いの身体を洗い清めるが、その間もずっと私がつけた花びらを散らした要さんの身体に興奮しきり。風呂から出たら出たで、部屋着に着替えた要さんの風呂上がりの色っぽさにまた興奮してしまう。
このままでは外に連れ出せないな。
仕方がない。それなら風にあたるしかない。
「要さん、今日はいい天気ですしバルコニーでランチを食べましょうか」
「わぁ! それは楽しそうですね!」
「すぐに昼食を用意しますから、要さんはバルコニーでのんびりと寛いでいてください」
このバルコニーは周りからも見えないように設計されているばかりか、天気の悪い時にはスイッチ一つでベランダがサンルームにできるため、バルコニーに置いてあるテーブルやソファーなども濡れたり汚れたりする心配はない。
一人でいる時はベランダとして開放することはほとんど無かったが、こんなに喜んでくれるならときどきはベランダで食事をするのも楽しいかもしれない。
大きなソファーに座り、風を浴びている要さんは湯上がりの色っぽさはほんの少しだが消えた気がする。
出かけるまであと数時間。動けずに抱きかかえていくのは仕方がないとしても、色気だけは消し去っていきたいものだ。
それからサッと作ったパスタとスープで昼食をとり、安慶名からもらったチーズケーキをデザートに出した。
「んっ! このチーズケーキ、すっごく美味しいです!!」
「これは私の友人たちが開発した<マリアージュ>という名のチーズケーキなんですよ」
「マリアージュ……最高の組み合わせ、ですか?」
さすが要さんだ。よく知っている。
「ええ。ひと組の幸せなカップルのために作られたチーズケーキなんです。なのでこのチーズケーキは幸せなカップルだけが食べられる特別なケーキなんですよ」
「幸せな、カップル……冬貴さんと食べられるなんて幸せです……」
ああ、もう。可愛いことを言うからこのまま押し倒したくなってしまうな。
その欲望を必死に抑えて、なんとかチーズケーキを食べ終わり、バルコニーで少しうとうとして過ごしていると家を出る三十分前にはなんとか外に出せる状態にはなった。
要さんの服のテイストと似た服を選び、着替えを済ませて出かけることになったが、やはり動くのは辛いようだ。
「すみません。でもゆっくり歩けば大丈夫です」
「そんな無理はさせられません」
「でも……」
一気に不安げな表情を見せたのは、私が要さんを置いていくと思ったのだろう。
そんなことは絶対にしない。
「大丈夫です。私が抱きかかえて連れていきますよ」
「えっ」
要さんを姫のように抱き抱えると要さんは突然のことに驚きの声をあげた。
「わっ! ふ、冬貴さんっ!」
「これなら辛くないでしょう?」
「で、でもこんな格好で人前になんて……」
「心配は要りません。きっと浅香さんも同じですよ」
きっとあのあと二人も燃え上がったはず。
確信しているわけではないが、なんとなくそんな気がした。
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