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なんでも奪っていく妹とテセウスの船
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「お姉さま、これちょうだい」
「……ええ、いいわよ」
いつものように妹は嬉しそうに私のものを持っていった。お礼もない。そもそも、私が頷く前からもう手にしていたのだ。
妹にとって、私のものはすべて奪っていいものなのだろう。
お母さまもお父さまもそれを許している。いえ、もう気にもしていないのかもしれない。両親の愛情もすべて妹が奪っていってしまった。
私はもう、彼らの娘ではないのだろう。
『レミア、愛しい私達の娘』
そう言われたのはいつのことだろう。もう昔すぎて忘れてしまった。
であれば私も、両親のことは忘れてしまうべきなのだ。
でもきっと忘れられはしない。
今も覚えている。
妹に奪われたぬいぐるみ。お父さまが買ってくれて、ずっと抱きしめて寝ていた。
お母さまが選んでくれた靴。汚してしまうのがもったいなくて、家の中でしか履かなかった。
私の大好きな色、形、触り心地を持つものたち。
忘れられない。私の心にまだ残っている。
「いえ、もう、捨てるの」
そして新しいものを手に入れる。誰にも奪われない、私だけの私に生まれ変わるのだ。
「さようなら」
だから私は今日、この家を出る。
レミアお姉さまがいなくなった。
私は嘆いた。
「もう2つ目のプレゼントがないなんて!」
お姉さまがいなくなったら、お姉さまがもらっていたプレゼントはもらえない。年に二回の誕生日だってない。
いらないものを押し付ける先だってないのだ。
勝手にいなくなるなんて、ひどいわ。
「レミア! ああよかった、ここにいたのね」
「えっ? 何を言ってるのお母さま、私はお姉さまじゃ……」
そういえば今日の私は、最近お姉さまからもらったものばかり身につけていた。どうしてかしら?
……そうだ、だって、お姉さまがいないから。
お姉さまの地味さを反面教師にしてたから、いなくなられると着るものが選びにくいじゃない。
だからお姉さまの好きだったドレス。
これはお祖母様からのプレゼントだ。地味で古臭いデザインで私は気に入らなかったけど、お姉さまは喜んでいた。控えめなレースが可愛いから気に入ってた。そうよね?何度もそこに触れていたのもの。
私もお姉さまがしていたみたいにレースに触れてみる。うん、まあ、悪くはないわ。
もらっておいてよかった。
お祖母様が真面目な孫娘のために選んだものだもの。
髪飾りもお姉さまの大事にしてた、小さな真珠を並べたもの。ちょっと控えめすぎるんじゃない?
でもお姉さまは大事にしてた。昔の友だちがくれたものだから。幼年学校を卒業するときに、目を真っ赤にして渡してくれたの。
それは大事にするわよね。
大事にしてもらった記憶だもの。
ええ、でも、今は私のもの。
私が全部もらったの。お祖母様に愛された記憶も、大事な友だちの記憶だって私のものだ。
アクセサリだってそう、靴だって、下着だって。
お姉さまが大事にしていた思い出ごと、私がぜんぶ、ぜんぶもらってあげたの。
頭のてっぺんから足の先まで、私はお姉さまの大事な記憶でできている。
こんなに愛おしい記憶たちも私のもの。こんなに愛された記憶があるから、私は自信を持って生きていけるの。
「本当によかったわ。でも、そうね。レミア、あなたがいなくなるわけないわよね、この家の大事な跡取りなのだから。私達を捨てたりしないわよね!?」
「……ええ、もちろんよ、お母さま」
お姉さまがもらう愛情はぜんぶ私のものなの。これからは本当に、だってお姉さまはもういないんだから。
お姉さまのやることもぜんぶ、私がやってあげる。
「さ、レミア、お母さまと一緒にお茶会に行きましょうね」
「はい、お母さま」
だから私の名前はレミア。
私はこの家の跡取り娘。
いなくなったのは、わがままでどうしようもなかった妹。そういうことよ。そういうことになるの。
あんな自分を持たない妹、いなくなったって問題ないんだから。
こうしてお姉さまのものは何もかも私がもらったの。
……あら?
どうして私、泣いているのかしら。
「……ええ、いいわよ」
いつものように妹は嬉しそうに私のものを持っていった。お礼もない。そもそも、私が頷く前からもう手にしていたのだ。
妹にとって、私のものはすべて奪っていいものなのだろう。
お母さまもお父さまもそれを許している。いえ、もう気にもしていないのかもしれない。両親の愛情もすべて妹が奪っていってしまった。
私はもう、彼らの娘ではないのだろう。
『レミア、愛しい私達の娘』
そう言われたのはいつのことだろう。もう昔すぎて忘れてしまった。
であれば私も、両親のことは忘れてしまうべきなのだ。
でもきっと忘れられはしない。
今も覚えている。
妹に奪われたぬいぐるみ。お父さまが買ってくれて、ずっと抱きしめて寝ていた。
お母さまが選んでくれた靴。汚してしまうのがもったいなくて、家の中でしか履かなかった。
私の大好きな色、形、触り心地を持つものたち。
忘れられない。私の心にまだ残っている。
「いえ、もう、捨てるの」
そして新しいものを手に入れる。誰にも奪われない、私だけの私に生まれ変わるのだ。
「さようなら」
だから私は今日、この家を出る。
レミアお姉さまがいなくなった。
私は嘆いた。
「もう2つ目のプレゼントがないなんて!」
お姉さまがいなくなったら、お姉さまがもらっていたプレゼントはもらえない。年に二回の誕生日だってない。
いらないものを押し付ける先だってないのだ。
勝手にいなくなるなんて、ひどいわ。
「レミア! ああよかった、ここにいたのね」
「えっ? 何を言ってるのお母さま、私はお姉さまじゃ……」
そういえば今日の私は、最近お姉さまからもらったものばかり身につけていた。どうしてかしら?
……そうだ、だって、お姉さまがいないから。
お姉さまの地味さを反面教師にしてたから、いなくなられると着るものが選びにくいじゃない。
だからお姉さまの好きだったドレス。
これはお祖母様からのプレゼントだ。地味で古臭いデザインで私は気に入らなかったけど、お姉さまは喜んでいた。控えめなレースが可愛いから気に入ってた。そうよね?何度もそこに触れていたのもの。
私もお姉さまがしていたみたいにレースに触れてみる。うん、まあ、悪くはないわ。
もらっておいてよかった。
お祖母様が真面目な孫娘のために選んだものだもの。
髪飾りもお姉さまの大事にしてた、小さな真珠を並べたもの。ちょっと控えめすぎるんじゃない?
でもお姉さまは大事にしてた。昔の友だちがくれたものだから。幼年学校を卒業するときに、目を真っ赤にして渡してくれたの。
それは大事にするわよね。
大事にしてもらった記憶だもの。
ええ、でも、今は私のもの。
私が全部もらったの。お祖母様に愛された記憶も、大事な友だちの記憶だって私のものだ。
アクセサリだってそう、靴だって、下着だって。
お姉さまが大事にしていた思い出ごと、私がぜんぶ、ぜんぶもらってあげたの。
頭のてっぺんから足の先まで、私はお姉さまの大事な記憶でできている。
こんなに愛おしい記憶たちも私のもの。こんなに愛された記憶があるから、私は自信を持って生きていけるの。
「本当によかったわ。でも、そうね。レミア、あなたがいなくなるわけないわよね、この家の大事な跡取りなのだから。私達を捨てたりしないわよね!?」
「……ええ、もちろんよ、お母さま」
お姉さまがもらう愛情はぜんぶ私のものなの。これからは本当に、だってお姉さまはもういないんだから。
お姉さまのやることもぜんぶ、私がやってあげる。
「さ、レミア、お母さまと一緒にお茶会に行きましょうね」
「はい、お母さま」
だから私の名前はレミア。
私はこの家の跡取り娘。
いなくなったのは、わがままでどうしようもなかった妹。そういうことよ。そういうことになるの。
あんな自分を持たない妹、いなくなったって問題ないんだから。
こうしてお姉さまのものは何もかも私がもらったの。
……あら?
どうして私、泣いているのかしら。
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