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真実
しおりを挟む空が橙色に染まり、夜の訪れを感じさせる夕暮れ。窓から空を覗けば、のびのびと青空を漂っていた雲は何処かへ行ってしまい、空には雲ひとつない橙色空が何処までも続いている。
何処か落ち込んでいたベリーとあの後少し話して家に帰って来た私は、林檎の香りを部屋中に漂わせる紅茶を片手に持ちながら本を読んでいたお母さんに、ベリーに無理をさせていないか聞いてみることにした。
「ねぇねぇお母さん。何かベリーについて知らない?」
「ベリー君? たしか、一昨日くらいに尋ねに来たわよ?」
「え? 尋ねに来た?」
使用人に紅茶を貰い、お母さんと同じ林檎の匂いのする紅茶を口に含みながら話をすると、お母さんから返ってきた言葉に、カップを口に傾けるのを止めて思わず聞き返す。
尋ねに来た?
……お母さんが、呼び寄せたとかじゃなくて?
思ってもいなかった言葉に、お母さんの方に私は耳をしっかり傾ける。
「たしか、ティアラの祝福祭の日の予定について聞いてきたわよ? 今まで振られていたけど、ようやくベリー君に気に掛けられていてよかったじゃない。」
「しゅ、祝福祭の予定!?」
「もう、そんなに驚かなくてもいいのに。とりあえず、ベリー君には空いてるって伝えといたわよ? ……もしかして、ベリー君に祝福祭誘われた? どうだったの? 聞かせて?」
あまりの内容に、私は思わず紅茶のカップを落とす。
私から話を聞き出そうと、普段はあまり触れてこないのに、こういう時だけぐいぐいと体を押してくるお母さんは、カップが落ちた時の衝撃音で金魚すくいの金魚がすくわれた時のようにビクッと、座っていたソファーの上で跳ねる。そして、カップが割れたのを見て興味深そうにこちらを見ていた使用人が、割れて複数に小さくなったカップを片付け始めた。
「どうしたの!? 急にカップなんて落として……」
「どうしよう……ベリーに誤解されたかもしれない。」
「誤解された? どういうこと?」
一定のリズムでどんどんスピードを高めていく全く嬉しくない鼓動を感じながら、私は一度呼吸を整える。
少しずつ、少しずつ、私は話せることをお母さんに話していった。
「……なるほどね。ティアラは、ベリー君がここ最近ティアラに話し掛けているのを、私達が無理矢理させていたと思ったのね。」
「うん。」
涙が出そうなのを必死に抑えながら、私は首を縦に振る。
「それで、無理矢理誘われるのは嫌だから確かめる為に一度断わったと………」
「そ、そうなの。」
「……今まで言わなかったけど、ベリー君は昔からティアラのことが好きよ? ティアラとどうすれば話せるとか、昔からたまに聞きにくるし。」
「え?」
そんな話聞いたことない。
出そうだった涙も、 お母さんの言葉にピタリと止まる。
………それじゃあ、ベリーが冷たいと思っていたことが私のまずまずの誤解? でも、祝福祭に誘っても、毎度断わられていた理由はーー
「ベリー君がティアラに誘われても断わるのは『恥ずかし過ぎるから』とか言ってたし、単純にベリー君が恥ずかしさを乗り越えただけじゃない? 別に何も協力してないし。」
「恥ずかし過ぎるから!?」
毎年毎年祝福祭を断わられていた理由が、そんな可愛い理由だったことに驚く。
昔のベリーだったら、冷たかったので恥ずかしがっている姿など思い浮かびもしないが、最近のベリーだと安易に想像出来る。今のベリーが恥ずかしがっている姿もいいけど、ベリーがもっと小さい頃の恥ずかしがっている姿も見てみたい。中性的な顔立ちもあって、とても可愛いんじゃないのか。
どんどん明らかになる事実に、気付けば胸を覆っていた不安は無くなっていた。むしろ、小さい頃から恥ずかしがられる程好かれていたとなると胸が踊る。誤解された悲しみよりも、圧倒的に嬉しさが勝っていた。
「喜んでいるとこ悪いけど、誤解は解いた方がいいんじゃないの?」
心配そうにソファーから身を乗り出して近付いてくるお母さん。
元はと言えば、お母さんが最初からベリーについて話していればこんなこと起きなかったのに、どの口が言っているのだろうか。いや、数年前から私の気持ちを知っていた癖に隠していたのだ。許されていいことではない。それに、私の髪の毛の元となった金髪の長い髪で目元は見えにくいが、チラリと見てみれば面白い物を見るような目で微笑んでいる。……処刑だ。
そんなお母さんに、私はニコニコと笑いながら近付いてきたお母さんの体をしっかりと掴んでーー
「その前に何か言うことがあるんじゃないの?」
「ヒエッ」
誤解を解く為にベリーの家に行くのに、馬車を使っても相当時間が掛かった。
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