私の婚約者を奪った妹が婚約者を返品してきようとするけど、返品は受け付けません。 どうぞご幸せに。

狼狼3

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妹と元婚約者のデート

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「ほら、荷物持てよ。お前は俺の婚約者だろ。婚約者の言うことを聞くのは当然。だから、早く俺の荷物を持て。」
「わ、分かりました。」

 肉の塊と言っても過言ではない程、贅肉に顔や手や足が呑み込まれている元婚約者の王子に、私は自然と笑みが溢れる。あれと無理矢理婚約をすることになった時は、一晩じゃおさまらないほど泣いた記憶がある。しかも、見た目以上に性格も腐っていて、一度は死までも覚悟した程には泣いた。王子だから甘やかされて育ってきたのか、私に対してもああいう口調だったし、正直王子じゃなかったら一発蹴りを入れている。


 それにしても、あれ程贅肉が付いていたら歩くのですら辛そうなのに、意外と歩けている肉の塊に驚く。あの体に荷物なんて持たせたら五分も持たなそうだが、意外と持つのだろうか?それに、あの妹の嫌そうな顔。何度も経験した私だから分かるが、あの肉に横暴な態度を取られるのは、いくらこの国の王子であれ腹が立つ。何とか笑顔を作ろうと妹はしているが、それでもひきつった笑顔になっている。食べ物のぱんぱんに詰まったバッグを辛そうに持つ妹を見て、私は目を細める。

「そういえば、お前の名前は何て言うんだっけ?」
「えっ?覚えてないんですか?私の名前はテスラーです。」
「テスラーって言うんだな。前も聞いた気がするが、忘れていた。でも、やっぱり面倒臭いから、お前のことはお前って呼ばせて貰う。」
「えぇ……そうですわね。」

 妹は元婚約者の言葉に怒りを隠せないのか、道端に落ちている石ころをおもっいっきり蹴飛ばす。デート中だというのに、石蹴りは良くないだろう。元婚約者も急に石を蹴飛ばした妹を見て、驚いている。そんな妹を見て、思わずこらえていたのに大声で笑ってしまった。

「お前は、デート中なのに石蹴りなんかするんだな。」
「え?す、すみません。つい、無意識で。」
「俺の元婚約者の彼奴はそんなことしなかったぞ。たしか、お前の姉に当たる女だ。名前は、レイナだったよな?」
「え?もしかして、お姉様の名前は覚えているんですか?」
「……まぁな。彼奴とは結構長かったし。」
「チッ」
「ん?どうした?」
「いやいや、何でも無いですよ。あはは。」

 人前だとよく見られたいから、私のことをお姉様と丁寧な表現を使う妹。いつも私に嫌がらせをしてくるのに、そんな丁寧な言葉を使う妹に嫌気がするが、舌打ちなどをしたら、私のことをわざわざ丁寧に表現した意味など無くなるだろう。私の名前が覚えられていて、自分の名前が覚えられていないのに腹が立ったのは分かるが、王子の顔がひきつっているぞ。それに、私としてはあんな奴に名前を覚えられていたくない。何度も彼奴に名前を呼ばれた私だが、今でも彼奴に名前が呼ばれると背中がぞっとするのだ。


 顔のひきつった元婚約者に、「あはは」と顔をひきつらせながら荷物を持って歩く妹の構図を見て、またしても笑ってしまう。両者が顔をひきつらせた状態でのデートほど、つまらないし意味が無いものは無いだろう。もう、デートと呼ぶのかすら怪しい。私に自慢するようにデートに行った妹だが、こんな現状を見れば羨ましいなんて思うわけがない。

 
 会話がなくなり、無言で二人はそのまま少し歩き続けていると、元婚約者が急に立ち止まった。

「それじゃあ、そろそろご飯にするか。」
「は、はい。分かりました。あれ?でも、まだ十時な気がしますけど………」
「ん?十時に食べるのは当たり前だろう?次の国を任された者として、今のうちにしっかり食べておかなければ。三時間毎に食べるのは、王子として必要な義務と言ってもいいだろう。それじゃあ、布を敷いてくれ。」
「わ、分かりました。」

 婚約者の言葉に、妹の顔がひきつる。
 私に対しても言っていたが、一日六食もご飯を食べるのが王子としての義務と主張するのはおかしい。別に食パン一枚やお茶碗半分のご飯くらいなら問題ないと思うが、こいつの場合食パンは平気で十枚以上食べるし、お米も四キロ近く食べる。一日に換算すると、こいつ一人で食パン六十枚は食べているし、お米も24キロ食べていることになる。それだけ食べる量があるのなら、スラム街にいる子供達にでもあげればいいのにと思うが……

 そんなことを思っていると、妹が布を敷き終わった。
 食事が行えるのか、先ほどまで顔がひきつっていた元婚約者は、すっかりと笑顔になっている。妹もまだ少し顔がひきつっているが、先ほどよりは機嫌が良さそうだ。さっきまで重い荷物を持たされていたし、こうして座ることが出来るのが嬉しいんだろう。

 元婚約者は、先ほどまで妹が持っていたバックから、食パンとジャムを取り出した。枚数にして、十五枚。私が婚約者じゃなくなってから、彼の胃袋は更に大きくなっていたらしい。一日に換算すると、食パン九十枚。妹も私と同じように食パンの枚数を一日に換算したのか、無言になって固まっている。

「おいおいどうした。お前の分の食パンもあるんだから、さっさと食えよ。」
「は、はい。」
「仕方ないな。俺が食わせてやるよ。俺に食べさせて貰えて光栄だな。」
「ええっ!!?」

 食わせてやるよという言葉に、明らかに嫌そうな顔をする妹。これが脂肪で出来たような男で無ければ、嬉しそうに顔を緩ませたり、恥ずかしさから顔を紅く染めていたりしたかもしれないが、そんなこと言われたら嫌な顔をするのは当たり前だ。脂でギトギトした手で掴まれたパンを食べるとなると、死にたくなる。……さぁ、妹はどう出るのか。

 悪い笑みを浮かべながら、二人の様子を遠くから眺めた。
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