私の婚約者を奪った妹が婚約者を返品してきようとするけど、返品は受け付けません。 どうぞご幸せに。

狼狼3

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日常

婚約者とのランチ


「それじゃあ、口を開けてくれますか?」
「さっきの用には、こぼしたりしないから。お願いだから一人で食べさせてぇ…」
「駄目です。さっきの様にこぼされたりしたら、お店の人にも迷惑を掛けてしまいますからね。それじゃあ、口を開けて下さい。」
「ううぅ……」

 少しずつ口を開けると、レイン様が私の口の中にスプーンごとトマトスープを流し込んでくる。嬉しそうに微笑みながらこちらを見つめるレイン様の服を見ると、白色のコートが赤色に染まってしまっている。これは、さっきレイン様の食事姿の格好良さに見とれていた私が、うっかりスープの入ったスプーンをひっくり返してしまって出来た跡だ。幸い、私の服は黒のドレスなので平気だったが、レイン様の着ている白のコートには赤いシミが付いてしまった。

 
 レイン様は服が汚れてしまったことを気にしていないが、さっきからこのようにして私はレイン様にスープを食べさせられている。嫌な訳ではない……寧ろ、愛されていることが伝わってきて嬉しいのだが………恥ずかしい。レイン様の予約したレストランは、貴族しか行けないような高額のレストランで人は少ないが、お金持ちの商人なども私達と同じように食事をしている。気付かれてないと思っているのかもしれないが、たまに私達のことを面白そうに見てくるのに、私は気付いている。……は、恥ずかし過ぎる。


 顔に熱が伝わってくるのを感じながら、少しずつ私はまた口を開くと、レイン様はしまったという表情を取る。その姿も、またどこか愛らしくて可愛いのだが、レイン様の視線の方に目を向けると、トマトスープと共に、床に落ちてしまっているスプーンがあった。

「や、やってしまっ……」
「それじゃあレイン様♪今度は私があーんさせた方がいいですかね?口を開けて下さい。」
「だ、大丈夫だから。僕は、一人で食べれ……」
「そんなこと言わないで下さい。スプーンを床に落としてしまったんだから、もうスプーンはこれしかありませんよね?だから、レイン様は私から食べさせて貰うしか無いんです。……それじゃあ、口を開けて下さい。」
「う、ううん。」

 急激に顔を紅く染めるレイン様の口元に、私はスープの入ったスプーンを近付ける。顔を真っ赤に染めるレイン様だが、なかなか口を開こうとしない。秘密ごとがバレた子供のように、口を一切開けようとしないのだ。


 そんな子供のような態度を取るレイン様に私はギャップを感じて、ツンツンとスプーンの先で柔らかそうなほっぺをつついて楽しんでいると、今のが嫌だったのか、それとも諦めたのか、もぞもぞと口をようやく開いた。

「はい♪上手に食べれて偉いですね。」
「うぅ……僕は子供じゃない。」
「そんなこと言って、スープまだ残ってますよ? しっかり完食しないと、お店の人困っちゃいますよね?……それじゃあ、口を開けて下さい♪」
「うぅ……」

 拗ねたようにこちらをジト目で見てくるレイン様に、再び胸が熱くなっているのを感じていると、口が開いたところを狙って、スプーンを再び入れる。先程まで恥ずかしさからトマトスープの味を感じ取れなかったが、レイン様もそうなのだろうか。トマトスープの味を確かめるというよりは、早く飲み込むことに力を入れている。


 スープが無くなるまで、私は顔を林檎のように真っ赤に染めるレイン様にスープを食べさせてあげると、スープの入ったお皿が無くなって、違うお皿がやってきた。どうやら潮の香りがするが、海鮮料理なのだろうか?

 そう思って中身を覗くと、そこには熱々の蟹が。
 蒸されたばかりなのか、湯気を物凄いスピードで立ちあげていて、物凄く熱そうだ。
 
 湯気が多く立つ蟹を眺めていると、レイン様が面白そうにこっちを見て笑った。

「あれ?もしかして、蟹が熱くて食べれないんですか?仕方ないですね♪僕が食べさせてあげますよ。」

 しまった。
 仕組まれた。
 レイン様の蟹を見てみると、湯気があまり立っておらず、熱いのが苦手な猫舌の私でも食べれそうな蟹となっている。ここのお店を予約したのはレイン様。……誰がやったかなんて、誰が見ても分かるだろう。ちょっ!?か、蟹を私の口に近付けないで!!少し経てば、食べれるようになるから!!だから、私にその蟹を食べさせようとしなーーー

 
 二匹の蟹を食べ終えた後、私は満足そうなレイン様と肩を寄りそって店から出た。
 
 ……私の顔は、まだ熱かったとだけ言っておこう。
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