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第3話 思惑
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裕介達が部屋を後にした後、そこにはアルデンド王国の重鎮だけが残されていた。ライデンは騎士に記録させた転移者達のリストを手に、椅子に座る男性へ報告を始める。
「それでは陛下。此度の勇者召喚の儀による成果をご報告させていただきます」
「うむ」
「『勇者』1名、騎士団長級の職業持ちが10名、その他一般兵士級が25名になります」
「そうか。よくやったぞ、ライデン」
「有難きお言葉……ですが一人、問題のある者が居りまして」
「問題のある者だと?申してみよ」
ライデンはそう呟くと、裕介の名前が書かれた箇所に指をさして深くため息をついた。
折角、奴隷100人の命を生贄にしてまで召喚したというのに、神に祝福されぬばかりか、まさかの『呪い』持ちの人間を召喚してしまうとは思っても居なかった。これが陛下に知られれば、間違いなく機嫌を損ねることになってしまう。
しかし、それを黙っている訳もいかないのが『呪い』だ。『呪い』持ちが一人いるせいで国が滅んだ伝説があるほどに、危険なものなのである。
ライデンは意を決して、『呪い』持ちの勇者が居ることを陛下に報告した。
「『精霊術士』が現れたのですが……残念ながら『呪い』持ちだったのでございます」
「なんだと!?そのものを即刻捕らえ、首を刎ねるのだ!!」
「それはなりません、陛下。例え『呪い』持ちであっても、勇者の仲間であることには変わり有りません。仲間が急に殺されたと知れば、我が国に不信感を抱くことでしょう」
ライデンの進言に陛下は不満気な表情を示したものの、納得してみせた。他の重鎮達も騒いではいるが、宰相であるライデンに意見を出せる人間などそうそう居ない。それに、『呪い』持ちになど関わりたくないというのが、彼らの心情であった。
「ならばライデン、其方はどうするつもりなのだ?」
「はい。これより宮廷魔導士達に『転移の陣』を用意させます。その転移先を、憎き魔族領に設定するのです。そうすれば、奴らの知らぬ間に『呪い』持ちを押し付けることが出来ます」
「なるほど。それは良い考えだが、勇者共にはなんと言い訳をするつもりだ?」
「そこは正直に伝えた方が宜しいでしょう。奴が『呪い』持ちであり、我が国に災いをもたらす存在であることを伝えます。そして、その呪いを打ち消すために浄化の儀を執り行うと伝えておけば良いのです」
「ふむ……よかろう。その者の処遇は其方に一任するとする。だがくれぐれも勇者共の機嫌を損ねるような真似はするでないぞ」
「承知致しました」
陛下からの許可が下りた事により、ライデンはホッと胸を撫で下ろした。異世界から召喚されたクズのせいで、自分の身が危ぶまれるなど溜まったものではない。出来れば今すぐにでも、陛下が言ったように首を刎ねてやりたいが、そうもいかない。
先程の鑑定の際に奴の仲間に『死霊術師』が居ることが発覚した。その者の力によりクズが死んだ事が露見する可能性を考えれば、魔族領へと転移させ、その先で死んでくれた方が得なのである。
ライデンは部屋を後にすると、すぐさま側近に指令を出した。
「歓迎会が終わるまでに、魔導士達に転移の陣を完成させるように急がせろ。魔力が足りないのであれば、奴隷を使っても構わんと伝えておけ」
「は!勇者共には『呪い』の件を伝えますか?」
「いや、今は良い。我らの信用を落とさないためにも、慎重に事を運ぶ必要があるからな。『呪い』持ちは装備に間違いがあったとでも言って連れ出すがいい」
「は!」
これでようやく一息がつける。ライデンは安堵から口を緩ませて笑みを浮かべた。幾ら『勇者』と並ぶ最高峰の職業『精霊術士』であっても、呪われている人間が精霊と言葉を交わすことなど出来るはずが無いのだから。
「それでは陛下。此度の勇者召喚の儀による成果をご報告させていただきます」
「うむ」
「『勇者』1名、騎士団長級の職業持ちが10名、その他一般兵士級が25名になります」
「そうか。よくやったぞ、ライデン」
「有難きお言葉……ですが一人、問題のある者が居りまして」
「問題のある者だと?申してみよ」
ライデンはそう呟くと、裕介の名前が書かれた箇所に指をさして深くため息をついた。
折角、奴隷100人の命を生贄にしてまで召喚したというのに、神に祝福されぬばかりか、まさかの『呪い』持ちの人間を召喚してしまうとは思っても居なかった。これが陛下に知られれば、間違いなく機嫌を損ねることになってしまう。
しかし、それを黙っている訳もいかないのが『呪い』だ。『呪い』持ちが一人いるせいで国が滅んだ伝説があるほどに、危険なものなのである。
ライデンは意を決して、『呪い』持ちの勇者が居ることを陛下に報告した。
「『精霊術士』が現れたのですが……残念ながら『呪い』持ちだったのでございます」
「なんだと!?そのものを即刻捕らえ、首を刎ねるのだ!!」
「それはなりません、陛下。例え『呪い』持ちであっても、勇者の仲間であることには変わり有りません。仲間が急に殺されたと知れば、我が国に不信感を抱くことでしょう」
ライデンの進言に陛下は不満気な表情を示したものの、納得してみせた。他の重鎮達も騒いではいるが、宰相であるライデンに意見を出せる人間などそうそう居ない。それに、『呪い』持ちになど関わりたくないというのが、彼らの心情であった。
「ならばライデン、其方はどうするつもりなのだ?」
「はい。これより宮廷魔導士達に『転移の陣』を用意させます。その転移先を、憎き魔族領に設定するのです。そうすれば、奴らの知らぬ間に『呪い』持ちを押し付けることが出来ます」
「なるほど。それは良い考えだが、勇者共にはなんと言い訳をするつもりだ?」
「そこは正直に伝えた方が宜しいでしょう。奴が『呪い』持ちであり、我が国に災いをもたらす存在であることを伝えます。そして、その呪いを打ち消すために浄化の儀を執り行うと伝えておけば良いのです」
「ふむ……よかろう。その者の処遇は其方に一任するとする。だがくれぐれも勇者共の機嫌を損ねるような真似はするでないぞ」
「承知致しました」
陛下からの許可が下りた事により、ライデンはホッと胸を撫で下ろした。異世界から召喚されたクズのせいで、自分の身が危ぶまれるなど溜まったものではない。出来れば今すぐにでも、陛下が言ったように首を刎ねてやりたいが、そうもいかない。
先程の鑑定の際に奴の仲間に『死霊術師』が居ることが発覚した。その者の力によりクズが死んだ事が露見する可能性を考えれば、魔族領へと転移させ、その先で死んでくれた方が得なのである。
ライデンは部屋を後にすると、すぐさま側近に指令を出した。
「歓迎会が終わるまでに、魔導士達に転移の陣を完成させるように急がせろ。魔力が足りないのであれば、奴隷を使っても構わんと伝えておけ」
「は!勇者共には『呪い』の件を伝えますか?」
「いや、今は良い。我らの信用を落とさないためにも、慎重に事を運ぶ必要があるからな。『呪い』持ちは装備に間違いがあったとでも言って連れ出すがいい」
「は!」
これでようやく一息がつける。ライデンは安堵から口を緩ませて笑みを浮かべた。幾ら『勇者』と並ぶ最高峰の職業『精霊術士』であっても、呪われている人間が精霊と言葉を交わすことなど出来るはずが無いのだから。
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