コミュ症の精霊魔術士〜『呪い』持ちのせいで追放されましたが、精霊には超絶愛されてるので問題ありません〜

服田 晃和

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第4話 【呪い】持ちの最後

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 僕の予想通り、歓迎会の場所に着いてから会が終わってそれぞれの部屋に戻るまで大和達は一切絡んでこなかった。僕なんかからかって遊ぶよりも、自分達を敬い、まるで神のように崇めてくれる人々が居るのだからそれはそうだろう。

 歓迎会が終わると、僕等は一人一人個室へと案内された。部屋は高級ホテルのスイートルーム並みの広さで、正直落ち着けなさそうだ。

「皆ちやほやされて気にしてなかったけど……僕達は日本に戻れるのかな?誰もそれについて言及しなかったし。とりあえず、明日の訓練の時に聞いてみよう」

 歓迎会の最中、何度か尋ねようとしたのだが、あからさまに避けられていたせいで聞くことが出来なかった。その原因はなんとなく分かっている。

「多分だけど、この【呪い】対人好感度補正(極大減少)の効果だろうな。名前からして、僕の好感度がかなり低いって感じだろう。……そうだ!『鑑定』!」

 僕は【呪い】に対して、神から頂いた『鑑定』スキルを発動させた。あらゆるモノを対象に、効果や能力を知ることが出来るのであれば、僕の【呪い】についても詳しく知ることが出来るはずだ。

 その予想通り、僕の目の前に【呪い】について詳しく書かれた窓が出現した。

「……予想してたより酷くないか?これ」

----------------------------------------------------
【呪い】対人好感度補正(極大減少)
他の人間の自分に対する好感度が極端に悪く、極端に上がりにくい。変わりにレベルアップ時、ステータス上昇に大幅な補正がつく。創造神ファフニデルより送られた恩恵のため、何者にも消去は出来ない。
----------------------------------------------------

「この呪いがあったせいで、歓迎会の時に避けられてたのか。何というか……自分のコミュ症を【呪い】のせいに出来るって良いな。少し気が楽になった気がするぞ」

 なんと言ったって、この世界で他の人に無視されるのは俺のせいでは無く、この【呪い】のせいなのだから。言い訳に出来る理由があるというのは、ここまで気持ちを楽にしてくれるものなのか。

「だからと言って他の人に迷惑はかけないようにしないと。いずれ日本に帰れるようになった時、僕だけ仲間はずれにされるのはごめんだからな」

 僕は開いていた『鑑定』魔法を閉じて、眠りに着こうとベッドに横たわる。その時、扉の向こうからライデンの声が聞こえて来た。

「裕介様。お休みのところ申し訳ございません」
「あ、え、はい。な、何の用でしょうか?」

 もう時刻は22時を回っているというのに、いったい何だろう?少し胸騒ぎがしたものの、折角訪ねて来てくれた人を無碍にするわけにもいかず、僕は扉を開いた。扉の前には、ライデンと二人の兵士が立って居た。

「夜遅くに申し訳ありません。私共の方で手違いがございまして、裕介様に渡すはずだった装備品を、別の装備と間違えてしまったようなのです」
「あ、そうだったんですか。ど、どうしたらいいですか?」
「大変申し訳ございませんが、これから装備の交換をさせて頂くことは可能でしょうか?明日から始まる訓練のためにも、本日中にお渡しできたらと思いまして」
「わ、分かりました。じゃあ、お願いします。」

 僕がそう答えると、ライデンはにこりと微笑んだ。それから後についてくるように言われ、僕はライデンと兵士に挟まれる形で、廊下を歩き始める。この人達には【呪い】が効いていないのだろうか?こんなにも丁寧に接してくれるなんて、もしかしたら凄く良い人なのかもしれない。

「着きました。こちらの部屋の中に裕介様用の装備がございますので、どうぞお入りください」
「あ、ありがとうございます」

 ライデンに言われるがまま、開かれた扉を通り抜け部屋の中へと入っていく。言われた通り装備を交換しようと思ったのだが、部屋の中には何一つも物は置かれていなかった。

「あ、あの、何もないんですが……」

 不思議に思いライデンさんに尋ねようと思ったその時、扉が勢いよく閉まり、ガチャリと鍵のかかる音がした。

「え、え?あ、あの!ライデンさん!?ど、どうしたんですか!!ここを開けてください!」
「開けるわけがないでしょう?『精霊術士』と出た時は期待しましたが……まさか【呪い】持ちだとは。いくら勇者と言えど、災いをもたらすような存在を我が国に置いてはおけません!」
「わ、災い!?ぼ、僕の【呪い】はそんなモノじゃありません!ただ人に好かれにくいとか──」
「黙りなさい!!どんな【呪い】であろうと、貴方は穢れた存在なのですよ!!全く……貴方と会話する私の身にもなって頂きたい。あとで聖女様に頼んで、浄化して頂かなければ」
「そ、そんな……」

 僕はライデンを説得することを諦め、何とか必死に扉をこじ開けようとする。しかし、非力な僕の力ではビクともしなかった。それどころか、部屋の床にうっすらと光の線が描かれ始める。その光は教室で見たような魔方陣をつくりあげた。

「とにかく、貴方も勇者として我々の元に呼ばれたのです。せめてもの務めとして、魔族領に災いをもたらしてください。そうすれば、我らの創造神ファフニデル様も貴方の穢れを浄化してくださることでしょう」
「ま、待ってください!僕はこの世界の事なんにも知らないんですよ!!僕に死ねって言うんですか!」
「そうですが?」

 ライデンが吐き捨てる様にそう告げた後、魔方陣の光が急速に強まり始めた。その光が僕の視界を覆い、何も見えなくなってしまう。

そしてその光が消えた時、僕は木々に囲まれた森の中に立っていた。

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