白と黒が崇拝される異世界で公爵令嬢(仮)を名乗りますが、引く手数多で困ってます。

文字の大きさ
4 / 8
第一章 白と黒が崇拝される世界

3. 純白の美しい人

しおりを挟む



 「──君は」

 彼の声にはっとする。

 この人は私を見て驚いているようだし、ひょっとすると私がいた場所のようにここも私有地なのかもしれない。
 これは急いで謝罪しなければいけないと思い、慌てて頭を下げる。

 「ごめんなさい!もしかしてここって私有地ですか?私、知らなくて……。勝手に入ってしまってすみません。」

 彼の足元にいたフクロウが再び私の肩へ飛び乗った。

 「──いいや、それは問題ない。そのフクロウ、君が捕まえてくれたのか?」
 「あ、あなたが飼い主さんでしたか!よかった、てっきり迷子なのかと──。」

 少し目が隠れる程度に伸びた前髪は額の中央で分けられており、美しく風で靡いている。

 「そのフクロウは私の知人の使い魔だ。」
 「──使い魔?」

 聞き慣れない言葉に思わず首を傾げる。
 しかしそんな私に気にする様子もなく、淡々と話を続ける。

 「丸一日行方が分からなくなっていたんだ。本当に感謝する。」

 ──ヴィー、おいで。

 彼が呼びかけるが、フクロウは私の肩から離れようとしない。

「……困ったな。ヴィーは今までスヴァルトと私にしか懐かなかったんだが……。」

 困ったように小さく息を吐き、徐にポケットから懐中時計を取り出した。

 ──また、白。

 この真っ白な花畑とフクロウ。加えて私の前に立つ彼。

 彼もまた、白い髪に真っ白な洋服。偶然とは言い難いほどに辺り一面に広がる白。
 違和感を覚えながらも、静かに彼の次の言葉を待った。

 「フクロウを見つけてくれた礼をしたい。王宮に来ていただくことは可能か?」

 ──オウキュウ?

 また聞き慣れない言葉。

 やはりここは日本ではなく、そういった地名がある外国なのかなと少し考え込んでいると、彼ははっとしたように姿勢を正した。

 「すまない、名乗るのが遅れた。私はアサヒ・ノウムディーネだ。」
 「わ、私は月森彩です!」

 小さく頭を下げるアサヒさんに、慌てて自分も頭を下げる。

 「ツキモリ…?それが貴女の名か?」
 「あ、いえ、名前はアヤです!」
 「では、アヤ殿。先程の返事を聞かせて欲しい。」

 先程の返事──

 とは、恐らくオウキュウという場所に来てくれないかという問いに対しての返事だろう。

 これから行く当てもないし、ここが一体どこで私のいた場所にどうすれば帰れるのかすら不明であるため、今は彼について行き情報収集するのが得策だろう。

 「では……お言葉に甘えさせていただきます。」
 「──感謝する。ではこちらへ。」

 そう言うとすぐに後ろを向き、足早に歩いていく。

 オウキュウとやらへ向かうため、少しの不安と弾む心を抑えつつ、アサヒさんの後を追った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オマケなのに溺愛されてます

浅葱
恋愛
聖女召喚に巻き込まれ、異世界トリップしてしまった平凡OLが 異世界にて一目惚れされたり、溺愛されるお話

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

聖女じゃなかったので、カフェで働きます

風音悠鈴
恋愛
光魔法が使えず「聖女失格」と追放された大学生・藍里。 聖女じゃないと城を追い出されたけど、実は闇属性+女神の加護持ちのチートだった⁉︎ 望みはカフェでのスローライフだけ。 乙女ゲーム世界の歪みから大切な日常を守ります! 全30話予定

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛
恋愛
食事のあまりの不味さに前世を思い出した私。 水洗トイレにシステムキッチン。テレビもラジオもスマホある日本。異世界転生じゃなかったわ。 と、思っていたらなんか可笑しいぞ? なんか視線の先には、男性ばかり。 そう、ここは男女比8:2の滅び間近な世界だったのです。 人口減少によって様々なことが効率化された世界。その一環による食事の効率化。 料理とは非効率的な家事であり、非効率的な栄養摂取方法になっていた…。 お、美味しいご飯が食べたい…! え、そんなことより、恋でもして子ども産め? うるせぇ!そんなことより美味しいご飯だ!!!

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...