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第一章 白と黒が崇拝される世界
7. 警鐘
しおりを挟む──君、狙われるぞ。
私は生憎、その言葉に「はい、そうですか」と返すタフさは持ち合わせていなかった。
「…………えっと、狙われるとは?」
「アサヒ殿下はこの国、ノウムディーネ国王の弟君、王弟に当たるお方です。日頃から護衛がついている上、殿下自身強大な魔力の持ち主です。手を出そうなんて思う人間はそうそういません。」
アサヒさんがこの国の王弟だということを、いともあっさり伝えられて驚愕している中、漸くここがオウキュウではなく、王宮であることを理解した。
魔力というのは恐らく私が知っている、あの魔力で間違いないのだろう。
「しかしアヤ様は己の身一つしか持っていない。崇拝し丁重に扱う者が大半でしょうが、残念ながら良くないことを考える輩は少数存在しているのです。」
良くないこと──
というのは人身売買みたいなことを指すのだろうか。
思い浮かんだのは、聞いたことはあるが身近ではないもの。
人身売買なんてされてしまったら、そこから逃げ出して元の生活に戻れる可能性は極めて低いだろう。
──目眩がしてくる。
急にこの世界へ来てしまったかと思えば、あなたは希少ですだなんて言われて、挙げ句の果てには狙われますよ?
──怖い。
底知れない恐怖感に手足が震える。
震えを止めようと、自分の身体を両腕で抱きしめた。
広い部屋に沈黙が流れる。
それを破ったのはアサヒさんだった。
「アヤ殿、君さえ良ければこの王宮に住むといい。」
思わぬ言葉に俯いていた顔を勢いよく上げる。
「スヴァルト、異論はないな?」
「ええ、勿論です。ヴィーを見つけてくださった恩もあります。なにより、尊い貴女様を見捨てることなどできません。」
無表情のアサヒさんと、人のいい笑みを浮かべるスヴァルトさん。
──王宮に住む。
私は生まれも育ちも日本。
日本には階級制度がないため、私はそれについての知識が浅い。
しかし、私のような何も持たない人間が王宮に住むということがどれだけ異例なのかは、階級制度に詳しくなくてもわかる。
「遠慮はしなくていい。君はどうしたい?」
スヴァルトさんが言った通り、己の身一つしか持たない私には勿体ない話。
この国の王子であるアサヒさんがいいと言うのだ。
ここは2人の厚意に甘えるのが最善だろう。
「是非、よろしくお願いいたします。」
私は前に座る2人に深々と頭を下げた。
「そう畏まらなくていい。こちらこそこれからよろしく頼む。」
そう言いながらアサヒさんはどこか作り物めいた微笑みを浮かべた。
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