異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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272.4ケンタウロスの村4(祝いの準備)✔

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「お前ら、メノスが歩けるようになった祝いの準備をしてくれ!」

「そう言われると思い既に準備を始めていやす! 明日は魔蜂蜜酒をたっぷり飲みやしょう!」

「気が利くな! まあ、お前らが飲みたいだけだろ!」

「バレてやしたか!」

 ケンタウロス達が嬉しそうにはしゃいでいる。どこも一緒かもしれないが、何か嬉しい事があれば飲むみたいだ。

 メノスさんも歩けるようになったことだし、俺はそろそろ町に帰ろう。今晩は町に泊まると言っていたから、美味しい料理を期待している。魔大陸に来てから食べた料理は辛いやつが多かった。見た目に騙されないようにしないと酷い目にあうからな。

「メノスさん、ホルスさん僕はそろそろ帰ります!」

「何を言っている。オレ様はアルフレッドには返しきれない恩ができた。世話になっておいてもてなしもせずに帰らせたとあっては、オレ様が笑われてしまう。それはできない! 頼むから祝いに参加してくれ! これからこの村で大きなレースを行うから、近隣からも見物人が集まって来る筈だ! レースは明日開催するから、今日はうちに泊まってくれ!」

 ホルスさんはそう言いながら駆け寄り、俺の手をがっしりと捉まえた。同意を得るまでこの手は離さないと顔に書いてある。

「みんなを待たせているので、心配させちゃいますから!」

「うーん。確かに心配させるのは良くない。よし、オレ様がアルフレッドを町まで送り迎えしよう!」

「町まで送ろうではなくて、送り迎えですか?」

「そうでもしないとアルフレッドは村に戻ってこないだろ?」

 ホルスさんの意思が固いようで逃げられそうにない。今日明日の二日遅れてしまうが諦めるしかなさそうだ。

 ケンタウロスの主食は芋で、蒸したり潰したりして食べるとホルスさんが言ってたな。町に戻るならメノスさんに快気祝いのお芋のスイーツでも作ろうかな。

 おやつはお芋に魔蜂蜜をかけるものだと言ってたけど、大学芋みたいなものだろうか? 魔蜂蜜だと固まらないから、本当にかけて食べるだけかもしれないな。

 ケンタウロスは体が大きく、大食いの可能性が高いんじゃないだろうか。子供たちもいたし、多めに作るほうがいいだろう。

 ケンタウロスが気に入れば、自分達でも簡単に作れるスイーツがいい。砂糖が高いから使わないと言ってたな。魔蜂蜜があるなら砂糖を使わないのも分かる。

 何がいいかな? 潰した芋がありそうだからスイートポテトかモンブランケーキ? ……手間がかかりすぎるな。 快気祝いという事で砂糖をプレゼントしようかな。砂糖と魔蜂蜜で大学芋を作ることにしよう。魔蜂蜜をかけただけとは食感が変わるし、なんと言っても作るのが簡単だからね。
 
「今から町まで送迎して、明日は町まで送ってくれるならいいよ!」

「無理を言ってすまないな。直ぐに送ろう!」

 ホルスさんは俺の体を抱え、自分の背に乗せてくれた。

「落ちないようにしっかり掴っていろよ!」

「わかった!」

 いったい何キロくらい出ているのだろうか? 時速六十キロメートルとか出ていそうだな。JRAのレースの平均時速が六十キロメートルとか聞いたことがある。だけど、サラブレットは二時間もこんなスピードでは走れないだろう。

「ねえ、このスピードでどれくらいの時間走れるの?」

「そうだな。五時間から六時間か? 休憩して水と食事を摂れば、更に五時間から六時間は走れるぞ!」

「それは凄い!」

「そうだろう! だから高くてもケンタウロスに荷を運ぶ依頼があるんだ! 弓も上手なんだぞ!」

 ホルスさんは、さっきから狼のような獣を矢で射っている。ほとんど百発百中だ! これは流鏑馬になるのだろうか? 「人馬一体!」 合ってはいるが、意味がちょっと違う気もする。

 町が見えてきた。なんだか町が騒がしいように見える。

「おい、明日ケンタウロスのレースが開催されるらしいぞ!」

「そうらしいな! 久しぶりの開催だぞ! 俺は今回に有り金全部を賭けるからな!」

「やめとけ、やめとけ! お前、前回もそんなこと言ってただろ。また、ケツの毛まで抜かれるぞ!」 

「それを言うなって! 今度は自信があるんだ!」

 聞こえてくる話声からすると、ケンタウロスによるレースは賭けの対象になるみたいだ。

 ノール達が泊っている宿はどこだろうか?

 ゲ! [アルフレッド様ここに泊まっています!] 確かに分かりやすいが、横断幕とか恥ずかしいから止めてほしい。

 俺は急いで宿の中に入ると、今日の出来事を説明した。

「……という事で、今日はケンタウロスのホルスさんの所に泊まることになった。明日には帰って来るよ!」

「そうですか。明日のレースは楽しみにしていますから! 当然見に行きます!」

 みんな、全く驚かない。それに明日のレースを楽しみにしているとまで言いだした。

 事前に誰かが伝えていたのだろうか?

「アルフレッド、いつまで待たせる! アルフレッド!」

 ホルスさんが外から大声で俺の名前を連呼し始めた。他の宿泊客に迷惑になるから戻ることにしよう。 

 砂糖と油を購入して村へ向かうことにする。

 あ! チビとベビの事をすっかり忘れていた。繋がりは感じているけど、誰かを驚かせたりしていないだろうか?
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