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連載
272.5ケンタウロスの村5(レシピのレリーフ)✔
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ケンタウロスの村に戻って来たが、準備に大わらわだった。レースを開催するとか言っているが、こんな小さくて分かり難い村でどのようにする気だろうか? 何年か前も開催したみたいなことを言っていたし、かなりの人が見物に来るみたいなことも言ってたな。
とても、見物に来る人々を収容できるとは思えないのだが。それにわざわざ分かり難くするために作った道の意味がないではないか。
「明日のレースですが、何人くらい集まるんですか?」
「そうだな。前回は早くから告知していたから一万以上来ていたと思うぞ! だが、今回は告知して翌日の開催だからな。隣町から来るだけじゃないか。今回はメノスの祝いのための費用を稼ぐためだけの開催だからな。そんなに多く集まらなくていいんだ!」
「酒代を得るためにやるんすよ!」
さっきホルスさんと話をしていたケンタウロスが裏情報をぶっちゃけた。
「ゲルツ、それは言わなくていいだろうが! 明日のレースの準備はちゃんとやっておけよ! アルフレッド、家に行くぞ!」
「ヘイヘイ! 魔蜂蜜酒を飲むためでやんす! きっちりとやっときまさぁ! オレっちに任せてください!」
ゲルツと呼ばれたケンタウロスは、まるで警察官か自衛隊員のように敬礼すると走り去ってしまった。
慌ただしい村の中をホルツさんの家に向かう。ケンタウロスはみんなホルスさんに祝いの言葉を投げかけてくるため、なかなか家にたどり着けなかった。背中に乗っている俺が珍しかったからかもしれないな。悪気はないのだろうがジロジロと見られていたからな。
「帰ったぞ! アルフレッドもちゃんと連れて来たぞ!」
「お帰りなさい! アルフレッドさんも疲れたでしょ! 今、食事の準備をしているからゆっくりしていて!」
メノスさんが、他のケンタウロスの女性陣と料理を作っている真最中だった。ゆっくりしているようにと言われ、指さされた場所にはテーブルと藁しかない。エルフや二本足の獣人の客は来ないんだろうな。椅子が欲しい……。
椅子に座るとテーブルで食事はできないか。というか、俺はこのテーブルで食事ができそうにないぞ! すべてがケンタウロス使用になっているため、テーブルの高さが俺の頭の位置にある。百五十センチメートルくらいの高さだろうか。藁に座るのは、ケンタウロスの寝床なので違う気がする。
「僕、料理に興味があるので見ていていいですか?」
「あら、料理が趣味なの? いいわよ! 後で感想を聞かせて頂戴!」
「では、見させてください!」
女性陣が料理を再開した。蒸されていたのはサツマイモのようで乱切りにされると、家の中を甘い香りが漂っている。
「最近、お芋の生育が良くないのよね!」「そうね。収穫量も落ちてきているわよね!」
「潰すから器を押さえてくれる!」「いいわよ!」
湯気の立つ蒸されたサツマイモを潰して、魔蜂蜜をからめ始めた。きっとこれがおやつになるのだろう。想像していた大学芋とは違いそうだ。乱切りにされた蒸し芋はそのまま木の器に盛りつけられている。もしかして切って終わりだろうか?
スープもあるみたいだが、……じゃがいもか? サツマイモと一緒に乱切りにして塩を入れて煮立ったら器に盛り付けている。 え! これで終わりなの?
よく言えば、どの料理も素材の味を最大限活かした料理だな。調味料が塩だけだなんて……。
潰されたサツマイモは、魔蜂蜜と混ぜられてペースト状になっている。こちらも器に移される。栗の入っていない栗きんとんみたいだな。これに乱切りのサツマイモを入れ、かき混ぜて完成のようだ。 サツマイモきんとんになるのだろうか? 他に料理を作っているようにも見えない。器がテーブルに運ばれる。芋しかない。究極の芋づくし料理だな。
「おばさん、手伝ってくれてありがとう!」
「いいのよ。病み上がりだから。これだけできるだけでも、メノスちゃんは大したものさね!」
「ありがとう。 おばさん!」
「メノスちゃん、あんまり無理するんじゃないよ!」
女性陣は料理を手伝いに来ていたみたいで、俺に握手を求めて、礼を言うと早々に帰って行った。
「兄さん、アルフレッドさん、料理ができたわ!」
俺がテーブルまで近寄って行くとホルスさんは俺を抱き上げて背中に座らせ横を向いてくれた。
なるほど、これなら俺でもテーブルで食べれるな。椅子が必要ない理由が分かった。ホルスさんは体を捻って食べるみたいだが、難しくはないのだろうか?
山盛りに盛り付けられた乱切りのサツマイモを器に取り分けて食べる。見た目の通りでほんのりと甘みがあって美味しい。完全に素材本来の味だな。いつもこれだろうか?
キッチンを軽く見渡すが塩と魔蜂蜜、それに魔蜂蜜酒だろうか? 他には調味料らしきものが見当たらない。肉はめったに食べないと言っていたからこれがいつもの食事なんだろうな。
「今日はアルフレッドのために、おやつも作ってもらったぞ! これが甘くて美味しいからな! それに魔蜂蜜は体にいいんだぞ! このおやつは町に売りに行くと女性に大人気なんだ!」
ホルスさんが力説してくれる。キッチンに置いてあったのは魔蜂蜜酒で合っていた。お好みでおやつに魔蜂蜜酒をかけて食べるそうだ。そう言いながらホルスさんはグビグビと魔蜂蜜酒を飲んでいる。
このペースト状と乱切りの芋のおやつだが思っていた以上に美味しい。乱切りのサツマイモが味も食感も変えてくれているし、魔蜂蜜も甘すぎなくていい。『サツマイモきんとんの魔蜂蜜掛け』でいいのではないだろうか?
勧められた通りに、少し魔蜂蜜酒をかけて食べてみる。アルコールが効いて香りも味も大人仕様に変わった。大人向けに味変できるスイーツだ。町で女性に人気だと言うのも分かるな。
「美味しいですね!」
「そうだろう! この村で売れるものは、このおやつと魔蜂蜜、魔蜂蜜酒の三つしかないからな。これは村の貴重な収入源なんだ!」
「アルフレッドさんの口にあったようで良かった! そうだ! 料理が趣味だと言っていたけど何か作れたりする? 材料はお芋と魔蜂蜜、調味料は塩しかないけどね!」
「メノスさんの快気祝いにと思って砂糖を町で買って来たんだ! その乱切りのお芋を使ってもいい?」
「ええ、いいわよ! 楽しみね!」
俺は急遽、外に出て土魔法でフライパンと踏み台を作る。家に戻るとキッチンの前に踏み台を設置して料理できる高さを確保した。フライパンに焦げ付き防止用の油を少量入れてなじませる。そこに水魔法で水を作り、砂糖を入れて火魔法で加熱していく。ドロドロのあめ色になった砂糖に魔蜂蜜を加える。最後に器に入っている蒸された乱切りのサツマイモを加えて軽く絡ませた。
魔蜂蜜を使った大学芋の完成だ。これにお好みで魔蜂蜜酒をかけて食べてもらうことにしよう。
「熱いので火傷しないように注意して食べてください。少し冷めてくると砂糖が固まり食感も硬く変わってきますよ!」
作り終わり振り返って見ると、メノスさんもホルスさんも目が点状態で身動きしていない。
「メノスさん? ホルスさん? どうしたんですか? もしもーし!」
ふたりとも目をパチクリとさせてはいるがフリーズしたままだ。やっと再起動した。
「アルフレッドさん。その魔法は……聖人ではなくて賢者様なの? 何その魔法の精度!」
「アルフレッド、魔法だが、土、火、水が使えるのか? それに癒しの魔法まで使える。 村に聖人様が来たと言ってしまったが賢者様だったと訂正しなければならんな!」
「聖人でも賢者でもないよ。普通の人間だから」
「人間はみんなアルフレッドみたいに魔法や癒しの魔法が使えるのか?」
「……どうだろう? 使える人は使えるんじゃないだろうか!」
「そうなのか? 人間はそんなに魔法がすごいのだな!」
なんだか、ホルスさんの変なスイッチを押してしまったかもしれない。走って家から出て行ってしまった。
「熱いけど、このドロドロが美味しい! 冷ますと硬くなってきた。少しパリッとしてこれも美味しい! ワタシこれ、大好き! アルフレッドさん。プレゼントをありがとう!」
「どういたしまして、メノスさんに気に入ってもらえて良かった。このフライパンと砂糖と油もプレゼントしますよ!」
「まあ! 嬉しい。大切に使わせてもらうわ!」
メノスさんの頬がほんのりと赤みを帯びたように見えた。大喜びしている。
ホルスさんはどこに行ったんだろうか? 二十分くらいしてやっと帰って来た。帰って来るなり大学芋を食べ始める。美味しいを連呼し、最後に魔蜂蜜酒をかけて食べている。
作り方を残してほしいと言われたが、読み書きはできないので紙とかは無いと言う。読み書きができない?
仕方ないので、土魔法で大学芋の工程をイラストにしてレリーフを作って渡すことにする。
「アルフレッドは、絵心もあるのだな! これと同じような絵を神殿で見たことがある! 家宝にさせてもらうぞ!」
ホルスさんが大事そうに受け取ると、家の入り口付近の目立つ場所に設置した。いやいや、神殿に大学芋のレシピは描かれてないでしょ?
「恥ずかしいから、砂糖を使っただけの大学芋レシピを家宝とか止めてください!」
〈アルママ、オークを獲って来たダォ! 焼いてほしいダォ!〉〈マヨネーズとケチャップが欲しいノ!〉
〈いいよ!〉
パスで繋がっているので俺の居場所は直ぐに分かったみたいだな。ベビとチビが帰って来た。チビが大きなオークを抱えており、背中には女の子を乗せており、近くの広場に降りてきた。辺りは十メートルを超える龍が現れて騒然としている。
ホルスさんが慌ててみんなにチビの事を説明し、なんとか騒動は収まった。ベビがまた人化に成功したみたいだな。
〈ベビ、人化に成功したんだね!〉
〈えへへ、頑張って貯めたからできたの! でも、チビは最初からやり直しなノ!〉
最初からと言っていたのは人化のことだったんだな。チビは怒って元の龍の姿に戻ってしまったから、人化するためには最初から始める必要があるんだろうな。
〈ベビだけズルイダォ!〉
〈チビが怒って魔道具を解除するのが悪いノ! また溜めればいいノ! 今はお腹が空いたノ〉
〈分かったダォ! アルママ、お腹が空いたダォ!〉
ベビとチビが言い争っていたが、ふたりともお腹が空いているのは同じみたいだ。急いでオークを丸焼きにしよう。だけど、希望しているマヨネーズもケチャップもここにはないんだよね。
調味料セットをエルフの泊っている宿に取りに行ったが、チビを見て町の人達がパニックになってしまった。ミーメが説明してくれてなんとか落ち着きを取り戻すことができたが、チビを一目見ようと宿の周りが獣人やエルフ達で溢れかえって、身動きが取れない。これ以上迷惑をかけれないので、ミーメ達に礼を言うと早々に町を後にした。
新鮮な卵を手に入れて、持ってきたゴマ油とお酢でマヨネーズを作る。チビもべビも満足したようで良かった。ホルスさんもマヨネーズとケチャップを食べていたが、芋料理にも美味しいと好評だった。
これの作り方をレリーフですか? お酢の作り方から……すみません、無理です。
とても、見物に来る人々を収容できるとは思えないのだが。それにわざわざ分かり難くするために作った道の意味がないではないか。
「明日のレースですが、何人くらい集まるんですか?」
「そうだな。前回は早くから告知していたから一万以上来ていたと思うぞ! だが、今回は告知して翌日の開催だからな。隣町から来るだけじゃないか。今回はメノスの祝いのための費用を稼ぐためだけの開催だからな。そんなに多く集まらなくていいんだ!」
「酒代を得るためにやるんすよ!」
さっきホルスさんと話をしていたケンタウロスが裏情報をぶっちゃけた。
「ゲルツ、それは言わなくていいだろうが! 明日のレースの準備はちゃんとやっておけよ! アルフレッド、家に行くぞ!」
「ヘイヘイ! 魔蜂蜜酒を飲むためでやんす! きっちりとやっときまさぁ! オレっちに任せてください!」
ゲルツと呼ばれたケンタウロスは、まるで警察官か自衛隊員のように敬礼すると走り去ってしまった。
慌ただしい村の中をホルツさんの家に向かう。ケンタウロスはみんなホルスさんに祝いの言葉を投げかけてくるため、なかなか家にたどり着けなかった。背中に乗っている俺が珍しかったからかもしれないな。悪気はないのだろうがジロジロと見られていたからな。
「帰ったぞ! アルフレッドもちゃんと連れて来たぞ!」
「お帰りなさい! アルフレッドさんも疲れたでしょ! 今、食事の準備をしているからゆっくりしていて!」
メノスさんが、他のケンタウロスの女性陣と料理を作っている真最中だった。ゆっくりしているようにと言われ、指さされた場所にはテーブルと藁しかない。エルフや二本足の獣人の客は来ないんだろうな。椅子が欲しい……。
椅子に座るとテーブルで食事はできないか。というか、俺はこのテーブルで食事ができそうにないぞ! すべてがケンタウロス使用になっているため、テーブルの高さが俺の頭の位置にある。百五十センチメートルくらいの高さだろうか。藁に座るのは、ケンタウロスの寝床なので違う気がする。
「僕、料理に興味があるので見ていていいですか?」
「あら、料理が趣味なの? いいわよ! 後で感想を聞かせて頂戴!」
「では、見させてください!」
女性陣が料理を再開した。蒸されていたのはサツマイモのようで乱切りにされると、家の中を甘い香りが漂っている。
「最近、お芋の生育が良くないのよね!」「そうね。収穫量も落ちてきているわよね!」
「潰すから器を押さえてくれる!」「いいわよ!」
湯気の立つ蒸されたサツマイモを潰して、魔蜂蜜をからめ始めた。きっとこれがおやつになるのだろう。想像していた大学芋とは違いそうだ。乱切りにされた蒸し芋はそのまま木の器に盛りつけられている。もしかして切って終わりだろうか?
スープもあるみたいだが、……じゃがいもか? サツマイモと一緒に乱切りにして塩を入れて煮立ったら器に盛り付けている。 え! これで終わりなの?
よく言えば、どの料理も素材の味を最大限活かした料理だな。調味料が塩だけだなんて……。
潰されたサツマイモは、魔蜂蜜と混ぜられてペースト状になっている。こちらも器に移される。栗の入っていない栗きんとんみたいだな。これに乱切りのサツマイモを入れ、かき混ぜて完成のようだ。 サツマイモきんとんになるのだろうか? 他に料理を作っているようにも見えない。器がテーブルに運ばれる。芋しかない。究極の芋づくし料理だな。
「おばさん、手伝ってくれてありがとう!」
「いいのよ。病み上がりだから。これだけできるだけでも、メノスちゃんは大したものさね!」
「ありがとう。 おばさん!」
「メノスちゃん、あんまり無理するんじゃないよ!」
女性陣は料理を手伝いに来ていたみたいで、俺に握手を求めて、礼を言うと早々に帰って行った。
「兄さん、アルフレッドさん、料理ができたわ!」
俺がテーブルまで近寄って行くとホルスさんは俺を抱き上げて背中に座らせ横を向いてくれた。
なるほど、これなら俺でもテーブルで食べれるな。椅子が必要ない理由が分かった。ホルスさんは体を捻って食べるみたいだが、難しくはないのだろうか?
山盛りに盛り付けられた乱切りのサツマイモを器に取り分けて食べる。見た目の通りでほんのりと甘みがあって美味しい。完全に素材本来の味だな。いつもこれだろうか?
キッチンを軽く見渡すが塩と魔蜂蜜、それに魔蜂蜜酒だろうか? 他には調味料らしきものが見当たらない。肉はめったに食べないと言っていたからこれがいつもの食事なんだろうな。
「今日はアルフレッドのために、おやつも作ってもらったぞ! これが甘くて美味しいからな! それに魔蜂蜜は体にいいんだぞ! このおやつは町に売りに行くと女性に大人気なんだ!」
ホルスさんが力説してくれる。キッチンに置いてあったのは魔蜂蜜酒で合っていた。お好みでおやつに魔蜂蜜酒をかけて食べるそうだ。そう言いながらホルスさんはグビグビと魔蜂蜜酒を飲んでいる。
このペースト状と乱切りの芋のおやつだが思っていた以上に美味しい。乱切りのサツマイモが味も食感も変えてくれているし、魔蜂蜜も甘すぎなくていい。『サツマイモきんとんの魔蜂蜜掛け』でいいのではないだろうか?
勧められた通りに、少し魔蜂蜜酒をかけて食べてみる。アルコールが効いて香りも味も大人仕様に変わった。大人向けに味変できるスイーツだ。町で女性に人気だと言うのも分かるな。
「美味しいですね!」
「そうだろう! この村で売れるものは、このおやつと魔蜂蜜、魔蜂蜜酒の三つしかないからな。これは村の貴重な収入源なんだ!」
「アルフレッドさんの口にあったようで良かった! そうだ! 料理が趣味だと言っていたけど何か作れたりする? 材料はお芋と魔蜂蜜、調味料は塩しかないけどね!」
「メノスさんの快気祝いにと思って砂糖を町で買って来たんだ! その乱切りのお芋を使ってもいい?」
「ええ、いいわよ! 楽しみね!」
俺は急遽、外に出て土魔法でフライパンと踏み台を作る。家に戻るとキッチンの前に踏み台を設置して料理できる高さを確保した。フライパンに焦げ付き防止用の油を少量入れてなじませる。そこに水魔法で水を作り、砂糖を入れて火魔法で加熱していく。ドロドロのあめ色になった砂糖に魔蜂蜜を加える。最後に器に入っている蒸された乱切りのサツマイモを加えて軽く絡ませた。
魔蜂蜜を使った大学芋の完成だ。これにお好みで魔蜂蜜酒をかけて食べてもらうことにしよう。
「熱いので火傷しないように注意して食べてください。少し冷めてくると砂糖が固まり食感も硬く変わってきますよ!」
作り終わり振り返って見ると、メノスさんもホルスさんも目が点状態で身動きしていない。
「メノスさん? ホルスさん? どうしたんですか? もしもーし!」
ふたりとも目をパチクリとさせてはいるがフリーズしたままだ。やっと再起動した。
「アルフレッドさん。その魔法は……聖人ではなくて賢者様なの? 何その魔法の精度!」
「アルフレッド、魔法だが、土、火、水が使えるのか? それに癒しの魔法まで使える。 村に聖人様が来たと言ってしまったが賢者様だったと訂正しなければならんな!」
「聖人でも賢者でもないよ。普通の人間だから」
「人間はみんなアルフレッドみたいに魔法や癒しの魔法が使えるのか?」
「……どうだろう? 使える人は使えるんじゃないだろうか!」
「そうなのか? 人間はそんなに魔法がすごいのだな!」
なんだか、ホルスさんの変なスイッチを押してしまったかもしれない。走って家から出て行ってしまった。
「熱いけど、このドロドロが美味しい! 冷ますと硬くなってきた。少しパリッとしてこれも美味しい! ワタシこれ、大好き! アルフレッドさん。プレゼントをありがとう!」
「どういたしまして、メノスさんに気に入ってもらえて良かった。このフライパンと砂糖と油もプレゼントしますよ!」
「まあ! 嬉しい。大切に使わせてもらうわ!」
メノスさんの頬がほんのりと赤みを帯びたように見えた。大喜びしている。
ホルスさんはどこに行ったんだろうか? 二十分くらいしてやっと帰って来た。帰って来るなり大学芋を食べ始める。美味しいを連呼し、最後に魔蜂蜜酒をかけて食べている。
作り方を残してほしいと言われたが、読み書きはできないので紙とかは無いと言う。読み書きができない?
仕方ないので、土魔法で大学芋の工程をイラストにしてレリーフを作って渡すことにする。
「アルフレッドは、絵心もあるのだな! これと同じような絵を神殿で見たことがある! 家宝にさせてもらうぞ!」
ホルスさんが大事そうに受け取ると、家の入り口付近の目立つ場所に設置した。いやいや、神殿に大学芋のレシピは描かれてないでしょ?
「恥ずかしいから、砂糖を使っただけの大学芋レシピを家宝とか止めてください!」
〈アルママ、オークを獲って来たダォ! 焼いてほしいダォ!〉〈マヨネーズとケチャップが欲しいノ!〉
〈いいよ!〉
パスで繋がっているので俺の居場所は直ぐに分かったみたいだな。ベビとチビが帰って来た。チビが大きなオークを抱えており、背中には女の子を乗せており、近くの広場に降りてきた。辺りは十メートルを超える龍が現れて騒然としている。
ホルスさんが慌ててみんなにチビの事を説明し、なんとか騒動は収まった。ベビがまた人化に成功したみたいだな。
〈ベビ、人化に成功したんだね!〉
〈えへへ、頑張って貯めたからできたの! でも、チビは最初からやり直しなノ!〉
最初からと言っていたのは人化のことだったんだな。チビは怒って元の龍の姿に戻ってしまったから、人化するためには最初から始める必要があるんだろうな。
〈ベビだけズルイダォ!〉
〈チビが怒って魔道具を解除するのが悪いノ! また溜めればいいノ! 今はお腹が空いたノ〉
〈分かったダォ! アルママ、お腹が空いたダォ!〉
ベビとチビが言い争っていたが、ふたりともお腹が空いているのは同じみたいだ。急いでオークを丸焼きにしよう。だけど、希望しているマヨネーズもケチャップもここにはないんだよね。
調味料セットをエルフの泊っている宿に取りに行ったが、チビを見て町の人達がパニックになってしまった。ミーメが説明してくれてなんとか落ち着きを取り戻すことができたが、チビを一目見ようと宿の周りが獣人やエルフ達で溢れかえって、身動きが取れない。これ以上迷惑をかけれないので、ミーメ達に礼を言うと早々に町を後にした。
新鮮な卵を手に入れて、持ってきたゴマ油とお酢でマヨネーズを作る。チビもべビも満足したようで良かった。ホルスさんもマヨネーズとケチャップを食べていたが、芋料理にも美味しいと好評だった。
これの作り方をレリーフですか? お酢の作り方から……すみません、無理です。
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