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386. 万年亀アンフィトリーテー(動く島?)✔
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ひと月ほどたったある日、突然、海に島が現れたと製塩所から緊急鳩便が届いた。
急いで海岸に向かう……沖合数キロに幅五百メートル標高五十メートルほどの島が浮いていた。小さな島に見えるが万年亀のアンフィトリーテーだ。
俺が近づくと今まで沈んでいた体がだんだんと海上に現れ、大きな波が陸地に向かって押し寄せる。俺は慌てて海の精霊にお願いすると波を打ち消してもらった。危ないところだった、危うく帆船と製塩所を失うことになるところだったよ。
一キロ近くある甲羅が海上に姿を現した。これだけ頑丈な甲羅で覆われている万年亀なら、赤道付近に生息する巨大な魔物にもビクともしないんじゃないかな。
〈アンフィトリーテー! よく来てくれたね、お願いしたいことがあるんだ!〉
甲羅の先の海面が盛り上がり、大きな頭が持ち上げられた。体の大きさに不釣り合いなつぶらな瞳で俺を見つめる。
〈いいわよ、アルフレッドは友達だし、どうせ私は暇だから、それでお願いってなーに? 難しいことはダメよ、考えるのは苦手だから〉
ゆっくりとした口調の念話が頭の中に届いた。念話だが、精神攻撃されているのかと思えるほど頭の中に響いている。
〈南半球の人魚の生息海域に北半球の人魚を乗せて行ってくれない? お願いできる?〉
〈なーんだ、そんなことでいいの? いいわよ、どうせ暇だし寝ていれば着くから〉
万年亀のアンフィトリーテーは俺のお願いに興味を失ったようで、持ち上げていた頭を海面に落した。するとサーフィンができそうな波がザバッと起こり、広がっていくと海岸にぶつかって消えた。
停泊中の帆船が大きく揺れている。波けしブロックか防波堤を整備した方がいいな、気づかないときに万年亀が来たら大きな被害が出てしまいそうだ。すっかり波に意識を奪われていたな。
〈ありがとう、助かるよ! 危険な魔物が沢山生息しているらしいから、甲羅の上に檻や建物を土魔法で設置してもいい? 終わったらちゃんと撤去すると約束するからお願い!〉
再び海上に頭を出すとのんびりとした動きで頷いた。海面に頭が触れただけで数メートルの波が陸地に押し寄せ、停泊中の帆船が大きく揺れる。
スピードを上げて泳いだら巨大な津波が押し寄せて来るだろうな。そんな自覚はないんだろうけど、実は万年亀って危険な魔物なんじゃないか!
〈失礼なことを考えているわね! 私は魔物ではないわよ、神獣だもの!〉
〈えっ! 神獣なの?〉
万年亀は相変わらずゆっくりとした念話を送ってくる。前鰭がゆっくりと海上に持ち上がり海面を叩いた。なんてゆっくりとした動作だろうか? これは抗議しているんだろうな、遅れて津波が押し寄せる。災害級の被害が出てもおかしくないぞ……海の精霊が津波を相殺してくれて事なきを得た。
一夜で国を壊滅させる力を有しているんじゃないだろうか。対応を間違えると取り返しのつかないことになりそうだ。スーパー堤防とか造るべきだろうか?
〈ごめんね、知らなかったんだ! うちにも神獣がいるし、女神様に仲良くしてもらっているんだよ〉
〈あら、女神様は言ってなかったんだ……それなら仕方ないわ!〉
万年亀のアンフィトリーテーは時々休むように念話してきた。きっと考え事をしながら念話しているのだろう。
俺が知らないだけで女神様の神獣は他にもいそうだよね。
〈泳ぎ難くなるのは嫌だけど、友達だから小さいのなら許してあげるわ! 必ず元に戻してくれるのよね?〉
俺のお願いを考えてくれていたんだ。だから余計にゆっくりとしていたんだな。
〈ありがとう、あれから体の調子はどう?〉
〈治してもらったところはいいわよ……でも、後ろの鰭にまた何か絡まっているのよ、見てくれる?〉
そう言いながらゆっくりと体を傾けて後ろの鰭を海面から覗かせた。またか、木片とロープが絡まっている。この絡まった残骸はきっと帆船のなれの果てだ。
今更だが、大きくて狂暴な魔獣のお話だけど、万年亀がその正体なのではないだろうか。
頭の中でイメージを膨らませてみる。巨大な津波を巻き起こし帆船を沈める、若しくは急に現れた万年亀に回避できずに帆船が衝突する。島だと思い近づいて巻き込まれる。そして沈没した帆船のロープに万年亀の鰭が絡まる。今イメージしたようなことが、眠っている間に起こっているのではないだろうか? きっとそうだ。
今回も人魚になれる魔道具を使用し、絡まったロープや木片を取り除いた。前回と同じように怪我した場所には癒しの魔法を行使する。
傷の治りが格段に速くなっているな。癒しの魔法が息をするように発動できるようになっていた。
〈チビ、ベビ、今手伝える? 来れたら土を万年亀の背中に運んでほしいんだけど〉
〈待っていて直ぐに行くダォ!〉〈ベビも手伝えるノ!〉
世界樹が順調に育ってからというもの、念話の到達距離と感度が上がっている。携帯の基地局のような役割を果たしてくれているのかもしれないな。
便利になってきた、あとは女神様の冷凍冷蔵庫が手に入れば最高だよ!
チビとベビに万年亀の甲羅の上に大量の土を運んでもらう。巨大なサメ除けの檻をイメージしながら土の精霊にお願いした。すると土がモコモコと蠢き、四角いプレハブ住宅へと形を変えた。さらにその周りに強固な柱が次々に出現している。
土が足りないな、ベビとチビが何度も土を運んでくれる。働きに見合った報酬をあげないとね、やっぱりフライパンハンバーグとバケツプリンだよね。
久しぶりにミーノータウルス迷宮に潜ってみるのもいいな。ミーノータウルス百パーセントのハンバーグとか作ってみるのもいいよね。もったいないかな? ミーノータウルスはステーキが一番美味しい食べ方だからな。考えただけで唾液が溢れ出してきた、報酬に関係なく絶対に行くぞ!
人魚達のセーフハウスが完成した。なんか思っていた以上にかっこいいんだけど。檻が神殿の柱のようにも見えなくもない、移動する島の神殿……ラノベなんかによくあるアトランティス大陸とかの映画のセットのようだ。流石は精霊だな、いいセンスしている。
土を運ぶのに時間がかかったが完成したぞ。終わって撤去するのが惜しくなってきたな。
重量がありそうだけど、万年亀の負担にならないか心配になってきた。アンフィトリーテーだが作業中は熟睡しているようでピクリともしない。
今のアンフィトリーテーはどこから見ても島にしか見えないな。ちょっと重たいのか海面から見える幅が三百メートルほどになっており、頭頂部の百メートルが人魚達のセーフハウスだ。
万年亀がスピードを上げるととんでもない災害になることが判明した、巨大な津波を起こしてしまうんだ。だからいつもゆっくりと泳いでいたんだな。
サーフィンの波を人工的に起こす装置があるんだけど、もっと大規模な波を起こすと考えてもらえばイメージできるだろうか? どれくらいの高さの波になるのか興味はあるんだけど、遠く離れた陸地にまで被害が出そうなのでお願いしたりはしないよ。
スピードを出すとあちこちに津波被害が出てしまうな。ゆっくり行って来ると一年くらいかかりそうだ。人魚なら万年亀が海に潜っても呼吸できるし、俺がいなくてもなんとかなるよね?
本当は俺も一緒に行きたいんだけど、仕事が詰まっているから同行できないのが残念なんだよ。一年間も不在にできないからね、連絡できるように念話の魔道具を貸与しておくかな。
そろそろ人魚達に連絡して迎えに行かなきゃね。
〈アンフィトリーテー、起きてよ! 人魚を乗せに行ってくれる?〉
何度か呼びかけるとやっと、体が浮上を始めて頭がザバーッと海上に現れた。
〈あーよく寝た! ちょっと重たくなった? 私、何食べたんだっけ?〉
アンフィトリーテーは寝ぼけているのか、食べたせいで重たくなったと勘違いしているみたいだ。
〈甲羅の上に人魚を乗せる箱を造ったからその重さだよ! 重たい?〉
〈うーん、私鈍感だからよくわからない〉
アンフィトリーテーがゆっくりと進みだした。建造物が海上に出て泳ぐなら問題はないようだ。
〈別に困らないかも……えーとどこに行けばいいんだっけ?〉
アンフィトリーテーののんびりとした念話が脳内に響く。
〈魔大陸に行く途中の人魚の島、そこで人魚を乗せたら南半球の人魚の生息する海だよ〉
〈うーん、覚えれるかなー、人魚ね、行って来るねー〉
アンフィトリーテーは魔大陸の方へ向きを変えるとゆっくりと泳いで消えて行った。
大丈夫かな? これは一年では無理かもしれないな。こまめに監視していないととんでもない場所を漂っていそうな気がしてきた。
急いで海岸に向かう……沖合数キロに幅五百メートル標高五十メートルほどの島が浮いていた。小さな島に見えるが万年亀のアンフィトリーテーだ。
俺が近づくと今まで沈んでいた体がだんだんと海上に現れ、大きな波が陸地に向かって押し寄せる。俺は慌てて海の精霊にお願いすると波を打ち消してもらった。危ないところだった、危うく帆船と製塩所を失うことになるところだったよ。
一キロ近くある甲羅が海上に姿を現した。これだけ頑丈な甲羅で覆われている万年亀なら、赤道付近に生息する巨大な魔物にもビクともしないんじゃないかな。
〈アンフィトリーテー! よく来てくれたね、お願いしたいことがあるんだ!〉
甲羅の先の海面が盛り上がり、大きな頭が持ち上げられた。体の大きさに不釣り合いなつぶらな瞳で俺を見つめる。
〈いいわよ、アルフレッドは友達だし、どうせ私は暇だから、それでお願いってなーに? 難しいことはダメよ、考えるのは苦手だから〉
ゆっくりとした口調の念話が頭の中に届いた。念話だが、精神攻撃されているのかと思えるほど頭の中に響いている。
〈南半球の人魚の生息海域に北半球の人魚を乗せて行ってくれない? お願いできる?〉
〈なーんだ、そんなことでいいの? いいわよ、どうせ暇だし寝ていれば着くから〉
万年亀のアンフィトリーテーは俺のお願いに興味を失ったようで、持ち上げていた頭を海面に落した。するとサーフィンができそうな波がザバッと起こり、広がっていくと海岸にぶつかって消えた。
停泊中の帆船が大きく揺れている。波けしブロックか防波堤を整備した方がいいな、気づかないときに万年亀が来たら大きな被害が出てしまいそうだ。すっかり波に意識を奪われていたな。
〈ありがとう、助かるよ! 危険な魔物が沢山生息しているらしいから、甲羅の上に檻や建物を土魔法で設置してもいい? 終わったらちゃんと撤去すると約束するからお願い!〉
再び海上に頭を出すとのんびりとした動きで頷いた。海面に頭が触れただけで数メートルの波が陸地に押し寄せ、停泊中の帆船が大きく揺れる。
スピードを上げて泳いだら巨大な津波が押し寄せて来るだろうな。そんな自覚はないんだろうけど、実は万年亀って危険な魔物なんじゃないか!
〈失礼なことを考えているわね! 私は魔物ではないわよ、神獣だもの!〉
〈えっ! 神獣なの?〉
万年亀は相変わらずゆっくりとした念話を送ってくる。前鰭がゆっくりと海上に持ち上がり海面を叩いた。なんてゆっくりとした動作だろうか? これは抗議しているんだろうな、遅れて津波が押し寄せる。災害級の被害が出てもおかしくないぞ……海の精霊が津波を相殺してくれて事なきを得た。
一夜で国を壊滅させる力を有しているんじゃないだろうか。対応を間違えると取り返しのつかないことになりそうだ。スーパー堤防とか造るべきだろうか?
〈ごめんね、知らなかったんだ! うちにも神獣がいるし、女神様に仲良くしてもらっているんだよ〉
〈あら、女神様は言ってなかったんだ……それなら仕方ないわ!〉
万年亀のアンフィトリーテーは時々休むように念話してきた。きっと考え事をしながら念話しているのだろう。
俺が知らないだけで女神様の神獣は他にもいそうだよね。
〈泳ぎ難くなるのは嫌だけど、友達だから小さいのなら許してあげるわ! 必ず元に戻してくれるのよね?〉
俺のお願いを考えてくれていたんだ。だから余計にゆっくりとしていたんだな。
〈ありがとう、あれから体の調子はどう?〉
〈治してもらったところはいいわよ……でも、後ろの鰭にまた何か絡まっているのよ、見てくれる?〉
そう言いながらゆっくりと体を傾けて後ろの鰭を海面から覗かせた。またか、木片とロープが絡まっている。この絡まった残骸はきっと帆船のなれの果てだ。
今更だが、大きくて狂暴な魔獣のお話だけど、万年亀がその正体なのではないだろうか。
頭の中でイメージを膨らませてみる。巨大な津波を巻き起こし帆船を沈める、若しくは急に現れた万年亀に回避できずに帆船が衝突する。島だと思い近づいて巻き込まれる。そして沈没した帆船のロープに万年亀の鰭が絡まる。今イメージしたようなことが、眠っている間に起こっているのではないだろうか? きっとそうだ。
今回も人魚になれる魔道具を使用し、絡まったロープや木片を取り除いた。前回と同じように怪我した場所には癒しの魔法を行使する。
傷の治りが格段に速くなっているな。癒しの魔法が息をするように発動できるようになっていた。
〈チビ、ベビ、今手伝える? 来れたら土を万年亀の背中に運んでほしいんだけど〉
〈待っていて直ぐに行くダォ!〉〈ベビも手伝えるノ!〉
世界樹が順調に育ってからというもの、念話の到達距離と感度が上がっている。携帯の基地局のような役割を果たしてくれているのかもしれないな。
便利になってきた、あとは女神様の冷凍冷蔵庫が手に入れば最高だよ!
チビとベビに万年亀の甲羅の上に大量の土を運んでもらう。巨大なサメ除けの檻をイメージしながら土の精霊にお願いした。すると土がモコモコと蠢き、四角いプレハブ住宅へと形を変えた。さらにその周りに強固な柱が次々に出現している。
土が足りないな、ベビとチビが何度も土を運んでくれる。働きに見合った報酬をあげないとね、やっぱりフライパンハンバーグとバケツプリンだよね。
久しぶりにミーノータウルス迷宮に潜ってみるのもいいな。ミーノータウルス百パーセントのハンバーグとか作ってみるのもいいよね。もったいないかな? ミーノータウルスはステーキが一番美味しい食べ方だからな。考えただけで唾液が溢れ出してきた、報酬に関係なく絶対に行くぞ!
人魚達のセーフハウスが完成した。なんか思っていた以上にかっこいいんだけど。檻が神殿の柱のようにも見えなくもない、移動する島の神殿……ラノベなんかによくあるアトランティス大陸とかの映画のセットのようだ。流石は精霊だな、いいセンスしている。
土を運ぶのに時間がかかったが完成したぞ。終わって撤去するのが惜しくなってきたな。
重量がありそうだけど、万年亀の負担にならないか心配になってきた。アンフィトリーテーだが作業中は熟睡しているようでピクリともしない。
今のアンフィトリーテーはどこから見ても島にしか見えないな。ちょっと重たいのか海面から見える幅が三百メートルほどになっており、頭頂部の百メートルが人魚達のセーフハウスだ。
万年亀がスピードを上げるととんでもない災害になることが判明した、巨大な津波を起こしてしまうんだ。だからいつもゆっくりと泳いでいたんだな。
サーフィンの波を人工的に起こす装置があるんだけど、もっと大規模な波を起こすと考えてもらえばイメージできるだろうか? どれくらいの高さの波になるのか興味はあるんだけど、遠く離れた陸地にまで被害が出そうなのでお願いしたりはしないよ。
スピードを出すとあちこちに津波被害が出てしまうな。ゆっくり行って来ると一年くらいかかりそうだ。人魚なら万年亀が海に潜っても呼吸できるし、俺がいなくてもなんとかなるよね?
本当は俺も一緒に行きたいんだけど、仕事が詰まっているから同行できないのが残念なんだよ。一年間も不在にできないからね、連絡できるように念話の魔道具を貸与しておくかな。
そろそろ人魚達に連絡して迎えに行かなきゃね。
〈アンフィトリーテー、起きてよ! 人魚を乗せに行ってくれる?〉
何度か呼びかけるとやっと、体が浮上を始めて頭がザバーッと海上に現れた。
〈あーよく寝た! ちょっと重たくなった? 私、何食べたんだっけ?〉
アンフィトリーテーは寝ぼけているのか、食べたせいで重たくなったと勘違いしているみたいだ。
〈甲羅の上に人魚を乗せる箱を造ったからその重さだよ! 重たい?〉
〈うーん、私鈍感だからよくわからない〉
アンフィトリーテーがゆっくりと進みだした。建造物が海上に出て泳ぐなら問題はないようだ。
〈別に困らないかも……えーとどこに行けばいいんだっけ?〉
アンフィトリーテーののんびりとした念話が脳内に響く。
〈魔大陸に行く途中の人魚の島、そこで人魚を乗せたら南半球の人魚の生息する海だよ〉
〈うーん、覚えれるかなー、人魚ね、行って来るねー〉
アンフィトリーテーは魔大陸の方へ向きを変えるとゆっくりと泳いで消えて行った。
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