異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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208.大雨中もモノ造り(大量のメロン届く)✔ 2024.2.21修正 文字数 前2,641後3,825増1,184

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 襲撃のあった日の夜から天候が荒れて、三日三晩も大雨が続いた。こんなに激しく雨が続いたのは転生してから初めてだ。お陰で溶けた魔物のドロドロはきれいさっぱりと流れて異臭もしなくなっている。今頃は下水道を通ってブルースライムの浄化槽に到達し、跡形もなく消化されているだろう。

 魔物のドロドロは魔力量が豊富だったから、ブルースライムが分裂しているかもしれないんだ。浄化槽に一度に大量の水が流れ込んでいるから、ブルースライムが逃げ出していないかも心配なんだよな。

 大雨の間、壊れた窓のガラスを集めて、魔法で窓ガラスを加熱形成していた。サングラスを作って以来の作業だったけど、あの時よりも思い通りに形成できたよ。木製の窓枠はマシューさんの連れて来た職人さんが、同じモノを作ってくれている。製作時期が違うせいで色が微妙に違っているが、数年も経てば他の窓と変わらない色合いになるんじゃないかな。

 今回の襲撃で魔蟻の防具の必要性を改めて認識させられたんだ。そこで、兵士全員に魔蟻の防具を作り渡す事にした。魔蟻の外骨格や脚のカットと形成は俺が魔法で行っている。組立は移住してきた防具職人にお願いしているとマシューさんが言っていたな。王都から引き抜いたみたいだから、お城からクレームが来ないか少し心配なんだよ。

 魔蟻なんて普段は硬すぎて扱えないからと、防具職人はノリノリで防具の組付けをやっているそうだ。一度、工房に顔を出して労っておきたいな。

 襲撃の詳細についての報告書を、王妃様の乳液運送便で一緒に届けてもらうようにお願いしておいた。緊急鳩便は途中で行方不明になることもあるし、重さ的に少しの情報しか送ることはできないからね。特に魔法を使えなくする魔道具のことは詳しく書いておいたんだ。魔法師も身体強化魔法を使う騎士にも危険だからね。

 第一騎士団長から定期的に手紙が届いてはいるんだけど、邪神教の調査については進展がないみたいだな。拠点に踏み込んだ際に残っていた燃えカスを、必死に解読していると書いてあっただけだからね。

 襲撃から十日程が経過し、ハイルーンの町も落ち着きを取り戻してきた。嵐のような雨が降ったが、俺の送った報告書も届いているはずだ。きっと、俺の報告書を読んで、騎士団と魔法師団は慌てているはずだよ。

 グラン帝国やお爺様たちにも同様の報告を送っておいたから、何かしらの対策を考えているだろうね。他の貴族たちには国王陛下から連絡が送られるはずだから、少し日数は掛かってしまうんだけどね。

「アルフレッド様、魔蟻の防具が完成したのでお持ちしました」

 マシューさんが店の男性たちと一緒に防具を運んでやって来た。みんな魔蟻の防具に身を包んでおり、とても商会の人には見えない。この防具は俺がマシューさんにプレゼントしたものだ。

「マシューさん、早く仕上げてくれてありがとう」

「全部ではないのですよ。出来上がったものから納品しております」

 マシューさんが持参してくれたのは真っ黒な魔蟻の防具だ。脛、太腿、胸と胴、頭、腕や手甲などでひとり分になっている。ひもで結ぶのがちょっと面倒だが、とにかく軽量で頑丈だ。これが金属製のフルプレートアーマーにしたら約四十キロから大きな人になれば六十キロ近くになってしまうだろう。だから、メチャクチャ評判がいいんだ。フルプレートアーマーなんて着込んだら、ほんのニ、三時間で汗だくになって動けなくなるからね。

 それに、バラバラなので何種類かサイズを作っておけば、体に合ったパーツを選んで装着することができるんだ。部分的に壊れても簡単に交換できるというメリットもあるからね。

「できた分から兵士に渡しているから助かるよ」

「サーシャ様の防具の図面ですがもう少し時間をください。成長しても装着できるよう考えているのですがなかなか難しいと言っておりました」

「当分は敷地から外に行かせないから急がなくてもいいよ。兵士の防具を優先するように言っておいて」

「分かりました。これで失礼します」

 マシューさんは忙しいらしく、お茶も飲まずに帰ってしまった。サーシャの防具は魔蟻クイーンの外骨格と脚で作るつもりでいるんだけど、子供用なんてないから図面から作ってもらっている。それに魔蟻クイーンは紫色で数が少ないため、量産型の黒い魔蟻と同じようには行かない。

 紫と言えば、マルベリー公爵家の色なんだよな~。魔蟻クイーンの防具の存在を知られたら面倒なことになりそうで不安なんだよ。公爵もスノウレット様も髪と瞳が紫色だからね。

 お父様やカイル兄さんには黒い魔蟻の防具を渡してあるんだけど、お母様やサーシャには違う色で作りたいんだ。お母様はいらないと言っていたけど、上位種の魔蟻で作ると言ったら、興味ありそうにしていたからね。

 どうにかしてピンク色か赤色にできないか研究中なんだ。熱湯につけると赤くなるんだけど、防御力が落ちてしまうからな~、なかなか上手くいかない。

 ハイルーンの町もいつもより緊張感が漂ってはいるが、他の町街と比べると全く違うらしい。他の町街はかなりピリピリしていると、マシューさんの護衛をしているダニエルさんが言っていた。あちこちの街町を通るから分かるんだろうね。

 普段は防具なんて着る事のない文官の皆にもプレゼントすることに決めた。魔蟻の防具は非常に高価で個人で所有するなんて普通はできないそうだ。家宝にしますとみんな喜んでくれたよ。

 製塩所も本格的に人を雇用して可動を始めた。製塩所の近くと道の途中に宿泊所も新たに建設した。まだこの宿泊所は製塩所との行き来で使うだけだから、人は常駐してないけど、製塩所がもっと大きくなれば常駐するようになるかもしれない。そうなれば、宿場町みたいになるかもしれないよね。

 そうそう、最初に作った別荘と温泉なんだけど、魔物天国に拍車がかかり、カオスな状態になりつつあるんだ。レックスが流石に笑っていたからね。食べる側と食べられる側の魔物が争いなく一緒に過ごすのはなかなか見ない光景だからね。レックスがルールを作ったみたいで一種の安全地帯のような場所になっているらしい。中には果物を入浴の対価に渡してくる魔物までいるんだってさ。

 魔蟻と魔蜂以外の魔物は、殆どの種類が温泉に入りに来ているのではないかとレックスが笑いながら言っていた。猿の魔物は前からいたけど、オークにゴブリン、大きな魔亀や魔鳥に魔蛇まで来た時には流石に笑ったと言っていた。昆虫系は温泉には入らないんだろうね。

 それはそうとレックス、露天風呂の順番待ちしている魔狼の数がやけに多くないか? 仕方ないな、今までのふたつの露天風呂の横にふたつ分の広さの露天風呂を造ってあげるよ。仲良くゆっくりと浸かってよ。

 魔物のスタンピードに繋がらないか心配になったが、俺に迷惑を掛けない事もこの温泉を利用するための条件になっているのだとレックスが教えてくれた。

 レックスが言うように、俺の領地では魔物に襲われる件数がほぼゼロなんだ。そんな取り決めがされていたなんて初めて知ったよ。レックスは魔狼王を辞めたと言っていたけど、この辺りの魔物の王になったのかもしれないな。

 見掛けないやつが森に入って来たら、レックスに連絡してくれるように言ってあるんだってさ。俺の知らないうちにとんでもないことになっていたみたいだな。

 この話を知ってしまうと、魔蜂の討伐と魔蜂蜜を採る以外には、魔物の討伐依頼なんて出てこないんじゃないかな。薬草も栽培しているから、仕事斡旋ギルドに仕事の依頼があるか心配になってきたよ。

 □    □

 コーラス・クラフト男爵からお礼の手紙と大きな木箱がいくつも届いた。律儀な人だな。木箱の中にはサーシャが大好きなメロンが入っていたんだけど、荷馬車一台分とか多すぎるでしょ。サーシャが喜ぶからいいけど、メロンもだけど運賃が相当高かったはずだよ。メロンの種を採っておいて、うちでも栽培してみようかな。栽培に成功したらサーシャが喜びそうだよね。

 手紙には、脚の傷は順調に治っていることや、義足の使い方に慣れてきたと書いてあった。来週からは邪神教の捜索に加わるとも書いてあったけど、無理していそうで心配なんだよ。

 邪神教があまりにも見つからなさ過ぎる。第一騎士団長が心配しているように、スパイや内通者がいる可能性もあるかもしれない。手紙は使わない方がいいだろう、直接メダリオン城に話に行くかな。

 俺が手紙を読んでいると、サーシャがメロンの存在を嗅ぎつけたようだ。凄い嗅覚をしているみたいだな。もう、料理人に二玉もカットしてもらって食べていた。

「サーシャ、そんなにメロンを一度に食べたらお腹を壊すよ」

「大丈夫なの、サーシャはもっと食べれるの」

 サーシャはスプーンでメロンを口に運び続けており、とても幸せそうだ。

「いっぱいあるから大丈夫だから、一度に食べなくてもいいでしょ」

「後、もう一つだけ食べるの」

 結局サーシャはメロンを三個も食べたせいで、夜にお腹が痛くなったんだ。癒しの魔法を掛けておいたけど、どう考えてもその量はお腹に収まらないよね。

 うちの家族は甘くて果汁たっぷりのメロンの虜になっている。カイル兄さんも初めて食べたメロンから、流れ出る果汁に完全にやられていたんだよ。美味しいモノを食べている時の顔ってどうしてあんなに幸せそうなんだろうね。

 もちろん、マシューさんやレックス達にも分けてあげたよ。荷馬車一台分もあるからみんなで食べるからね。
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