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荒戸井村問題
朝礼で
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紫垣さんと富塚君のコソコソ話を聞いた数日後、いつもやっている朝礼で正式に私の隣の空席のようになっていた育休中の人の退職が発表された。この場合、自己都合になるようで、ついでに課長から七月くらいには奈雲さんが県外にある支店の方に移動することが決まったと聞かされた。別に奈雲さんとは仲が良いわけでもないので何とも思わないが、そんな理由で一課の方から井村君という男性社員がやって来るそうだ。引き継ぎの関係もあって六月にはその育休中の人の席に座ることになるみたいで。
「井村ぁー……」
とまた富塚君は嘆きを吐いた。トイレに行って戻る途中、富塚君を見つけ、声を掛けることもできず、仕事場に戻ろうとしたら、富塚君の方から待て待て! と給湯室に連れて行かれた。もうすぐお昼休みになってしまうんだけど。これは完全にサボりではないのか? まあ、課長、今、席外してるし良いか……。
「やっぱ来る!」
「そんなに嫌? その井村さんっていう人」
「嫌っていうか、仕事ができないんだよな……。溜め込む癖があってさ、その井村を入社当時から世話してた浅尾さんもそういう系で。昼間は働かない、夜働くんだ! っていう人でね。そんな人見て、今日まで来たからね……。そんな奴来ちゃったら、ちょっと仕事こっちの課では回らないから、今、課長、新しい派遣入れるぞ! って、派遣会社の人と話してるわけだし」
「え?!」
太い声が出てしまった。そのくらいの驚きだ。
「じゃあ、私……切られるかな……。まだ更新される電話、派遣会社から来てないし、きっとその新しい派遣の人の方が仕事できそうだし」
「いやいや、だから日下辞められると困るんだって! 日下が居ないと俺が井村の面倒を見ないといけなくなる!」
「え?」
何を言ったんだ? この男。
「課長、そういう考えみたいなんだよね……。ほら、うちの会社、残業は少ない方が良いって感じだから……。ミス多い日下と仕事他力本願な井村、くっ付けて……頑張ろう! みたいな?」
「ひどい! くっ付けて終わりにする気なんだ……。そんな所なら辞めます……自主的に」
「いやいや、俺の本音はそうじゃないから! 助けてほしそうなら助けるし!」
「そうなるまで放置ですか、富塚さん……」
「あ、いや……俺だって、できれば日下を俺の下にしてずっと一緒に居られるようにしたいけど、課長は日下の事、そのあんまりっていうか、好きじゃないから正社員の井村の下にして、これ以上の被害を出さないようにするって考えで。逆らったら俺……」
「大丈夫、気にしないで良いよ。派遣なんてそんなもん。捨てられたり、平気でされるよ。今までもそうだったし。使い捨てがすごいよね。それでも正社員で働くより良いのは自分が決めたことだし。恨んだりしないから」
「ごめんな……」
そう言って富塚君が私の頭に手を置いた。何これ! これ、やばい! 何か良い……と思ってしまう自分が居た堪れない。
「あ、あの! 富塚君?!」
「うん?」
「その手……、頭の手を退けて」
「嫌だ、何か触ってたい」
「ちょっと、誰か来たらどうすんの? もうお昼休みになっちゃうよ!? それに被害とかって言ってたけど、私と井村さんくっ付けたら倍の被害になるんじゃないの?」
「うーん、だから、嫌なんだ。それでも課長はできない奴をくっ付けといた方がちゃんとやるっていう方針の人だからね」
「う、私……本当に更新されるかな……」
そうじゃないと困る状況。私の更新の連絡はそれから一週間過ぎても来なくて、新しい派遣社員の荒戸さんが来て、月末近くになっても来なかった。
「井村ぁー……」
とまた富塚君は嘆きを吐いた。トイレに行って戻る途中、富塚君を見つけ、声を掛けることもできず、仕事場に戻ろうとしたら、富塚君の方から待て待て! と給湯室に連れて行かれた。もうすぐお昼休みになってしまうんだけど。これは完全にサボりではないのか? まあ、課長、今、席外してるし良いか……。
「やっぱ来る!」
「そんなに嫌? その井村さんっていう人」
「嫌っていうか、仕事ができないんだよな……。溜め込む癖があってさ、その井村を入社当時から世話してた浅尾さんもそういう系で。昼間は働かない、夜働くんだ! っていう人でね。そんな人見て、今日まで来たからね……。そんな奴来ちゃったら、ちょっと仕事こっちの課では回らないから、今、課長、新しい派遣入れるぞ! って、派遣会社の人と話してるわけだし」
「え?!」
太い声が出てしまった。そのくらいの驚きだ。
「じゃあ、私……切られるかな……。まだ更新される電話、派遣会社から来てないし、きっとその新しい派遣の人の方が仕事できそうだし」
「いやいや、だから日下辞められると困るんだって! 日下が居ないと俺が井村の面倒を見ないといけなくなる!」
「え?」
何を言ったんだ? この男。
「課長、そういう考えみたいなんだよね……。ほら、うちの会社、残業は少ない方が良いって感じだから……。ミス多い日下と仕事他力本願な井村、くっ付けて……頑張ろう! みたいな?」
「ひどい! くっ付けて終わりにする気なんだ……。そんな所なら辞めます……自主的に」
「いやいや、俺の本音はそうじゃないから! 助けてほしそうなら助けるし!」
「そうなるまで放置ですか、富塚さん……」
「あ、いや……俺だって、できれば日下を俺の下にしてずっと一緒に居られるようにしたいけど、課長は日下の事、そのあんまりっていうか、好きじゃないから正社員の井村の下にして、これ以上の被害を出さないようにするって考えで。逆らったら俺……」
「大丈夫、気にしないで良いよ。派遣なんてそんなもん。捨てられたり、平気でされるよ。今までもそうだったし。使い捨てがすごいよね。それでも正社員で働くより良いのは自分が決めたことだし。恨んだりしないから」
「ごめんな……」
そう言って富塚君が私の頭に手を置いた。何これ! これ、やばい! 何か良い……と思ってしまう自分が居た堪れない。
「あ、あの! 富塚君?!」
「うん?」
「その手……、頭の手を退けて」
「嫌だ、何か触ってたい」
「ちょっと、誰か来たらどうすんの? もうお昼休みになっちゃうよ!? それに被害とかって言ってたけど、私と井村さんくっ付けたら倍の被害になるんじゃないの?」
「うーん、だから、嫌なんだ。それでも課長はできない奴をくっ付けといた方がちゃんとやるっていう方針の人だからね」
「う、私……本当に更新されるかな……」
そうじゃないと困る状況。私の更新の連絡はそれから一週間過ぎても来なくて、新しい派遣社員の荒戸さんが来て、月末近くになっても来なかった。
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