仕事帰り休みの日=もっと仲良くなる時間

泡田日

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荒戸井村問題

富塚君が休んだ次の日

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 来てしまった火曜日。富塚君が休みの日。
 休む理由は有休使わないともったいないからっていうのが納得いきそうで納得できなかったけど、課長は朝から会議やらで居なかったし、富塚君が居ないから頼まれる仕事もなく、課長にハンコをもらう書類もなく、全て順調過ぎるくらいに過ぎて定時、まだ戻って来ない課長が来る前にと帰り、私はやってやったぜ! 気分で家に帰ったのだ。
 そして、次の日、富塚君からの大丈夫だった? メールもないまま仕事に行き、欲しかったメールよこさなかった人が普通そうに会社に居た時はちょっと昨日休んだ方……と思ってしまったけど、私は今週、朝礼終わりに給湯室の掃除をしないといけない当番だったので給湯室に向かった。
 それでしか給湯室に行かない私はさっさと終わらせるつもりだったのに。
「おはよ、日下」
「うわ!」
 何をそんなに驚いているんだと、スーツ姿の富塚君がこちらを見る。
「な、何の用でしょうか?!」
「いや、別にこの時間、誰もここ来ないし、普通」
「え、そう?」
 でも、昨日は綺麗なキリッとした年上そうなメガネのお姉さんがマイカップを持って、コーヒー飲む為に来ていたけれど。
「昨日大丈夫だった?」
「うん、平気でしたけど……」
「課長、急に休んじゃったし、タバコ吸うみたいな感じで来たけど、コーヒーないね」
「あ、本当!」
 でも、私、このコーヒーメーカーのやり方、知らない。というかコーヒー飲まない人間だからな……。
「じゃあ、やりましょうか? それとも富塚君が?」
「あ、おはようございます」
「おはようございます……」
 横を向けば、昨日のこの時間も来たあの綺麗なメガネのお姉さん!
 何か富塚君がこのお姉さんにドキドキしているのが伝わって来た。
「ボクがやりますよ!」
「そう? じゃあ、私、出来る頃にまた来るから、やっといて。よろしく」
「はい!」
 そのお姉さんが消えると富塚君がふー……と息を吐いた。
「何なの? その『ボク』とかって」
「ああ……あの人、一課の紫垣しがきさんって言ってね、怖いんだよ。この会社のお局的存在で、一課のリーダーと恐れられ、俺らと同じ昭和生まれの人。まあ、日下にはそんなに言って来ないと思うけど、何だとぉ? その言い方! 仕事中だろぉ!? 的な発言も日常茶飯事だと聞いたし、年上だしね、あの人」
「結婚してるの?」
「いや、彼氏とかもいないんじゃない? 確か、三十三歳くらい? そういえば、この前、うちの課の梅沢さんとバトってたなぁ……、二人ともキツイ性格してるし、いやぁ、怖かった……正社員の私に向かって契約社員が何を言っている?! というのが目に現れてた……」
 そう言いながら、富塚君はせっせとコーヒーメーカーでコーヒーを飲めるように準備する。ついでのように私にそのやり方を教えてくれて。
 数分後、流しの掃除でもしようとしていたら、またあの紫垣さんがやって来て。
「ちょっと、良いかしら? 富塚君」
「ハイ!」
 何か大変な事に巻き込まれそうな雰囲気がある……。私からちょっと離れた所の廊下で話が始まったし、何か前にも聞いたことのある『井村』というのが数回、紫垣さんの口から出た。そこぐらいしか聞き取れなかったけど。
「……はい、分かりました……。コーヒーはまだです……」
 何か話し終わって、また富塚君だけが戻って来た。
「井村ぁ……」
 と、それだけ言い、何か落ち込んでいる。
 そして、私に向かって。
「絶対、更新してくれ! 日下! もうお前だけが頼りだ!」
「え? 何を突然……」
「きっと、そのうち分かるさ……。俺がこうなってる理由も。そしたら、日下だって口が悪くなると思うよ。アイツ、本当使えないから。コーヒーできたね……」
 そんなことを言って、富塚君は仕事に戻って行ってしまった。
 うーん……良く分からないけど、そのうちまた紫垣さんがコーヒーを飲む為にここに来るだろう。
 そうなる前に、ささっとやって仕事に戻ろう。あの女性の相手は私には無理だ。
 そのくらい、富塚君に話す時の紫垣さんの口調は明瞭で落ち着きがあり、少しとげが見え隠れしていて、私のような女はお好きでないと見えたからだ。
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