15 / 65
荒戸井村問題
富塚君が休んだ次の日
しおりを挟む
来てしまった火曜日。富塚君が休みの日。
休む理由は有休使わないともったいないからっていうのが納得いきそうで納得できなかったけど、課長は朝から会議やらで居なかったし、富塚君が居ないから頼まれる仕事もなく、課長にハンコをもらう書類もなく、全て順調過ぎるくらいに過ぎて定時、まだ戻って来ない課長が来る前にと帰り、私はやってやったぜ! 気分で家に帰ったのだ。
そして、次の日、富塚君からの大丈夫だった? メールもないまま仕事に行き、欲しかったメールよこさなかった人が普通そうに会社に居た時はちょっと昨日休んだ方……と思ってしまったけど、私は今週、朝礼終わりに給湯室の掃除をしないといけない当番だったので給湯室に向かった。
それでしか給湯室に行かない私はさっさと終わらせるつもりだったのに。
「おはよ、日下」
「うわ!」
何をそんなに驚いているんだと、スーツ姿の富塚君がこちらを見る。
「な、何の用でしょうか?!」
「いや、別にこの時間、誰もここ来ないし、普通」
「え、そう?」
でも、昨日は綺麗なキリッとした年上そうなメガネのお姉さんがマイカップを持って、コーヒー飲む為に来ていたけれど。
「昨日大丈夫だった?」
「うん、平気でしたけど……」
「課長、急に休んじゃったし、タバコ吸うみたいな感じで来たけど、コーヒーないね」
「あ、本当!」
でも、私、このコーヒーメーカーのやり方、知らない。というかコーヒー飲まない人間だからな……。
「じゃあ、やりましょうか? それとも富塚君が?」
「あ、おはようございます」
「おはようございます……」
横を向けば、昨日のこの時間も来たあの綺麗なメガネのお姉さん!
何か富塚君がこのお姉さんにドキドキしているのが伝わって来た。
「ボクがやりますよ!」
「そう? じゃあ、私、出来る頃にまた来るから、やっといて。よろしく」
「はい!」
そのお姉さんが消えると富塚君がふー……と息を吐いた。
「何なの? その『ボク』とかって」
「ああ……あの人、一課の紫垣さんって言ってね、怖いんだよ。この会社のお局的存在で、一課のリーダーと恐れられ、俺らと同じ昭和生まれの人。まあ、日下にはそんなに言って来ないと思うけど、何だとぉ? その言い方! 仕事中だろぉ!? 的な発言も日常茶飯事だと聞いたし、年上だしね、あの人」
「結婚してるの?」
「いや、彼氏とかもいないんじゃない? 確か、三十三歳くらい? そういえば、この前、うちの課の梅沢さんとバトってたなぁ……、二人ともキツイ性格してるし、いやぁ、怖かった……正社員の私に向かって契約社員が何を言っている?! というのが目に現れてた……」
そう言いながら、富塚君はせっせとコーヒーメーカーでコーヒーを飲めるように準備する。ついでのように私にそのやり方を教えてくれて。
数分後、流しの掃除でもしようとしていたら、またあの紫垣さんがやって来て。
「ちょっと、良いかしら? 富塚君」
「ハイ!」
何か大変な事に巻き込まれそうな雰囲気がある……。私からちょっと離れた所の廊下で話が始まったし、何か前にも聞いたことのある『井村』というのが数回、紫垣さんの口から出た。そこぐらいしか聞き取れなかったけど。
「……はい、分かりました……。コーヒーはまだです……」
何か話し終わって、また富塚君だけが戻って来た。
「井村ぁ……」
と、それだけ言い、何か落ち込んでいる。
そして、私に向かって。
「絶対、更新してくれ! 日下! もうお前だけが頼りだ!」
「え? 何を突然……」
「きっと、そのうち分かるさ……。俺がこうなってる理由も。そしたら、日下だって口が悪くなると思うよ。アイツ、本当使えないから。コーヒーできたね……」
そんなことを言って、富塚君は仕事に戻って行ってしまった。
うーん……良く分からないけど、そのうちまた紫垣さんがコーヒーを飲む為にここに来るだろう。
そうなる前に、ささっとやって仕事に戻ろう。あの女性の相手は私には無理だ。
そのくらい、富塚君に話す時の紫垣さんの口調は明瞭で落ち着きがあり、少し棘が見え隠れしていて、私のような女はお好きでないと見えたからだ。
休む理由は有休使わないともったいないからっていうのが納得いきそうで納得できなかったけど、課長は朝から会議やらで居なかったし、富塚君が居ないから頼まれる仕事もなく、課長にハンコをもらう書類もなく、全て順調過ぎるくらいに過ぎて定時、まだ戻って来ない課長が来る前にと帰り、私はやってやったぜ! 気分で家に帰ったのだ。
そして、次の日、富塚君からの大丈夫だった? メールもないまま仕事に行き、欲しかったメールよこさなかった人が普通そうに会社に居た時はちょっと昨日休んだ方……と思ってしまったけど、私は今週、朝礼終わりに給湯室の掃除をしないといけない当番だったので給湯室に向かった。
それでしか給湯室に行かない私はさっさと終わらせるつもりだったのに。
「おはよ、日下」
「うわ!」
何をそんなに驚いているんだと、スーツ姿の富塚君がこちらを見る。
「な、何の用でしょうか?!」
「いや、別にこの時間、誰もここ来ないし、普通」
「え、そう?」
でも、昨日は綺麗なキリッとした年上そうなメガネのお姉さんがマイカップを持って、コーヒー飲む為に来ていたけれど。
「昨日大丈夫だった?」
「うん、平気でしたけど……」
「課長、急に休んじゃったし、タバコ吸うみたいな感じで来たけど、コーヒーないね」
「あ、本当!」
でも、私、このコーヒーメーカーのやり方、知らない。というかコーヒー飲まない人間だからな……。
「じゃあ、やりましょうか? それとも富塚君が?」
「あ、おはようございます」
「おはようございます……」
横を向けば、昨日のこの時間も来たあの綺麗なメガネのお姉さん!
何か富塚君がこのお姉さんにドキドキしているのが伝わって来た。
「ボクがやりますよ!」
「そう? じゃあ、私、出来る頃にまた来るから、やっといて。よろしく」
「はい!」
そのお姉さんが消えると富塚君がふー……と息を吐いた。
「何なの? その『ボク』とかって」
「ああ……あの人、一課の紫垣さんって言ってね、怖いんだよ。この会社のお局的存在で、一課のリーダーと恐れられ、俺らと同じ昭和生まれの人。まあ、日下にはそんなに言って来ないと思うけど、何だとぉ? その言い方! 仕事中だろぉ!? 的な発言も日常茶飯事だと聞いたし、年上だしね、あの人」
「結婚してるの?」
「いや、彼氏とかもいないんじゃない? 確か、三十三歳くらい? そういえば、この前、うちの課の梅沢さんとバトってたなぁ……、二人ともキツイ性格してるし、いやぁ、怖かった……正社員の私に向かって契約社員が何を言っている?! というのが目に現れてた……」
そう言いながら、富塚君はせっせとコーヒーメーカーでコーヒーを飲めるように準備する。ついでのように私にそのやり方を教えてくれて。
数分後、流しの掃除でもしようとしていたら、またあの紫垣さんがやって来て。
「ちょっと、良いかしら? 富塚君」
「ハイ!」
何か大変な事に巻き込まれそうな雰囲気がある……。私からちょっと離れた所の廊下で話が始まったし、何か前にも聞いたことのある『井村』というのが数回、紫垣さんの口から出た。そこぐらいしか聞き取れなかったけど。
「……はい、分かりました……。コーヒーはまだです……」
何か話し終わって、また富塚君だけが戻って来た。
「井村ぁ……」
と、それだけ言い、何か落ち込んでいる。
そして、私に向かって。
「絶対、更新してくれ! 日下! もうお前だけが頼りだ!」
「え? 何を突然……」
「きっと、そのうち分かるさ……。俺がこうなってる理由も。そしたら、日下だって口が悪くなると思うよ。アイツ、本当使えないから。コーヒーできたね……」
そんなことを言って、富塚君は仕事に戻って行ってしまった。
うーん……良く分からないけど、そのうちまた紫垣さんがコーヒーを飲む為にここに来るだろう。
そうなる前に、ささっとやって仕事に戻ろう。あの女性の相手は私には無理だ。
そのくらい、富塚君に話す時の紫垣さんの口調は明瞭で落ち着きがあり、少し棘が見え隠れしていて、私のような女はお好きでないと見えたからだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる