【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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9.黒い玩具

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それから4日後の水曜日。俺は授業中にも関わらずずっとそわそわ…いや、イライラしていた。昨日のうちに今日誘いの声がかけられるのでは?なんて思っていたが、その予測は外れて俺は帰ってひとりで自慰をした。帰宅時点では「誘われたら仕方ねぇよな」くらいの気持ちだったが、帰宅後どうにもあのベッド上でのことが浮かんでひとりで発散しようと思い立った。あの行為を思い出すとチンコからの刺激だけでなく、後ろに触れたくなる。潤滑剤を使って気持ちいいところを探ろうとしても自分では届かないし、わからない。唯一のディルドだってあいつの家に置いてきてしまった。結局前だけの刺激で射精はしたものの、なんとなく不完全燃焼な感じが気に入らない。次はあれ使おうとか言っておいてまさか忘れてるんじゃないか。どこかのセフレとやっているんじゃないかと思うとイライラする。使わないなら返せとでも言ってやろうかとも思ったが、それじゃあ自分で使うことを宣言してるみたいだ。

「おい、おーい。目ぇ開けたまま寝てんの?」

「んぁ、何?」

「授業とっくに終わってるぞ」

 はっと前を向くと目の前で阿川が不思議そうな顔をしてこちらを覗き込んでいる。いつの間にか考え込んでしまっていたらしい。すでに多くの学生が席を立って教室から出ているところだった。

「ごめん、ちょっと考え事」

「いやわかる、山吹の授業は意識飛ぶよな!そのくせ今回も課題は200字以上×3とか鬼畜じゃね」

「阿川はそれにしても毎回毎回寝すぎだろ。てか寄っかかってくんな」

「ケチ、ちょっとくらいいいだろ」

「無理、俺の肩は舞ちゃん専用なの!てか見てくれ、可愛いだろ俺の彼女。こないだ浴衣デートした」

「は?舞ちゃんガチ可愛くね?小動物系!お前こんなかわいい子と付き合ってんの⁉」

「舞ちゃんって呼ぶな!」

「じゃあなんて呼べばいいんだよ!」

「お前はなんとも呼ぶな!な、ほら見ろよ。かわいいだろ。舞ちゃん」

「かわいい。こういう守りたくなるタイプ井口好きそう」

「俺もこういう子可愛い子と付き合いてぇよ!葉大、お前は綺麗系だろ」

「えー俺が好きなの…んー…可愛いかな、こういう感じじゃないけど」

そんな会話を横目にしていると可愛い以外の言葉を許さない勢いでドヤ顔の井口が目の前にスマホを掲げてくる。

「なぁなぁ可愛いだろ!」

そこには確かにいかにも女の子らしい子が笑顔で写っている。可愛いと返すと「今日も約束してんだ」と満足げに頷いた。


 帰り道、普段と変わらず井口の彼女の話やバイトの話が飛び交う。こいつらとの気楽な言葉のラリーは心地いい。ふとこちらを見つめる視線に気づいた。

「なんだよ」

「んー?…帰りコーヒー飲みに来るかなって」

「………行く、けど」

 ぎくりと心臓が跳ねる。お前今日バイト入ってんの、と言いかけて言葉を飲み込む。これは多分、そういうことじゃない。その後の会話はいまいち頭に入ってこなくて、でもそれがバレないようにそれらしい返答をしてやり過ごした。

 一度帰宅して身支度を整えてあいつの家へ向かう。これから行くという連絡には既読がつかない。まぁでも約束してるし、万が一いなかったとしても5分程度の道また帰ってくればいい。

 一度深呼吸をしてインターホンを押すと少し間を置いてからバタバタと慌てた様子で出てきた。少し乱れた息、心なしか服装も少し乱れていて火照っている気すらする。…こいつまさか先に一人で抜いていたのか?

「待たせてごめん」

「そんな待ってないし別に…」

 ならよかった、と安堵した顔を浮かべて家の中へ通される。流石に3回目にもなればギクシャクせずに自然な動きでベッドに腰を下ろすことができた。

「なぁ、今日あれ…使う?」

「使おうと思ってたけど怖い?やめとく」

 黒いそれを片手にベッドに両膝をついている姿を見てゴクリと唾を飲み込みこむ。覚悟を決め、首を横に振って答えた。いざ目の前にすると好奇心よりも痛かった記憶が勝って体がこわばった。

 大丈夫だと体を撫でる温かい手が少しずつ俺をおかしな気分にさせる。

「お腹ひくひくさせてんのかわいい」

「…っせ、お前の触り方のせいだろ、が」

 服の中に侵入してきた指の動きに体をよじる。しばらくすると満足したのか上半身をまさぐっていた手が残った衣服を脱がしていく。露わになった局部を熱い手が緩やかに包み込み呼吸が荒くなる。濡れた指がつぷつぷと穴を出入りすることにもあまり違和感がなくなっていた。一本二本と増える指に気持ちのいいところを押されて身を震わせる。そこを刺激されるたびに甘い快感がぞくぞくと背筋を走って漏れ出る声を押し殺す。先走りで濡れそぼったそこは今にも精液を放つのではないかというほど張り詰めて苦しい。静かな部屋でぐちゅぐちゅと聞こえる音が耳にまとわりつくようだった。

「一回イっとこうな」

「~~ッんっ‼あっ…ゔあっ…ふ、ぅ…も、いい…からっ」

 肉棒と同時に何度も刺激されて散々気持ちいい場所だと教え込まれたそこを一際強く押し込まれる。前と後ろ、同時に与えられる強い刺激に目の前がチカチカする。それを少しでも逃がそうと枕に頭のてっぺんをつけるような態勢を取ると、大きな手に握られたそれがどぷどぷと白い体液を吐くのが視界に入る。酷く官能的な光景に目が離せなかった。達してもしばらく中で動き続いていた指が引き抜かれて甘い切なさが残る。

「痛かったら言って」

 無機質なものがケツにあてがわれてひゅっと息が詰まる。なだめるように触れる唇と手が体のこわばりを解く間にもそれはゆっくりと中に押し進められていく。

「ん。はっ、……ん」

 指とは違うまとまった大きさと硬さに強い違和感を覚えて唇を噛む。少しずつ埋まっていくそれが気持ちのいい部分をかすめて腰が跳ねた。

「前立腺に当たった?」

「…っ!」

 答える暇もなく、前立腺と呼ばれたところに当たるようにディルドゆっくりが出し入れされて、開いた口から情けない声が漏れ出る。これ以上声を出さないように枕に顔をうずめると、動きを変えて押し当てるように再び挿入り込んでくる。これまで指では届かなかったところまでゆっくりと押し広げられ深く息を吐いた。

「全部入ったよ。…平気?」

「おくっ、…くるしい」

「またちょっとずつ慣らそうか」

「んっ…う、ぁあ…」

 丁寧に一度引き抜かれたそれが、でっぱりをひっかくような動きでまた中をかき回す。初めての強烈な責められ方にガクガクと腰が揺れ、力が抜けていく。

「んッ!ゔ、や…めろ、もっ今日はそこいいっ、無、理ッ!…ふ……ぅ前、頼むから…イきたいッ」

 思わず腰の動きに合わせて震えるそこに手を伸ばすとその手ごと後ろから包み込まれて荒く扱かれる。快感に震えながら力なく前に倒れ込んだ俺を持ち上げて体にもたれかからせられ、熱をもった葉大のそれを握らされる。

「ごめん、ちょっと手ぇ貸して」

「ん、ぁ…お前、勃ったまましてたの…きつくないの?」

「きっつい…ふ…」

「さっさと抜けばいいのに」

 うなじに顔が埋められてじっとりとした熱を感じる。視線をずらしたところですぐそこで荒い息遣いとぬちゃぬち
ゃと水分をたっぷり含んだ音が聞こえてきて、指には直にその熱さが伝わってくる。その一挙一動に心臓が跳ねて、一度冷静になった頭には刺激が強すぎると思った。



「泊まってく?」

「明日も大学だし泊まんねぇよ」

 シャワーで体を流してリビングへ戻ると当然みたいな顔して聞いてくる。一回しか泊まったことないけどな、と思いながら答えるとわかりやすく落胆した顔をして
「晩飯くらい食ってってよ」
 なんて言うからからかってやろうとかそんな軽い気持ちで質問を返す。

「一人暮らし長いのにまだひとりが寂しいんだ」

「まぁそんな感じ。久、帰んないでよ」

「…いや……飯だけな」

 目をまっすぐと見つめられたまま言われた予想外の言葉に面食らって一瞬言葉に詰まる。これまでこいつのセフレから彼女になろうとしてフラれていった女子らを思い出していたたまれない気持ちになる。葉大の『普通』には節々に毒になるほどの甘さがある。こいつに特別な感情はない、特別な関係でもないとわかりきっていても行為をしている時、し終えた時、作ってくれた飯を食う時、それ以外の多くの瞬間でその毒が体を回って大切にされているんじゃないか、愛されているんじゃないかと錯覚させられそうになる。

 そもそも高校の時から親の海外赴任で親戚の家に住んでいたコイツにこの発言は不躾だった。遊び相手の多さも軽率に人を引き留めようとするのも好きとかどうこうじゃなくて単にさみしいとかそんな感情だ。

 夕飯後もなんだかんだだらだらとゲームをしているとあっという間に22時を過ぎていた。
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