【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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10.やってしまった

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「俺もう帰る。明日も早いし」

「りょーかい。ちょっとまって」

「だからついてこなくていいって」

「ちょっとだし行くよ」

「ちょっとの距離だからこそいいっての」

「アイス買いに行くついで」

 俺とお前の家の間にコンビニすらないけどな、と内心ツッコんだが言ったところで別の理由が出てくるんだろうと黙って支度するのを待つ。

「ごめんおまたせ」

「ん、大して待ってねぇし」

 外に出ると夏だというのに少し肌寒くて早歩きになった。見かねたように差し出された手を「おかしいだろ」と払った。なんとなく気まずくて大したことない距離がいつもより長く感じた。

                      ―――――

「ん、ん……あっ、う…」

 金曜の夕方、葉大のバイト先のカフェでコーヒーを飲んでから一緒に家まで来た。「今日はこっちだけで気持ちよくなれるか試してみよう」とか言ってそこばかりをいじられて、はじめこそ「気持ちよくなると思えない」なんて言ったけど、正確に俺の良いポイントを押さえた指の動きに体が火照るのは早かった。触れられずとも熱を帯びたそこを思う存分擦りたくて仕方ない。この際布団でもなんでもいいと腰を下げようとしてもがっしりと固定されて叶わない。伸ばした手も簡単に絡めとられてしまう。

「っふ…˝もっいいだろ!ざけんなっ…ん、…ゔぅ~…」

「うん、…久はこっちも気持ちよくしたいの?」

「したい…したいっ、ゔぁ、んっん、~ッはやく、したぃ…‼」

「…嫌だったら拒否っていいから」

 そう言われると、抱えるみたいにして足がぴったりと閉じられてその間に熱を持ったモノが挿し込まれる。かたく反り返ったそれがゴリゴリと渇望していた快感を与えてくれる。空いたもう片方の右手がしつこいほどの愛撫でツンと主張した乳首をカリカリと優しくなでて、繋がれたままの手に力が入る。

「んッ…!~~~~ッ‼…あッ……は…ぅあっ……ンっ」

 聞き慣れない肉と肉が当たる音が鼓膜に響く。次第に濡れた音が混じっていくのと共に精を吐き出したい欲が高まっていく。俺の太ももの間で摩擦するそれがドクドクと波打って射精するのを感じる。はー…と長い息を吐くのが耳元で聞こえたと思うと、また動き出して足の間のモノがかたく熱を集めていく。

「おまっ、ぁ、イったんじゃ…!っふ…ぁ」

「ッ…は、平気」

 何が平気だよと思いながらも、高みへ追い立てられて果ててしまった。俺がイくと、先ほどまでパツパツとぶつかっていた肌がぴたりとくっつけられ、擦りつけるように動く。

「…久」

「んっ、なに…」

「挿入れていい?」

「はっ…?」

 太ももの間から抜けたバキバキに屹立するそれがケツの穴にぬるぬるとあてがわれて思わず振り返る。バッチリ視線が合ってしまって熱のこもったその目に俺は言葉が出なくなってしまった。

「…ゴムするから安心して」

 どこからか取り出したコンドームを慣れた手つきで装着するのを呆然と見つめる。散々ほぐしてもらってから使用した小ぶりのディルドとは全然違う、成人男性のそれが俺に向けられている。

「……む、むり、はいんない」

「ちゃんと慣らす。痛くしない」

 端的に答えられてその余裕のなさが垣間見える。返答に困って視線を泳がせていると「だめ?」と追い打ちをかけられる。ふいに目を合わせてしまって「やめろって言ったらやめろよ」と小声で返す。俺をその目で見つめないでほしい。

「わかった、ごめん」

ギチギチに勃起させたまま俺が答えるまで待ってたくせに謝ってくんな。
潤滑油が足されてぐにぐにと穴の上を滑っていた鬼頭が穴を押し広げるようにして挿入ってくる。初めての質量感と強烈な異物感に体が強張って、必死に息を深く吐いて深く吸う。

「…は、…ふーっ…はっ、んっ」

「…先っぽ挿入った。…体勢変えようか、ずっとそのポーズも苦しいよな」

 力がうまく入らず抵抗もままならないまま容易に仰向けにされてしまった。丸見えは嫌だと足に力を込める。抱えられるようにしてまとめられた両足の後ろから覗く顔がこちらを見ている気がして視線をそらして顔を腕で隠した。
 当てがわれた熱く硬いものがぬぷりと中へと押し込まれる。これまでと全然違う感覚に息をのむ。

「…はっ…もう、挿入った…?」

 中がみっちりと埋められてもう無理だと願望を込めて聞く。応えるようにピクピクと反応するそこを撫でられる。ただでさえキツイのに咥え込んだものをきゅうっと締めてしまうのが自分でもわかった。

「痛い?平気?…もうちょっとだけ、頑張って」

「ン…無、理っ…でかいの無理…ん……つ、ぅ…」

「……ごめん無理、動く」

 唾を飲み込む音が聞こえた。ナカいっぱいに挿入れられていたそれが引き抜かれたと思うと、ゆっくりとまた押し込まれて出入りを繰り返す。苦しかった圧迫感もだんだんと薄れ、前から与えられる緩い快感に引きづられていく。腕の隙間から見えた苦しそうな、切ない顔に「コイツこんな表情するんだな」と冷静に思うと同時にそんな風に我慢しながら挿入れようとするより素股でもしてるほうがコイツにとってもよっぽど楽で気持ちいい気がして馬鹿だなと思う。そんな一面を見たことにふつふつと背徳感のようなものが沸き上がる。

 徐々に痛みや違和感が和らいで律動的な動きに揺られることで与えられる快感を拾えるようになってきた頃、腰を寄せられてそれまでと違うところを突かれ、電気が走るような刺激に腰が跳ねる。

「やっぱりここ?イけそう?」

「˝おっ!…あっ、んッ…˝ん~~…ッ」

 カリがそこを擦り上げるたびに唇を強く閉じる。気持ちいいな、と言い聞かせられながらぐちゅぐちゅと扱かれて白い体液が腹の上を汚す。

「キッツ…ん…」

 中にある熱いモノが震えて達するのを感じた。ずるりと引き抜かれて圧迫していたものがなくなると自分のそこがヒクつくのがわかって羞恥に震える。先ほどまでの行為が頭の中を反芻して足のほくろを舌でなぞられる感覚も気にならなかった。


「大丈夫?水持ってくるから待ってて」

 体を壁側に向けて黙りこくる俺にそう言って部屋から出ていく軽い足音を聞く。

 いや、セックスしたよな…?完全にセックスだよなこれ?あいつ、いつもめちゃくちゃ平然としてるけど羞恥心とか気まずさとかやっちまったって思いはないのか?………ないからこそセフレを作れるのか。
 
 にしたって相手は幼馴染でゲイの俺だぞ?ノンケのくせに、なんか思うとこあるんじゃ…と言葉が頭をぐるぐる回っているところでまたカチャリと扉の開く音がする。部屋を出た時から戻ってくるまでの間、微動だにしていない俺を見て心配そうに顔を覗き込んでくる。

「体痛い?」

「……………痛くない」

「よかった」

 そう笑って水をベッド脇に置くと空いているスペースにゴロリと倒れ込む。いくら俺が隅にいるとはいえかなり狭い。

「…狭いんだけど」

「俺のベッドだしいいじゃん。ちょっと疲れたー」

 言い返す言葉もなく黙っていると「明日は雨らしい」とか「晩飯カレーでいい?昨日作ったんだけどひとりじゃ食べきれなくてさ」とか普段と変わりないことを言うから調子も狂ってくる。いつもの調子で喋れるようになってくると今度は下着しか身に付けてない状態にじわじわと嫌気がさしてくる。風呂入って着替えるか、と振り返ると既に来た時と同じ服を着てるそいつと目が合う。お前だけ着てるんかい。

「あ、動く気になった?」

「ん。風呂貸して」

「どーぞ。服出しとく」

「お前、風呂入んないの」

「入るけど…。なに、一緒に入って良いの?」

「あほか」

 ふざけた返事を一蹴して風呂場へ行き、体を流す。さっぱりすると先ほどまでのもやもやも馬鹿らしく思えてきた。もう終わってしまったことは仕方ない。ヘンに気まずい空気にならない方向で気を付けよう。それを思うと、あいつの態度も気を遣ってのあの態度なのかもしれない。

 風呂から出てリビングに行くとソファーで居眠りをしていて、風呂が空いたことを伝えるために起こしてやったら開口一番「風呂上りってえろいよね」とかぬかしてきた。やっぱりなんも考えてないんだろう。
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