33 / 87
33. 好きな顔
しおりを挟む扉が閉まりきる前に伸びてきた手が服の中をまさぐって体がピクリと跳ねる。ぽたぽたと髪から垂れた水が肩を濡らして冷たい。
「髪ちゃんと拭かないとな」
「別にいい」
「風邪引くから、ちょっと待ってて」
するっと熱が離れてパタパタと洗面所の方へ遠のく。こんなことならちゃんとしてくるべきだった。急いで準備してきたのに意味がない。
すぐにタオルを持って戻ってきてベッドへ手を引かれる。ベッドに上がるとすぐに背後から頭をワシワシと拭かれる。この時間は結構好きだ。その心地よさに身を任せているとケツにかたいものが押し当てられて振り返る。
「…バキバキ」
「バレた?」
「当ててんだろ…ッ」
「しよ」
するりと体をなぞる手が容易に心拍度を高めていく。さっきのちゅーもそうだし、いつも何かとさせてばかりだなと思う。こいつは「好きでやってるから」とか言うんだろうけど。
……同じように撫でたら感じたりするんだろうか?いつもされているようにツゥー…ッと胸の上に指を走らせる。
顔を見上げると期待とは裏腹にいつも通りの欲にも幸福にも満ちたような顔で見つめられていて、自分ばかり弱いところがあるのだと思うとムッとくるものがある。そのまま指を下げて腹に触れても反応なし。多分耳も背中もなんともないんだろうな、なんて思いながら密かに弱点を考える。
ふいに口が目に留まる。いつもなら匂わせて向こうからさせるところだが、たまにはいいかもしれない、なんて思って吸い寄せられるように唇を重ねる。予想外の行動にきょとんとした後、ぶわりと表情が変わっていく。
「…えっ!……ちょ、もっかい!」
こういう時のこいつの動揺した顔は可愛い。二人の時しか見せない顔だし、そもそもそんなに見れない顔だと思っていたけれど俺からすれば見れるのか。
「だめ、また今度な」
これまで恥ずかしいだのなんだのと自分からできないでいたが、この顔が見れるならあまりしないでいるのが正解かもしれない、なんて思った。
………
火曜恒例「俺彼会」の日がきた。
「ガチごめん!俺、いつもこの時間に話してることあいつらに言いかけちゃって、なんか言われんかった?」
開口一番、デカめの謝罪に圧倒されてどう答えようかと思考を巡らせる。バレた結果、恥ずかしさでいえば最悪だったが、まぁ他を加味すると悪くはなかった。「何話したの」だの「俺も今ここで惚気るから聞いて」だの言われて面倒だったけれど、嬉しそうだったしあの後のえっちのことを思えばむしろよかったまである。
「まぁ…ミスは誰にでもある。隠してることあんのって聞かれたくらいで内容言ったわけじゃないらしいし気にすんな」
「うわよかった~!怒ってるかと思ってたわ、まじごめんな。葉大お前にしつこそうだけど大丈夫だったん?」
「あー、まあ……え?」
「えっ?」
「なんで葉大?」
12
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない
綿毛ぽぽ
BL
アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。
━━━━━━━━━━━
現役人気アイドル×脱落モブ男
表紙はくま様からお借りしました
https://www.pixiv.net/artworks/84182395
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる