【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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36. 一人暮らしと実家暮らし

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 ~久視点~

 月曜。期末の時期が近づき、先週あたりから阿川たちと4人で空き教室で勉強をする日が増えた。普段なら駄弁るだけの2限と4限の間の空きコマにも勉強をしている。

「…くしゅっ!」
「お前くしゃみ可愛いよな~」
「どしたん、風邪?」
「んー…今日めっちゃくしゃみ出る。熱あるわけじゃないと思うんだけど」

 とは言いながらも今日の葉大は朝からぼーっとしていて調子が悪そうだった。無理をしているわけでもなさそうだが、風邪のひき始めというところだろうか。

「普通に体調悪そうだし病院行けよ」
「そうする…。…なんか捗らないし今日もう帰るな」
「おーお大事にな」
「まじか、葉大にこれのやり方聞こうと思ってたんに」
「ん?それだけ見てこうか?」
「気をつけてな。阿川は何?どれ?…これなら俺わかるから葉は帰っとけ」

 阿川のパソコンを覗き込みながら視線だけで見送る。その後ろ姿がどことなく弱っているように見えた。あいつならなんだかんだ一緒に帰ってくれたりしたのかもしてない。

「てか久、一緒に帰んなくてよかったのか」
 阿川に一通り教え終えて自分の作業に戻ろうとすると、井口からの予想外の発言に余計なことを言うなと一瞬眉をひそめる。
「何、久もなんか用事?」
「……あー…まぁ……」
 ………いや、井口!よくやった。全然スマートじゃない。全然スマートじゃないが、なかなか自然な流れのように思う。このまま帰ってあいつの家に様子を見に行けばいい。
「…そう!てことで帰るわ。またな」
 
 最寄りのスーパーに寄ってスポドリやゼリー、それと俺にも作れそうなレシピを見ながらその材料を買い物かごに入れていく。あいつは一人暮らしだから俺がいろいろ看病してやらないと。無茶させたくない。スーパー内を歩きながらあれやこれやと想像をしてみると、なんだか一人で買い物をしている今の状況さえ恋人らしいような気がして悪くないなとひとり頷いた。
 急ぎ足で葉大の家へ向かい、インターホンを鳴らしたが、出る様子がない。大学を出た時にした連絡もやはり返信がないどころか既読すらもついていない。倒れているのではないかなんて嫌な考えが一瞬浮かんだが、それほど体調が悪いようには見えなかった。もう一度、インターホンを鳴らしてから、ただ寝ているだけかもしれないと自分に言い聞かせて帰ることにした。

 ようやく返信があって本当に寝ていただけだということが分かって安堵する。熱が出てきて悪化したから病院に向かっているという連絡を最後にまた返信がない。することもなくぼんやりとスマホの前に待機しているとピコンと通知が鳴る。葉大からのメッセージだ。

『病院終わった。インフルだったから明日来ないで。久にうつしたくない』
「…は?」

 速攻で電話をかけるとワンコールですぐに繋がった。

「もしもし、おい、来んなって言ったってお前ひとり暮らしじゃん。身の回りのことできんの。倒れられたりしたら嫌なんだけど」
「今までもなんとかしてきたし大丈夫」

 大学で会っていた時よりも具合の悪そうな声音に驚く。

「…うつしても良いって。これから行くから待ってろよ」
「来ちゃダメ。久にうつしたくないし久が感染したら余計会えななくなるから嫌だ」
「……でも」

 まぁ確かに、俺は実家住みだし罹ったとなれば会えなくなる。でもやはり本当に大丈夫なのかと心配な気持ちに変わりはない。

「久。毎日電話していい?」
「…ん、絶対な」

 夜に必ず1回とかけたい時に好きにかけるという約束をした。薬は飲んでいるもののどうも症状が重いらしく、それが電話越しにも伝わってくるし、何度もかけるのもうっとおしいかもしれないとも思った。でも嬉しいとか落ち着くとか言ってくるもんだから俺は真に受けて気のままにかけたし、かけてくるのも嬉しかった。
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